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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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体調不良のお蔭で本日二更新です。(寝てるばかりだから携帯動かすしか
ないと言うか)


ただここからQEDとコラボしてます。

コラボもの苦手、オリジナル設定(ただ継続して読んでくださってる方
にはあまりいらっしゃらないと思うのですが)苦手と言う方は
回れ右をお勧めします。

読んで下さった方、タタ奈々に興味持って下さった方
大感謝です!!

コメント頂いてます。
返信は次回更新でさせて頂きます。



小説は続き記事からです。





拍手[2回]




◆◆◆



抱き寄せられた腕の中は、互いに小さな呼吸を繰り返す度に
また熱くなってきた。
彼のように素直に甘えたりねだったりするのが苦手なわたしは、
彼の胸元に頬を擦り寄せるだけが、今は精一杯だ。
彼は察したのか、額に口唇を軽く押し当ててから、
まだかすれた声音でそっと聞いてきた。
「…欲しいの?大丈夫?」
こんな時に奇妙に優しくためらいがちになる彼の言葉は、
却って意地悪く聞こえる。
「…もうっ」
この優しさが彼、空井大祐でもあるんだけれど。
「え…?やッ、……!」
先程まで一番熱を帯びていた箇所にまた、彼の指先が触れ、
ふいをつかれた形でわたしは慌てて身を縮めた。
でも遅かった。
その感覚を求めることに慣れた部分は、さっさと感じていた
甘い波の繰り返しに戻ろうとする。
わたしにはもう止め(とどめ)ようがない。
初め浅くためらうような動きが、すぐに深く探るような動きになる。
濡れた音が耳に届き始めた時、わたしの中で曲げられた指先が
ある箇所に触れて、びくりとしてしまった。
閉じかけた瞼の奥が一瞬白くなる。
また触れる。
「…ッや…ん、」
「リカ、此処……いいんだ」
「……んーっ」
そう言うこと、聞かないで!――そう言い返したいのに、
言い返せなかった。
言葉と言うより、声を出すと意味のない声だけになってしまう。
「覚えておくから」
僅かに弾んだ声で彼がこめかみに口付けながら、囁いた。
普段はそんな風に見えないのに、何て油断も隙もないんだろう。
散々意識が乱され、かき回された頃に、彼が柔らかく
わたしの中に入ってきたことに気付いた。
 
 
 
気付くと朝だった。
もうかなり明るい。
隣に彼はいなかった。
昨夜――わたしはいつ眠りについたのだろう?
ぼんやりとした記憶しか辿れない。
「リカ、やっと目が覚めたんだ」
襖の開くのと同時に、彼の笑顔が飛び込んで来た。
「お風呂、9時までは入れるみたいだから、入って来たら。
 チェックアウトは10時だし。――あ、車、
 今日一日は置かせてくれるって」
憎たらしいことに、彼はさっさと早起きして、
自分のペースに戻っているらしい。
こんな時女って不利だなあ……なんて、再びぼんやりしてきた視界を
何とかはっきりさせながら、起き上がる。
「もう少しリカの、気持ち良さそうな寝顔見てるのも、良かったけど」
「………」
「昨夜、あんまりにもストンと腕の中で寝ちゃったから、
 まるで子供みたいだった」
彼はとびきり嬉しそうだった。
それはそうでしょうよ。
良いように、此方を翻弄したんだもの。
「…お風呂行って来ます」
やっと目覚めてきた体で、どうにか立ち上がった。
 
 
 
朝食を摂ってから準備をして、チェックアウトを済ませた。
此処から大仏のある高桐院は徒歩で10分も行けば、着くらしい。
「でも…一応神社でお詣りを済ませるべきでしょうか?
 わたし、今年はまだ何処もお詣りしてません」
「…僕も。もう少し江ノ電の駅の方まで行くと、神社があるみたいだよ。
 御霊神社って書いてある」
彼は宿のフロントで貰ったらしきパンフレットを開いて、
じっと見ていた。
「何だか不吉な名前です。神社なのに」
「んー、説明書きを見ると、地元の鎌倉権五郎を祀ってあって、
 権五郎が訛って御霊になったみたいだよ」
「…語呂合わせなんですね。神社の名前なのに何か不真面目」
「飛行神社もよく言われてるけどね」
「飛行…神社?」
「リカも広報室に神棚があったの見たでしょう。
 基地にもあるけど…あれは京都の飛行神社から勧進してきたんだ。
 航空機に関わる人や航空機の事故で亡くなった人を合祀してあるから、
 決して不真面目な神社じゃないんだけど」
「名前からしたら新しそうですが…でも天照大神でしょ」
「…どうかな?神様はあまり詳しくないけど、
 昔飛行機みたいな乗り物で、日本に降り立った神様だって聞いた」
「飛行機?古代にですか?こじつけっぽいなあ…」
そんなことを話しながら歩いていたら、もう長谷寺の参道の入口まで来ていた。
かなり道が人で混み合って来ている。
昨年果たせなかったものの、世界遺産の登録を目指しただけあって、
元々が人気の高い観光地だ。
特にこの長谷周辺は大仏があることもあり、人出も多いに違いない。
宿泊した旅館の周辺の閑静さが嘘のようだった。
 
 
 
「参道が思い切り線路跨いでます」
御霊神社でお詣りを済ますと、わたしたちは境内を見回した。
こじんまりとしているが、雰囲気は悪くはない。
いかにも地元で大切にされてきた感じだ。
切り立った山肌を背にして、古い木造の本殿が建ち、
その脇に小さな祠が幾つか並んでいた。
「あ、ここもやっぱり」
彼が大きな石を祀ってある祠で立ち止まった。
「見て、リカ」
何かご利益でもある石なのかしら?そう思って彼の隣に立って、
立て札に書かれた祠の由来書きを読んだ。
「ここも災害にあった人たちを祀った形なんだね」
「相模湾にあったこの岩で何度も海難事故があり
 …それで岩を引き上げて祀った」
「……災害で大切な誰かを亡くすと、哀しみや気持ちの持って行く場が
 ないから。それは今も昔も変わらないんだな…」
彼は真っ直ぐ注連縄を掛けられた石を見ていた。
言葉にならない思い。
震災を松島で経験した彼は、きっと目の前で助けることも
出来なかった人々を見ただろう。
元パイロットだった彼の先達には、航空機の事故で亡くなった人が
かなりいるはずだ。
わたしはそっと石の祠に手を合わせた。
それに気付いて彼も深々といつもの綺麗なお辞儀をして、
手を合わせていた。
 
 
 
社務所で御神籤を引いてみた。
ここは昔ながらの木札の御神籤だ。
ガラガラと箱を振り、籤を取り出し番号を告げると、
係のかなり年輩の女性から紙を渡された。
「……………」
「……………」
「…大祐さん、何でした?」
「え?あー、いや、結婚運は悪くなかった。
 転居も方角を選べば吉に転ず、だって」
「…この和歌どんな意味でしょうか?
 吉野山 峰の白雪吹雪きても 苦楽の末に梅の花咲く」
「花が咲いてるなら…終わり良ければ全て良しって言うし」
「……そうですよね。例え『凶』でも」
「え?!リカも」
「大祐さんもですか…」
「…………」
思わず二人顔を見合わせて黙りこんでしまう。
「ゆ、結わけば運が上向きになるって、そう言えば親父が言ってた」
「そ、そうですね!迷信かもしれないけど」
二人で慌てて近くの御神籤を結わく為の場所の前に立った。
「さて、お詣りも終わったし」
「わたし、大仏より鶴岡八幡宮に行きたいです。
 出来たら小町通りにある田島屋で銀杏鳩サブレを、
 局へのお土産に買いたいし…」
「いいね。僕もお土産は買って帰らないと」
そのまま鳥居を潜って踏切を渡り、江ノ電の長谷駅に向かう。
「途中有名な極楽寺なんかもあるけど」
「…ちょっと挫けました」
駅前は人混み、どころかかなりの混雑ぶりだった。
連休だと言うこともあるだろう。
ただ駅前で江ノ電のホームに入る為に待つ客たちの中からは、
外国語の会話も随分と聞こえてきた。
中国や台湾からの観光客らしい。
江ノ電のホームは人が溢れるくらいで、何か事故でも起こるのではないかと、
少し心配になった。
その時だった。
「おい!早くしろよっ」
酔ったようなダミ声がして、どっと人波が崩れた。
「………ッ」
隣に立っていた彼が顔をしかめる。
「大祐さん、大丈夫?」
「後ろの人に蹴られただけだから」
振り向いて睨み付けてやろうかとした、その時だった。
「わ……!」
「きゃ…!」
背後から、どうっど押された勢いに呑まれ、わたしは江ノ電のホームまで
入らざるを得なくなってしまった。
Suicaのお陰で辛うじて切符なしで改札口を通ることは避けられたものの、
彼とは離れ離れになってしまった。
それくらい駅前も改札口もホームも狭く、彼を待つ為に避ける場所すら
なかった。
彼は大丈夫だろうか。
手術痕のある足を痛めたようだったけれど。
そして江ノ電がホームにつき、人の流れに沿って乗らない訳には
行かなかった。
「鎌倉駅で待ってた方がいいかしら?」
江ノ電の駅は鎌倉までは小さな駅が続く。
高校の遠足の時の記憶があった。
彼にその旨をメールすると、少し経って返事が反って来た。
『少し足に痛みが出て、駅から離れました。
 後からタクシーを捕まえて行くから』
やっぱり…。
彼を蹴飛ばした後ろのヤツがいたら、思い切り踏んづけてやるのに、
と考えつつ、また返事を書いた。
『田島屋の二階は喫茶室なので、そこで待ってます』
鎌倉駅の前も、この分だとかなり混み合っている。
鎌倉は古い街並みの為か、街全体のロケーションがこじんまりとしている。
広々としているのは段葛がある、鶴岡八幡宮の参道にあたる大通りと
海岸沿いくらいだろう。
『解った。心配はしないで』
彼からすぐメールの返信が来る。
こうして付き合う前からだから、もうかなり長くなるが、
彼とメールで意志疎通していることには、自信があった。
信じて待っていて全く問題はない。
そう考えて、スマホを肩に掛けたバッグにしまうと、
何とか目の前にある吊革に捕まって目を閉じた。
 
 
 
田島屋に着くと局への手土産の為の豆落雁と、
銀杏鳩サブレを買い、二階の喫茶室に向かった。
元々老舗の為、喫茶室も落ち着いた佇まいだ。
その時だった。
「お前らっ!動くなっ」
まだ年若い感じの声が響き、入口を見ると三人程スレた感じの
若い男が手に刃物を持って立っていた。
「ウチは平家の末裔だからな…源氏に怨みがあるから
 鎌倉には容赦しねえぜ」
何言ってるのか、押し込み強盗にもこじつけが必要らしい。
全く今日は何と言う日だろう。
朝からあまり良いことがない。
御神籤の和歌ではないが、正に雪の積もった上で吹雪に合う感じだ。
「…理に合わないことを言う」
後ろでビールを片手に、分厚い文庫本を広げていた男が、
本を閉じ髪をかき上げてため息をついた。
確かに理に叶わない。
だがこう言った犯罪を犯す輩にこんなことを言っても、
仕方がないような気もする。
男はふらりと立ち上がった。やや猫背だが背は高い。
髪は今かき上げたせいか、ボサボサだ。
「君たちは今『源氏に怨みがある』と言ったね。
 しかも『平家の末裔だから』と」
「お、おうよ…!」
「鎌倉幕府を開いたのは確かに源頼朝とされている。
 だが、その後鎌倉で実権を握ったのは平家と同じ桓武平氏の血を引く、
 北条氏だ。
 源氏は頼朝も二代目の頼家も三代目の実朝も、
 実朝を暗殺した公暁ですら、北条氏に暗殺された可能性がある。
 鎌倉に怨みがあるとしたら、源氏こそ、だろうね」
刃物を片手にした男たちを前に何を言っているんだろう、この男!
随分悠長だ。
目的は解らないが、強盗の如く飛び込んできた人間の脅し文句に、
まともに答えるなんて、普通ありえない。
だがこの背の高い男に注目が集まっている間、
わたしはバッグの中にそっと手を入れ、
ラインで局にいる飛田さんに送信した。
彼もわたしと同じく報道から来た人間だから、話が早いはずだ。
 
 
『鎌倉で強盗事件。場所は小町通りの田島屋』

 


※次は奈々ちゃん登場!
空井くんはどうなるか?
以下次回。
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主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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