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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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今日ほど待たれた日もないだろう。
何せ14年越しなのだ。

今日は僕の大学の後輩----と言っても十年以上歳が違うから、
あまり関係ないかもしれないが----と、やはり同じ大学出でもう
かれこれ十年、僕の経営する薬局で働く薬剤師との、結婚式の日である。



目の前を父親に手を引かれて、そっと歩を進める花嫁は格別に美しい。
彼女はどちらかと言えば可愛らしいタイプで、薬局に来る顧客の中でも、
特にお年寄りに好かれ、可愛がられている。
しかし今日は別だろう。いつものふわりとした柔らかさはそのままだが、
凛とした空気が彼女を包んでいる。



ああ、そうだ。
ひとつ意外なことに----そう、花婿が彼であればこれは全く意外なの
だが、此処は横浜の、明治の開港以来からあるという、格式のある教会だ。
何故それが意外かと言えば、花婿の趣味が寺社巡りに墓参りであり、
彼を知る者にとっては神社と言えば彼。彼と言えば神社だったのだ。
それが神前ではなく、教会式を選択したのには、彼にとっては切実な、他人
にとってはしようもない理由があった。

花嫁の実家は鎌倉だ。
鎌倉には歴史的にはこの教会に負けない、神前式の行える、鶴岡八幡宮がある。
初め身内では、ここで式をしようと言う案があったそうだ。
しかし、である。
最後の段階になって、花婿が強硬に反対した。
何でも式の最後に、段葛のある大通りを人力車に乗って行くらしい。
道行く観光客にとっては、いい見物だろう。
そして、普段の口の利きぶりが不遜ではあるが、実際は大変内気であるらしい彼が、
己れをそこまで見世物にすることに承諾出来なかった。

そして、花嫁が先日顔を真っ赤(実際は指先まで赤かった)にして、話したことには、
彼が『君のウェディングドレス姿が見たい』と言ったそうである。
『その方が自分が君を拘束出来た、と言う気がするから』とも。
今頃そんな気障な台詞を吐くのであれば、さっさとプロポーズするべきであったろう。
その策略?が当たって、今日、この場所でこのよき日を迎えたと言う訳である。



花嫁の進む先には祭壇と神父の前に、花婿が立っていた。
これがまた今日の招待客の、一番の話題となってしまった。

今日の彼は、普段の彼を少しでも見たことがあれば、誰だかわからないくらい、
整った美男子である。
なんでも花嫁の妹が、朝4時に未来の義兄を無理やり連れて、青山にある
カリスマ美容師の元に行き、五時間かけて花嫁の隣に並べてもおかしくないように、
準備したらしい。
おかしいのは花嫁も最初、誰だかわからなかったそうだ。
控え室を間違えた誰かが、自分の元に来たのかと思ったらしい。

まあそれくらい、彼は普段はパッとしない身なりの青年であり、服装も決して
いいセンスとは言えないのだ。
今日は名誉挽回とも言うべきだが、あまりの変わりぶりに客の度肝を抜いてしまい、
最初の話題をさらってしまった。
彼を見た招待客の全てが、おめでとうを言う前に、本当に本物の彼であるか
質問することになってしまった。

だから、今神父の前で花嫁を待つ彼は今までにないくらい、機嫌が悪いはずである。

彼の表情を見て、少し不安そうになった花嫁が、花婿の隣に立つと、何かささやいて
いた。多分優しい彼女のことだから、彼に何か慰めるような言葉をかけたのだろう。
すると小さく溜め息をついて、彼も花嫁に何かを伝えた。

花嫁の頬が薄く染まる。


----まあ、だいたい何を言ったか見当はつくがね。




なあ、桑原。
お前、あの日の自分を今、後悔してないか?


自殺未遂で救急病院に運ばれて来た、18歳の少年。
自分だけ生き残ったことで、あんなに自分を責めていた。


でも-----お前の人生は彼処で終わる縁ではなかった。
縁は『えん』と発音するだけあって、円になって円く繋がっている。
だからその時は、自分の必要から遠ざかっていても、いつかは必ず巡り、
また意外なところで繋がって行くもの-----


まあ今日の『縁』には僕が大いに尽力したことは、間違いないが。
独身主義者としては、一組くらい幸せな恋人たちを、世に送り出すぐらいの
気遣いをしても、いいだろうさ。




僕としては十年以上も決着を待たされた訳だから、今日は楽しませて貰おう。





※外嶋さんシリーズ(笑)第3弾です。
  タタ奈々の結婚式。
  そう結婚式だけは、あのタタルさんの髪型が完璧に整う可能性があります。
  近いうちにコメディ仕立てで、漫画も描きたいので、今回はあえて挿絵を
  入れませんでした。

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