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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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ええと、一日2更新になりました(^_^;)

今日は『桑原崇をどつく会』の三頭会談がありまして、
皆さん前回の課題はクリアしたので、
今回のお題を、と言うことになりました。

なんと今回は結婚式!

私は一回描いちゃったので、今日は結婚式の前日を書いてみました。
マリッジブルーなんて言葉もありますが、
ふと考えると少し不安になったりする、結婚式前夜だったりします。
まあ、大体は準備で追われてて疲れちゃうのが、現実かなw



小説は続き記事からです。

拍手[12回]


◆◆◆


「解った。親父の――大伯父は急病で欠席。
 母さんの従姉は予定通り出席……大体なんで
 そんな遠戚まで来るんだ」
ため息をつきながら、電話を切る彼を見て、
わたしは思わず微笑んでしまいました。
あまり両親や兄弟――家族のことが今まで彼の口から
出たことがなかったので、わたしたちの結婚を機にこんな具合に
彼の家族や彼の今までのことが解るのが、
わたしにはとても嬉しく感じられます。
わたしも先程母に電話をかけ、何故か妹の沙織から
「お姉ちゃん、タタルさん今日そこにいるよね?
 明日までちゃんと見張っててね」
と言う、よく理由の解らない電話を貰い、何かと忙しいひとときを
過ごしました。
もう時計は十時を回っています。



明日はわたしたちの結婚式でした。
彼の趣味――と言うより一部とでも言ったらいいのか、
今までの彼を考えたら神前式だろうと誰もが考えたのですが、
突然彼の(本当に唐突な)希望で、横浜の随分と歴史のある
教会での式となり――半年前から準備を始め、
やっと明日、式に臨むことになったのです。
「全く、こう言うことにかかる無駄、に向ける気遣いを、
 自分が持ち合わせているとは思わなかった」
「流石に少し疲れましたね。明日は五時起きですし、休みましょうか?」
「冷蔵庫に、俺が長年担当した患者からの頂き物があるんだ」
「あ、あのワインですか?」
「ああ」
わたしはキッチンに向かうとワイングラス
(彼と一緒に暮らし始めた時、彼はこう言うグラス類は多々
持ち合わせていました)とワインを準備してリビングのテーブルに
向かいました。
「飲み過ぎはダメですよ」
微笑って言うと、彼は
「ワインのボトル一本くらい、君がいれば大した量じゃない」
なんて答えます。
「珍しいワインなんですか?」
「マルゴーの白なんて、滅多に手に入らないよ」
「……高い…んですよね」
「それ以前になかなか…彼女はフランスのボルドー出身なんだ。
 帰国した際に『お祝い』だからと言って、
 わざわざ購入してくれたらしい。まあ――もう五年は見てる患者だから」
「女性の方、ですか?」
彼から異性の話を聞くことは、滅多にありません。
「フランス語の大学教授として来日していてね。
 うちの薬局の近くに住んでる」
「…そうですか」
何となく釈然としない気持ちで、彼が注ぐグラスに煌めく
微かな薄翠の液体をわたしは眺めています。
「もう七十は越えてるが、随分と矍鑠としたご婦人だよ。
 うちに来るのも、健康法の一つに過ぎない」
「……………」
何だか要らぬ気を回したようで恥ずかしくなり、
俯いて彼からグラスを受け取りました。
「どうした?」
「な、な、なんでもありません」
「……………」
彼は先程のうんざりした様子はなくなり、
心持ち嬉しそうにグラスを手に取り、眺めて口唇に運びました。
「彼女から聞いたんだが――よくこのワインを表現するとき
 『花嫁のブーケ』のような、と表現されるらしい。
 赤はワインの女王として有名だから、女性的なんだろうな」
「ワインも色々あるんですね」
口に運ぶとすでに口唇の近くに微かな芳香が漂います。
「…成程」
「どうしたんですか?」
彼がじっと俯いて何事か考え始めたので、
わたしはそっと聞いてみました。
「いや……マダム・ランソンが…君を…」
瞬間的に彼と目が合い、彼は気まずげに口許を押さえました。
「…気になりますね」
わたしはわざと少し膨れ面をして見せます。
彼はため息をついて、答えました。
「マダム・ランソン…が彼女の名前なんだが、彼女が
 『きっとタカシほど動かないオトコが結婚しようと思う女性は、
 このワインのような女(ひと)に違いない』…と言ってワインを
 くれたんだ」
「……まあ」
流石に照れて、頬が赤くなるのが解りました。
「香りは華やかだけど、白だし辛口で切れ味もいい。
 確かに――理知的な女性を表しているかな。それでいて…」
「それでいて?」
「………あの老婦人にはめられたらしい」
「?」
「これじゃあ、まるで俺が君を…」
珍しく彼は動揺したように俯き、グラスの中身をいきなり
くいっと煽りました。
「タタルさん…!」
唖然として見ていました。彼はしばらく真っ直ぐ前にある
置き時計を見つめています。
「『結婚式の前の日が重要よ』か…」
わたしは一口ワインに口をつけました。
確かにとてもふくよかな香りが広がります。
自分はこんなに華やかじゃないかも…なんて思っていると、
彼が静かに呟きました。
「…明日やっとだ」
「え?」
「君が……俺の…」
「……の?」
急に抱き寄せられ、彼の囁く声だけが耳に飛び込んで来ました。
「俺だけのものになる」
「…………!」
「『飲んだ後独り占めしたいか、皆に見せたいと思うかはタカシ次第』
 と言われたんだ。俺は…」
気付くと間近に彼の瞳が、真っ直ぐにわたしを見ています。
「君が側にこうしているようになって、
 初めて『満ち足りる』と言う言葉の意味を知った」
「…あ………」
抱き寄せられ、そのまま深く彼の胸に引き込まれてしまいました。



そしてしばらくはそのままでした。
どれくらい時間が経ったでしょうか?カチコチと時計の針の音だけが
響いています。
わたしは身動ぎも出来ず、じっと彼の胸元に顔を埋め、
彼の温もりを間近に感じていました。
ぽつんと額にかすめるような彼の口唇が、落ちてきました。
「タタルさん…明日」
「そうだな。シャワーを浴びて休もう」
彼は小さく微笑って、わたしを離すと立ち上がりました。
わたしは何故か彼の…熱を帯びた手のひらや口唇が忘れられず、
立ち上がってからもぼんやりしてしまいました。



ベッドに入ると先にシャワーを浴びていた彼は、
もうベッドで小さな灯りを点けて読書中でした。
こうして一緒に暮らす以前でしたら、結婚式の前夜にまで読書する
彼に呆れたかもしれません。
でも今では、彼がもしかしたら彼なりに、緊張を解く為にしていること
ではないかとも思うので、そっと見つめるだけにしています。
「おやすみ…」
「奈々」
「はい?」
「君は…悔いはないか?」
「え?何がです?」
「いや、いいんだ」
わたしはきょとんとして、彼を見ました。
「……時々怖くなる。君とこうしていると」
「………」
「それは気の迷いに過ぎないかもしれないが、
 あまりにも望んだものが手の内にあるから」
「………そんな」
先程の続きなのでしょうか?彼にしては珍しいことですが、
何か思い迷う…そんな感じもしました。
今日までわたしも色々考えなかったと言ったら嘘になりますが、
わたしは…わたしは彼に出会った時に何かがカチリとはまって
しまったように、多分この今の場所から抜け去ることなど、
あまり思いもしなかったのです。
「これまで…誰かの側にいたいと感じて、
 それが叶ったことなどなかった。だから――」
彼は後ろを向いて、ベッドサイドの灯りを消しました。
「おやすみ、奈々」
「はい、おやすみなさい。タタルさん」




翌朝。
いえ、まだ夜は明けていません。
薄暗い部屋の中に、五回は連続してチャイムの音が、
かなりうるさく響きました。
慌てて起き上がり、玄関のドアを開けると――
「おはよう、お姉ちゃん!」
妹の沙織が、自分は既に着替えた様子でいます。
「タタルさんは…ちょっと上がるね。非常事態だから」
沙織はずんずん部屋の奥に行き、ソファの側に来ていた彼の腕を
がっちり掴むと笑顔で言いました。
「午後までにはステキなプレゼントを、教会にお届けするからね」
「…………!」
「…………?」
彼は引きずられるように、パジャマのまま部屋を出ていきました。
玄関を出る瞬間、彼が小さく呟くのが聞こえました。
「…やっぱり君を得るのは、簡単にはいかないようだ」
その声は沙織には全く届いていないようで、
沙織は元気に手を振ると、玄関から彼を連れて行ってしまいました。



そして。
あまりにもの彼の変わり様に驚いた人の多かった結婚式。
「――まあ、一種の形式だと思えばいいさ。
 これで君が手に入るのだと思えば」
ため息とともに吐き出された言葉。
「欲張れば、代償も大きいと言うことだ」
それは声にならない言葉だったかもしれませんが、
わたしはなんだか嬉しくなり、思わずくすりと微笑いました。





※結婚式の模様は『Can You Celebrate? ~Side A~』をどうぞ(*^_^*)
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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