タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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一日二更新です(^_^;)
解決の内容を忘れないうちに、書いちゃおうと思ったら
結構な文章量に(>_<)いや~喋ります、桑原崇!
しかも中身私だから……ごめんなさいm(__)m
一応調べて書いているのですが、色々怪しい内容の
羅列になることはお見逃しください。
個人的にもうちょっと突っ込んで知りたいようなことも
あるんですけどねー。
図書館なんかに調べに行けないのが辛いなあ。
小説は続き記事からです。
解決の内容を忘れないうちに、書いちゃおうと思ったら
結構な文章量に(>_<)いや~喋ります、桑原崇!
しかも中身私だから……ごめんなさいm(__)m
一応調べて書いているのですが、色々怪しい内容の
羅列になることはお見逃しください。
個人的にもうちょっと突っ込んで知りたいようなことも
あるんですけどねー。
図書館なんかに調べに行けないのが辛いなあ。
小説は続き記事からです。
◆◆◆
「しかしミスター・ダテは病院に着いてすぐに
亡くなってしまいました」
ミシェルは手袋を脱ぐと、ラベンダーグレーのスーツの
ジャケットのポケットに、無造作にしまった。
「それは発作の原因の特定が遅れたからです。
恐らくミスター・ダテと一緒にいたと思われる、
ミス・アキヅキがその場にはいなかった。
ミスター・ダテの事情がまるで解らず手の施しようが
なかったと、病院では言っていました」
「シモン、毒草師を自称する君に聞きたいのだが、
ミスター・ダテから検出された強心配糖体、
オレアンドリンは莢竹桃に含まれる毒だったね?」
会場に集まった人々の視線が、一気に御名形史紋に集中した。
史紋はまるで臆さず、グラスに口をつけて口唇を湿らせると、答えた。
「そうだ。だが同じキョウチクトウ科のプルメリアに含まれる毒とは違う」
「オレアンドリンの致死量は…えーと」
「0.3mg/Kg」
「確か青酸カリを上回る筈。植物の毒性を無くす研究をしている
僕にとっては、恐るべき木だね」
「我々警察が解らないのはそこです。オレアンドリンはかなり微量で、
ミスター・ダテはこの毒で死に至った訳ではない、
と言う結果を病院の医師たちは報告しています」
「ミスター・ダテは服毒死した訳ではない」
「本当ですか?」
奈々は初めて顔を上げた。
「そう。奈々、これで君たちの容疑は晴れた。君は自由です」
ミシェルは優しく微笑んだ。
「じゃあ、何故オレアンドリンがミスター・ダテから検出されたのか、
ミスター・ダテは何によって、発作を起こしたのか」
「もしかして、アレルギーのアナフィラキシーショックでは」
奈々はバーにいた伊達の様子を思い出した。
鼻水や涙目は治まっていたようだが、気分が良さそうには見えなかった。
「奈々…君は」
「薬剤師なんです。アレルギーの患者さんは年々増えていますし、
食べ物や花粉だけではなく、薬物にアレルギーのある患者さんも
いらっしゃいます。アレルギーによる発作は患者さんによって様々で、
本当に急性ですとエピネフリンを注射出来なければ、
すぐに死に至ることもありますし、初め緩やかな出方をしていた
かと思えば、時間差で大きな発作を起こされる方もいると
聞いています」
奈々の言葉を史紋は会場の人々に向けて、英語に通訳する。
「ミスター・ダテは恐らく何かのアレルギーで亡くなったのです。
僕はキョウチクトウ科の植物のアレルギーではないかと
睨んでいますが」
「それは違う」
突然、入口の近くから、一人の背の高いアジア系の男性が
奈々たちの方に歩み寄ってきた。
黒のややアレンジデザインのタキシード、
ただし首もとは蝶ネクタイではなく、青いスカーフが巻かれていた。
「タタルさん!」
まるでハリウッドのスターのような髪型の――桑原崇がそこにいた。
尤も普段の崇しか知らない者が見たら、
きっと崇だと気付かないに違いない。
崇は大きな肘掛け椅子に座る奈々の前に立つと、
そっと右手で奈々の左手を取り、指先に口づけた。
「…迎えに来た」
流石の奈々も目の前の崇に驚きを隠せず、
ただ唖然と崇の成すままになっていた。
「フン、所有権の確認、と言った所ですか」
ミシェルは崇を見つめた。
後ろからそっと、ローズピンクのサテン地のパーティドレスを着た
彩子と、イタリアンブランドに見えなくもないスーツを来た小松崎、
そして奈々の知らない、ゴシック系のレースがふんだんに使われた
ブラウスを着た男性らしい人物が列に並んだ。
「この事件の根本は『マナ』にある」
「それは――ミスター・ダテはアレルギーの発作で死んだのではないと?」
「そうとも言うし、そうでもないとも言える」
崇はミシェルに比べるとかなり抑揚の少ない
――それでも発音だけはきっちりと正しい英語で、話し始めた。
「マナはこのハワイも含めた太平洋岸の島々に存在する、
一つの宗教と言えます。同じ太平洋岸にある日本も例外でなく、
日本の神道もマナに影響されてるとする研究者もいます」
「君はやはりミスター・ダテは殺害されたと言いたいのか?」
「彼は『マナ』に手を出して命を失ったんだ」
崇は先程資料を読み上げた警視を見て言った。
「すみませんが、ミス・秋月のフルネームを言って頂けませんか?」
「ミス・マナ・アキヅキ」
「まあ!」
「奈々、『愛』の字は『愛娘』など『マナ』と呼ぶこともある。
君に『アイ』だと言われていたから、最初伊達さんの言い残した
『マナ』の意味が解らなかった」
「…じゃあ秋月さんが?」
「そうとも言えるし…熊つ崎」
「はいよ。被害者の伊達は評判の悪い美術品ブローカーだった。
たまたま俺がパリで追い掛けてた盗品ばかりを扱う闇の美術品売買を
辿っていたら、このハワイで取り引きがあると聞いたんだ」
小松崎は手に持ったバーボンのロックを飲み干した。
「伊達も贋作や盗品を売買するんで有名だったらしいな。
昨年東北で相次いで小さな寺の仏像が盗まれる事件があったんだが、
それが何故かパリでオークションにかけられてた」
「ミスター・ダテがそれに関わってたんですか?」
「つーことになる」
小松崎の英語はかなり癖があるようで、ミシェルですら
聞きづらそうにしていた。
「秋月さんはお祖父さんが養蜂家で、『八多』と言う姓だったそうだ。
『ハタ』――秦氏は古代に新羅から渡ってきた一族だと言われている。
京都の太秦にある広隆寺は以前は蜂岡寺と呼ばれていて、
秦氏の信仰する寺だった。蜂岡―――養蜂にも関わりがあったようだ。
歴史上、日本の養蜂の始まりは百済の王子の豊璋だと言われているが…。
秋月さんのお祖父さんも代々続く、公家や武家に蜂蜜を納める養蜂家の
一族だったんだろう」
崇が話終えた所に、ボーイが銀盆にカクテルを乗せて来て、崇に一礼した。
「ターニングポイントをお持ちしました」
崇はほっそりした指でグラスを持ち上げる。
それは奈々が見たことのないカクテルだった。
「正に伊達さんにとって、秋月さんとの出会いはターニングポイントだった」
一口カクテルに口を付けると、崇はまた話を始めた。
「伊達さんは秋月さんが古い家系の一族だと知って、
自分の秘書にしたんじゃないだろうか。
秋月さんは仄かに伊達さんに思いを寄せていたようで、
その件をお祖父さんが月修寺の末寺にあたる寺の住職に、
檀家として相談していたそうだ。『孫が悪い男に捕まってる』と」
「月修寺…五十嵐先生ですか?それで彩子さんが此処に
いらっしゃるんですね」
「…伊達さんは秋月さんに家に伝わる家宝や
…ご神体を持ち出させたらしい」
「ゴシンタイ?」
ミシェルはその部分だけ日本語だった為、理解が出来なかったようで、
史紋を見た。
「キリスト教の十字架だ」
「成程」
「八多家から持ち出されたのは、小さな金銅の弥勒菩薩像と
銅鏡だったそうだ」
「もしかして、ホテルに滞在してる新興宗教が買おうとしていたのは
それですか?」
「その新興宗教、パリに支部があるだろ。伊達と繋がりがあるってことは…」
腕を組む小松崎を見て。ミシェルは小さく笑った。
「宗教団体は隠れ蓑だった訳ですね」
「お祖父さんは孫に諦めさせる為に一計を案じた」
「まさか――」
「そうだ、御名形くん」
「オレアンドリンの正体はそれか」
「そう言うことだ」
「ちょっと待て」
小松崎が手を上げて、史紋と崇の間に入った。
「頼むから他に解るようにきちんと『通訳』してくれ」
「蜂蜜だよ」
「まさか莢竹桃のですか」
ミシェルが声を上げた。
「八多さんは、伊達さんを殺害するつもりはなかったようですが」
「アカシアとのブレンドか」
史紋は呟いた。
「腐葉土すら一年は毒素が残ると言われている莢竹桃の蜜
――それをアカシアの蜂蜜に混ぜて秋月さんに持たせた」
崇はそっと奈々の側に立った。
奈々は少し、ほんの少しだったが心臓が高鳴るのが解った。
「伊達さんは様々なアレルギーの持ち主だったようだね。
通院していたのはシラカンバが主だったようだが、
どうやらゴムにもアレルギーがあったらしい。
奈々、ラテックス・フルーツ症候群について君は知っているか?」
「え?」
急に崇がこちらを見たので、心臓がはねあがってしまった。
いつもの崇とは違う。
結婚式の時は――周りが騒ぎ過ぎて、きちんと見ている
ゆとりがなかったけれど。
「あ、あ、あの、ゴムとナッツやフルーツの両方でアレルギーが
起こるって言うものですよね?」
「普段はナッツやフルーツでは、アレルギーの検査に
引っ掛からないのにね」
崇が肘掛けの部分に置いていた奈々の右手に、そっと触れた。
「伊達さんは自分がナッツにもアレルギーがあると
知らなかったのだろう。そして――これは憶測でしかないが、
恐らくアカシア、マメ科の木にもアレルギーがあったんじゃ
ないだろうか」
「マメ科?」
「初日に君とこのホテルのバーに行ったね」
「コアの木だな!」
ミシェルは真っ直ぐ崇を見た。
「ハワイの特産、コアの木はマメ科の植物だ。
そしてバーに来る前漢方薬と共に摂取した蜂蜜は、
毒性の強い莢竹桃も含まれてはいたが、ほとんどはアカシア、
ハリエンジュだろう。それに…」
「僕の管理する植物園には、アカシア属の植物はかなり沢山ある。
熱帯のものが多いんだ」
「伊達さんの身体は限界だっただろう。
微量ならアレルギーがあっても問題にならないが、
一度に大量に摂取したら。そして彼がバーで飲んでいたのが、
このカクテルだった」
「わたし、初めて見るカクテルです」
グラスの上に、橋を渡すように楊枝にグリーンのゼリーの
ようなものが刺さっている。
上部に生クリームで覆われ、カクテル自体は淡い琥珀色だ。
「このターニングポイントに使われているリキュールは、
ハワイ特産のマカデミアナッツで、作られているんです」
「…………それじゃあ」
「植物園内で取り引きの約束をしていた伊達さんは、
普段なら起きない筈のもので、アナフィラキシーショックを
起こしたんだ」
「では秋月さんは…」
「秋月愛…あきづきまなさんはこちらに居ますよ」
張りのある声が、ホールに響いた。
奈々は何処かで聞いたことのある声だと思った。
すると人の波が崩れ、間からまるで足音を感じさせず
凛とした佇まいの、尼僧――五十嵐玄鳥尼が、
一人の女性を連れて奈々の前にやって来た。
※アレルギーに関しては、我が家は家族中でアレルギー持ちです(^_^;)
通りすがりの方から話を聞く機会も、非常に多いので
そこから得た経験で書いています。
違うな~と思われる部分もあるかと思います。
ご了承くださいm(__)m
「しかしミスター・ダテは病院に着いてすぐに
亡くなってしまいました」
ミシェルは手袋を脱ぐと、ラベンダーグレーのスーツの
ジャケットのポケットに、無造作にしまった。
「それは発作の原因の特定が遅れたからです。
恐らくミスター・ダテと一緒にいたと思われる、
ミス・アキヅキがその場にはいなかった。
ミスター・ダテの事情がまるで解らず手の施しようが
なかったと、病院では言っていました」
「シモン、毒草師を自称する君に聞きたいのだが、
ミスター・ダテから検出された強心配糖体、
オレアンドリンは莢竹桃に含まれる毒だったね?」
会場に集まった人々の視線が、一気に御名形史紋に集中した。
史紋はまるで臆さず、グラスに口をつけて口唇を湿らせると、答えた。
「そうだ。だが同じキョウチクトウ科のプルメリアに含まれる毒とは違う」
「オレアンドリンの致死量は…えーと」
「0.3mg/Kg」
「確か青酸カリを上回る筈。植物の毒性を無くす研究をしている
僕にとっては、恐るべき木だね」
「我々警察が解らないのはそこです。オレアンドリンはかなり微量で、
ミスター・ダテはこの毒で死に至った訳ではない、
と言う結果を病院の医師たちは報告しています」
「ミスター・ダテは服毒死した訳ではない」
「本当ですか?」
奈々は初めて顔を上げた。
「そう。奈々、これで君たちの容疑は晴れた。君は自由です」
ミシェルは優しく微笑んだ。
「じゃあ、何故オレアンドリンがミスター・ダテから検出されたのか、
ミスター・ダテは何によって、発作を起こしたのか」
「もしかして、アレルギーのアナフィラキシーショックでは」
奈々はバーにいた伊達の様子を思い出した。
鼻水や涙目は治まっていたようだが、気分が良さそうには見えなかった。
「奈々…君は」
「薬剤師なんです。アレルギーの患者さんは年々増えていますし、
食べ物や花粉だけではなく、薬物にアレルギーのある患者さんも
いらっしゃいます。アレルギーによる発作は患者さんによって様々で、
本当に急性ですとエピネフリンを注射出来なければ、
すぐに死に至ることもありますし、初め緩やかな出方をしていた
かと思えば、時間差で大きな発作を起こされる方もいると
聞いています」
奈々の言葉を史紋は会場の人々に向けて、英語に通訳する。
「ミスター・ダテは恐らく何かのアレルギーで亡くなったのです。
僕はキョウチクトウ科の植物のアレルギーではないかと
睨んでいますが」
「それは違う」
突然、入口の近くから、一人の背の高いアジア系の男性が
奈々たちの方に歩み寄ってきた。
黒のややアレンジデザインのタキシード、
ただし首もとは蝶ネクタイではなく、青いスカーフが巻かれていた。
「タタルさん!」
まるでハリウッドのスターのような髪型の――桑原崇がそこにいた。
尤も普段の崇しか知らない者が見たら、
きっと崇だと気付かないに違いない。
崇は大きな肘掛け椅子に座る奈々の前に立つと、
そっと右手で奈々の左手を取り、指先に口づけた。
「…迎えに来た」
流石の奈々も目の前の崇に驚きを隠せず、
ただ唖然と崇の成すままになっていた。
「フン、所有権の確認、と言った所ですか」
ミシェルは崇を見つめた。
後ろからそっと、ローズピンクのサテン地のパーティドレスを着た
彩子と、イタリアンブランドに見えなくもないスーツを来た小松崎、
そして奈々の知らない、ゴシック系のレースがふんだんに使われた
ブラウスを着た男性らしい人物が列に並んだ。
「この事件の根本は『マナ』にある」
「それは――ミスター・ダテはアレルギーの発作で死んだのではないと?」
「そうとも言うし、そうでもないとも言える」
崇はミシェルに比べるとかなり抑揚の少ない
――それでも発音だけはきっちりと正しい英語で、話し始めた。
「マナはこのハワイも含めた太平洋岸の島々に存在する、
一つの宗教と言えます。同じ太平洋岸にある日本も例外でなく、
日本の神道もマナに影響されてるとする研究者もいます」
「君はやはりミスター・ダテは殺害されたと言いたいのか?」
「彼は『マナ』に手を出して命を失ったんだ」
崇は先程資料を読み上げた警視を見て言った。
「すみませんが、ミス・秋月のフルネームを言って頂けませんか?」
「ミス・マナ・アキヅキ」
「まあ!」
「奈々、『愛』の字は『愛娘』など『マナ』と呼ぶこともある。
君に『アイ』だと言われていたから、最初伊達さんの言い残した
『マナ』の意味が解らなかった」
「…じゃあ秋月さんが?」
「そうとも言えるし…熊つ崎」
「はいよ。被害者の伊達は評判の悪い美術品ブローカーだった。
たまたま俺がパリで追い掛けてた盗品ばかりを扱う闇の美術品売買を
辿っていたら、このハワイで取り引きがあると聞いたんだ」
小松崎は手に持ったバーボンのロックを飲み干した。
「伊達も贋作や盗品を売買するんで有名だったらしいな。
昨年東北で相次いで小さな寺の仏像が盗まれる事件があったんだが、
それが何故かパリでオークションにかけられてた」
「ミスター・ダテがそれに関わってたんですか?」
「つーことになる」
小松崎の英語はかなり癖があるようで、ミシェルですら
聞きづらそうにしていた。
「秋月さんはお祖父さんが養蜂家で、『八多』と言う姓だったそうだ。
『ハタ』――秦氏は古代に新羅から渡ってきた一族だと言われている。
京都の太秦にある広隆寺は以前は蜂岡寺と呼ばれていて、
秦氏の信仰する寺だった。蜂岡―――養蜂にも関わりがあったようだ。
歴史上、日本の養蜂の始まりは百済の王子の豊璋だと言われているが…。
秋月さんのお祖父さんも代々続く、公家や武家に蜂蜜を納める養蜂家の
一族だったんだろう」
崇が話終えた所に、ボーイが銀盆にカクテルを乗せて来て、崇に一礼した。
「ターニングポイントをお持ちしました」
崇はほっそりした指でグラスを持ち上げる。
それは奈々が見たことのないカクテルだった。
「正に伊達さんにとって、秋月さんとの出会いはターニングポイントだった」
一口カクテルに口を付けると、崇はまた話を始めた。
「伊達さんは秋月さんが古い家系の一族だと知って、
自分の秘書にしたんじゃないだろうか。
秋月さんは仄かに伊達さんに思いを寄せていたようで、
その件をお祖父さんが月修寺の末寺にあたる寺の住職に、
檀家として相談していたそうだ。『孫が悪い男に捕まってる』と」
「月修寺…五十嵐先生ですか?それで彩子さんが此処に
いらっしゃるんですね」
「…伊達さんは秋月さんに家に伝わる家宝や
…ご神体を持ち出させたらしい」
「ゴシンタイ?」
ミシェルはその部分だけ日本語だった為、理解が出来なかったようで、
史紋を見た。
「キリスト教の十字架だ」
「成程」
「八多家から持ち出されたのは、小さな金銅の弥勒菩薩像と
銅鏡だったそうだ」
「もしかして、ホテルに滞在してる新興宗教が買おうとしていたのは
それですか?」
「その新興宗教、パリに支部があるだろ。伊達と繋がりがあるってことは…」
腕を組む小松崎を見て。ミシェルは小さく笑った。
「宗教団体は隠れ蓑だった訳ですね」
「お祖父さんは孫に諦めさせる為に一計を案じた」
「まさか――」
「そうだ、御名形くん」
「オレアンドリンの正体はそれか」
「そう言うことだ」
「ちょっと待て」
小松崎が手を上げて、史紋と崇の間に入った。
「頼むから他に解るようにきちんと『通訳』してくれ」
「蜂蜜だよ」
「まさか莢竹桃のですか」
ミシェルが声を上げた。
「八多さんは、伊達さんを殺害するつもりはなかったようですが」
「アカシアとのブレンドか」
史紋は呟いた。
「腐葉土すら一年は毒素が残ると言われている莢竹桃の蜜
――それをアカシアの蜂蜜に混ぜて秋月さんに持たせた」
崇はそっと奈々の側に立った。
奈々は少し、ほんの少しだったが心臓が高鳴るのが解った。
「伊達さんは様々なアレルギーの持ち主だったようだね。
通院していたのはシラカンバが主だったようだが、
どうやらゴムにもアレルギーがあったらしい。
奈々、ラテックス・フルーツ症候群について君は知っているか?」
「え?」
急に崇がこちらを見たので、心臓がはねあがってしまった。
いつもの崇とは違う。
結婚式の時は――周りが騒ぎ過ぎて、きちんと見ている
ゆとりがなかったけれど。
「あ、あ、あの、ゴムとナッツやフルーツの両方でアレルギーが
起こるって言うものですよね?」
「普段はナッツやフルーツでは、アレルギーの検査に
引っ掛からないのにね」
崇が肘掛けの部分に置いていた奈々の右手に、そっと触れた。
「伊達さんは自分がナッツにもアレルギーがあると
知らなかったのだろう。そして――これは憶測でしかないが、
恐らくアカシア、マメ科の木にもアレルギーがあったんじゃ
ないだろうか」
「マメ科?」
「初日に君とこのホテルのバーに行ったね」
「コアの木だな!」
ミシェルは真っ直ぐ崇を見た。
「ハワイの特産、コアの木はマメ科の植物だ。
そしてバーに来る前漢方薬と共に摂取した蜂蜜は、
毒性の強い莢竹桃も含まれてはいたが、ほとんどはアカシア、
ハリエンジュだろう。それに…」
「僕の管理する植物園には、アカシア属の植物はかなり沢山ある。
熱帯のものが多いんだ」
「伊達さんの身体は限界だっただろう。
微量ならアレルギーがあっても問題にならないが、
一度に大量に摂取したら。そして彼がバーで飲んでいたのが、
このカクテルだった」
「わたし、初めて見るカクテルです」
グラスの上に、橋を渡すように楊枝にグリーンのゼリーの
ようなものが刺さっている。
上部に生クリームで覆われ、カクテル自体は淡い琥珀色だ。
「このターニングポイントに使われているリキュールは、
ハワイ特産のマカデミアナッツで、作られているんです」
「…………それじゃあ」
「植物園内で取り引きの約束をしていた伊達さんは、
普段なら起きない筈のもので、アナフィラキシーショックを
起こしたんだ」
「では秋月さんは…」
「秋月愛…あきづきまなさんはこちらに居ますよ」
張りのある声が、ホールに響いた。
奈々は何処かで聞いたことのある声だと思った。
すると人の波が崩れ、間からまるで足音を感じさせず
凛とした佇まいの、尼僧――五十嵐玄鳥尼が、
一人の女性を連れて奈々の前にやって来た。
※アレルギーに関しては、我が家は家族中でアレルギー持ちです(^_^;)
通りすがりの方から話を聞く機会も、非常に多いので
そこから得た経験で書いています。
違うな~と思われる部分もあるかと思います。
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職業:
主婦
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読書・お絵かき・料理
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
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