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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません、コメントのお返事、次回返信させて頂きます。
空稲鎌倉旅行第5弾!
いよいよタタ奈々とばり、コラボです(#^.^#)

空稲ファンの皆様、本当にどうもすみません。
QEDはめでたく番外を除いた最終巻が、この度文庫になりました。
合計17冊(昨年出たホム真入れて18冊)とちょっとハードル高いのですが
もだもだカップル好きさんにはおすすめできます。
よろしかったら読んでみてくださいね(^.^)


タタ奈々の年齢は原作の伊勢の曙光が2000年の事件と言うのに、
沿っています。
40代で夫婦な二人…。


小説は続き記事からです。


拍手[6回]




◆◆◆


結局彼女とは江ノ電の長谷駅で離れ離れになってしまった。
それでもこんな時も彼女らしいと言うか、冷静なメールが来た。
 
『田島屋の二階は喫茶室なので、そこで待ってます』
 
田島屋は鎌倉駅最寄りの、小町通りにあるらしい。
あの様子ではまた駅に近付くのは、止めた方がいいだろう。
タクシーが通りかからないだろうか?
たまたま手術した側の足を混み合う中で、強く蹴られてしまった。
今日は寒さのせいもあって痛みも出ている。
「悔しいな…これくらいの距離を歩くくらいはなんともないのに」
チェックアウトの時に旅館のフロントで貰った、
鎌倉のパンフレットを広げる。
江ノ電のラインに沿って、観光スポットが色々と紹介されていた。
今いる長谷駅周辺から鎌倉駅まで歩けなくもない距離だ。
ただし足がこの状態でなければ。
「肝心な時に…」
小さな商店の軒下で壁に寄り掛かる。
少し休めば痛み、止まるかな?
「あの…」
すると店から出てきた女性が、菓子折りらしき包みを抱えて
こちらを見ていた。
「足を痛めてるように見えますが、お怪我でもされているのでしょうか?」
穏やかだが明快な声が、優しく伺うように尋ねて来た。
自分より10歳くらい年上だろうか?
けれども包み込むような雰囲気があり、あまり年齢を感じさせないタイプの
女性だ。
「大丈夫です。足を事故で手術した痕が痛むだけなので」
「あの…良かったら。薬局の処方薬ですが、鎮痛剤持ってるんです。
 そんなに強い薬ではありませんが」
「…あ、でも」
「わたし薬剤師なんです」
女性はにっこりと、彼女にしか出来ないだろう笑顔で微笑んだ。
彼女が鞄を探って取り出した薬に、お辞儀をして手を伸ばした時、
店の前を通りかかった若い女性の三人組が、突然大きな声を上げた。
「嘘!ヤダっ。小町通りの田島屋で銃を持った男たちが立て籠り!だって」
「えー!何それっ。じゃあ鎌倉駅に出ないで、
 藤沢に出て、横浜でも行く?」
「怖いわねー。しかも銃だよ」
田島屋…は彼女、リカと待ち合わせた店ではないだろうか?
「まあ!」
鞄から慌てて携帯電話を取り出して、薬をくれた女性は画面に
見いっていた。
「どうしたら…タタルさん、田島屋にいるんじゃ」
た、祟るさん?
随分と不吉な名前だと思ったが、今は田島屋のことを
確認する方が大事だ。
「あの…田島屋の立て籠りって…」
女性は何かを察したように、携帯を差し出した。
ワンセグのテレビの画面、帝都テレビのニュース番組だ。
『行き過ぎた成人式か?二十代男性、三人が凶器を持って立て籠る。
 内一人は銃を所持していると見られている。
 中にいた来客八人が人質に取られている模様。
 警察は必死に説得による事件解決を図っている』
「………リカ」
思わず慌てて走り出そうとしたが、女性がじっとこちらを
見つめているのに気が付いて、携帯をお礼を言って返した。
「もしかしてどなたか知り合いの方が田島屋に?」
「え?は、はい。婚約者が。長谷駅が混んでいて、
 別れ別れになってしまって…田島屋で待ち合わせを」
「似たような事情なんですね。わたしは、お、お、夫と待ち合わせて
 いたんです―――そうだ!」
女性は凛とした瞳で真っ直ぐこちらを見た。
「わたし北鎌倉に実家があって、今日は自転車を借りてこの店まで
 お菓子を買いに来たんです。鎌倉まで抜け道も解りますから、
 良かったら自転車、後ろに乗って行きませんか?」
「えっ…?」
それはどうだろう?しかし、長谷駅でも感じたが、
人出も車も多く、タクシーを捕まえても渋滞に巻き込まれる可能性が
あった。
「大丈夫です。今朝も元八幡宮に行くと言う、
 主人を後ろに乗せて走りましたからっ」
 
 
 
◆◆◆
 
局にいた同僚の飛田さんは、察しよく警察に連絡し早くも報道局も
動きだしているようだ。
わたしたちは店の隅のソファのある客席のあたりに、まとまっていた。
三人いた男の一人は入口に、一人はわたしたちの側に、
もう一人の男は銃を持って窓際で警察とやり取りをしているようだ。
わたしたちを人質に取って、現金を要求するつもりらしい。
犯人の一人が銃を所持していたことで、一時店内は騒然となった。
幸い喫茶室に来客はあまり多くはなかったが、
年輩のご夫婦や子供のいる家族が一組、皆怯えている。
一人だけ違うのは、先程犯人たちに『源氏を怨むのは筋違い』と
不敵に反論したボサボサ髪の男だけだった。
犯人が銃を取り出した途端、自ら犯人たちの言うようにさっさと、
わたしたちが今いる壁際に移動した。
だが彼が動いたことで、その場にいた来客たちも彼に倣って
移動を始めた。
お陰であまり犯人たちを刺激することなく、
人質になることが出来たらしい。
はっきり変人の部類に入る人物だが、判断は冷静でまともらしい。
今はわたしの隣で呆れたことに、先程の文庫本とは違う、
かなりくたびれた専門誌と見られる雑誌を読んでいた。
「…君はマスコミの人間なのか?」
「え?」
本にしか関心を向けてないかと思われた男が、ぼそりと呟いた。
わたしはチラリと見張りの男の様子を見て、小さな声で答えた。
「報道ではありませんが、テレビ局に勤めています」
「…テレビか。何となく小松崎や沙織くんと似たような印象を
 受けたから。普通こんなことに遭遇したら怯えるものだが、
 君は落ち着いていたので、俺が犯人の関心を引き寄せている間に、
 冷静に連絡出来そうだと思ったんだ」
「…………」
どうもかなり状況の把握が早い人物らしい。
彼――空井大祐も見た目にそぐわない状況判断力がある。
自衛官だからかもしれないが、彼は元パイロットだから尚更だった。
「……君は気付いたか?」
「え?」
「窓際の男の銃、モデルガンだと」
「…………本当に?」
「確証はないが、学生時代山奥で迷った時に、
 専門のマタギ職の人に助けられて、猟銃を見せて貰ったことがある。
 猟銃と拳銃では違うかもしれないが、随分と質感が違うように見えた」
「わかりました」
しばらく様子を見ていると仲間に断って、わたしたちの見張りをしていた男が
トイレに立った。
わたしはすかさずバックの中に手を入れる。
『銃はおそらくモデルガン』
飛田くんはすぐに返事をくれた。
『マジっすか?すぐ警察に連絡します。稲葉さん、もう少しですから』
わたしはそっと隣の男を見た。ふとしたように男も、
乱れた前髪の向こうからこちらを見た。
アレ?
よく見たら、整っていると言えなくもない顔立ちだ。
表情は暗いが目鼻立ちはくっきりとしている。
ただ――どことなく、今信州にいるわたしの父に雰囲気が似ていた。
どうしてだろう?
「…君が連絡し終えたなら、あと15分くらいかな」
そしてまた彼は持っていた雑誌に視線を落とした。
 
 
 
◆◆◆
 
「足、大丈夫ですか?あのわたしまた代わりますから」
「大丈夫です。鎮痛剤が効いたみたいで。それに自転車は基地内の移動で
 慣れてますから」
「基地?」
坂の多い山側を行かず、平坦な道程の海沿いを行くことにした。
途中やはり無理があるような気がして、自転車の運転を交替した。
桑原奈々さん――彼女は爽やかな笑顔で名乗ると、
ありがとうと言って運転を代わってくれた。
「あ…自衛官なんです」
「まあ、海自の方ですか?」
「入間基地所属なので、航空自衛隊です」
「そうだったんですね。どうりで自転車をこぐスピードが早いなあと」
奈々さんはふふふ、と微笑した。彼女のご主人も人質になっているのだが、
性格なのかこんな場面で暢気な感じだ。
「…多分、た、いえ主人がいるので、おそらく大事にはならないと思います」
「ご主人は警察の方ですか?」
「いいえ、漢方薬剤師です」
「………」
漢方の薬剤師さんが、銃を持って立て籠る男たちに、
立ち向かえる要素があるのだろうか?
けれども奈々さんは、ご主人を随分信頼しているようだ。
そう言えば――自分もそうかもしれない。
彼女、稲葉リカは元報道局の記者だった。
信頼の理由はそれだけではなかったが…。
それでも心配し案じる気持ちが変わる訳でもなく、
自分は奈々さんを後ろに乗せて鎌倉の海沿いを必死で
自転車をこいでいた。
 
 
 
◆◆◆
 
「君、ハンカチを持ってるか?」
「え、ええ。」
「口にあてて床に伏せる用意をしてた方がいい」
「………」
「さっき奥の厨房で、微かだが音がした。来るぞ」
コロリと何かが投げ込まれた。
部屋いっぱいに煙が充満する。
「警察です。大丈夫ですか?」
沢山の足音が部屋に駆け込んで来る。
涙が出そうになるものの、早めに口にハンカチを当てていたせいか、
煙をあまり吸わずに済んだ。
犯人はあっさり捕まったようである。
わたしたちの位置を、飛田さんに然り気無くラインを使って
知らせておいたのが良かったのかもしれない。
警官に保護されながら、わたしたちはやっと店の外に出ることが
出来た。
「――リカ!」
「大祐さん!足は?大丈夫ですかっ」
「それは大丈夫。…って言うか心配するのは僕の方だよ」
「そ、そうでしたね」
人質になっていた間、彼が無茶をしていないか、それが一番気になった。
「タタルさん!」
祟る?!
そんな不吉でとんでもない名前の人が、この世にいるのか?
するとわたしより10歳くらい年上だろうかと思われる女性が、
あのボサボサ髪の男に駆け寄った。
「大丈夫でした?」
「慣れてる。君との待ち合わせだ。こんなものだろう」
わたしが呆気に取られて、目の前のやや不釣り合いなカップルを見つめていたら、
彼が小さな声で言った。
「ご夫婦だそうだよ。彼女、薬剤師さんで、彼女がくれた鎮痛剤のお陰で、
 彼女と自転車でここまで来ることが出来たんだ」
あんな奇人変人にもあんなに美人な奥さんがいるんだ…。
わたしは思わず呆然としてしまったが、ふとあることに気付いた。
「…大祐さん、自転車二人乗りしたんですね」
「え!あ…その道路交通法違反だし、げ、現職の自衛官がまずいのは…」
「あんな綺麗な女(ひと)と」
「…!えー、でもそれはリカだって」
彼にしては珍しくムキになっている。
くるりと背を向けてしまった。
「ラインで飛田さんに連絡してた。…その方が話が早いのは解るけど、
 窮地の時くらい、僕を頼りにしてくれたって」
そんな風に思っていたとは知らなかった。
正直、彼がこうしてヤキモチを妬くのを見るのは初めてかもしれない。
事件が無事終わったこともあって、何となくふわりと嬉しくなる。
彼の背にそっと手を延ばす。
頬を背中に付けた。
紺色のダッフルコートからでも、微かな温もりが伝わって来る。
「ごめんなさい」
「リカ、八幡宮へ行こう」
振り向いた彼の笑顔は、今日の青空より鮮やかだった。


 ※最終編へ続きます。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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