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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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と言う訳で引き続き鎌倉旅行の二話目です(^_^;)


今回はリカちゃんサイド。
着物を着るのが大変なのは着たことのある方なら、
誰でもご存じでしょうが
文章上で脱がせるのも結構大変。

いやもう。
帯くるくるーーってしちゃおうかと思いました(笑)

頑張れ、空井くん(何をだw)


小説は続き記事からです。




拍手[10回]



◆◆◆


「仲人さんにご挨拶?!」
「やったー!稲葉さん、プロポーズ受けたんですねっ」
「貴方、遅いわよ。
 稲葉さん、クリスマスからずっと指輪してるじゃない」
「じゃあ、クリスマスにプロポーズ?!」
年明け早々、局の衣装室は大騒ぎになってしまった。
よく見ると、わたしを囲んでいる人は
他部署の人もいる…ような気がする。
「それで…稲葉さん。お相手の上官の方に、
 新年のご挨拶を兼ねて仲人をお願いに行くのね?」
衣装部のチーフが出てきて、関係ない部署の人間を然り気無く
追い払う仕種をする。
「当然、あんまり安っぽい格好はダメよね…」
衣装部は仕事柄、それなりに付き合いのある部署だ。
わたしより七、八年先輩にあたるこの部屋の長の女性は、
彼女でなければ扱えない衣装があると言わせる程のベテランだった。
「最初の連休ってことは、松ノ内を過ぎてからになるし、
 あまり華やかな訪問着でも浮いてしまいそうだし…あ、」
彼女は何か思いついたように、わたしを見つめた。
年明けの連休に彼…空井大祐の上官であり、
元広報室長の鷺坂さんに新年の挨拶方々、
わたしたちの結婚式の仲人をお願いしに行くことになった。
現在、浜松勤務の鷺坂さんがこの新年最初の連休に、
自宅の鎌倉で休暇の為帰宅している。
着ていく服など、スーツかワンピースで十分な気もするのだが、
会いに行くのは、空幕広報室に取材に出向していた間、
『詐欺師鷺坂』の名に恥じず、散々わたしを翻弄した人物でもある。
たまには…反対に驚かせてもいいだろうと思い、
それなら和服でも…と考えたのだ。
自分でTPOに合った着物を選び、着付けるなどと言う才能のないわたしは、
すぐにこの衣装部のチーフのことを思い出し相談に来たのだった。
「幾つかあるんだけど」
彼女は奥の畳の部屋から、わたしを手招いた。
色とりどりの着物が数枚広げられている。
「クリーム色に扇面に菊、…こっちは裾に桜吹雪じゃ少し季節が
 合わないかしら?それと…」
ふと彼女の背後の衣桁に掛けられた着物が目についた。
黒…いや、濃い紫だろうか?
「まあ、これ?月一の虫干しの為に掛けてあったんだけど
 …そうね、小紋だけど京友禅だし…柄も梅が入ってるから…」
他の華やかな色合いの着物とは違い、少しキリッとした感じの着物だ。
「稲葉さん、こちらに来て肩に掛けて見てくれる?」
彼女に言われた通り、わたしは鏡の前に立ち、着物を羽織らせて貰った。
「………」
「…あの、」
専門家に黙られてしまうと、丸きり素人のわたしには
何も言うことが出来ない。
「解ったわ、稲葉さん。これで行きましょう。
 帰りに寄ってくれるかしら?帯や小物も揃えておくから。
 結婚前に彼にもう一度惚れ直して貰いましょ」
彼女はポンとわたしの肩を叩くと、海千山千の印象の笑顔を向けた。
 
 
 
当日、彼女のアドバイスに従い、着物の扱いに慣れた美容院を選び
(そう言う意味ではわたしの住む町は東京でも古いので、便利だった)、
早朝五時から髪を上げるのと、着物の着付けに取り掛かった。
美容師は着物があまりに良い品なので、驚いていた。
わたしには残念ながらその価値を理解するだけの知識も感性もなかったが、
着付けが終わり、鏡の前に立つとそう悪くはないような気がした。
「和服で仲人さんにご挨拶に行くなんて、今時の若い方にはなかなか、
 いないものねえ。よくお似合いですよ」
自分で準備していた和装用のカシミアのショールを羽織ると、
お辞儀をして彼と待ち合わせた自分のマンションに戻った。
 
 
 
だと言うのに。
確かにわたしが今回の旅行の一日目に和服を着たのは、
鷺坂さんを驚かせる為だ。
しかし何より一番は…彼に見て貰いたかったからだ。
普段、デートも仕事の後が多く、会うとき着ているのは、
大抵は素っ気ない通勤着。
たまには違う雰囲気で会ったら、彼は何て言うだろう。
わたしが着物を着ていくことを彼は知ってはいたから、
今回の旅行も彼が車を借りて来ることにはなっている。
夏の浴衣の時はすぐ雨が降ってしまったし…。
…期待半分、少しの不安とあれこれ想像しながら、
彼の到着を待っていた。
「……おはよう」
車から出てきたものの、視線を合わさずに彼は俯いた。
彼らしくない。
すぐにそう思ったが、やっと実行した旅行を不穏な雰囲気で始めるのは、
わたしも嬉しくはない。
しばらく様子を見ようと思った。
…何か隠し事でもしてるのかしら?
そんな風にまで考えたが、それも少し違うような気がする。
モヤモヤと考えているうちに車は多摩川を越えた。
 
 
 
「いやー、驚いたね。稲ぴょんの和服姿を見る日が来るとは
 思わなかったよ」
通された鷺坂家の居間で、主人(あるじ)の元広報室長鷺坂さんは、
ニコニコの笑顔だ。
以前会った時より若干、髪の毛が後退したものの、
ノリも相変わらずだった。
初めて会った鷺坂夫人も上品だが、夫にバイタリティでは負けてはいない。
鷺坂夫人は体があまり丈夫ではないようで、
鷺坂さんの度重なる転勤には着いて行かず、
ずっと鎌倉に住んでいるとのことだった。
こうして休暇の、二人でいられる時間を大切にしているのは、
家の中の空気からも感じられた。
供された食事のメニューにも、たまに帰宅する夫を気遣ってか、
鷺坂さんの好物が多く出されていたようだ。
「僕はこれが好きでねえ」とか「基地の食堂の筑前煮も悪くないけど、
出汁の味がウチのがいい」とか、絶え間なく…然り気無く…もない
妻に対する賛辞を惜しんでなかった。
その中で隣の席で彼が美味しそうに食べている料理があった。
すぐに夫人に聞いてみた所、『海老しんじょ』とのことだった。
レシピや作り方も聞く。
茶碗蒸しも。
鷺坂夫人は丁寧に、一つ一つ話してくれた。
夫同様、誠実な人柄だ。
そして、食べている時にたまたま彼と視線が合う。
だが彼はすぐに目を反らしてしまった。
今日は朝からなんだろう?
以前――空幕広報室で知り合ったばかりの頃に似たようなことは
あったけど…。
あれは―――
今考えれば『照れ隠し』のようなものだろうか?とも思う。
だってあの前日、彼はある意味生まれ変わったのだから。
それまでの彼は、今にも死にそうなギリギリの雰囲気で、
事情を知っていた人間はあの当時皆彼を心配していたと、
同じく広報室にいた比嘉さんが言っていた。
『僕はブルーに乗れたんだ』
その叫びと流れた涙で彼は再生を果たした訳だが、
生まれ変わってみたら、隣で頭を撫でていたわたしの存在が
急にリアルになったのだろう。
あの時は「なでてて」なんて涙混じりの声で呟いたが、
翌日広報室で会った時は全く目が合わなかった。
 
 
 
お茶の時間になり、鷺坂夫人に『着物を貰って欲しい』と言われ、
席を外した時だった。
鷺坂夫人が和室に入る前に振り向いて微笑った。
「稲葉さんの和服姿があまりに素敵なものだから、
 空井さんが落ち着かないわね」
「そ、そんなことは」
「ごめんなさいね、主人があまりに大袈裟に騒ぐから
 …あの人あれが仕事のようなものなのよ」
「いえ……『その』鷺坂さんにわたしたちは大変勉強させて頂きました」
鷺坂夫人は穏やかに微笑んだ。
「稲葉さん、この着物なんですけど」
和室にある桐の箪笥を開けると、何枚かの着物を取り出し広げた。
目に鮮やかな色合い。
どうしよう。
わたしは着付けを自分で出来る訳ではない。
普通に浴衣だって、自分で着られなかったんだから。
それでも――
結婚したら、着物を着るような機会にも恵まれるのかしら?
プロポーズを受けて、結婚しようとお互いに決めてからも、
それでは結婚したらどうなるのか、と言う具体的なことに関しては
何のヴィジョンも浮かんではいなかった。
どちらにせよ、やれるようにしかやれない。
それならばその中で二人で過ごすにはどうしたら良いか
考えた方がいい、と思ったのだ。
だが――
目の前の着物たちの華やかな色合いを見ていたら、
こう言う格好で彼の隣に立つ日も来るかもしれないと、
何となく思えたのだ。
「こちらの訪問着は確かにピンク色だけれど、落ち着いているし
 …きっと、もしお二人の間にお子さんが生まれたら、
 お宮参りや入学式、着ていく機会はあると思うわ」
「こ、子供ですか?」
いっぺんに想像が具体的になってしまい、頬が熱くなる。
「あとはこちらかしらね…」
鷺坂夫人は何となく気恥ずかしくなったわたしに構わず、
二枚目の着物を広げた。
 
 
 
鷺坂家を後にするともう日は暮れかかっていた。
鎌倉の冬枯れた木立の中を車で走り抜ける。
大仏で有名な高桐院のある長谷の近くに今日泊まる宿はあった。
たった一室だけど離れがあるのだと言う。
元は高名な画家の別荘だったらしい、と彼は言った。
部屋に通された時には窓の外は何も見えない程、暗くなっていた。
「大祐さん、食事の前にお風呂入りますか?わたし着物脱いじゃおうかと。
 一日着崩れないかと、心配で…」
急に背後から温かな腕が回され、首筋に息がかかった。
髪を上げていたから、隠れようのない首のあたりは、
敏感に彼の体温を感じてしまうようで、こそばゆい。
思わず身を竦めた。
「…もう少し」
もう視線が合わない…なんてことはなかった。
一度真っ直ぐわたしを見てから、彼は今度はまるで
視線を外さない様子でわたしを見ている。
「やっと僕だけのリカになったから…」
「………」
とか言いつつ、気付いたら意外に器用な彼の指は
既に帯締めをほどきにかかっている。
心音が高くなる。
いつもの彼と違う。
ひそめるような声音が耳許で囁く。
「……嫌?」
「すぐ食事の時間になりますよ」そう言おうと彼を見上げたら、
彼の真っ直ぐな瞳にぶつかった。
何処か甘えるような、ねだるような表情は、
こう言う場面でのいつもの彼だ。
でも今日は何処か危ういと言うか、
こちらがドキリとしない訳にはいかないような様子だった。
ずるいんだから。
そんな風に自分に言い訳しながら、今日一日
彼が全く視線を合わさなかった訳(彼に聞いたら合わせられなかった
と言うかもしれないが)を察しながら、言葉の代わりに
そっと背中を彼の胸にもたれさせた。
「……ごめん」
かすれた声で呟いて、微かに微笑うと、もたれたわたしを腕に抱いて、
先程車の中でしたキスよりはゆとりのある感じで、口唇を重ねてきた。
柔らかく何度も口唇が離されて、いい加減わたしも
自分自身を手放しかけた時、彼がちょっと困った顔をした。
帯締めまで外して、そのあとが解らなかったらしい。
わたしも思わず自分の帯を見つめた。
「次はコレ…?」
帯揚げを引き出す。
自分でほどくと、帯まで緩やかにほどけて落ちる。
「…何か一日危うい気持ちにさせられた理由が解った」
「え?」
彼は向きなおって、またわたしに口付ける。
「着物って…ある部分を取るとこんなにすぐに脱げるんだ。
 朝から何でリカをしまって置きたいような、
 変な気分になってたか、やっと理由が解った」
「……おかしな納得の仕方ですね」
「うん…でも」
口唇が耳朶に触れて、肩を竦めた瞬間今日一日着ていた着物がするりと、
こう言うのを衣擦れの音と言うんだろうな、と言う音をたてて、落ちた。







※空井くん、和装にはまだ襦袢や肌襦袢も残ってるぞ!
先は長いw
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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一切関係がありません。
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著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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