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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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えーと、ドラマ見てはまりまして、寝込んでる間に原作を
読み終わりました。
それで読んだら書きたくなるだろうな~の予想通り
本当に書いちゃいました。
もうこれを本の感想に替えてってカタチで(^_^;)

空井くんと稲ぴょんも大変残念なカップルであります(笑)
どっちも微妙に間が悪い…って言うか。
原作の最後の、二人はこの先会うこともないかもしれないような
終わり方が気になって、こんな風にしてみました。
なのでドラマではなく小説の設定が主体です。
入間基地は実家が近く、ドラマの中で飛んでる飛行機たちは
なじみ深いものです(爆音の主としてw)

この勢いだと多分秋くらいに本出しちゃうでしょう。


小説は続き記事からです。


拍手[45回]


◆◆◆


入間基地の広報室に配属が決まった時に、真っ先に目に浮かんだのは、
彼女――稲葉リカの笑顔だった。


『お父さんの餞ですね』
ふわりと微笑んだその表情は優しく、それまで仕事で緊張したり、
気合いが入っていたり、また誰かにからかわれて
(主に鷺坂さん相手だったようにも思うけど)眉間に微かにしわを寄せて
困った表情だったり、とそれまで自分が知っていた彼女の表情の中には
ない顔だった。
そして――それが自分に向けられた訳ではないと悟って、
軽い羨望を彼女が笑顔を向けた相手に感じてしまい、
少し自己嫌悪にも落ちた。


二年前松島で彼女と別れてから、折りに触れてメールはしていたものの、
直接会う、声を聞くことはあれ以来なかった。
いい加減自分の我慢強さに呆れ、そして入間に移動してひと通り関係部署への
挨拶が済むと、居ても立ってもいられなくなってしまったのだ。



四月の最初の日曜日。
入間基地近くの稲荷山公園は桜吹雪が舞落ちていた。
今年は桜前線が来るのが驚く程早く、例年ならば稲荷山公園の桜が
満開になるのは、四月を一週間過ぎてからになるのに、
今年は一週間経たない内に、散ってしまっている。
稲荷山公園駅の小さな改札に佇んでいると、多くの花見客が下りた後、
少し経ってから彼女が来た。
「…空井さん」
「…………」
驚いた。
いや、見違えたが正しいかな。
彼女は『とても』綺麗になっていた。
それに比べ自分はどうだろう。
まだまだ復興したとは言い切れない松島を、
東北を離れなければならない苦しさで、気分上々とはとても言い難いこの頃
だったのだ。
だからこそ、彼女に『今度の休みにお花見でもしませんか?
出来たら今後の仕事のことも合わせて、お話もしたいので』などと言う
姑息なメールを送り、呼び出したのだ。
さぞかしうだつの上がらない表情だろうと俯いた時、彼女は言った。
「やっぱり姿勢が…綺麗なんですよね、空井さん。
 立ってる姿もとても……その、他の人と違っていたから、
 あれだけ改札が混み合っていても、すぐに解りました」
彼女は僅かに頬を染めた。
なんだかそのまま向かい合っていたら、
恥ずかしくて何処を見たらいいか解らない状態になりそうだったので、
公園に向かって歩き始めた。
「そ、その…今日は混んではいると思うのですが。
 比嘉さんから、此処なら、と言うスポットを聞いていたので。
 ――ところで稲葉さん」
「はい?」
突然歩き始めた自分につられて、彼女は小走りに着いてきた。
「今、23時からのニュースの前に10分の枠でやってる
 『日本の空と海と~deepblue~』って番組、稲葉さんの企画でしょう」
「……あ、バレました?空井さんにはお仕事で関わるまで、
 黙っていようと思ったのに」
彼女はペロリと舌を出した。
出会った頃から考えると、彼女はかなりくだけた様子だ。
何処か――そうナチュラルになった。
女性らしい柔らかさが、ふとした隙に感じられて、
油断すると今の気持ちごと感情を拐われてしまいそうで、どきりとする。
「解りますよ。稲葉さんの企画だもの。
 この前の海上保安庁の救難活動のレポなんて、10分の番組とは
 思えなかった。
 これは是非空自も売り込まないとって」
「カメラマンがとても腕のいい人が付いたんですよね。
 番組の協賛がソニーだったこともあって、カメラや機材も最新のものが
 使えて。
 仕事紹介、って言うより、そう言う仕事に携わる人から見える海と空を、
 見せたいとそう思って立てた企画だったから、
 映像が迫力のあるものを使えて、自分でも楽しい仕事なんです」
零れた笑顔が、彼女が更に綺麗になった訳を物語っていた。
「…震災の時、津波の映像ばかり流れて、局にも苦情が来たって
 話しましたよね。
 あれから、報道ってなんだろう、マスコミに出来ることって
 なんだろうって、随分考えたんです。
 わたしたちは誰かを傷付ける為にこんな仕事をしている訳ではない筈って
 …だから、今度はいつか見た筈の、元の綺麗な海や空を
 必ずまた取り戻すんだ…って気持ちにほんの少しでもなれるようなものを、
 視聴者に見て貰いたいって、そう思いました」
「……素晴らしいですね」
公園の入口が近付いて、花見客で歩道が混み合って来た。
彼女がそっと横に並んだので、気持ち歩くスピードを緩める。



「大きな桜の木…!それも沢山」
「この公園、結構歴史があるんです。元はハイドパークって言って、
 戦後すぐは米軍が住宅地に使ってた」
「ああ、それで」
彼女は公園内に点在する、木造の洋館に目を向けた。
「この辺は花見客だらけだから、もう少し奥へ…」
柔らかい芝生を踏んで、坂道を下る。
「……空井さんが」
振り向くと彼女が真っ直ぐこちらを見ていた。
「空井さんが入間に配属になって良かった。
 入間なら仕事でも関わることがあるかもしれないし、
 こうして……数少ないお休みの日に会うことも出来るから」
なんだか一番聞きたい最後の方の言葉は切れ切れで、聞こえにくかった。
彼女は耳まで真っ赤だ。
妙な所で意地っ張りで照れ屋(出会った頃はあれが『照れ』だなんて
とても考えなかっただろうが)な所は変わらない。
「…ありがとう」
今一番聞きたかった言葉だ。
あの震災以来感じてきた、自分の無力さや虚しさを、
分かち合いたくて今日彼女を呼んでしまったのかもしれない。
いや――彼女以外と分かち合いたくなかった。
彼女にだけは何も言わなくても解って貰える…そんな想いと共に。
「あ…」
彼女が坂を越えた先にある、一本の桜の古木を指差した。
「綺麗…」
凛とした眼差しが、舞い落ちる花弁を見つめている。
「比嘉さん、入間に長かったから…流石だなあ。いい場所知ってる」
少し足早になって、人気のない場所で我関せずとばかりに
静かに咲き誇る桜の木に近付いて行った。
「もう都内は散ってしまってるけど、此処は今が満開なんですね」
「……君と見たかったから」
「…さっきの、ウソです」
「え?」
「『日本の空と海と』のこと」
俯く彼女を見て、次の言葉を待つ。
「あ…勿論理由の一つではあるんです。
 でも、わたしが思い付いた切っ掛けは」
彼女は顔を上げた。
「空井さんが、空を飛んでいた時どんな風に空を見ていただろうとか、
 今どんな空や海を見ているだろうって考えたら
 止まらなくなってしまって…」
「…………」
そっと彼女の髪に触れた。
松島でそっと、自分としては最大限に優しく触れた髪に。
「そう言う時は」
細い髪が指に絡みついた。
「僕に直接そう言えばいいのに。
 それで番組の企画作ってしまうなんて、
 稲葉さんあまりにもワーカーホリックですよ」
「空井さんに言われたくないです」
真っ赤になって反論するその口唇を、ふいに塞いだ。
「………!」



花見客の喧騒は遠く、時間は静かに流れていくように思えた。
名残惜しく口唇を離すと、彼女は小さく溜め息をついた。
「…ずるい」
「えっ?」
「仕事のついでって呼んどいて、こんな風に不意討ちするなんて」
「仕事のついでって…そんなつもりは」
「空井さんが相手だから、初めから期待しないようにって、
 心に固く言い聞かせて来たのに」
「…随分だなあ。僕はついでのつもりなんか、ありませんでした」
「…初めから、き、キ、キスが目的で呼んだんですかっ」
ひらりと淡い花弁が彼女の髪に絡み付く。
「あー…もうっ」
確かに駅で再会した初めから、彼女の瞳や柔らかそうな口唇、
白い首筋に目を奪われてたのは事実だ。
でもそれ以上の何かが、多分彼女との間にはもうあるのだと
思えてならなかったから、こんな距離の縮め方をしたのに。
そっと両手を彼女の頭に触れて、そのまま肩へと下ろし、背中に回した。
小さな温もりが感じられる。そして松島で別れて以来焦がれて
ならなかったものが、一斉に自分に注がれるのが解った。
「…空井さん、怒ってるんですか?」
抱き締めた腕の中で、彼女が今までの調子は何処へと言う程のか細い声で、
聞いてきた。



一度走り出したら、止まるのは難しい。



だから今抱き締めているものを、手離す気なんか更々なかった。
どんだけ我慢してたんだ自分。
そんなツッコミを内心呟きながら、少しだけ腕の力を緩めた。
「…今度会うときは」
彼女がこちらを見上げた。彼女の髪を撫でる。
「もっと心おきない処で、一晩中こうして『なでてて』って
 言わせてくれたら、怒りません」
「………!」
ざあっと風が吹いて、桜の花弁が正に、雪のように降り落ちる。
「…相変わらず、甘えん坊ですね。でもなんかおじさん臭いし」
「おじさ…っ」
「ふふっ」
嬉しげに微笑う。
「じゃあ前払いで、もう少しそうしてわたしを『なでてて』下さい」
「次が期待出来るなら、前払いどころか過払いでも―――」
撫でてた手のひらに力を込めて引き寄せると、また口唇を寄せた。



遠く高い空でC―1輸送機の飛行音が聴こえた。



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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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