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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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一話目に拍手を頂き、誠にありがとうございます。
大分、お話の骨格が見えてきて、もうラストのシーンは大体決まりました。
後は―――――事故の様子ですよね。
この話を書こうと思ったあたりから、ネットでも本でも
様々な航空機の事故についてみてきましたが、
やっぱり飛行機好きな者にとっては、事故の話はありがたくないなぁ
と言う気持ちがあります。

安全に飛んで、安全に着陸して欲しい。

そんな気持ちで書いていこうと思います。


お話は続き記事からです。

拍手[3回]


◆◆◆


アメリカのニュージャージーのアパートメントを引き払って、彼の実家にあたる小金井市のマンションに引っ越したのは、都心でも雪の散らつく1月の事でした。
荷物は先に送り、余分な物はとりあえずトランクルームに預けることにしました。
移動の多いこれまでだったから、元々荷物は多くはありません。
ただピアノだけはーー何とか短い間でも弾きたいと思い、新宿のホテルのバーラウンジで短期の契約を結びました。
それも何日かに一度の仕事だから、普段は今では空井家のハウスキーパーとして大活躍の義父に、日本の家庭料理を教わりながら過ごしています。
空井元室長ーー義父にあたる空井大祐氏は大変他人に教える手際の良い人で、必ず彼から教わると労いの言葉が入るのです。それ故に次はもっと良い質問をしようと、集中力も増すから、教わるのも非常に楽に感じました。

今教わっているのは、出汁を取る段階から始めるお煮しめ。
八つ頭の皮を剥きながら、義父はさり気なく聞いてきました。
「郁さん、どう?こちらの生活は慣れた?」
「ありがとうございます。お陰様で。それに蒼太さんと結婚する前から、この家はもう一つのわたしの家みたいなものですし」
そうだよね、そうだよねと義父は二度頷きました。
「何か市ヶ谷で研修に入ってから、蒼太がすり減ってるでしょう」
「その機体のマニュアルが英語とイタリア語みたいですよ。メインのエンジニアにイタリア人がいたとかで、計画がアメリカに移行してからも、イタリア語部分は残ってしまったみたいで」
「早く郁さんに泣きつけばいいのに」
義父はパチンとウィンクして見せました。
確かにイタリア語はオペラに使われるので、クラッシックを勉強した身ならば何とかなります。
けれども彼は知ってか知らずか、わたしにはあまり話しませんでした。
任務上の守秘義務もある事から、わたしは口は出さなかったけれど、彼の今までにない憔悴ぶりは心配を通り越して少しおかしく感じました。
まるで新しいゲームか、パズルにでも取り組み始めた男の子みたい。
二歳年下なのに、出会った頃はやけに大人びた部分と奇妙に子供みたいな部分がアンバランスに混在していて、そこが魅力にも思えました。
今は顔を見合わせると、あ、頼りになるなと感じる時と、たまに見せる少年めいた表情を見守りたくなるような気持ちで隣にいます。
「郁さん、金時人参切ってくれる?いくつか輪切りのまま残しておいて花形にするから」
「はい」
切って水に漬けた材料を、水を張った鍋にアルミで仕切りをして、材料ごとに鍋に沈めて下煮を始めました。
「さて、この間にお米研ごうか」
「はい!」
「うん、良い返事だね」
すると先程までリビングのソファーで寝そべっていた、空井家の飼い犬の柴犬がトンと床に降りて玄関に向かいました。
誰か帰って来たようです。
「あら?今日リカさんは遅くなるって連絡ありましたよね」
キッチンから犬の後を追って出てみると。
「蒼太さん、おかえりなさい」
帰宅したのは、ブルーチーム在籍中はあまり見た事のなかったスーツ姿の夫でした。
パイロットスーツよりも、普通のスーツ姿の方が着痩せして見えるなんて不思議。
そう思って見つめていたら、目が合った途端彼は真っ赤になって、小さく「ただいま」と言って、部屋に駆け込んでしまいました。
「……?」
「妙にウブなところもお母さんそっくりだね〜、蒼太は」
背後にはニヤニヤと笑う義父がおたまを持って腕組みしていて、わたしは急に嬉しくなって思わず笑ってしまいました。



「あのさ、今度1月末に3日休み取れるから、旅行行かね?」
「何処行くんですか?蒼太さん、今のお仕事考えたらあまり遠出出来ませんよね?」
「何処行っても寒そうだよなぁ…」
彼はゴロリとベッドに横になりました。さっきまで来ていたスーツからスエットとジーンズに着替えています。
私はちょっぴり残念に感じながら、彼の隣に腰掛けました。
「考えてみたら、俺たち全員こんなに家族が家に大集合してるって経験ないんだよな。4人と1匹だぜ。ヤケに部屋が小さく感じる訳だ」
「蒼太さん、それ、嫌だなって感じてないんでしょう?」
「……うん」
幼い頃から両親は共働きで、義父が地方の基地に転勤の時は母親のリカさんと二人きりの家族でした。義父の話では、父親と二人暮らしの時期もあったようです。
私にしても十代の頃には家族はヨーロッパ中でバラバラに暮らしていて、一緒に暮らす存在としての家族を知らなかったから。
「蒼太さんはもう一人増えたら……嫌ですか?」
「まさかまた俺に弟が出来る話じゃないよな?」
分かっていてわざと話を反らしているのが分かったので、ばしりと枕を投げました。
「これからも大変なのはわかっていますけど、もしかしたらこの先蒼太さん、もっと忙しくなってしまうかもしれないし」
「そうだな…」
「わがままでしょうか?わたし、待つなら誰かと一緒に待ちたいって思うようになったんです。この家に来て、蒼太さんのお父様とお母様を見てるとーー多分二人が二人とも、蒼太さんがいたからこそお互いに待てたんじゃないかな、って感じました」
「…そんなもんかな。それにしても、郁。やっぱアンタって自らハマるよな。そんなリクエストされて、俺がどう応えるかわかってんだろ?」
「…バカっ、もう」
もう一回枕を彼に被せて、わたしは立ち上がりました。
「行きたい所、考えとけよ。連れてくから」
彼は被せられた枕を退けて、微笑いました。



1月末に二人で小さな旅行をして、彼が那覇に異動するタイミングで、わたしの妊娠が分かりました。
元々那覇から普天間のベースキャンプへの異動までの期間は短く、二人で住む官舎は普天間に準備されていたことから、彼が初め沖縄に異動し、後からわたしも着いて行く事になっていたのです。
妊娠初期は不安定だからとわたしは彼の実家に残り、リカさんの案内で産院の準備をして、6月に沖縄に移動しました。
迎えに来た彼は訓練の為か、少し体格が良くなっていました。
ほっそりしていて少年めいた雰囲気が、いっぺんに大人の男性になった感じです。
「なに?」
じっと見るわたしの視線が、居心地悪かったのか彼は怪訝そうにわたしを見返しました。
「う、ううん。…蒼太さん、変わったなと思って」
「あー…、確かに日焼けしたよな。コッチに来てから毎日ロードワークに筋トレ、体力アップ系ばっかりだからさ」
「そうなんですね。髪もかなり短くなりましたね」
「うん、こんなん学生時代以来だな」
「似合いますよ」
彼は一見不機嫌そうな、でも明らかに照れた様子で、わたしのスーツケースを持ってさっさと先に歩いて行きました。



普天間の官舎に住み始めてから2週間、ピアノを弾く場所は、意外にも早く見つかりました。
イタリア系移民の祖父を持つクラブのオーナーは、元々軍人として赴任して、沖縄の自然の豊かさに打たれ、こちらに残ったと言います。
「カオルはバリエーションが豊富なのが良い。言葉も自由自在だしな。まあ、少々口の悪いオーディエンスはかりで、キミの夫がヤキモキするだろうが、よろしく頼むよ」
チャーミングな笑顔で、オーナーのミケルは笑いました。
士官中心だと言うそのクラブは、日替わりで地元のカヴァーバンドも演奏をしていました。客層は確かに男性が中心ではありますが、女性の尉官や佐官の方も結構出入りしているようです。
彼はヤレヤレと表面上は面倒そうに、わたしを迎えに来ますが、いつも何曲かリクエストして、それを聴いてから帰って行きます。
初めて松島で会った時の彼を考えたら、随分リラックスしたなぁと感じます。


「カオル、今日ソウタは?」
海兵隊で戦闘機の整備をしているアリサが、ピアノの側にやって来ました。
「そう言えばまだね」
いつも演奏の終わる20分前には、ここにやって来ます。
「アルから、散々貴方の事聞かれたんだけど、アレってどちらかって言うと貴方のハズの事、調べてるよね?」
「調べてる?」
「この前ミーティングルームで、えーと何て言ったけ。日本の青い飛行機」
「ブルーインパルス?」
「そうそう。それの動画、次から次へと見てたのよ。確か尾翼に5の番号が付いてたけど」
「…確かに彼の乗ってた飛行機だわ」
「身に覚えある?」
「……」
恐らく今の訓練に関係があるのだろうけれど、他人に話して良いものか分かりません。
と、言うかこの普天間から先の予定は、彼ですら詳しくは知らされていないようなのです。
「アルってソウタの追っかけ?」
「まさか」
わたしも何度か話した事がありますが、少佐の階級章を付けたアルヴィンは、軽口は叩くけれど、それなりに礼儀を弁えたタイプの人間です。
時々迎えに来た彼とかち合うと、わざとわたしに声をかけて彼の反応を見たりしているようです。
同じ隊で訓練をしていると、彼からも聞いていたけど、何か理由がありそう。
「カオル、Let it go歌って。わたしアレ割と好きなんだ」
アリサがにっこり笑ったので、わたしも笑顔で返しました。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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