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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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今日は久しぶりにQEDで更新です(^.^)

今日ついった見てて、この流れで外嶋さんを書けるのも
9月までかな?などと嬉しい気持ちでしたので、
書けるうちに書いておこうと思いました。

今七夕向けに書いている話が『竹取伝説』をベースに
しています。
なのでこの話も出展は『竹取伝説』です。
文庫本137pの続きになります。


小説は続き記事からです。




拍手[12回]


◆◆◆



「はー、やっと行ったー」
わたしには再従兄弟にあたるらしい、薬局長の外嶋さんが、
大きく呼吸(いき)をついた。
三月もそろそろ半ばになるが、もう六時になろうと言う時刻では、
外は日が落ちている。
「なんか…相手の桑原さん、でしたっけ?
 ――にはバレバレな感じでしたね」
何となく今朝から奈々さんの様子を、外嶋さんがチラチラと
伺っていたのが解っていたので、何かあるな、とは思っていた。
そうしたら閉店間際になって、背の高いひょろりとした
――ボサボサ髪の男性が入って来た。
そして待ちかねたように(わたしにはこう見えた)、
奈々さんと桑原さんに何か言い訳して、二人を揃って出掛けさせたのである。
「……桑原には少し解ってた方がいいんだ。
 それに――なんだかんだ言っても一緒に出掛けただろ?」
外嶋さんはわざとらしく放り出されていた、薬事日報を片付けた。
前から奈々さんと外嶋さんの会話にちらりと出てくる『桑原』さんと言う人を、
わたしは初めて見た。
薬局にやって来る年輩の男性患者に、わたしからみたらセクハラでは?と思うくらい、
手を握られてもにっこり笑顔の奈々さんである。そちら方面にはやや疎い人柄なのは、
此処に勤め始めてから解っていたが、その『桑原』さんの話題が出た時だけ、
うっすら頬が赤くなる。奈々さんの気持ちは一目瞭然だ。
じゃあ、対する『桑原』さんはどんな人?と思っていた。
外嶋さんの話では『変人まではいかないが、奇人の枠には入る』とのことだった。
そして成程と思った。
遠目でしか確認していないが、どうやらギリギリ『イケメン』の枠には入るようである。
(あの髪型をなんとかしたら、ギリギリじゃないかもしれない)
そしてわたしからみたら、明らかに奇人変人な外嶋さんに切り込める会話が出来る相手は、
やっぱり奇人変人の枠に入るだろう。
「余計なお世話、じゃないんですか?奈々さんだって子供じゃないんだし」
「…僕がこんなことをするには、少し理由があるけど、
 子供じゃないから少し策略がいるのさ」
「あんな見え見えな作戦、奈々さんにしか効き目なさそう」
わたしもパソコンの電源をオフにした。
何せこのオジサンが『死体発見』の衝撃的事件に遭遇し、ショックから
――理系なんだから、死体とか解剖はなれてる筈なのに、と言ったら怒られた――
入院中、この薬局の元々の持ち主の叔母さんが代理で
やって来て……それはそれは大変だった。
そのことから、わたしは雇用主として、このオジサンを少しだけ
尊敬するようになったのだが、
もう不要な残業は当分勘弁願いたい。
「今日は『私用』で閉店業務に協力して貰って悪かったね」
「そう言えば、外嶋さん、オペラは?」
「バカだな、君は。オペラの開演時間は大抵六時か六時半。
 オペラを見る日は奈々くんに閉店業務を任せて、五時には薬局を出ることにしている」
「……桑原さんって人もそれを解って…?」
「……今頃ね」
さっさと白衣を脱ぐと、外嶋さんはブレザーと薄手のコートを羽織った。
「ああ、今日は満月に近い十三夜だったな。何せ『照りもせず、曇りもはてぬ、春の夜の、
 朧月夜にしくものぞなき』だ。明朗な秋の月よりは恋を語るにはふさわしいだろうさ」
「………」
やたら現実的なことに憤慨してるかと思えば、案外ロマンティストだなと思う。
わたしも何となく、出掛けて行った二人の幸運を祈りながら、帰路についた。
 
 
 
翌朝。
わたしは然り気無く、昨夜のことを奈々さんに聞いてみた。
オジサンがいると、うるさく誤魔化されそうなので、二人だけの時に。
「え…ええ。食事して帰ったわよ」
「どんなお店に行ったんですか?わたしまだ勤めて半年だから、この辺のお店、
よく知らなくて」
「わたしも初めて行ったけど…少し高そうな、和食のお店だったかしら?」
「へえ…いいですね。きっと会話も弾んだのでは?」
「あ、それは、前から聞いていた『竹取物語』の話をね、ちょっと」
「竹取物語?」
って『かぐや姫』の?と突っ込みそうになって、
いやいや自分が聞きたいのはそう言うことじゃないんだと思い直した。
「その後バーに行ってもその話をして…」
「バーに、ですか?」
「やっぱり初めて行ったお店で
 ――タタルさんが考えたカクテルをご馳走して貰ったけど…」
「すごいですね」
やっぱり外嶋さんの目論見通り、桑原さんは解ってたんだ!と思った。
「何かこう、とっても飲める人ってイメージ付いてるみたいで、
 何だか恥ずかしいわ」
「………」
奈々さんは、ちょっぴり膨れ面だが、声は嬉しそうだ。
そこでわたしはこの話を、やはり二人だけの時に外嶋さんに切り出してみた。
「お節介だな、君は」
「つい、気になって」
「まあ、今の所はそんなもんだろうな…」
外嶋さんはちょっと遠い目をした。
けれどすぐこちらを振り向いて言う。
「あの二人にはあまりプレッシャーをかけないこと」
「わかりました」
そう、何となく解った。
それに肝心の奈々さんが、まだ自分の気持ちに気付いてないらしいことも。
春の夕暮れは穏やかだ。
奈々さんは今日も忙しそうに、白衣を翻して、カウンターと調剤室を
行ったり来たりしている。
あの長身のボサボサ頭が、入口のガラスの向こうに見える次の機会が
早くありますようにと、思わず願わずにはいられなかった。


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