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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すでに2話目が出来上がってると言う…w
前回の『2013年の桜吹雪』の続きです。

日曜日は最終回!
ドラマはドラマでどんな決着がつくのか楽しみにしています(#^.^#)

小説は続き記事からです。


拍手[36回]


◆◆◆



彼女と再会して、また会う約束をしたのは一ヶ月後の五月。
GWが終わった頃だった。
ようやく仕事も自分の担当部分が解ってきて、仕事らしくなっていた。
統幕広報に異動した片山さんから、あからさまな探りのメールが来て、
自分としてはまだまだ彼女とのことは秘密にしておきたい気持ちから、
さりげない返事しかしなかった処、なんとメールを返信した
その日の昼休みに電話が来た。
「お前入間に異動してから、稲ぴょんに会ったんだろ?!」
「なんでそんなに確信を持って言えるんですか」
「チッチッチッ。統幕広報室のプリンス片山を舐めたらアカンよ。
 お前たちの情報はリアルタイムでオンよ」
「…………」
それはかなり嬉しくない話だ。
彼女との関係は少し押せば、あちらが引く、あちらが一歩進むと
こちらが二歩下がってしまうような、繊細でデリケートな間柄なのだ。
だから間違っても片山さん辺りには、顔を出して貰いたくない。
「なあんてな。比嘉っちから聞いたんだよ。そんでどうだった?
 花見の帰りに一発済ましたんだろ。稲ぴょん良かったか?」
「…………片山さん」
思わず声に怒気が籠る。
「あの日はあのあと狭山市の駅前まで歩いて、駅前のバーで飲んで別れました」
「…………それはすまなかった」
「え」
「事情はよく解らんが、三十路を越えた男がお預けをくらってサヨナラは、
 随分ツラいに違いない。そうだよなー、あれから大分経ってるし稲ぴょんに
 他に男が出来てて、再会したら『友達でいましょうね』ってパターンもあるよな。
 なぐさめる言葉も見つからないよ」
「待って下さい。何だって勝手に話作ってんですか!しかも僕がフラれてるし。
 彼女とは明日会います!やっと休みが合ったんですよ」
言ってからしまったと思った。これは片山さんにのせられてしまったことになるのか…?
「ふうん」
片山さんのニヤリと笑った口許が、電話なのに目の前に見えるようだった。
「今日はその為に準備中、な訳だ」
「………」
「人生の先輩として一つ忠告しておいてやる。避妊具は必ず持参しろ。
 自衛官でデキ婚は自分も相手もツラい思いをする。
 お前も我慢のし過ぎで、色々あるだろうが、それが男としてのだな」
「ハイハイ、ありがとうございました。有り難く拝聴させて頂きましたっ」
「何だよ、大事なことなんだぞっ。まあ、どっちかと言えばお前の場合、
 いざって時出来ないって可能性のが強いよな」
「な…」
「報告の電話待ってるな~」
電話は一方的に来て、一方的に切れた。
それに言いたい放題だ。
しかも自分としては、先日の流れで今回の待ち合わせだから、
考えれば考える程考えの外に置いておきたい問題だった。
生真面目な彼女のことだ。突然切り出したら怒るかもしれない。
当日ゆるゆると様子を見ながらなんて言う、
器用な真似は果たして自分に出来るのだろうか?
片山さんのお陰で忘れたいような、その実頭の片隅をぐるぐると回っていた
問題をまた意識させられることになってしまった。
 
 
 
彼女と待ち合わせたのは新宿のワインバーだった。
都内の店は彼女の方が格段に詳しく、自分は待ち合わせ場所に行くだけだった。
暗い静かな店内はジャズらしきピアノが流れ、大人っぽいムードの店だ。
彼女の話では料理は創作料理で和食と洋食、エスニック風と楽しめる店らしい。
「久し振りに、なんだか安心しました」
スパークリングのロゼのグラスを片手に彼女は、僅かに微笑んだ。
「このひと月新しい企画の立ち上げで、休みの日も出勤してたから」
「今度はどんな企画なんですか?」
彼女の企画は自分の仕事にも有益なことが多かった。
「金曜深夜の若い女性向けのバラエティで、グルメのコーナーを
 受け持つことになったんです。この店も、ついこの前撮影に使ったばっかり」
「へえ…」
「あまりにも似たような店ばかり回らされたから、疲れちゃって。
 空井さんの顔を見たらホッとしました」
「………」
曖昧に微笑み返した。
ホッとする。
安心する。
確かに自分もそうだ。
彼女に会うと、安らぎを覚える。
でもそれ以上に最近は落ち着かなさも感じるのだが、
彼女にとってお互い苦しい時を乗り越えた同士でしかないのだろうか。
前回のキス以来、何も期待していないとでも。
何だか煮え切らない気持ちのまま、杯を重ね、
気付いたら彼女はあるラインを越えていた。
 
 
 
タクシーで人形町の彼女のマンションの入口まで、乗り付けた。
さてこの先どうしよう。ノコノコ入口まで着いて行くべきなんだろうか。
「空井さん、泊まって行くんでしょ。あまり時間なかったから、
 お掃除は適当だし、ベッドは一つしかないけどいいですよね?」
果たして頷いていいものか、判断は全く出来なかったが、
きっと彼女にもある程度予感があったからこそ、例え酔っているとは言え、
こんなことを言うのだろう。
そう前向き?に理解して、彼女に着いて行くことに決めた。
尤もこんな処に放置も出来かねたのだけど…。
 
 
1LDKの彼女の部屋は、すっきりとしてあまり女性らしさはなかった。
それに生活感も少ない。仕事が忙し過ぎて、あまり帰れてないのだろう。
「どうぞいらっしゃいませ」
突然丁寧にお辞儀をして、にっこりと微笑む彼女を見たら、
自分の頭の中で何かが弾けた。
リビングに入ったばかりの場所で、彼女を抱き締めた。
「空井さん…」
彼女は不思議そうにこちらを見上げた。
まだ酔いが回っている最中らしい。
あんまりな成り行きだが、これも予想の内だった。
「…君は」
白い柔らかな頬を両手で挟んで、彼女を見つめた。
「今日どんな気持ちで、僕が此処にいると思うんですか?」
「……」
「この間のキスが幻に思える」
「そ、そんなことはっ」
ありませんと答える口唇を封じた。
微かに彼女が最後に飲んでいた、カシスワインの香りが感じられる。
上気したまさに桜色の頬で、彼女はうっとりと瞼を伏せていた。
とりあえずは満足するまで口付けて、口唇を離すと彼女は眉を八の字に寄せた。
「この前も思ったけど…」
「え…」
「空井さんって順番逆」
「順番?」
「普通キスより前に言わなきゃならないこと、ある」
「言わなきゃならないこと?」
「……わたしから言わせる気ですか?」
「………」
何だか彼女は怒り出したようだ。
さっきまで柔らかく身を任せていたのに、そっと腕の拘束から逃れてしまった。
「……今日どうして此処にいるのか、空井さんの気持ちは解らないけどっ。
 何の言葉もないままにそれはあまりに酷すぎますっ」
彼女はぷいと背を向けると、すたすたと隣の部屋に向かった。
そして枕をぽいっと渡す。
「ソファ貸します。今日はそこでお休み下さい!」
彼女はぱちんと扉を閉めて、隣の寝室で寝てしまったようだ。
「えー…」
片山さんの不吉な予言を思い出して、思わずソファに倒れこんだ。
渡された枕は、微かに彼女の髪からいつも立ち上るシャンプーか何かの香りがして、
あまりの出来事に突っ伏すしかなかった。
 
 
 
「…井さん。空井さん」
青ざめ気味の彼女がこちらを覗きこんでいる。
「……おはよう」
「あのっ、ごめんなさい。いつもハードなお仕事の自衛官の方を、
 ソファになんか寝かせて」
「…野外訓練に比べればこれくらいは、別に。それより」
ジロリと見た自分の目を、彼女は不安げに覗いている。
そっとコーヒーを差し出した。時間は朝の八時。
「約束して貰いたいことが三つあるんだけど」
「や、約束?」
一口飲んだコーヒーはかなり苦い味がした。カップをテーブルに置く。
「一つ。僕以外の人の前で限界まで飲まないこと」
「は、ハイっ」
「二つ。この部屋に僕以外の男を入れないこと」
「……そんな人誰もいませんっ」
「そうかな?昨夜はかなり気軽に僕を入れてくれたけど」
「そ、それは…」
空井さんだから、と言葉は口の中で消えた。
「三つ。君から今キスしてくれたら、昨夜の仕打ちは忘れてもいい」
「……!それはっ」
そうだ。それくらいはして貰っても構わないだろう。
よく我慢したと自分を褒めてやりたい気持ちになった時に、
彼女が真っ直ぐこちらを見ているのに気が付いた。
「そ、空井さんだって、必要なことを言ってません」
「………」
そう言えば昨夜もかなりこだわってた。
―――言葉?
「それなのにキ、キスが先に来ちゃって、このままじゃ、
 気持ちだけ置いてけぼりで、先に進んじゃいますっ」
彼女は真剣だった。
だから自分も真剣に考えた。
……言葉。
「…もういいで」
「好きだ」
背を向けかけた彼女が固まった。
「この世界の誰より――いや、比べる人なんかいないけど、
 僕は稲葉さんが好きです」
「………」
刹那、彼女の瞳が潤んだ。
そしてこちらに向き直ると、そっと口唇を寄せた。
思ったより冷たい、柔らかい感触が触れた。
たまらなくなって腕を伸ばし、彼女を抱き締める。
彼女がそっと手のひらで、こちらの胸を押したが、気付かないふりをして、
更に深く口唇を重ねた。
「ん……」
戸惑いながらも受け入れ、彼女はこちらに身を委ねていた。
出来たらこのまま…と思ったけれど。
「空井さん…わたし午後出勤なんです」
はあーっと大きなため息が、思わず漏れた。
「じ、時間ギリギリまで、空井さんが満足するように頭撫でてあげます!」
こう言う時の男の気持ちなんか、歩く生真面目の彼女に解る訳なんかない。
「じゃあ、こっちに座って」
「ハイっ」
ごろりと彼女膝の上に寝転がった。
彼女は目をまん丸にして、こちらを見た。
「なでてて」
「………」
納得いかない表情ながら、彼女の細い指先がおでこに触れた。
「わたしも大好きです」
小さな声だったけど、今まで聞いたどの声よりも、優しい声だった。
 

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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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