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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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うひゃ~;;
もう本の入稿終わってる予定だったんですが、データー入稿ゆえに
見本をプリントしてつけねばならず、そして残念なことに
プリントして4Pでインク切れ。
しかも購入して10年近く経つプリンターの為、カートリッジの購入が
困難(>_<)
主人が明日お昼休みに大型電気店まで行ってくれるようです。
ううっ、本当に今回は主人の助けがなくば前に進めませんでした。
本当にありがとうm(__)m


えーと、それで時間が空いたという訳ではなかったんですが
兼ねて懸案の戸隠旅行を書いてみました。
本当は漫画描きたいんですが、ちと本の入稿終わるまでは難しそうです。

まずはQEDにおける、『口の減らない』頂上対決その1を続き記事からどうぞ

拍手[3回]





秋の最後の連休を一日多く取れないか、その交渉の為だった。

彼女の勤めるホワイト薬局は、自分の勤める萬治漢方からはやや歩く。
薬局が閉められる時間に間に合わせるには、自分の勤務先の閉店作業を
終わらせたら、速やかに、いや、駆け足で目的地に向かわねばならない。
そこで、彼女にはなるべくそちらの閉店作業をゆっくりやるように、
今朝入れ知恵したのだが、果たして上手くいっているものか。




彼女の薬局の薬局長、外嶋一郎氏は自分にとっても古い知り合いだった。
大学の――――直接のではないものの、先輩にもあたり、付き合いも長いから、
お互いの思考パターンは読めている。
その外嶋さんが、彼女の言うには今回ばかりは休みをくれないのではないかと
――――懸念していたのは昨夜のことだった。

「なんでも初めて来日するミュージカルがあるとか」
「ミュージカル?外嶋さんの守備範囲はオーケストラとバレエ、オペラで、
 皆クラシックだった筈だ」
「最近ご覧になるようになったみたいですよ」
彼女は小さく苦笑いしていた。
「それで連休前の土曜日に席が取れそうだと」
「土曜日なら丸一日の業務ではないのだから、外嶋さん一人で業務をこなしても
 公演には間に合うんじゃないか?大抵夜だろう」
「そうなんですけど……」
一日その話題で目一杯だった上司の相手をした彼女は、それで土曜日休みたい
とは言いにくくなってしまったらしい。
確かに趣味に心が飛んでしまった彼を、現実の話題に引き戻すのが難しいのは
自分も経験していた。
そして彼の場合、得てしてその言動は緻密な計算によることも。

相手に強引に出られると素直に頷いてしまう彼女では、あの状態の外嶋さんを
説得どころか、問題を提起することすら難しいだろう。

それ故、久しぶりに自分は彼女の職場のホワイト薬局に向かっているのである。




「民族の移動はある意味自然の摂理だからね。それ故外来民族の流入は
 この島国でも常に行われて来た訳だ」
業務にはなんの関係もない会話を、滔々と語り続ける薬局長の声が聞こえた。
まさに彼の場合は語り、ではなく騙りだ。
しかもあながち嘘八百ではないところが、油断出来ない。

「あれ?桑原さん!」
事務アシスタントの女性がこちらを向いた。
彼女と違い、この外嶋さんのはとこに当たる女性は早々にこの会話から
離れた立ち位置を確保し、自分の仕事を終わらせることに集中していたらしい。
中々賢いやり方だ。

「今日は長くなりそうですよ。珍しく奈々さんがうっかりな質問をして。
 稲の品種改良の歴史から今、民族大移動の話になって、日本人の先祖は何ぞや
 とか言う話題に」
「ああ…」
予想は出来ていた。彼女に閉店業務を引き延ばすように、いくつか方法を
入れ知恵したのは自分なのだから。


「こんにちは」
調剤室を覗き込んだ。
「………おや、桑原じゃないか。奈々くんが遅いから珍しく迎えに来たか」
黒ぶち眼鏡をかけ直して、彼はこちらを見た。
その後ろで彼女が心からホッとした表情をした。
―――――その表情にはまだ早い。
これからが、闘い?だ。

「ええ、でもちょっとお話したいこともありまして」
「来週の連休前の土曜日のことなら、ゆずらないぞ」
―――――読まれてたか。
「そう言って夏休みも、貴方の都合の方を優先したんですよね?」
婚約した最初の夏休みだったと言うのに、彼女が休めたのは、
自分に滅多にない海外出張が入った時だった。
だからこの連休は二人で取る初めての、長めの休みになる。
上手くもう一日休めれば――――だが。


「今まで散々甘やかして来たんだ。春に伊勢に行った時だって、
 急な申し出でも受けただろう?あれがあったから今の君たちがある。違うか?」
「ええ、有り難いと思っています。死者が必ず北枕であるのと同じくらい、
 毎日貴方には足を向けて寝てません」
「不吉な喩え方をするな。とにかく土曜日は譲れない。奈々くんがいると
 いないでは、業務の進み方が全く違う。万が一のことがあって、
 開演時間に遅れたくないからね」
「……外嶋さん。そんな風に言って、今年はクリスマスも休みを取ろうとか
 思ってませんか?」
「…………何故そう思うんだね?」
「今年はパリオペラ座のバレエ団が、クリスマス公演を日本ですると聞きました。
 しかも東京と大阪では公演内容が違うことも。貴方が両方の公演のチケットを
 既に押さえていることは、容易に想像がつきます。………取引きしませんか。
 クリスマスは譲ります。それにミュージカルはまだ見始めたばかりでしょう。
 クリスマスのバレエの公演よりは重要度は低いはず」
「ふん……」
彼はくいっと顎をしゃくってこちらを見た。
「桑原の口から『クリスマス』なんて言葉が出るとはね。いつから宗旨変えした
 のかは知らないが、流石に恋人が出来たともなると人並みに、
 世間のイベントに参加したくなったか」
「……俺はいいんです。それに宗旨も何も、クリスチャンだからクリスマスを
 二人で過ごすと言う訳でもないでしょう、この国の場合は。
 俺としては彼女の気持ちの問題です」
ここまで話してふと気付くと、目の前の人物がニヤリと笑った。
横に視線を移動すると真っ赤になってこちらを見る彼女、
それをつつく、いつの間にか調剤室に移動してきたアシスタントの女性。



………………やられた。



全く出会いからしてそうだったが、この人生の大先輩とやらは
油断のならない人物だった。


「ええ、そうです。『今回は』奈々くんの為に休みを取りたいんです」
俯いてそう言うしかなかった。
「構わないよ」
あっさり答えが返ってきた。
「ミュージカルの公演は火曜日もあるからね。こちらは平日だから、
 当日券もある」
「…………………」

今までの会話はわざとだったのか。
と、言うよりもしかしたら、自分がこうしてここまで出向いていること自体、
彼の策略なのかもしれなかった。
いや、策略だ。

「それで何処に行くんだね」
何事もなかったように彼は彼女の方を向いた。
「信州です。あの、戸隠に」
彼女は心から嬉しそうに微笑んで、答えた。
「戸隠?それではやっぱりこの男の趣味なんじゃないかね」
「いいえ、違います。昨年からの約束で。タタルさんが覚えていて下さって」
「それは、忘れないだろうさ」
ちらりとこちらを見ながら彼は呟いた。
「まあ、いい。それに来年は結婚式や新婚旅行で、奈々くんも呑気に
 プライベートの旅行の為に休みが取れるのは、これが最後になるかも
 しれないしな。ゆっくりしてくるといい」
「すみません、ありがとうございます」
彼女は丁寧にお辞儀をした。




秋の終わり、と言うより冬の初めに近い冷たい空気の中、二人で家路についた。
途中、湯豆腐にするからと彼女が言うので、スーパーに立ち寄る。
店の青果コーナーに並ぶ、紅い林檎の山を見て、彼女に言った。
「戸隠には一泊だけして、善光寺や小布施にも寄ろうと思うんだが」
「まあ、ずいぶん移動が大変になりませんか?」
「一応レンタカーを借りるつもりでいる」
え、と彼女の動きが止まった。
「運転………なさるんですか?」
「久しぶりにはなるがね。何とかなるだろう」
目的地は電車の便の悪い所が多い。車の方が移動コストが低い。
「………………」
「信州でもう一泊するから、飲むのは夜だけだ。
 ………君を連れて行きたい宿がある。そこは車がないと難しい」
彼女は買い物籠を両手で提げたまま、こちらをじっと見上げた。
大きな瞳が更に大きく見える。

「タタルさんが旅行先でお酒も飲まずに運転して、
 連れて行って下さる………どんな所か楽しみです」
その時の彼女は殊更にっこりと、手で思わず触れたくなるような笑顔で言った。


それにしても、こんなことでそこまで喜ばれてしまう自分は、
一体今まで彼女にどう認識されているのか?
一度聞いてみたいような気もするが、あえて自分を不利にすることもないので、
やはり黙っていることにした。








※外嶋さんが出てくると、途端にセコくなるウチのタタルさん(笑)
コメディに始まってますが、一応シリアスのつもりで書いてます。
続きます(^_^;)
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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