タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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前回、前々回と拍手頂きましてありがとうございます。
調子に乗って絶賛継続中です。
今日はドラマの最終回。
素早く子供たちを寝かせるのが、私にこの後与えられた使命であります(^.^)
どうも我が家の空井くんはカワイソウでw
タタ奈々見てる方には『またやってんのか?!』と感じるか
『タタルさんはあんなに引っ張ったくせにシアワセだよな』と思われるか…。
小説は続き記事からです。
調子に乗って絶賛継続中です。
今日はドラマの最終回。
素早く子供たちを寝かせるのが、私にこの後与えられた使命であります(^.^)
どうも我が家の空井くんはカワイソウでw
タタ奈々見てる方には『またやってんのか?!』と感じるか
『タタルさんはあんなに引っ張ったくせにシアワセだよな』と思われるか…。
小説は続き記事からです。
◆◆◆
梅雨に入った。
梅雨入り宣言したと言うのに、何日も晴天が続き夏の水不足が
懸念されていた。
そんな日の日曜の明け方。
自分は今回で二度目になるが、
彼女――稲葉リカのマンションにいた。
しかも彼女のベッドで、彼女の隣に寝ている。
前回の失態?にもめげず、彼女から来た『今度の土曜の夜に会えませんか?』
のメールに、速攻で返事をした。
そしてまた彼女が仕事で見つけた店に行き、食事をして、
帰宅する段取りになった時に、
彼女はそれが当然と言うようにタクシーを止め、僕にも乗るように言った。
部屋に入るなり、彼女はくるりと振り向いて言う。
「シャワー浴びて来ていいですか?」
まるで重大な発表を聞くときの記者のような、真面目一途な表情だったが、
『シャワー』と言う単語に思わず反応して、自分の顔が赤くなったのが解った。
「あ、ああ、はい。あの後で僕もいいですか?」
すると振り向いた彼女は多分こちらより赤くなって、答えた。
「…はい、お願いします」
浴室から出ると、彼女は髪を乾かしている最中だった。
着替えなど持参している筈はなく、仕方ないから上半身は裸で
スラックスだけ履いて彼女の寝室を覗く。
「ありがとう」
「え、あ、ああ、は、ハイっ」
彼女は何に慌てたのか、ドライヤーを取り落とした。
「隣に行ってもいいかな?」
「……………ハイ、こちらへどうぞっ」
彼女は鯱張って、ベッドに座る位置を少しずらした。
「…緊張してる?」
「し、し、してません」
「してるよ」
自分を棚上げして畳み掛けた。
「してませんっ。いつも通りです」
「それなら…」
彼女の腰に腕を回して引き寄せた。
こう言うことは勢いが必要で、覚悟が決まった時は
速攻行動するに限る。
滑走路から離陸する直前の飛行機のような状態だ。
少しでも迷いが生じたら、動けなくなる。
「………」
口付けると彼女は素直に口唇を開いた。
細い指がこちらの肩に僅かに力をかけたのが解る。
キスが終わって、お互い見交わした時、自分の想像以上に
気持ちが高ぶっているのが解った。
もう今夜は止まれない。
止まってなんてやれない。
そう思った。
すっぽりと腕の中に入っている彼女を、
そっとベッドに横たわらせる。
「…空井さん、わたし…」
切ない声が耳を掠める。
「……いいかな?」
彼女は微かに頷く。
たまらなくなって、彼女に覆い被さり、またキスをした。
今度は何度も繰り返して。
背に回された指先にこそばゆさを覚えながら、首筋に口唇を移し、
その滑らかな感触に嬉しさを増して、次第に鎖骨へと
移動した時だった。
「…て」
彼女が僅かに動いた。
「空井さん…待って」
「もう十分(じゅうぶん)待ったから、待てない」
彼女はものすごく困った表情になった。
渋々ではあったが何事かと思い、仕方なく身体を起こした。
「ご、ご、ごめんなさいっ」
言うなり彼女は飛び起きて、寝室の扉を開けて出ていった。
まさに逃げる時の兎みたいに。
彼女が向かったのはトイレのようだった。
まさか緊張し過ぎてお腹を壊した?
彼女のある意味での残念ぶりは今に始まったことではないから、
驚くことではなかったが、これでは勢いよく滑走路を走ったものの、
離陸直前に虫垂炎になって飛び立てなかったパイロットみたいなものだ。
彼女がおそるおそる寝室の扉を開けた。
「あの…」
「……」
次の言葉を待つしかなかった。
「まだ予定日まで五日はあるはずだったのに。
なんでこう言う時に限って早く来ちゃうんだろう」
「…………」
それはその、もしかして『お月様の日』と言うヤツだろうか。
ベッドに腰掛けたまま、彼女を見上げた。
「ごめんなさいっ」
彼女は目の縁を赤くして、こちらを見つめている。
こんな表情をされたら。
ただでさえ、男には踏み込める領域の話ではなかったから、
許すも許さないもない。
「稲葉さん、此処、来て」
ベッドをポンポンと叩く。
「あ…でも」
「ただ側にいたいだけです。だから」
「………」
彼女は何故か足音を忍ばせて、隣に座った。
あまり驚かせたくはなかったけど、触れてはいたかったから、
彼女の肩を静かに引き寄せた。
彼女は戸惑いながらも、頭をそっとこちらの肩にもたせかける。
「勘違いしないで欲しいな」
「え…?」
「僕は何も『それだけの為』に稲葉さんの部屋に
来た訳じゃないってこと」
「………そう、なんですか?」
彼女にしては珍しく、おずおずとこちらを見た。
「当たり前でしょう。僕はそれがたったひと月に一度、一年に一度、
三年に一度になったって、稲葉さんの隣にいたいから、
こうして此処にいるのに」
「…………」
紛れもない本心だったが、後でほんの少し後悔した。
この話を(話す気はないが)片山さんあたりが聞いたら、
大爆笑されそうだ。
そして彼女は安心したように、今、腕の中で安らかに眠っている。
20代をほとんどブルーのパイロットになる為に捧げてしまった自分は、
女性を抱き締めて眠ると言うのが、こんなに甘くて、切ない、
そしてとんでもなく苦しいものだと忘れてしまっていた。
とても快眠とはなりがたくて、彼女の寝顔を見てはため息をついた。
信頼されている。
それはいい。
今の自分の頭の中を駆け巡るあれこれを、彼女には知られたくはない。
しかし。
このままずっと安眠枕のような扱いをされてしまったら、どうしよう。
「それは――お前あれだよ。弁天様だな」
「はあ?」
最近昼休みを狙って、片山さんがよく電話をかけてくるようになった。
「デートで弁天様を祀ってあるような公園に行ったりしなかったか?
バカにしてるかもしれないが、意外とスゴいんだぞ。
比嘉っちがマジで心配してた。厄除けの神社リストアップしておくって」
「余計なお世話ですよ」
「そうかなー。アイツはこれも広報の仕事のうちだって言ってたぜ。
入間の広報官が溜まりに溜まった挙げ句、変な発言でもしたら困るからな。
人生の先輩としてはよろしく導いてやらないと」
「…………」
自分たち二人のことは、彼らには完全に遊ばれているらしい。
言いたいだけ言うと「またな~」と暢気そうに片山さんは電話を、
いつもの如く一方的に切った。
ため息が出た。
今週何度目だろう。
キスはした。
彼女の部屋に入れるようになった。
しかしその先が何故か進めない。
いや、一つずつは進んでるじゃないか。
前回はソファだったが今回は彼女の隣で寝たのだ。
ただ寝ただけだったけど…。
悪い予感がぐるぐる回りそうになって、頭を振った時、
携帯の着信音がなった。
「空井さん」
彼女だった。
「来週の日曜、空けられますか?」
「え?日曜?基本的には…」
「わたし、今受け持ってる仕事、超特急で片付けますから、
必ず空けておいて下さい」
彼女も言いたいだけ言うと、勢いよく電話は切れた。
例え日曜でもテレビ局ともなると、休みではない。
と言うか彼女の話を聞く限りでは、
皆、局に住んでるんじゃないかと言うくらい、
仕事ずくめの毎日のようだった。
自衛官だって、緊急に召集がかかれば、
時間外も休日もない仕事ではあるものの、
自分のような後方勤務ともなれば、それなりに休みは確保されていた。
だからここ最近始められた彼女とのデートは、
細かなスケジュール管理をして、
お互い打ち合わせた上で決められた日程だったのだ。
こんなに急に彼女が予定を訊ねて来るのは珍しい。
そして日曜日。
やや荒れた天気の日だったが、彼女はミントグリーンの傘を差して、
待ち合わせ場所に立っていた。
「…くしゅんっ」
出会い頭に突然くしゃみをした。
「あ、ごめんなさい。昨日から少し肌寒くて」
「急に梅雨らしくなったからね」
話しながら、歩き始めると彼女がふと立ち止まった。
「どうしました?」
くらりと彼女の姿勢が崩れる。
慌てて倒れかかる彼女を支えた。支えた身体に触れてみて驚いた。
―――熱い。
多分39度はあるだろう。呼吸も苦しそうだった。
すぐに気付けなかった自分の鈍感ぶりに舌打ちしながら、
タクシーを止める為、
ゆっくり大通りに向かった。
「…ごめんなさい」
何度目だろう。彼女は謝った。
「仕方ないですよ」
自分としては最大限の笑顔で彼女を見つめた。
「だって…」
ため息が出た。
期待外れ、だったからではない。
前回のことで彼女にそう思わせてしまい、無理をさせた自分に、である。
恐らく寝食を忘れて仕事を片付けていたのだろう。
こう言う時、あまりにも他者からの言い分に彼女が忠実なのは
解っていた筈なのに。
「謝るのは僕だから」
「……」
「無理をさせてしまって、ゴメン」
彼女の額から髪を、出来るだけ優しく撫でる。
「帰った方がゆっくり休め…」
ガシッと手首を白い両手が掴んだ。
「ダメ」
真っ直ぐな瞳(め)が僕を見る。
「それじゃあなんの為に必死に二週間仕事したのか、
解らなくなっちゃう」
「でも…」
「この間、空井さんが帰った後、この部屋に戻ったら、
自分は一人ぼっちだったんだって、強く感じちゃったんです。
わたし、もう一人は嫌だ…って」
「……それで?」
「だから少しでも早くお休みを作ろうと思って。
そうしたら今度は空井さんにだ…っ」
突然彼女は真っ赤になった。
「何?」
「なななな、何でもありませんっ」
「えっ、気になるなあ。『だ…』の続きは?」
ある予感があった。
「…嫌です!絶対言わない!」
「言わないとキスするよ?」
「それもダメっ。伝染っちゃう」
「じゃあ言って。君の言葉で聞きたいから」
「…………だ、抱き締めて貰うんだって」
きっと熱が無くても消え入りそうな声だったに違いない。
「今度はちゃんと……わたし、空井さんに抱いて欲しくて」
思わず口許から笑みが零れた。
この言葉だけでも今日は満足だった。
「今夜はスーパームーンの日らしいけど」
ふと視線を反らした。
「スーパームーンの日は情緒不安定になりやすいって、
統計があるらしいね。
空自は夜間飛行は少なかったけど、一度スーパームーンの日に
飛んだことがある」
彼女は不思議そうにこちらを見ていた。急に話題がそれたからだろう。
「蒼白い月の光で、確かに今自分が何処を飛んでいるのか、
一瞬解らなくなった。………今の稲葉さんの言葉は」
そっと彼女を見た。
「情緒不安定だからじゃないですよね?」
「なっ…そんな訳ないじゃないですか」
「後で違うって言ったりしないかな?」
「しません!」
断言してから彼女ははたと気付いたようだった。
「……空井さん、わざと、でしょ」
「一人が嫌だって件については、次の時にじっくり話そう。
だから今日はゆっくり休んで」
頭をくしゃりと撫でた。
「何処に行くんですか?」
「今夜はソファで寝るよ」
彼女は眉を八の字に下げて、なんとも困ったような顔になった。
だからもう一度、彼女の側に戻り、そっと額に口唇をつけた。
「おやすみなさい」
彼女はホッとしたように、微笑った。
外はもう雨が上がっているようだった。
一年で一番大きな満月が地上を照らす。
心が揺れたからじゃない。
多分こう言う時間が自分たちには必要なんだろうと、自然に思えた。
梅雨に入った。
梅雨入り宣言したと言うのに、何日も晴天が続き夏の水不足が
懸念されていた。
そんな日の日曜の明け方。
自分は今回で二度目になるが、
彼女――稲葉リカのマンションにいた。
しかも彼女のベッドで、彼女の隣に寝ている。
前回の失態?にもめげず、彼女から来た『今度の土曜の夜に会えませんか?』
のメールに、速攻で返事をした。
そしてまた彼女が仕事で見つけた店に行き、食事をして、
帰宅する段取りになった時に、
彼女はそれが当然と言うようにタクシーを止め、僕にも乗るように言った。
部屋に入るなり、彼女はくるりと振り向いて言う。
「シャワー浴びて来ていいですか?」
まるで重大な発表を聞くときの記者のような、真面目一途な表情だったが、
『シャワー』と言う単語に思わず反応して、自分の顔が赤くなったのが解った。
「あ、ああ、はい。あの後で僕もいいですか?」
すると振り向いた彼女は多分こちらより赤くなって、答えた。
「…はい、お願いします」
浴室から出ると、彼女は髪を乾かしている最中だった。
着替えなど持参している筈はなく、仕方ないから上半身は裸で
スラックスだけ履いて彼女の寝室を覗く。
「ありがとう」
「え、あ、ああ、は、ハイっ」
彼女は何に慌てたのか、ドライヤーを取り落とした。
「隣に行ってもいいかな?」
「……………ハイ、こちらへどうぞっ」
彼女は鯱張って、ベッドに座る位置を少しずらした。
「…緊張してる?」
「し、し、してません」
「してるよ」
自分を棚上げして畳み掛けた。
「してませんっ。いつも通りです」
「それなら…」
彼女の腰に腕を回して引き寄せた。
こう言うことは勢いが必要で、覚悟が決まった時は
速攻行動するに限る。
滑走路から離陸する直前の飛行機のような状態だ。
少しでも迷いが生じたら、動けなくなる。
「………」
口付けると彼女は素直に口唇を開いた。
細い指がこちらの肩に僅かに力をかけたのが解る。
キスが終わって、お互い見交わした時、自分の想像以上に
気持ちが高ぶっているのが解った。
もう今夜は止まれない。
止まってなんてやれない。
そう思った。
すっぽりと腕の中に入っている彼女を、
そっとベッドに横たわらせる。
「…空井さん、わたし…」
切ない声が耳を掠める。
「……いいかな?」
彼女は微かに頷く。
たまらなくなって、彼女に覆い被さり、またキスをした。
今度は何度も繰り返して。
背に回された指先にこそばゆさを覚えながら、首筋に口唇を移し、
その滑らかな感触に嬉しさを増して、次第に鎖骨へと
移動した時だった。
「…て」
彼女が僅かに動いた。
「空井さん…待って」
「もう十分(じゅうぶん)待ったから、待てない」
彼女はものすごく困った表情になった。
渋々ではあったが何事かと思い、仕方なく身体を起こした。
「ご、ご、ごめんなさいっ」
言うなり彼女は飛び起きて、寝室の扉を開けて出ていった。
まさに逃げる時の兎みたいに。
彼女が向かったのはトイレのようだった。
まさか緊張し過ぎてお腹を壊した?
彼女のある意味での残念ぶりは今に始まったことではないから、
驚くことではなかったが、これでは勢いよく滑走路を走ったものの、
離陸直前に虫垂炎になって飛び立てなかったパイロットみたいなものだ。
彼女がおそるおそる寝室の扉を開けた。
「あの…」
「……」
次の言葉を待つしかなかった。
「まだ予定日まで五日はあるはずだったのに。
なんでこう言う時に限って早く来ちゃうんだろう」
「…………」
それはその、もしかして『お月様の日』と言うヤツだろうか。
ベッドに腰掛けたまま、彼女を見上げた。
「ごめんなさいっ」
彼女は目の縁を赤くして、こちらを見つめている。
こんな表情をされたら。
ただでさえ、男には踏み込める領域の話ではなかったから、
許すも許さないもない。
「稲葉さん、此処、来て」
ベッドをポンポンと叩く。
「あ…でも」
「ただ側にいたいだけです。だから」
「………」
彼女は何故か足音を忍ばせて、隣に座った。
あまり驚かせたくはなかったけど、触れてはいたかったから、
彼女の肩を静かに引き寄せた。
彼女は戸惑いながらも、頭をそっとこちらの肩にもたせかける。
「勘違いしないで欲しいな」
「え…?」
「僕は何も『それだけの為』に稲葉さんの部屋に
来た訳じゃないってこと」
「………そう、なんですか?」
彼女にしては珍しく、おずおずとこちらを見た。
「当たり前でしょう。僕はそれがたったひと月に一度、一年に一度、
三年に一度になったって、稲葉さんの隣にいたいから、
こうして此処にいるのに」
「…………」
紛れもない本心だったが、後でほんの少し後悔した。
この話を(話す気はないが)片山さんあたりが聞いたら、
大爆笑されそうだ。
そして彼女は安心したように、今、腕の中で安らかに眠っている。
20代をほとんどブルーのパイロットになる為に捧げてしまった自分は、
女性を抱き締めて眠ると言うのが、こんなに甘くて、切ない、
そしてとんでもなく苦しいものだと忘れてしまっていた。
とても快眠とはなりがたくて、彼女の寝顔を見てはため息をついた。
信頼されている。
それはいい。
今の自分の頭の中を駆け巡るあれこれを、彼女には知られたくはない。
しかし。
このままずっと安眠枕のような扱いをされてしまったら、どうしよう。
「それは――お前あれだよ。弁天様だな」
「はあ?」
最近昼休みを狙って、片山さんがよく電話をかけてくるようになった。
「デートで弁天様を祀ってあるような公園に行ったりしなかったか?
バカにしてるかもしれないが、意外とスゴいんだぞ。
比嘉っちがマジで心配してた。厄除けの神社リストアップしておくって」
「余計なお世話ですよ」
「そうかなー。アイツはこれも広報の仕事のうちだって言ってたぜ。
入間の広報官が溜まりに溜まった挙げ句、変な発言でもしたら困るからな。
人生の先輩としてはよろしく導いてやらないと」
「…………」
自分たち二人のことは、彼らには完全に遊ばれているらしい。
言いたいだけ言うと「またな~」と暢気そうに片山さんは電話を、
いつもの如く一方的に切った。
ため息が出た。
今週何度目だろう。
キスはした。
彼女の部屋に入れるようになった。
しかしその先が何故か進めない。
いや、一つずつは進んでるじゃないか。
前回はソファだったが今回は彼女の隣で寝たのだ。
ただ寝ただけだったけど…。
悪い予感がぐるぐる回りそうになって、頭を振った時、
携帯の着信音がなった。
「空井さん」
彼女だった。
「来週の日曜、空けられますか?」
「え?日曜?基本的には…」
「わたし、今受け持ってる仕事、超特急で片付けますから、
必ず空けておいて下さい」
彼女も言いたいだけ言うと、勢いよく電話は切れた。
例え日曜でもテレビ局ともなると、休みではない。
と言うか彼女の話を聞く限りでは、
皆、局に住んでるんじゃないかと言うくらい、
仕事ずくめの毎日のようだった。
自衛官だって、緊急に召集がかかれば、
時間外も休日もない仕事ではあるものの、
自分のような後方勤務ともなれば、それなりに休みは確保されていた。
だからここ最近始められた彼女とのデートは、
細かなスケジュール管理をして、
お互い打ち合わせた上で決められた日程だったのだ。
こんなに急に彼女が予定を訊ねて来るのは珍しい。
そして日曜日。
やや荒れた天気の日だったが、彼女はミントグリーンの傘を差して、
待ち合わせ場所に立っていた。
「…くしゅんっ」
出会い頭に突然くしゃみをした。
「あ、ごめんなさい。昨日から少し肌寒くて」
「急に梅雨らしくなったからね」
話しながら、歩き始めると彼女がふと立ち止まった。
「どうしました?」
くらりと彼女の姿勢が崩れる。
慌てて倒れかかる彼女を支えた。支えた身体に触れてみて驚いた。
―――熱い。
多分39度はあるだろう。呼吸も苦しそうだった。
すぐに気付けなかった自分の鈍感ぶりに舌打ちしながら、
タクシーを止める為、
ゆっくり大通りに向かった。
「…ごめんなさい」
何度目だろう。彼女は謝った。
「仕方ないですよ」
自分としては最大限の笑顔で彼女を見つめた。
「だって…」
ため息が出た。
期待外れ、だったからではない。
前回のことで彼女にそう思わせてしまい、無理をさせた自分に、である。
恐らく寝食を忘れて仕事を片付けていたのだろう。
こう言う時、あまりにも他者からの言い分に彼女が忠実なのは
解っていた筈なのに。
「謝るのは僕だから」
「……」
「無理をさせてしまって、ゴメン」
彼女の額から髪を、出来るだけ優しく撫でる。
「帰った方がゆっくり休め…」
ガシッと手首を白い両手が掴んだ。
「ダメ」
真っ直ぐな瞳(め)が僕を見る。
「それじゃあなんの為に必死に二週間仕事したのか、
解らなくなっちゃう」
「でも…」
「この間、空井さんが帰った後、この部屋に戻ったら、
自分は一人ぼっちだったんだって、強く感じちゃったんです。
わたし、もう一人は嫌だ…って」
「……それで?」
「だから少しでも早くお休みを作ろうと思って。
そうしたら今度は空井さんにだ…っ」
突然彼女は真っ赤になった。
「何?」
「なななな、何でもありませんっ」
「えっ、気になるなあ。『だ…』の続きは?」
ある予感があった。
「…嫌です!絶対言わない!」
「言わないとキスするよ?」
「それもダメっ。伝染っちゃう」
「じゃあ言って。君の言葉で聞きたいから」
「…………だ、抱き締めて貰うんだって」
きっと熱が無くても消え入りそうな声だったに違いない。
「今度はちゃんと……わたし、空井さんに抱いて欲しくて」
思わず口許から笑みが零れた。
この言葉だけでも今日は満足だった。
「今夜はスーパームーンの日らしいけど」
ふと視線を反らした。
「スーパームーンの日は情緒不安定になりやすいって、
統計があるらしいね。
空自は夜間飛行は少なかったけど、一度スーパームーンの日に
飛んだことがある」
彼女は不思議そうにこちらを見ていた。急に話題がそれたからだろう。
「蒼白い月の光で、確かに今自分が何処を飛んでいるのか、
一瞬解らなくなった。………今の稲葉さんの言葉は」
そっと彼女を見た。
「情緒不安定だからじゃないですよね?」
「なっ…そんな訳ないじゃないですか」
「後で違うって言ったりしないかな?」
「しません!」
断言してから彼女ははたと気付いたようだった。
「……空井さん、わざと、でしょ」
「一人が嫌だって件については、次の時にじっくり話そう。
だから今日はゆっくり休んで」
頭をくしゃりと撫でた。
「何処に行くんですか?」
「今夜はソファで寝るよ」
彼女は眉を八の字に下げて、なんとも困ったような顔になった。
だからもう一度、彼女の側に戻り、そっと額に口唇をつけた。
「おやすみなさい」
彼女はホッとしたように、微笑った。
外はもう雨が上がっているようだった。
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心が揺れたからじゃない。
多分こう言う時間が自分たちには必要なんだろうと、自然に思えた。
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HN:
森伊蔵
HP:
性別:
非公開
職業:
主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
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思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
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