タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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空稲ファンの皆様、こんな辺境ブログまでようこそ(#^.^#)
ピクシブの方が先行更新していますが、
ぼちぼち追いつくかな?
拍手、コメントありがとうございます。
コメントの返信は次回記事でさせて頂きます。
ピクシブにも書いたのですが、夏コミで秋に出す(←もう出す気)本の
CMを兼ねて1p漫画を付けてペーパーを配布したいと思います。
当日は小説ジャンルQEDタタ奈々での参加
(このカップリング私一人らしいよw)です。
スペースは土曜日西地区や14bです。
多分30部くらいの配布なので、ご入り用の方はぜひお早めに
お立ち寄りくださいm(__)m
秋の本は夏コミ終了辺りから、こちらのブログでもお知らせしていきます。
と言う訳でのこのこ続いてるこの期に及んで、、ドラマ設定じゃない空稲(笑)
小説は続き記事からです。
ピクシブの方が先行更新していますが、
ぼちぼち追いつくかな?
拍手、コメントありがとうございます。
コメントの返信は次回記事でさせて頂きます。
ピクシブにも書いたのですが、夏コミで秋に出す(←もう出す気)本の
CMを兼ねて1p漫画を付けてペーパーを配布したいと思います。
当日は小説ジャンルQEDタタ奈々での参加
(このカップリング私一人らしいよw)です。
スペースは土曜日西地区や14bです。
多分30部くらいの配布なので、ご入り用の方はぜひお早めに
お立ち寄りくださいm(__)m
秋の本は夏コミ終了辺りから、こちらのブログでもお知らせしていきます。
と言う訳でのこのこ続いてるこの期に及んで、、ドラマ設定じゃない空稲(笑)
小説は続き記事からです。
◆◆◆
七月に入り梅雨が明けると、毎日真夏日が続いた。
基地内でも熱中症対策に余念がなかった頃、官舎に帰宅すると、
小さな封筒が宅配ボックスに入っていた。
差出人は『稲葉リカ』。
すぐにピンと来た。
中身は彼女の部屋の合鍵だ。
前回のデートの時に、二人で必死に知恵を絞った結果だ。
テレビ局に勤める敏腕ディレクターの彼女が、
世間では休日である筈の日曜日に休みを取るのは難しい。
しかし家には何とか帰宅しているとのことから、
土曜から外泊届けを出して、彼女の部屋に行き帰宅を待つことにした。
この案を出した時に、彼女はとても困った難しい表情になった。
彼女を良く知らない人が見たら、怒っているように見えたかもしれない。
「でもそれじゃあ空井さ…大祐さんがあんまりじゃないですか。
土曜でも帰宅時間すごく遅いこともあるし」
「それまで広報の資料やDVDでも借りてきて見てるよ」
「でも…」
「もし、良かったら夕飯くらい作って待ってるけど…」
「え!お料理するんですか?」
彼女は真ん丸に目を見開いた。あまりに可愛らしくて口許が緩む。
「ほとんど官舎で独り暮らしだからね。
パイロットの時は食堂で食べることになってたけど、
P免になってからは、自炊してる」
「………」
そう言えば彼女の部屋を訪れるようにはなったが、
彼女が料理をしている所は見たことがなかった。
多分普段は忙しさのあまり外食が多いに違いない。
「それにリカの部屋で待ってれば、ほんの少しでも毎週会える。
結婚してからの生活も、こんな感じになるんじゃないかな?だったら…」
ふと見たら彼女は、酸性水にどっぷり浸かった
リトマス試験紙そのままに真っ赤になっていた。
「………もう、そ、だ、大祐さんて本当に順番逆」
「え?」
彼女ははあっ、とため息をついて改めて僕を見た。
「解りました。合鍵作って送ります。来週までには実行出来るように、
準備しますから」
何にそんなに反応したのかは解らなかったけど、
これで僅かの時間でも彼女に会って、触れていることが出来る。
その嬉しさと言ったらなかった。
早速土曜になると合鍵を持って彼女の部屋に向かった。
途中彼女から『どうしても抜けられない会食が入りました。
夕飯食べてて下さい。ごめんなさい』と言うメールが入ったので、
人形町の駅前で適当に済ませた。
彼女の部屋は彼女がいないと、夏だと言うのにひんやりと冷たい気がした。
テーブルの上にメモがあった。
『冷蔵庫に以前大祐さんが美味しいって言っていたお店の
マドレーヌがあります。良かったらどうぞ。 リカ』と書かれている。
出会った頃に、元パイロットだと紹介された僕に
『戦闘機って人殺しの道具ですよね?』と言った彼女とは
かなりの隔たりがある。
あの時はあまりのことに、言われた内容より言った彼女の存在そのものに
面食らってしまったが、今思えば彼女らしい話だった。
あまりにも素直で生真面目、真っ直ぐなのだ。
まるで高い空目指して伸びる筍だが、それが良い方向に向かうと
美しくしなる青竹のようで、凛として侵しがたい雰囲気を纏う。
抱き締めてみると、また思いもよらない表情を見ることになり、
要するに自分は彼女からは全く目が離せなくなっていたのだ。
予め持ち出し許可を得て、借り受けた入間の広報室にある、
今までの報道で使われた映像を編集したDVDを見始めた。
広報に携わって大分経つが、今だ報道の部署には配属されたことがない。
この際だから勉強しようと思ったのだ。
DVDを見ること一時間半。
時計は夜の11時になろうとしていた。
玄関から鍵を開ける音がする。
彼女が帰ったらしい。
DVDを止めて、ソファから立ち上がった。
「おかえり…」
「………空井…さん。ただい」
言い終わる前に靴を脱ぎかけた彼女が、崩れた。
慌てて駆け寄る。
どうやら酔ってるらしい。
「……今日は少しでも早く帰りたかったのに、
サイアクなプロデューサーとの会食が入って断れなくて…。
あの人女性には、やたら飲ませようとすることで有名だから」
まだ呂律が回っている所を見ると、『そこまで』は酔ってはいないらしい。
そっと抱き起こそうとした。
彼女が突然、こちらを真っ直ぐに見上げた。そしてふにゃりと微笑う。
「稲葉リカ、空井一尉のご命令通り、限界までは飲みませんでしたっ」
可愛らしい手付きで敬礼の真似事までする。
元々そんな気はなかったが、どんな男でもこれは怒れない。
「任務ご苦労様。ご褒美に部屋までお運びしますよ、お姫様」
「えっ」
驚く彼女に構わず、すいっと抱き上げた。
思っていたより軽い。
こんな小さな身体で、こんなハードな仕事をどうやって
こなしているんだろう。
彼女は抱き上げた直後、身体を硬直させたものの、
じきに胸に頭をもたせてかけた。
アルコールのせいかぐったりしている。
全く仕事に託つけて、一体どんな男が何の権利があって彼女に
こんなに飲ませるのか。
今日の会食の相手とやらを、それこそF―15に乗って
追い回したいような気分になる。
「怒ってます…?」
「怒ってないよ」
「怒ってる」
「…君にこんなに飲ませた会食の相手にね」
「……夕御飯、空井さんと食べたかったな」
華奢な左手をきゅっと握り締めた。
「明日は午後出勤だから、お昼までは一緒にいられます」
「じゃあ、朝御飯は僕が作ります。駅前に24時間のスーパーがあったから、
一緒に買い物に行こう」
「……わたしこれじゃあ『妻』の役割果たせない」
「えっ!?」
思わず彼女を落としそうになったが、何とかベッドまで辿り着いていたので、
そっと彼女を下ろす。
「わたしだって、きちんと尽くしたいのに、こんなことばかりで…」
言葉の最後は小さくなりながら、彼女は眠ってしまった。
触れるか触れないかの場所で、彼女の頭をなでる。
「君は君のままでいいのに」
思わず口をついて出た。
まだ始まったばかりだ。
色々あっていい。
だから彼女にこんな風に気を使わせたくない。
せめてこれは許されるかと、彼女の脇にそっと横たわった。
彼女が起き上がる気配で目が覚めた。
瞼を開けて見ると、ようやく夜が明けて、朝日が射し込み始めた時間らしい。
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「ん…」
「シャワー浴びて来ます。わたし、昨日あのまま寝ちゃったから」
「僕も入ろうかな…」
「じゃあ、お先にどうぞ」
「一緒でもいいんじゃないですか?」
「ええっ!」
「………そんなに驚かなくても」
「……わかりました。一緒に…」
ごもごもと口ごもって、彼女は立ち上がり寝室の扉を開けた。
先に彼女がシャワーを浴びてる所を、服を脱いで覗きこんだ。
「あの…」
「わ、わ、わ………」
彼女が絶句した。
視点がこちらに定まったままだ。
「リカ…?」
尋ねてみて、こちらもどきりとした。
白い肌が上気して薄紅色に色付いていた。そして滑らかな跡を次々と残して、
シャワーの滴が肌の上を滴り落ちる。
目が離せなかった。
時間にしたらほんの十秒くらいだろう。
でも実感としては、随分長いことそうして見つめあっていた。
最初に我に返ったのは彼女で、突然頬を染めて、俯いた。
「そ、そ、そらっ、いえ、大祐さん、入ったら?」
「え。あ、ああ、あー、はい」
そうして彼女からシャワーを受け取って、熱い湯を浴びると、
改めて気付いてしまった。
彼女を――今目の前にあるこの華奢で白くて、柔らかな線の、
この身体に自分は触れていたんだと、はっきり自覚した。
最初に彼女に触れた時から今まで、あまりにも夢中になっていて、
見ていながら、見えてなかったのかもしれない。
操縦に気を取られて、乗っている機体全体のフォルムを忘れてしまうような
感じだろうか。
そう思った途端、彼女に触れたくてたまらなくなった。
今度は一つずつ、大切に確かめながら。
自分たちに許された時間は少ないからこそ。
「リカ…」
ネットにボディソープを泡立てていた彼女は、呼ばれて振り向いた。
その瞬間腕を伸ばす。
「…っや、」
背後から抱き締められて、彼女は驚いて身を縮めた。
「欲しいんだけど…いいかな?」
「……あ」
彼女は微かな声を出して、抱き締めた手の僅かな動きに反応した。
そして、小さくこくりと頷きを返した。
バスルームではやっぱり狭くて、ベッドの上に戻ってきた。
一度抱き締めて、一途な求めに応じてしまうと、あとはキリがなく、
どれだけ触れても飽きることなどなかった。
今まで自覚したことはなかったけど、自分の思わぬ欲の深さに
驚かされもする。
「リカ…」
彼女は物憂げに瞼を開いた。
「却って疲れさせてしまった?」
彼女は穏やかに微笑って、首を振った。
白い腕を伸ばして、こちらの首を巻く。
「早起き出来て良かった…ろくに話も出来なくて、
終わりだったらどうしようと思ったから」
「…君は」
そっと背に腕を回し、抱き締める。
「僕は君に無理させたい訳じゃない…だから」
「無理じゃありません」
必死な瞳(め)をした彼女が僕を見た。
「昨日だって少しでも早く戻って来たくて
…大祐さんがいるって思ったら、たまらなくて。だから…」
「『妻』の役割が果たせない、なんて言うから、心配になった」
「ええっ!そんなこと言いました?あ~、もうっ。
昨日は強いカクテルばかり勧められて、
自分のペースで飲めなかったから…」
思わずため息が出た。
彼女を取り巻く環境のことを考えたら、離れてる間
決して安心出来る訳じゃない。
だからと言って、肌身離さず側にいることも出来ない。
こうして腕の中に閉じ込めておけたら…なんて言う
我儘な気持ちを振り払った。
「まだ始めたばかりだし…」
「わたし…結婚なんて出来るのかな…?」
「………」
そうしたくて、少しでも二人でいる時間が欲しくて今こうしてる筈だ。
でもそれが彼女にプレッシャーをかけることになるんだろうか。
あれこれと考えてるうちに時間が来て、彼女は再び出勤し、
自分も官舎に戻った。
すっきりしないまま、週の半ばまで過ごすと、
例の如く片山さんから電話が来た。
「…早くも暗礁に乗り上げたって?」
「………一体何処から聞いてそんな話に」
「鷺坂室長だよ。稲ぴょんとメル友らしいぞ」
…知らなかった。
「あのな、比嘉のことなんだけど、アイツの奥さん造り酒屋だろ?」
確かにそう聞いていた。
「アイツが下士官のままでいるのは、広報の仕事の為もある。
でもそれ以上にもしかしたら家族の為だろうな、と考えた」
「…片山さん、比嘉さんが幹部への昇格試験受けないこと、
責めてたクセに」
「あ、あ、あ、後から考えたんだよっ。アイツ、
いつもニコニコしやがって、本心解りにくいじゃないか。
――そうじゃなくて!」
珍しく片山さんは真面目な声で言った。
「ウチのカミサンも元は大企業のキャリアだったのを、
妊娠と同時に仕事辞めたんだ。今は関連会社でパートで働いてる。
皆何とか融通してやってるんだ。空井と稲ぴょんの分際で
完璧なんか目指すな。必ずいいやり方があるんだから」
「……そう、ですね」
「自分たちで自己完結して別れたりすんなよ!」
「…………」
始まったばかりの関係に、魅力も執着もあった。
別れる、と言う選択肢など思いも寄らなかったのだけど、
もしこの関係が彼女の重荷になっていったら?
片山さんの一足先走ったお説教はともかくとしても。
掴んでいた携帯を開いて、履歴から彼女の名前を探した。
「空井さん…」
彼女は明らかに驚いていた。
互いの仕事を考慮して、平日、特に日中は電話をかけたことがない。
でもいざ彼女の声を聞いたら、何から話したものかと迷い始めたその時、
彼女が言った。
「あの、今度の週末、なんですけどっ」
「はい?」
「おねだり…してもいいですか?」
「おねだり?」
「わたし夕飯までには必ず戻るので、空井さんが作った
オムライスが食べたいです」
「……それ、鷺坂室長から聞いた?」
「…『アイツ、オムライス綺麗に作るの得意だぞ』って」
「いいよ。ケチャップで『リカ』って名前書いておこうか?」
「………ハートマークにして下さい」
小さな声が答える。
すると電話の向こうで『稲葉!』と彼女を呼ぶ声が聞こえた。
彼女の『はい』と答える声も。
「すみません、電話切りますね。また週末、楽しみです」
彼女の電話が切れた後、ふと窓の外を見た。
夏らしく青空にくっきりした白い雲が浮かんでいる。
週末、彼女の分のオムライスには、ブルーが空に描くような、
大きなハートマークを。
そう思ったら、思わず笑みが零れた。
七月に入り梅雨が明けると、毎日真夏日が続いた。
基地内でも熱中症対策に余念がなかった頃、官舎に帰宅すると、
小さな封筒が宅配ボックスに入っていた。
差出人は『稲葉リカ』。
すぐにピンと来た。
中身は彼女の部屋の合鍵だ。
前回のデートの時に、二人で必死に知恵を絞った結果だ。
テレビ局に勤める敏腕ディレクターの彼女が、
世間では休日である筈の日曜日に休みを取るのは難しい。
しかし家には何とか帰宅しているとのことから、
土曜から外泊届けを出して、彼女の部屋に行き帰宅を待つことにした。
この案を出した時に、彼女はとても困った難しい表情になった。
彼女を良く知らない人が見たら、怒っているように見えたかもしれない。
「でもそれじゃあ空井さ…大祐さんがあんまりじゃないですか。
土曜でも帰宅時間すごく遅いこともあるし」
「それまで広報の資料やDVDでも借りてきて見てるよ」
「でも…」
「もし、良かったら夕飯くらい作って待ってるけど…」
「え!お料理するんですか?」
彼女は真ん丸に目を見開いた。あまりに可愛らしくて口許が緩む。
「ほとんど官舎で独り暮らしだからね。
パイロットの時は食堂で食べることになってたけど、
P免になってからは、自炊してる」
「………」
そう言えば彼女の部屋を訪れるようにはなったが、
彼女が料理をしている所は見たことがなかった。
多分普段は忙しさのあまり外食が多いに違いない。
「それにリカの部屋で待ってれば、ほんの少しでも毎週会える。
結婚してからの生活も、こんな感じになるんじゃないかな?だったら…」
ふと見たら彼女は、酸性水にどっぷり浸かった
リトマス試験紙そのままに真っ赤になっていた。
「………もう、そ、だ、大祐さんて本当に順番逆」
「え?」
彼女ははあっ、とため息をついて改めて僕を見た。
「解りました。合鍵作って送ります。来週までには実行出来るように、
準備しますから」
何にそんなに反応したのかは解らなかったけど、
これで僅かの時間でも彼女に会って、触れていることが出来る。
その嬉しさと言ったらなかった。
早速土曜になると合鍵を持って彼女の部屋に向かった。
途中彼女から『どうしても抜けられない会食が入りました。
夕飯食べてて下さい。ごめんなさい』と言うメールが入ったので、
人形町の駅前で適当に済ませた。
彼女の部屋は彼女がいないと、夏だと言うのにひんやりと冷たい気がした。
テーブルの上にメモがあった。
『冷蔵庫に以前大祐さんが美味しいって言っていたお店の
マドレーヌがあります。良かったらどうぞ。 リカ』と書かれている。
出会った頃に、元パイロットだと紹介された僕に
『戦闘機って人殺しの道具ですよね?』と言った彼女とは
かなりの隔たりがある。
あの時はあまりのことに、言われた内容より言った彼女の存在そのものに
面食らってしまったが、今思えば彼女らしい話だった。
あまりにも素直で生真面目、真っ直ぐなのだ。
まるで高い空目指して伸びる筍だが、それが良い方向に向かうと
美しくしなる青竹のようで、凛として侵しがたい雰囲気を纏う。
抱き締めてみると、また思いもよらない表情を見ることになり、
要するに自分は彼女からは全く目が離せなくなっていたのだ。
予め持ち出し許可を得て、借り受けた入間の広報室にある、
今までの報道で使われた映像を編集したDVDを見始めた。
広報に携わって大分経つが、今だ報道の部署には配属されたことがない。
この際だから勉強しようと思ったのだ。
DVDを見ること一時間半。
時計は夜の11時になろうとしていた。
玄関から鍵を開ける音がする。
彼女が帰ったらしい。
DVDを止めて、ソファから立ち上がった。
「おかえり…」
「………空井…さん。ただい」
言い終わる前に靴を脱ぎかけた彼女が、崩れた。
慌てて駆け寄る。
どうやら酔ってるらしい。
「……今日は少しでも早く帰りたかったのに、
サイアクなプロデューサーとの会食が入って断れなくて…。
あの人女性には、やたら飲ませようとすることで有名だから」
まだ呂律が回っている所を見ると、『そこまで』は酔ってはいないらしい。
そっと抱き起こそうとした。
彼女が突然、こちらを真っ直ぐに見上げた。そしてふにゃりと微笑う。
「稲葉リカ、空井一尉のご命令通り、限界までは飲みませんでしたっ」
可愛らしい手付きで敬礼の真似事までする。
元々そんな気はなかったが、どんな男でもこれは怒れない。
「任務ご苦労様。ご褒美に部屋までお運びしますよ、お姫様」
「えっ」
驚く彼女に構わず、すいっと抱き上げた。
思っていたより軽い。
こんな小さな身体で、こんなハードな仕事をどうやって
こなしているんだろう。
彼女は抱き上げた直後、身体を硬直させたものの、
じきに胸に頭をもたせてかけた。
アルコールのせいかぐったりしている。
全く仕事に託つけて、一体どんな男が何の権利があって彼女に
こんなに飲ませるのか。
今日の会食の相手とやらを、それこそF―15に乗って
追い回したいような気分になる。
「怒ってます…?」
「怒ってないよ」
「怒ってる」
「…君にこんなに飲ませた会食の相手にね」
「……夕御飯、空井さんと食べたかったな」
華奢な左手をきゅっと握り締めた。
「明日は午後出勤だから、お昼までは一緒にいられます」
「じゃあ、朝御飯は僕が作ります。駅前に24時間のスーパーがあったから、
一緒に買い物に行こう」
「……わたしこれじゃあ『妻』の役割果たせない」
「えっ!?」
思わず彼女を落としそうになったが、何とかベッドまで辿り着いていたので、
そっと彼女を下ろす。
「わたしだって、きちんと尽くしたいのに、こんなことばかりで…」
言葉の最後は小さくなりながら、彼女は眠ってしまった。
触れるか触れないかの場所で、彼女の頭をなでる。
「君は君のままでいいのに」
思わず口をついて出た。
まだ始まったばかりだ。
色々あっていい。
だから彼女にこんな風に気を使わせたくない。
せめてこれは許されるかと、彼女の脇にそっと横たわった。
彼女が起き上がる気配で目が覚めた。
瞼を開けて見ると、ようやく夜が明けて、朝日が射し込み始めた時間らしい。
「ごめんなさい、起こしちゃいました?」
「ん…」
「シャワー浴びて来ます。わたし、昨日あのまま寝ちゃったから」
「僕も入ろうかな…」
「じゃあ、お先にどうぞ」
「一緒でもいいんじゃないですか?」
「ええっ!」
「………そんなに驚かなくても」
「……わかりました。一緒に…」
ごもごもと口ごもって、彼女は立ち上がり寝室の扉を開けた。
先に彼女がシャワーを浴びてる所を、服を脱いで覗きこんだ。
「あの…」
「わ、わ、わ………」
彼女が絶句した。
視点がこちらに定まったままだ。
「リカ…?」
尋ねてみて、こちらもどきりとした。
白い肌が上気して薄紅色に色付いていた。そして滑らかな跡を次々と残して、
シャワーの滴が肌の上を滴り落ちる。
目が離せなかった。
時間にしたらほんの十秒くらいだろう。
でも実感としては、随分長いことそうして見つめあっていた。
最初に我に返ったのは彼女で、突然頬を染めて、俯いた。
「そ、そ、そらっ、いえ、大祐さん、入ったら?」
「え。あ、ああ、あー、はい」
そうして彼女からシャワーを受け取って、熱い湯を浴びると、
改めて気付いてしまった。
彼女を――今目の前にあるこの華奢で白くて、柔らかな線の、
この身体に自分は触れていたんだと、はっきり自覚した。
最初に彼女に触れた時から今まで、あまりにも夢中になっていて、
見ていながら、見えてなかったのかもしれない。
操縦に気を取られて、乗っている機体全体のフォルムを忘れてしまうような
感じだろうか。
そう思った途端、彼女に触れたくてたまらなくなった。
今度は一つずつ、大切に確かめながら。
自分たちに許された時間は少ないからこそ。
「リカ…」
ネットにボディソープを泡立てていた彼女は、呼ばれて振り向いた。
その瞬間腕を伸ばす。
「…っや、」
背後から抱き締められて、彼女は驚いて身を縮めた。
「欲しいんだけど…いいかな?」
「……あ」
彼女は微かな声を出して、抱き締めた手の僅かな動きに反応した。
そして、小さくこくりと頷きを返した。
バスルームではやっぱり狭くて、ベッドの上に戻ってきた。
一度抱き締めて、一途な求めに応じてしまうと、あとはキリがなく、
どれだけ触れても飽きることなどなかった。
今まで自覚したことはなかったけど、自分の思わぬ欲の深さに
驚かされもする。
「リカ…」
彼女は物憂げに瞼を開いた。
「却って疲れさせてしまった?」
彼女は穏やかに微笑って、首を振った。
白い腕を伸ばして、こちらの首を巻く。
「早起き出来て良かった…ろくに話も出来なくて、
終わりだったらどうしようと思ったから」
「…君は」
そっと背に腕を回し、抱き締める。
「僕は君に無理させたい訳じゃない…だから」
「無理じゃありません」
必死な瞳(め)をした彼女が僕を見た。
「昨日だって少しでも早く戻って来たくて
…大祐さんがいるって思ったら、たまらなくて。だから…」
「『妻』の役割が果たせない、なんて言うから、心配になった」
「ええっ!そんなこと言いました?あ~、もうっ。
昨日は強いカクテルばかり勧められて、
自分のペースで飲めなかったから…」
思わずため息が出た。
彼女を取り巻く環境のことを考えたら、離れてる間
決して安心出来る訳じゃない。
だからと言って、肌身離さず側にいることも出来ない。
こうして腕の中に閉じ込めておけたら…なんて言う
我儘な気持ちを振り払った。
「まだ始めたばかりだし…」
「わたし…結婚なんて出来るのかな…?」
「………」
そうしたくて、少しでも二人でいる時間が欲しくて今こうしてる筈だ。
でもそれが彼女にプレッシャーをかけることになるんだろうか。
あれこれと考えてるうちに時間が来て、彼女は再び出勤し、
自分も官舎に戻った。
すっきりしないまま、週の半ばまで過ごすと、
例の如く片山さんから電話が来た。
「…早くも暗礁に乗り上げたって?」
「………一体何処から聞いてそんな話に」
「鷺坂室長だよ。稲ぴょんとメル友らしいぞ」
…知らなかった。
「あのな、比嘉のことなんだけど、アイツの奥さん造り酒屋だろ?」
確かにそう聞いていた。
「アイツが下士官のままでいるのは、広報の仕事の為もある。
でもそれ以上にもしかしたら家族の為だろうな、と考えた」
「…片山さん、比嘉さんが幹部への昇格試験受けないこと、
責めてたクセに」
「あ、あ、あ、後から考えたんだよっ。アイツ、
いつもニコニコしやがって、本心解りにくいじゃないか。
――そうじゃなくて!」
珍しく片山さんは真面目な声で言った。
「ウチのカミサンも元は大企業のキャリアだったのを、
妊娠と同時に仕事辞めたんだ。今は関連会社でパートで働いてる。
皆何とか融通してやってるんだ。空井と稲ぴょんの分際で
完璧なんか目指すな。必ずいいやり方があるんだから」
「……そう、ですね」
「自分たちで自己完結して別れたりすんなよ!」
「…………」
始まったばかりの関係に、魅力も執着もあった。
別れる、と言う選択肢など思いも寄らなかったのだけど、
もしこの関係が彼女の重荷になっていったら?
片山さんの一足先走ったお説教はともかくとしても。
掴んでいた携帯を開いて、履歴から彼女の名前を探した。
「空井さん…」
彼女は明らかに驚いていた。
互いの仕事を考慮して、平日、特に日中は電話をかけたことがない。
でもいざ彼女の声を聞いたら、何から話したものかと迷い始めたその時、
彼女が言った。
「あの、今度の週末、なんですけどっ」
「はい?」
「おねだり…してもいいですか?」
「おねだり?」
「わたし夕飯までには必ず戻るので、空井さんが作った
オムライスが食べたいです」
「……それ、鷺坂室長から聞いた?」
「…『アイツ、オムライス綺麗に作るの得意だぞ』って」
「いいよ。ケチャップで『リカ』って名前書いておこうか?」
「………ハートマークにして下さい」
小さな声が答える。
すると電話の向こうで『稲葉!』と彼女を呼ぶ声が聞こえた。
彼女の『はい』と答える声も。
「すみません、電話切りますね。また週末、楽しみです」
彼女の電話が切れた後、ふと窓の外を見た。
夏らしく青空にくっきりした白い雲が浮かんでいる。
週末、彼女の分のオムライスには、ブルーが空に描くような、
大きなハートマークを。
そう思ったら、思わず笑みが零れた。
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性別:
非公開
職業:
主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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