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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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鎌倉旅行第六弾!
なんとか着地できました。
途中ずいぶんな無茶ぶりをして、自分このネタ回収できるのかしら
と思ったんですが(^_^;)いつものことですw


このあと、タタ奈々読者さん向けに、オマケも考え中です。



拍手[6回]





◆◆◆


小町通りの喧騒を離れ、段葛に出て鶴岡八幡宮に行った。
実朝が暗殺されたと言われている大銀杏を通り過ぎ、拝殿に辿り着く。
すると拝殿の前の舞殿では結婚式が、粛々と行われていた。
八幡宮も混んでいて、かなりの人で溢れていたが、
拝殿の周囲は結婚式の為か、厳かな空気が漂う。
「………」
隣にいる彼女はじっと舞殿を見つめた。
ここは神社だから、当然神式の結婚式だ。
花嫁の纏う白い衣(きぬ)は冬の冷たさを映して、凛として美しかった。
「……綺麗ですね」
振り向いた彼女は、可愛い笑顔で微笑んでいた。
「リカならきっと綿帽子も似合うだろうな」
小さく呟く。
「大祐さんはウエディングドレスと着物どちらがいいですか?」
「え…それは」
不意をつかれて、自分が赤くなっているのが解った。
「…ど、どっちも」
「………欲張り」
彼女は更に晴れやかな笑顔を見せ、ふわりと翻して拝殿に向かった。
 
 
 
あちこちパンフレットに従って、史跡を見ながら、
また段葛まで戻ると、丁度先程の新郎新婦が人力車に乗り通り過ぎて行く。
道行く参詣の人たちは皆、立ち止まり人力車を見ている。
「皆に祝福されるんですね」
「うん」
「やっぱりこう言うのもいいなあ…」
左側にいる彼女の小さな指先が、僅かに自分の手に触れる。
何だかこそばゆく感じて、思い切って彼女の華奢な手を握りしめた。
「……大祐さん」
「何…?」
「このあと時間があったら、海を見たいんですけど、大丈夫ですか?」
「由比ヶ浜に出よう」
彼女の手を引く。
彼女もしっかりと手を握り返し、弾むような足取りで付いて来る。
空はまだ青さを残しているものの、そろそろ午後の陽射しも傾いて来た。
段葛のまだ枯木でしかない、桜の枝が微かに揺れていた。
 
 
 
◆◆◆
 
鎌倉は何処も人混みだらけだったが、冬の海岸ともなると違っている。
数組のカップルや家族連れ、人は疎らだった。
海風は冷たく、彼方に逗子の海岸線が見え、広々とした景色だ。
「はあーっ。やっと息をした気がします」
本当にとんでもない一日だった。
なのに何故か晴々とした気分で、それはまるで目の前に広がる、
金色がかった雲の浮かぶ空のようだった。
「かなり息をつかせぬ一日でしたからね、元報道記者の稲葉さん」
「ホント!これが報道にいた頃だったら、
 抜かりなくスマホで一部始終を撮ってました」
「全く…そうだったら危なかった。今日は…信じてたけど」
「あの変な人のお陰で助かったんですよね」
わたしは彼に事件の内幕を話した。
彼は初め真面目な表情で聞いていたものの、
次第にキョトンとした目でわたしを見つめた。
「ああ…でも、だから」
「え?」
「君を助けた人の奥さん、桑原さんと言うそうだけど、
 かなりご主人を信頼しているようだったよ。
 『彼がいるからあまり大事にはならない』と」
「そんな信頼もあるんだ…」
びっくりした。
あんな胡散臭い見かけでも、奥さんはそんな風に
信じていられる。
でも何だかすとんと腑に落ちた感じだ。
あの人はその信頼には十分応えていたんだし。
「あ…でも待って。あの人…苗字が桑原なら、
 フルネームは『桑原祟』?」
「まさか…」
「でも奥さん『タタルさん』って呼んでました」
「『くわばらたたる』じゃ、まるでお化けでも出そうだ。
 でも職業は漢方薬剤師さんだって聞いた」
ぶわっと風が首に巻いたストールを吹き上げた。
彼が慌ててわたしの首筋のあたりを押さえる。
「わたし一つ気が付きました」
まだ一月だから、日が暮れるのは早く、波は金色に煌めく光を受け止めて、
穏やかに繰り返していた。
「父と母のこと」
「リカの?」
「両親は嫌いで別れたんじゃないと思ってはいましたけど
 ――母は父の気持ちが解っていたので、離れて暮らすことが出来たのだと」
「………」
彼はしばらく黙り込み、寄せては返す波の繰り返しを見つめていた。
「信頼にも色々な形があるね」
「そう思います。――両親が離婚する前に、父は仕事で、
 ある事件に関与していました。父の部署で開発された薬が、
 効能に書かれた薬効がないと判定されたんです。
 白黒つけないと気が済まなかった父は、
 必死に証明しようとしたけど、結局責任を取って辞職したんです。
 離婚して信州に引っ越すと言う父に母は黙って判を捺して…」
大きく深呼吸すると、胸の奥まで潮風が入ってくるように思われた。
「ダメだなあ。そんな両親を見ていたせいか、わたし
 『白黒は必ずつける。真実はきっと一つで暴けるもの』
 って信じてました」
彼はやはり黙ったまま、わたしを見つめた。
彼はそんな頃のわたしをよく知っている。
わたしは彼と出会ったばかりの頃に、元パイロットだった彼に
言ったのだから。
『戦闘機は人殺しの道具』だと。
真実は一つだと、安い正義を信じて。
「もし報道局を異動になったあの事件の時に、
容疑者を容疑者としてではなく、一人の人間として見ていたら、
わたしが当時張り付いていた容疑者の奥さんとされていた女(ひと)から、
彼らは犯罪者ではないと言う真実が聞けたかもしれない。
彼らの立場に立って聞いていたら、わたしはもっと別の真実に近付けたかも
しれないんです。父の事件はそう伝えていたんだ、今ならそう思います」
「リカは報道に戻る気はないの?」
「何故ですか?」
「今なら…きっといい記者になるから」
彼の真っ直ぐな瞳に、胸がときめくのが解る。わたしが大好きな瞳(め)。
「今は情報局の敏腕美人ディレクターですっ」
「――やっぱりしまっておきたい」
予想外の呟きとため息だ。
「…昨日から思ってたんですが、意外とヤキモチ妬きですね」
「君が悪い。君が――」
ふいに彼がかがみこんできて、顔が近付いたと思ったら、口唇が触れた。
目映い光がオレンジ色に染まり始めるのを、確かめる間もなく、
わたしは瞼を閉じた。
 
 
 
◆◆◆
 
途中昼食とも夕食ともつかない食事をして、
停めておいた車に乗り込むと、東京へ向かった。
彼女はじっと黙ったまま、窓の外を流れる光を見つめていた。
考えているのは今日の事件のことだろうか?
それとも離れて暮らした父親のことだろうか?
信じることが信頼の証だと言う。
けれど己を信頼し過ぎては真実は片寄る。
そう言えば自転車で由比ヶ浜の海岸線を走っていた時、
桑原奈々さんが面白いことを言っていた。
由比ヶ浜の名前の意味は共同作業を意味する
『結い』からつけられたのだと。
広報室時代、自分と彼女はまさに
『共同作業』をしていたと思う。
そしてこれから――結婚したら、生涯『共同作業』をしていくことに
なるだろう。
それは側にいるから、一緒にいるからと言うことではなく、
離れていても『共同作業』なのだ。
それなら…自分たちの間には『結い』と言う縁があるのだな、
そう結論づけて隣をそっと見たら、彼女はぐっすりと眠っていた。
目を瞑るとあどけない表情が丸見えになる。
――これくらいは一人占め出来るかな?
そんな風に思った。



※なんとか婚前旅行らしき終わりになれたでしょうか?
さてタタ奈々は空井くんとリカちゃんをどう見たでしょうか?
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森伊蔵
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読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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