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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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コメントのお返事は次回にさせて頂きます。
長女を実家で預かって貰ってる間(風邪がなかなか完治しなかった為)、
毒草師にもぱらっと目を通しました。
そして大笑い。
1冊目なんですが、史紋さんが西田君に伊勢物語と古今和歌集を
レクチャーする箇所で、古今集の和歌が数珠つながりになっていることを
話すのですが……。
『他にも繋がってることは証明できるけど、今が時間がないからしない。
そんなことは暇な誰かに任せておけばいい』と言うようなことを言ってるんですが
………いましたよね、暇な誰か。繋がってること証明してた人。
どっかの漢方薬剤師してる方。

河童伝説でも奈々ちゃんの携帯で話していた時、史紋さんは
蜻蛉日記の巻末歌集にある和歌を挙げて『こんな訳で河童の謎は深いから
大変だぞ』と忠告するのだけど、タタルさんのお返事は『河童の声が聴きたい、
いやむしろ聞こえるから聞かざるを得ない』(←スッゴイ意訳です。真面目に
読んじゃダメですよ)とお答え。それを聞いた史紋さんはため息をついて
『それならば仕方ない』と言ってるのですが、このため息には
あからさまに『君、暇だね』と言うニュアンスが含まれていたのかも(爆)
と言うことに気が付きました。
すみません、ななめ読みどころか、逆立ちして読んでますね、わたし。


う…小説はシリアスらしいのに、こんな話題で始めてしまった。
続き記事からです。

拍手[9回]





善光寺を回って、小布施の酒蔵に寄ると、上信越道を佐久に向かう頃には
午後の陽射しも大分傾いた頃だった。
「小布施、聞いていたよりなんだか可愛らしい町でしたね。
 林檎の畑があちこちにあって。きっと花の時期や実のなる時期はステキでしょうね」
彼女は嬉しそうだった。
自分としては、こちらの方面に足を伸ばしたら必ず寄る酒蔵に、
日本酒を買いに行ったに過ぎない訳だが、確かに女性の散策向けの町ではあるだろう。
「来年はそうしよう」
「………………タタルさん、変わりましたね」
「え?」
ハンドルを握ったまま、横目で彼女を見ると小首を傾げて彼女は続けた。
「以前だったら一つでも多く神社やお寺を回ろうと考えていたでしょう」
「…………いつもではない」

この場に悪友がいたら確実にくしゃみだが、今はこう答えるしかない。

「そうなんですか?でも今回は違いますね。ずいぶんゆっくりしている
 感じもしますし、わたしに合わせて下さってますか?」
「戸隠はもともと君を連れて行く為にした約束だ。
 俺は学生時代に二度程行っているし、それに……」
歴史の狭間や深淵以外に、今は自分が見たい、知りたいものが他にあったからだ。
そしてそれは言葉にするまでもないことだった。
「タタルさんが無理なさってないなら、いいです」
彼女は微笑んだ。
「無理なんかする気もない」

彼女が自分から何かを感じ取ろうとしているのが解った。
だが―――――今は困る。
そして何故『困る』のか、自分で自分にわからないまま、
その後はお互いに沈黙が続いた。





佐久ICを下りてから、国道十八号線を走り高峰高原ホテルに着いたのは、
日の落ちる寸前の時間だった。思ったより山道を登るカーブを運転するのに
難儀したのだ。
未だ活火山の浅間山の麓にあり、標高2000メートル、八ヶ岳を遥かに臨む
絶景に建てられたホテルだった。
昼間なら下界に向けて開けた視界が自分たちを迎えたはずだ。



「温泉素晴らしかったです。きっと明日の朝入ると景色よく見えるんでしょうね」
高い所にあり、設備は整わないものの、このホテルは温泉がついていた。
「お食事も美味しかったし………そう言えばタタルさん、
 あまり飲んでらっしゃいませんでしたね」
「これからだからな」
「え?」
「君に見せたいのは、これからだ。ダウンジャケットは持って来ただろう?」
「ええ、そう仰ってましたから。これからどこか出掛けるんですか?」
「少しそこまで歩くだけだがね。寒さが半端ではないから、ラウンジで
 グリューワインでも飲んでから行こう」
彼女は目を丸くしたが、すぐに鞄から東京ではまだ着るには早い
ダウンジャケットを取り出した。


連休とは言えこんな季節だ。ホテルに宿泊客は少なく、
自分たち以外には5、6組だろうか。

地元産のワインで作られた日本語で言えばホットワイン、グリューワインを飲むと、
二人で外に出た。
山の上とて材料もないだろうから、ワインを温めるだけでいいと言ったのに、
係員が気をきかせてくれたのか、ワインの湯気からはシナモンやナツメグ、
グローヴなどのスパイスの香りがした。飲んでみると蜂蜜の味もする。
彼女はそれを頬を染めて、美味しそうに飲んでいた。
その表情(かお)を見ていれば、今日ここまで運転してきた疲れなど、
どうでもよくなってしまう。





ホテルから少し歩き、灯りから遠ざかると、自分が望んでいた景色が広がる。

手に届く星々。
降り注ぐような銀河。
白銀に瞬く星が、遮るもののない虚空(そら)全てに広がっている。
彼女はしばらく声もないまま、夜空を見上げていた。
澄んだ瞳(め)に星が映る。

辺りは音もなかった。
このあたりの木々はすでに葉を落としきっていて、枯れ葉の落ちる音すらしない。
時折凍るような冷たさの風が頬をかすめていく。

「……タタルさんが見せたいものって、星、だったんですか」
彼女は星を見上げたまま言った。
「南を見てごらん。オリオン座の三つ星が見えるね。
 そのオリオンの左腕にあたる先に………」
「プレアデス星団?」
「そうだ。日本語では昴だな」
「……………小さいのにあんなに輝いてますね。蒼くて………とても綺麗」
「昴は雨降り星などとも言われたが、古来から愛されて来た星だ。
 枕草子でも『星は』と問い、一番に昴を挙げている。西洋では製鉄にも
 関わりが深いらしい。
 山を歩く産鉄民にとっては、鉄を探す移動の為の目安だっただろう。
 それは海士たちがやはり星を目印にしたのと同じくね」
「今でもこんなに見えるならば、空気が汚れていなかった昔ならば、
 はっきりと見えたでしょうね」



白い呼気が彼女の口から零れた。
「少し驚きました。タタルさんがこんな神社やお寺に関わりのないところを
 ご存じなのに」
「外嶋さんから聞いたんだ。ずっと以前にね」
「一人でいらっしゃってたんですか?」
「ここほど、オリオン座の三つ星がよく見える所はないから」

それはたった一つの鍵だ。
過去に亡くした人への悔悟の念を、思い起こさせるものだった。
まだあの人を失った海まで行くことは出来てはいなかった。
それにどの辺りに沈んでいるのかも、自分は知らない。
ただたった一つの縁(よすが)として、あの星を見上げる時思い知るのだ。
自分にはまだ失くしたくないものがあることに。



遠く、星の更に奥に広がる夜空を見つめる自分を、彼女が見つめていたことに気付いた。

「その方とも星を見たんですね……」
彼女もまた夜空を見て、彼女にしては低い深い声で呟いた。




「奈々」
後ろから抱き締めた。
多分彼女が考えていたより、強く抱き締めたからだろう。
驚いた表情で振り向いた。

「君を失いたくない」
「タタ……」
「君が欲しい………全て」
「………………」
自分はこれ以上何を望むと言うのだろう。
婚約し共に暮らし、わざわざ言葉にするまでもないくらい、彼女は自分と共にあった。
むしろ彼女こそ不安ではなかったか。
自分の過去に、ぱっくりと口を開けた暗闇があることを僅かでも知っているのだから。


彼女は身動ぎ一つしなかった。ただ自分の指にそっと手を添えた。
それで初めて、自分の手が微かに震えていたことを知った。
腕をそっとほどくと、彼女をこちらに向けた。
ホテルの灯りと降るような星明かりでも表情は、よく見えなかった。


彼女は少し泣いていたかもしれない。


だからこれが証とばかりに抱き寄せて口付けた。
呼吸(いき)がつまるようなキスだ。
彼女は初め逃れようと、手に力を込めたが
――――すぐに悟って受け入れ、直(じき)に口唇を開いた。
絡まりあう呼吸も熱もお互い、奪い合うように、それとも与え合うように。




部屋に戻るとベッドに腰掛け、彼女は部屋の暖かさにホッとしたようだった。
やはり泣いていたのだ。目の縁に僅かな涙の跡。

隣に座り、そっとそれに指で触れた。

「君に話してしまいたいとも思う。だが話せないと思う自分もいる」
彼女はそっと肩に凭れた。髪がさらりと頬にかかり、
微かに彼女の匂いが鼻をかすめる。
「わたしは……前にもお話した通りです。タタルさんが話したいと思う時を待ちます。
 …………でも」
彼女は視線を足下に落とした。
「タタルさんが苦しいとわたしも苦しいです」



もう一度口付けた。
今度は優しく。
なるべく傷付けないように。

彼女はくったりと体を預けていた。

「自分で考えている程、強くはなれないものだな。
 伊勢でも………君にあんな風に告げるつもりはなかった。なのに」
「タタルさん、わたしを助けようと必死だったからですよ。それに……」
伏せられた長い睫毛が微かに震えている。
「誰にでも――――忘れるのが難しいことの一つや二つはあることですし、
 それにタタルさんも仰ってたじゃないですか。
 現在は過去の延長上にあって決して途切れている訳じゃないって。
 だから、わたしの大好きなタタルさんも、その過去があったからこそ、
 今ここにいるんだと思いますから」
彼女らしい真摯な答えだった。
「もう一度言って貰ってもいいかな」
「え?だから、わたしの大好きな…………」


彼女ははたと口を閉ざし、見上げた。
「ま、真面目に話してるのに……!」
「君はなかなか言葉では、語らないからね」
腰を抱いて、彼女をふわりとベッドに寝かせた。
再び口付ける寸前に、耳許で囁いた。

「満たされる、と言うことを君に触れて初めて知った。………それは本当だ」

彼女は、彼女にしか出来ない慈しむようなあの笑顔でこちらを見た。
「タタルさんがわたしに嘘を言ったことなんか、ないですよ。………あ、でも」
小さく笑った。
「からかわれたことは沢山ありますけど」
「からかいたくなるような表情(かお)をする、君が悪いんだ」

自然に口唇が重なり、深く、どちらともなく吐息が漏れる。




彼女を得て、満たされることを初めて知った。


それ故、自分が渇えていたことも。


その『渇き』が彼女を傷付け、失うことにならないかと言う不安も。




翌朝は早く目覚めた。彼女も同じだった。
昨夜カーテンを引くのを忘れた窓から、遮るもののない朝の光。
昨夜の迷いが嘘のようだった。





「月曜からは忙しくなります。月末も近いから薬歴簿の整理がありますし、
 在庫の確認もあるし―――――火曜日は外嶋さんいらっしゃらないし」
関越道を抜け外環から、首都高に入る頃にはやはりもう夕方に差し掛かっていた。
彼女は近付く現実の世界に小さくため息を付いたが、それもまた嬉しそうにも見えた。
日々の繰り返しが彼女を満たしていた。




夕闇が瑠璃色から漆黒に変わる頃、フロントグラスから宵の明星が見えた。
昨夜彼女を抱いて見た迷いの多い夢から零れ落ちた、
星屑の欠片が一際輝いているようにも覚えた。




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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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