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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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ピクシブには違うSSをupしたのですが、こちらはJr.くんでw




SCCに出します本に載せる予定の物です。
本にはこれに続きのSSを付けたいと思います。
今の所通販はコピーではなく、オンデマンドにしたいと思っているので
更に漫画プラスで、5月末くらいに販売開始できたらなあと思います。

子供の話、となると非常にオリジナル性が高いため
今回はお試しです(^_^;)
なるべく感想頂けると助かります。


後ですね…いまスパムと思われるコメが沢山来ちゃってて
コメント機能がほぼ不能状態です。
何かございましたらサイト翠露苑のcontactからか、
こちらの拍手コメントを使っていただければ
対応させて頂きます。申し訳ありませんm(__)m



拍手も頂いています。
コメントの返信は次回記事でさせて頂きます。


小説は続き記事からです。

拍手[24回]





◆◆◆


「SKYじゃなくて、SKY Jr.だろ」
TACネームを決める時にそう言われた。
 
 
 
父の逸話は空自内では有名だった。
初めは最年少でブルーインパルスのパイロットになる直前に、
交通事故に遭いP免になった『悲劇のパイロット』として。
そして今では『勤務中に美人テレビディレクターを射落とした
幸運なベテラン広報官』として。
父のTACネームを受け継ぎたい…と言うより苗字が同じなんだから、
必然的に同じTACネームになるのは仕方ないのだが、
父の逸話を知る誰もがそれには頷くと共にJrを付けろ、と言ってきた。
 
SKY Jr.。
 
こだわるつもりはないが、何だかいつも『親父の真似をしている奴』と
自分が見られているようで面白くなかった。
そもそもパイロットを目指した時だって。
 
 
幼い頃に連れて行かれた航空祭は、自分の心にも鮮やかに記憶に残った。
蒼空に描かれた白い飛行機雲の先には『ドルフィン』とも呼ばれるT-4が、
自在に空を泳ぎ行くその空技に心を奪われた、と言っていい。
まず間違いなく保育園を卒園するまでは『ブルーのパイロット』になるのは
自分のたった一つの夢だった。
小学三年生の時に、『あのこと』が無ければ。
 
 
 
通っていた空手道場での、保護者に公開の合同練習の時のことだ。
その日は外部から来た他流のコーチが特別に来ていた。
生徒たちが型を演じるのを見ながら、この道場の館長とそのゲストのコーチが声高に話している。
初めは武道の理念や、最近のトレーニングの傾向などについの話題だったが、
そのうち話の内容が過熱してきたのか、ゲストのコーチがこんなことを言った。
「今のコなんてひ弱ですからね。何かあるとすぐ親が出てくるし。
 いっそ何処かの国みたいに、徴兵制にして、全員自衛隊にでも入れればいいんですよ」
一瞬割合賑やかだった保護者の列が、しん、と静まった。
その気まずさに館長が口を開きかけた時だ。
日曜も母は仕事がある為か、普段は父が付いて来ることが多いのに、その日は偶々母が付いて来ていた。
それまでどの保護者とも話すことなく、黙って生徒の型を真面目な表情で見ていた母が、
つかつかと列から抜け前へ真っ直ぐ歩いて来る。
「貴方は、自衛隊がどのような仕事をしているかご存じですか?」
「え?それは…」
「貴方は今、体を鍛える目的の為だけに、子供を自衛隊に入れるべきだと仰ったようですが、
 自衛隊がどのような任務について、どのように任務をこなしているかご存じなのでしょうか?」
母の口調は決して強くなく、激しくもなかったが、凛として、
自分より遥かに背の高いコーチにまるで怯んだ様子はなかった。
「さ、災害の救助活動や海外への派遣でしょう…」
突然生徒の母親に真っ向から見つめられたそのコーチの方が、たじたじとしていた。
「救助活動中には」
 
母は息子の自分から見ても、綺麗な姿勢で立って、言葉を続けた。
「目の前で救助を求める方を助けることが出来ないこともありますし、
  仲間の隊員を亡くしてしまうこともあります。勿論そのようなことのないように、
 いつも準備を怠らないようにするのが、彼らの仕事でもありますが。
 貴方はご自分にはそのようなご経験がないのに、そんな処から軽々しく『徴兵』と言う
 言葉を使うべきではないかと思うのですが、如何でしょうか」
静かだが刺すような鋭い言葉を突き付けられたコーチは、完全に押し黙ってしまった。
「空井さん…すみません、言葉が過ぎたようです。彼は武道に熱心過ぎる所がありまして」
隣にいた館長が慌てて場を繋ぐ。
「失礼しました」
母はペコリと頭を下げると、さっと身を翻して保護者の後ろの列に戻って行った。
 
 
 
その夜、夜中にトイレに目が覚めた時に居間の方から、父と母が話す声が聞こえた。
父と母は、仕事柄なかなか一緒に過ごせないせいか、
時々息子の自分が邪魔かもしれないと勘繰りたくなる程仲が良かった。
その日もそんな調子だろうと思って、部屋に戻りかけたら自分の名前が出て立ち止まった。
「どーしようっ。蒼太の道場でうっかりやっちゃった」
半泣きの母の声。
それを宥めるような、楽しむような父の声も聞こえた。
「リカは真面目だからなあ…。僕より余程空自の広報してるよね」
「だってやたら上から目線で腹が立っちゃって。あの筋肉バカ、
 自衛隊『でも』って言ったんだよ!」
そっと覗くと、ソファに隣り合って座る母の頭を、父が軽く撫でた。
「そこが怒るポイントだったんだ」
「はあー、どうしよう。蒼太、あのコーチにいじめられたりしないかな」
「そんな心配するなら、黙ってたら良いのに。
 でもそれが出来ないリカだから、良いんだけど」
「………」
昼間の凛とした母は何処に消えたのか、へしょんと頭を項垂れていた。
「確かに徴兵制のある国は大変だね。以前、韓国軍との軍事演習を撮影する為に付いて行ったけれど、
 彼らの場合は義務な訳だから。ただ空軍のパイロットは志願した中から選ばれるようだった」
「わたしたち、知らなすぎるのよね。…ああ、でもっ。わたしって何てバカ」
「蒼太はリカが思ってるより、根性あるから大丈夫だよ。男だし」
「男とか、女とか関係ないですっ」
頭を抱えたままの母を、それでも大切そうに抱き寄せた父の表情は、とても嬉しそうだった。
それを見届けて、何だか出ていく機会も失った所で、部屋に戻る。
複雑な気分だった。
自分が『ブルーインパルスのパイロットになりたい』と言った時、
母はこれ以上ないくらい、母にしては珍しい笑顔で、後押ししてくれた。
以後、それが自分の気持ちを支える形で、何の疑問もなしに『ブルーインパルスのパイロット』に
なるつもりでいた訳だが、ここに来て母は果たして賛成なのだろうか?と考えるようになったのだ。
 
 
 
「空井二尉ポーズこの辺りでお願いします」
「………」
今日の松島の天気は快晴。冬から春に変わる不安定な季節には奇跡的な天候だ。
桜の花とブルーインパルスを一緒に撮影したいなどと、あまり現実的ではない申し出があり、
それを受けたのはなんと今空幕広報室に配属になっている父――空井大祐だった。
しかも企画の元々がふざけている。
『ガテン系のイケメン特集!』などと言うファッション雑誌の企画で、
 救急隊員から建築業界まで、中にはコレ、ガテン系か?と思えるような職種も含めて、
あらゆる業種から毎月一人二頁程、写真付きで掲載されていた。
…いや一応目を通して見た所、写真がほとんどで文面はプロフィール程度だ。
そんな内容のない記事に、こともあろうに父親自ら空自の代表として、
やっとブルーインパルスのパイロットになったばかりの息子を売り込むと言う、
前代未聞の広報を仕掛けた。
隊長から『お前が出れば、他の嫁の来ないパイロット職にも希望が見えるかもしれない』と
声を掛けられなければ、首を絶対縦には振らなかっただろう。
「空井二尉…あのうもう少し微笑ってくれませんか?」
「階級で呼ぶの、止めてくれませんか?空井で良いです」
「でも広報室のお父様も空井さん、ですよね?」
「父は――関係ありません」
さっきから取材に付き合っているが、本当に頭の緩い女だ。
自衛隊をなんだと思っているんだろう。
笑顔なんか――出来る訳がない。
「じゃあ、フルネームで。空井蒼太さん、もう一枚。
 ウチ女性誌なんで、出来るだけ笑顔でお願いします」
「………」
「…ホント、お父様の仰ってた通りですね」
「父が…何て言ったんですか?」
「飛行機バカでクソ真面目だと」
「――!」
「あ、今の表情いいです!」
パチリとシャッターを切る音がする。失礼なヤツ!
「大体…普通ファッション雑誌って言ったら専属のカメラマンがいるんじゃねーの?」
つい口調が素に戻ってしまった。
「ええ、後程幾つか専属のカメラマンが撮影させて頂きます。
 でも企画自体が、なるべくイケメンの自然な表情を、と言う企画なので」
「…メイワクな企画だな」
「それでも普段は近寄りがたい自衛隊に、良い印象を持って貰えますよ。
 先日輸送機の事故があったばかりで、色々な広報の企画、流れたんじゃないでしょうか?」
「………」
「空井蒼太さんは、初の二十五歳前にブルーインパルスのパイロットになった方で、
 マスコミも注目しています。
 今のような時期でなかったら、ウチみたいな弱小雑誌じゃ取材出来なかったかも」
 
 
 
「また来ます」
その一言を明るい笑顔で言い放ち、彼女は去って行った。
「空井蒼太さん、さっきコクピットに座った時の表情素敵でした。
 笑わないと勿体ないですよ。次は是非笑顔を撮らせて下さい」
普通男に面と向かって言うか、そう言う言葉。本気に取るヤツもいるだろうに。
――俺は違うけど。
二、三日経って父から電話が来た。
「蒼太、写真見たぞ。お母さんにも見せたよ」
「……母さんにも?」
「蒼太がこんな表情するの、初めて見たって喜んでた」
この夫婦の間には秘密と言うものが、存在しない。
だから親父にバレてるものは、お袋にもバレる。幼い頃からの我が家の鉄壁の『規則』だった。
「可愛いコだったろう?」
「は?」
「雑誌記者の」
「……頭緩いんじゃないのか、あの女」
「お前は本当に口悪いな。おっとりして見えるが、彼女五ヶ国語はゆとりで操る帰国子女らしいぞ。
 蒼太には似合うんじゃないかと思ったんだけど」
「あのな…」
「まあ、生まれた時から世界一の美女ばかり見て育ったら、
 なかなか他の女の子に関心が向かないのは解るが」
「…………」
親父の愛妻自慢が出ると電話が長くなる。
明日飛行訓練があることを伝え、早々に電話を切った。
官舎の窓から東京の方角を眺める。
「……クソ親父!」




※結構ファザコンでマザコンになっちゃったw
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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