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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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四月も末、客も疎らな木曜日。カル・デ・サックの店内には八重桜の枝が、華やかに
生けられている。まるで今日の主役は自分とでも言うように。

マスター(以下マ):今夜はお一人ですか?
小松崎(以下小):…ん?まあな。さすがにもう一緒に来るのは、野暮なんで。
マ:…成程。それはおめでとうございますと申し上げても、よろしいでしょうか?
小:うん、まあ、めでたいかな。大学時代からだと足かけ13年だ。長かった…。
マ:そうでしたか。小松崎様も同じ大学でいらっしゃいましたね。
小:ああ、アイツと会って14年か?長い付き合いだよな。
  とにかく、うまく纏まって良かったよ。
  途中どうなるかと、ハラハラした時期もあったが。
  なにせあのヤローが、はっきりしなかったからな。
マ:何事も縁と言うものが、ございますからね。
  でもあの方と…棚旗様には確実に縁があったように思いますが。
小:へえ、そうかな。
マ:いつもこちらには一人でお出ででしたからね。だからあの方が棚旗様を
  連れておいでになった時は、失礼ながら驚いたのですよ。
小:女連れでは、絶対来そうにないもんなぁ。
マ:…すぐにわかりましたね。ずいぶん棚旗様には気を許してらっしゃるのだなぁと。
小:そう…かな?
マ:そうですよ。その上初めから棚旗様の飲まれるカクテルは、あの方が決めて
  らっしゃいましたからね。
小:そうだったかなあ。奈々ちゃんはよく…オレンジの…そう、ミモザを飲んでた気が
  するけど。
マ:棚旗様が選ばれれば、そうでしたね。後ホワイトレディ。薬剤師と伺ってますから、
  白衣を着る方には、良い選択でしょうね。
小:ははぁ、成程。天然な奈々ちゃんらしいなぁ。
マ:最初こちらにいらっしゃった時は、多分棚旗様のご注文ではなかったのではないかと
  思うので、はっきり覚えています。
  あの方と同じギムレットで。
小:え~!それってアイツの注文なんだろうなぁ。女の子相手に何考えてるんだか。
マ:(笑って)そうですね。それに男性がお連れの女性の、カクテルを選ぶと言う行為は、
  それなりの意味があると、私は思っています。
小:ほう。
マ:一度限りではございませんでしたよ。いつぞやは…そう、シャーロック・ホームズ
  の話題でずいぶん話し込んでおいでの時に、こちらで考えさせて頂いた、カクテルを
  出させて頂きました。
  そのカクテルも大分前に、私がアイデアに詰まっておりました時に、あの方にヒントを
  頂いたものでした。
小:へぇ~。
マ:…小松崎様、あえて失礼を承知で言うのですが、あの方はあの方なりに気持ちを
  尽くしておいででしたよ。
小:そうかな?
マ:次々と棚旗様の飲まれるカクテルを決めていらしたのは、あの方なりに棚旗様を
  他からは遠ざけておきたいと言う、独占欲の表れのようにも、感じられましたからね。
小:酒で壁を作ってると。
マ:そういうことでしょうか。
小:…………全く、わかりづらいヤツだな。それじゃ、奈々ちゃんはさっぱり
  わからなかっただろうな。
マ:そのようでしたね(笑)でももう一つ理由があるんですよ。
小:?
マ:棚旗様は美味しいと感じた時は、素直に表情に出される方ですからね。
小:うん、確かに。見てるこっちまで、嬉しくなるからな。
マ:あの方も同じように感じておいでのようでした。
  棚旗様が、あの方の選んだカクテルをそれは美味しそうに飲まれると、あの方も大変
  嬉しそうでいらっしゃいました。勿論表情には出てはいませんでしたけど。
小:へえ~、成程ね。知らぬは当人ばかりだったと言う訳だ。
マ:頭の良いお二人でしたから、灯台もと暗しになられたのでしょうか。

マスターはクスリと笑って、グラスを置くと、小松崎を見た。

小:まあ、手遅れにならないうちに気付けて良かったよな、お互いに。

小松崎も手元のグラスを一気に干す。

スローなBGMが耳を掠めて、次第に少し酔いも感じたようだった。

小:もう一杯貰えるかな。今夜はこれで終いにしよう。
マ:かしこまりました。






※つけたし
マ:そう言えば、先月お二人がお出でになった時、少々面白いことがございました。
小:へえ、どんな?
マ:棚旗様がブルームーンをご注文なさいまして。
小:ブルームーン?
マ:ええ、パルフェタムールと言うリキュールを使うのですが、それには永遠の愛
  と言う意味がございます。
小:(赤くなる)…おお、それは奈々ちゃん、頑張ったじゃねえか。
マ:あの方は複雑な表情をなさってましたね~
小:それはまた何で?
マ:ブルームーンには『叶わぬ恋』とか『貴方とお付き合いしたくありません』とか
  そんな意味合いも、ございますので。
小:ぶはっ
  それは…まあ、あの二人らしいな(笑)






すみません; ;挿絵どう見ても喫茶店。喫茶店は昔しょっちゅう描いたけど、バーは
資料が見当たりませんでした。一度資料用の本棚を、整理せねばなるまい…^^;
やっぱりしゃべり口調も、絵も熊さんのが描きやす~い。
ブルームーンに関してはRossolisのsuze様や税込44円の黒猫様が、超ヒットする
状態でブログに絵をアップしてらっしゃいます^^

拍手[6回]

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竹取伝説、68Pから131Pの間の出来事です。
竹取伝説未読の方はご注意ください。
バレンタインデーからホワイトデーの間の期間を想定しています。
またしてもシナリオ形式でお送りします。
まあ、こうだったらいいなぁ~という妄想なんで^^;
 
 




夜、うっかり電話に気付き、受話器を取る。
なんと外嶋さんだった。
 

タ:なんです?こんな時間に電話なんか寄越して
外:今度の勉強会は桑原が担当だと聞いたからな
タ:迎えに来いって言うんですか?いい年して
外:…桑原、お前奈々くんからチョコレート届いたろう?
タ:……受けとりましたよ。手作りの。
外:ふうん、僕も貰ってるがね(死体発見の見舞い代わりに)、市販品だったな~
タ:!
  …………何が言いたいんですか?
外:いや、ヘビースモーカーのお前に、奈々くんの作ったチョコレートの、
  本当の味なんかわかったのかねと思って。
タ:………
外:喫煙は味蕾の本来持っている機能をかなり失わせるからね、
  つまり食べ物本来の味が分からなくなってる。
  正直君にはそのチョコレートを味わう資格もないと思うのだが、
  全く奈々くんも無駄なことをするな
タ:…………
外:だいたい女性の前で喫煙すると言うこと事態、感心せんがね。
  奈々くんだって近い将来、結婚だって出産だってするつもりだろうから。
タ:……それで一体何が言いたいんですか、外嶋さん。
外:さてね。じゃあ勉強会の日は6時までには、うちの薬局まで来いよ。
 
電話がしゃりと切れる
 
タ:(ムカ)
習慣で側にある煙草を手に取る。
口にくわえようとして、ストップする崇。カレンダー見ると今日は2月24日。

タ:明日は菅原道真の命日……俺の誕生日か


勉強会後、奈々と食事に行く 

奈:今日は煙草吸われないんですか?どうしたんですか?喉の具合でも?
タ:ああ、煙草は止めたんだ(…こういうことだったか、外嶋さんめ。謀られた)
 
という訳でした^^; このときの外嶋さんは明らかに、タタルさんを嵌めて奈々ちゃんと
勉強会に行かせています。
ここ読んだ時から、『なんで外嶋さんは、やたらタタルさんと奈々ちゃんをくっつけようと
するのかな?』と言う疑問を持ちました。
しかも結構奈々ちゃんの前ではタタルさんを立ててるしね。
タタルさんも、外嶋さんが仕組んでわざと用事(オペラ)が入ったふりをしたこと気づいてます。
『外嶋さんのことだからね…』
しかし、伊勢~読んだ後この時も自分の気持ちに気づかなかったのかよ!!って突っ込み
たくはなりましたが(笑)
謀られた仕返しにか、犯罪者とキタキツネと外嶋さんが横並びにされております^^;

外嶋さんの煙草に関する薀蓄?は神器封殺で美緒ちゃんに話していた言葉です。

拍手[7回]

今日は表参道まで出張ろうと思ってたんですが、連日続く
チビすけの夜泣きで(主にそれを宥めながら、ブログを更新してる
ことが多いです^^;)、腰は痛いわ眠いわで、諦めました。

で、眠いとろくな事考えないっていうか、
今朝先生のエッセイ見て、今までもやもやっと考えてたことがまとまって
きたんで、ネームに起こしてみました。
ところが書いてみたら、30越えた男と50近い男が二人で喫茶店で、
喋ってるだけという、世にも地味な絵面になったため、シナリオ形式、
外嶋さんとタタルさんの関係、出会ったキッカケに関する考察?という
形でお送りすることにしました。

例のごとく妄想たくましい部分がほとんどですので、こんな考えもアリみたいに
生ぬるい目で見ていただけたら、嬉しく思います。


祐天寺駅前の喫茶店。
外嶋と崇、向かい合わせで座っている。
 
 
外:そうか、(やっと)婚約か。
タ:おかげさまで
外:全くおかげさまだな。この件に関しては多大な功労がある。
  いくらでも感謝してくれても構わないよ。
タ:なんです。度々彼女を研修や旅行に出したことですか?
外:それもある
タ:他に何があると言うんです?
外:奈々くんには悪いと思ったのだが、数々持ち込まれた見合い話を全部断ってきた。
タ:それはまた…随分ですね
外:その中に僕としては、どうしても断り難い筋からの話があった
タ:?
外:僕の姉の一ノ関元子を知ってるだろう?
タ:当然でしょう、そもそも貴方と出会ったきっかけは、一ノ関先生ですから。
外:姉ながらめったに会わないが、彼女から話が来たんだ。
  いい青年がいるから会わせてみないかと。
タ:………
外:桑原、お前も無関係じゃないぞ。
  お前が普通の素人なら思いつかないような方法で、服毒自殺なんかしてくれた
  もんだから、お前を担当した姉は知り合いで毒に詳しかった、御名形クリス先生に
  すぐさま相談した。
  おかげでお前は死に損なった訳だが、彼女の息子が同い年で、今東京に来ている。
タ:………まさか、御名形史紋?!
外:そのまさかだ。しかも奈々くんも知ってる相手だ。めったに会わない姉から電話が
  来て、しかも姉は大変乗り気だった。
  優柔不断でチャンスをやっても、まるで生かさないお前よりは、
  奈々くんが幸せになるかと随分考えた。
タ:では何故…?
外:大学時代から足掛け13年も思い続けてる男の恋路なんか邪魔したら、
  それこそ祀っても無駄なくらい、祟られそうだからな。
タ:…彼女のことは最初、そんな風には思ってはいなかったですよ!
  サークルの後輩だったし、精々妹がいたらこんな風かと思うことがあったくらいで…
外:ふ~ん。本当か?
タ:本当です。
 
カチ
 
タ:!
外:(携帯見せて)今の台詞は録音させて貰った。明日奈々くんにも聞かせるつもりだが、
  構わないかね?
タ:ぶ…ぶち壊す気ですか?
外:僕としては、うちの大切な看板娘を、素直に『愛してる』も言えないような男のもとへ、
  やりたくないだけだ。親心だよ。
タ:………なんて人だ。
外:性懲りもなく、また恋をしたことの後悔なら、そんなものはさっさと捨てて、
  今目の前にあるものを大切にするんだな。油断してるとまた失うぞ。
タ:そんなことにはならないよう、努めるつもりではいます。
外:お前は自分で思ってるより情が深い。そしてそれはけして恥じることではない。
タ:…………
 
喫茶店の扉、開いて奈々入ってくる
 
奈:タタルさん、すみません。遅くなりました。
  ……あら、外嶋さん?!閉店業務を放り出して、何処に行かれたかと思ったら…
  美緒ちゃんも怒ってましたよ!
 
外嶋、慌てて立ち上がる。
タ:多大な恩がありますからね、コーヒーくらい奢りましょう。
外:随分値切られたな。
 
 
奈:外嶋さんと何のお話をしてたんです?
タ:娘を嫁に出す男の愚痴に付き合ってたんだ。
奈:???



以上でした!
私はタタルさんの自殺未遂は浪人する前の、18歳と踏んでいます。
なぜかと言えば、大学で奈々ちゃんと知り合ってから恋人が出来た説は
奈々ちゃんファンとしては、面白くないから(笑)
タタルさんが、素人では普通考えないような凝った方法で服毒自殺を謀り
それ故、毒草師母に助けられるという(笑)なんともタタルさんには酷な設定
であります。
神器封殺を読んでから毒草師を読んでみたら、もしかしたら外嶋さんの姉は
毒草師知り合いの一ノ関元子先生では?と思いつきました。
神器~の34ページ目で『つまり外嶋には結婚している姉がいるということになる。
入り婿という可能性も含めて、名字は分からないけれど間違いなく姉は姉だ』
と書かれています。このお姉さんのことはQEDではここが初出で、しかも御名形史紋
も初登場。伏線がいっぱい引かれているので、外嶋さんの姉=一ノ関先生は
当たってるかなと思うのです。

で、あとは推理…じゃなくて妄想をたくましくして(笑)
タタルさんはきっと普通の方法で自殺を謀らないだろうと考え
当時18歳の知識で出来る、私には思いつかないような(笑)方法で
自殺未遂を謀り、一ノ関先生の病院に担ぎ込まれる。
そこで縁が生じて外嶋さんに知り合った…というのはダメでしょうか?
外嶋さんはタタルさんの自殺未遂の理由を知っていたからこそ、
あんなにタタルさんと奈々ちゃんの二人をくっつけようと、
画策していたのでは…!
途中『河童伝説』でしたか、奈々ちゃんに毒草師との関係?を尋ねるシーンが
出てきます。
もっとも見合い話は私の妄想つーか、タタルさんに意地悪な設定を考えた
かったゆえの思いつきに過ぎませんが…

スゴイ縁に生かされてた、ウチの桑原さんでした。

外嶋さんにはタタルさんは口は減らないけど、どうもちょっと弱いらしい
ところがありそうですし…


異論反論あるでしょうが、私はこう読んだってことで……スミマセン


※訂正
 神器封殺の引用なんですが、我が家にあるのは文庫版なので文庫版からの引用に
 なります。
 あと外嶋さんが御名形史紋のことを尋ねたのは、諏訪の神霊からでした^^;
 かなりさりげない聞き方なので、根拠としてはうすーーーーいです。
 つーか、お見合いのネタはほんとにネタで私のねつ造なので、証拠を求めない方が
 賢明です(苦笑)

拍手[11回]

ちょっと信じられないくらいの、ハイペース更新です。
漫画のが先かと思ってたのに…
というわけで、もしかしたら今日中に漫画もアップするかもしれません^^;

小説は授乳中に携帯片手にぴこぴこ入力。
…授乳中にこんな妄想してる、とんでもない親であります。



タタ奈々ならどんな妄想もOKよ!という方のみ、スクロールしてください。





























   TO BE WITH YOU

「オレンジ…ペパーミント……ローズマリー?」
バスルームに入ると、自分の家にはない香りが、鼻を掠めた。
 
「奈々くんの……」
日曜と言うか、時間的にはもう月曜日だ。先程終電ぎりぎりまでここにいた
彼女が使った、おそらくシャンプーや、洗顔料の匂い。
彼女からいつも、かすかに感じる香りに何故か、わずかに気持ちが揺れた。
 
彼女を駅まで送り、戻ってからベッドの上で読みかけの本を読み始めたが、
その場所はあまりにも、今は帰宅した彼女の存在を感じすぎる場所だったため、
振り切って、シャワーを浴びることにしたのだった。
 
「………同じことだったな」
自嘲して、とりあえずさっさと体と頭を洗うと、バスルームを出た。
すると玄関の方でチャイムが鳴った。
 
 
こんな時間に?
 
 
でも誰だか見当はついた。
何故?さっき確かに彼女は改札をくぐって行った。
 
扉を開けると、多分半裸の自分の姿に驚いたらしい、頬を赤く染めた彼女の姿があった。
「あの…昨日タタルさんが言っていた本を、お借りしていくの忘れました…」
俯いて、小さな声がそう言った。
「……入って」
 
彼女は靴を脱いで部屋に上がった。
「確か万葉集の恋に纏わる話の本だったね」
「そうです。恋人に会いたくて、皇女の立場も忘れて、川を素足で渡ったって」
 
もうこの時間になると、当然彼女は家には帰れない。なのに…何故?
 
頭のどこかで、自分もそれと同じ理由で、先程まで苛々していたと告げる声がする。
「昨日は話さなかったけど…彼女の恋の相手、穂積皇子と言うんだが、
 彼女に先に死なれて、もう何年もたってから、よくこんな歌を口ずさんでいたらしい」
「歌?」
「家にあり 櫃に錠刺し 蔵めてし 恋の奴(やっこ)のつかみかかりて」
 
彼女はダイニングで自分の前に立ち尽くしたまま、じっと見つめている。
 
「彼らの恋は許されない不倫の恋だった。だから…」
急に柔らかな口唇で、自分の口唇ががふさがれた。
彼女の姿を見てから、感じた何やら言葉に出来なかった、
もやもやした気持ちが真っ白になって消えていく。
 
 
「明日ここから出勤します。どうしても…帰りたくなくなってしまって、
 途中から反対方向の電車に乗ってしまいました」
泣きそうな、それとも恥ずかしそうな何とも言えない顔で、彼女は言った。
 
 
「奈々…今の部屋にこのまま住み続けるのか?」
「え?」
「沙織くんの結婚式も終わってひと月たつし、君が来年まであのマンションで一人暮らしは、
 危険だし家賃も負担だろう」
「…………」
「来週一緒に不動産屋を見てみようか?やはり横浜周辺がいいか?」
 
彼女の瞳が大きく見開かれた。
 
「それは……」
 
あの日からいつも休日の最後の時間は、切なかった。多分お互いに。
 
「………素直じゃないな」
立ち尽くしたままの彼女を抱きしめた。
 
先程バスルームで感じた香りで、気持ちごと満たされる。
 
 
抑えきれなかった衝動。
 
もうどんな刹那の瞬間も、互いの存在を離していたくない。
 
「ふふ…」
柔らかく身体を預けていた彼女から、かすかな笑いが漏れた。
「以前、他人と一緒に暮らすのが煩わしいと言っていたのが、嘘みたいですね」
「そんな相手は君一人で、十分だと言いたかったんだ」
「まあ!そんな風には聞こえませんでしたよ」
「君だって素直じゃない。…違うか?だから戻ってきた」
「……違いません」
「やれやれ、明日外嶋さんにはここから出勤したことも含めて、全てばれてしまうが…
 これも因果律かな」
「そうですか?」
「君の顔に全部描いてあるからな」
「ひどっ…」
「一緒に暮らそう、奈々。もうお互い離れている必要なんか、ないはずだ」
「…はい。そしたら本を借りる為に戻る必要も、なくなりますね」
 
にっこり微笑った彼女が、嬉しそうに抱きついてきたので、
しっかりと仕舞い込むように、腕の中に抱えた。





※奈々ちゃんの言っている、朝川を渡る歌は
但馬皇女の『人言をしげみ言痛み 生ける世にいまだ渡らぬ朝川渡る』
です。この歌本当は実際に川に濡れたわけではなく、恋の障害を越える
例えなんだそうですが、それにしても実際にそんな行動をとっているような、
強い情熱を感じさせる歌です。
穂積皇子の歌も、この歌も恋のなせる強い衝動を歌ってるように
私は感じるのですが、
タタルさんと奈々ちゃんに、ずっと足りなかったのはこの
『恋するゆえの衝動』かな~と思い、書きました。

拍手[10回]

ちらと小説?など書いてみました。
というか、漫画では描けない(笑)と思ったので、絵よりもつたない文章で^^;

『伊勢の曙光』のネタばれを含みます。
多少、超微量の大人表現を含みます。
あとタタ奈々でさえあれば、どんな妄想でもOK!という方だけ
画面をスクロールして下さい。

























































『CALL MY NAME』

いつもは感じない温もりで、目が覚めた。
横を見ると、ずっと恥ずかしがって少し離れて横たわっていた彼女が、
すぐ胸元にすりよって、かすかな寝息をたてていた。
 
自分の気持ちにあれだけ素直な人なのに、行動は気恥ずかしさからか、
気持ちを裏切るらしい。
昨夜は少し強引に抱き寄せなければ、なかなか彼女の全てに触れることが、
かなわなかった。
 
 
少し驚いたのだが
彼女は経験がなかった。
 
 
でも不思議ではない。
中学、高校と女子高で大学では自分と知り合った頃、付き合っていた男性がいたか?
と言った感じで、よく話すようになった翌年の頃には彼女にはそういった相手が
いなかったようだ。
社会人になって再会してからは、全くそんな話は聞かなかった。
処方箋薬局の薬剤師では、そんなチャンスにも恵まれにくかっただろう。
(自分はそれに感謝しなければならないが)
 
 
悪友の小松崎が、事件の報告と称して電話を寄越してきた時、最後にこう言った。
『お前が助かったと知った時、奈々ちゃんボロボロに泣いてたぞ。
 ---なあ、俺の相手は特急どころかリニアモーターカー並みだったから、
 間に合わなかったが、タタル、お前の相手は各駅停車なんだ。
 感謝して、早く年貢を納めた方がいい』
 
相変わらずめちゃくちゃな理論だが、言わんとしてることはよくわかった。
 
『…ああ、俺もようやくわかった』
 
 
 
そして彼女はここにいる。自分の隣に。
 
知っていたら、もう少し優しく出来たのに、彼女は行為が終わるまで言わなかった。
察することが出来なかった自分に腹がたつが、彼女に触れた途端、夢中になってしまって、
精神的ゆとりなんかどこかに失くしてしまっていた。
こう言う時、自分が男なのに嫌気がさす。
 
 
身を割かれるより、辛かっただろうに---
よく眠っている、その額にそっと口付ける。
 
昨夜髪に触れた彼女のすべらかな指や、柔らかい口唇。切なげで優しい眼差しも、
全てが自分を肯定してくれた。
 
これは終わりで始まり。
 
 
「きゃっ」
いつの間にか、自分の胸元に寄りかかっていたのが、恥ずかしかったらしい。
目覚めたばかりの瞳で、おずおずとこちらを見る。
「タタルさん、今…何時ですか?」
わざとらしくため息をついて見る。
結論を放置し続けた自分に、一番の非があるが、これくらい許されるだろう。
「ひとつ約束してくれないか」
「なんですか?」
「ベッドの上くらいは、そのあだ名はやめて、名前を呼んで欲しいのだが」
「………………」
 
そんなに躊躇うことか?
 
「た、た…崇さん」
「何?奈々」
自分もほんの少しの勇気を奮う。
 
名前は呪だ。
愛しいと言う気持ちを、永遠に縛る呪。
 
 
すると彼女はそっと胸元に頬を寄せて、恥ずかしそうに微笑った。

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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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一切関係がありません。
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著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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