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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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拍手変わらずありがとうございます。
多分次の回で終われるかなと言う予想の下で書いています。

これ1本書き終わったら、少し自信がついてタタ奈々新婚旅行ネタ
とかいけるかな~なんて、調子に乗っています。
これもまた長くなりそうな、タタルさん大変(笑)みたいなネタで(^_^;)

今書いてるお話のヒロインは、非常に特殊な環境で育っています。
うまく書けてる自信はありませんが、タタルさん側からドラマを構築したら
もう少し違う角度で見た話しになるだろうと思うのです。

いつもはタタ奈々バカップル(ただしIQはやたら高い)の男女の差みたいな
ものを意識して書いているのですが、今回はキャラクターの
立場、環境の違いのようなものを意識して書きました。


お話は続き記事からです。

拍手[1回]








◆◆◆



「沙久弥と行くよ」
彼はそれまでの話題を打ち切って、わたしを見た。
「叔父さんが貴方の元に行ったのね」
「彼が来なくても、そうするつもりだった。そうでなければ、
 貴方にまとわりつく糸はほどけないだろうから」
彼はいつものように淡々と話している。
それなのにわたしの手を握る掌は熱を帯びていて、
そのアンバランスさに却って鼓動が早くなる。
夜更けに訪れた、近所の神社の境内に続く公園は、
あれだけの階段を登って辿り着くだけあって、
何の障害物もなく冬の夜空が見えた。

南の空に冷たい色の星が瞬いている。
先程彼は、あれがオリオン座で星座の中央に位置する三つの星が、
住吉の祭神なのではないかと――熱心に語っていた。
神様の名前につく『筒(つつ)』が星を意味する『つづ』に繋がるから、と言って。
わたしは今まで島で祀られていた神々の意味など、考えたこともなかった。
神はわたしにとって、要求する者であり、支配するものだった。
「…まだ心配?」
彼はそっとわたしの表情を窺うように、覗き込む。
「それは…」
二人して眠れなくて、こんな場所(ところ)にいた。
「俺としては貴方についた糸がほどければ、それでいいんだけど、
 多分そうはいかないと思う。現状を維持出来なくなることに対する
 憎悪の念は、強いだろうから…」
「…ありがとう」
高校生らしからぬ言葉に、わたしは彼の精一杯の背伸びを感じた。
そしてそれはわたし故、なのだ。嬉しくない訳がない。

叔父が島に帰ってから、わたしはもう覚悟を決めていた。
もしかしたら、他のやり方があるだろうと考えたが、
わたしにとって今大切なのは彼だけだったから、
それ以外のことを祈るのは大層贅沢に感じられた。
――だから。
「かなり冷えて来た。帰ろう」
彼は握った手を小さく引いた。



12月も半ばになって、徹也がわたしの家にやって来た。
彼は前とは違って、余計なことは何も言わなかった。
「…これ」
岡山までの新幹線の切符だった。
二枚ある。
「あの桑原って奴は何も知らないで来るのか」
「…ええ」
「余程…夢中なんだな。アンタに」
「………」
「親父は単純に考えてるけど、そう簡単な話じゃないよな。
 前のあの東京の教師だって、祭が近くなってからは疑ってた。
 島から出られたら、逃げてたかもしれない」
「…そうね」
あの人はわたしを連れて逃げようとしていた。
あの人を屠るのが、わたしの役割だとは知らなかったのだ。
何故…そう呟いた声は今でも耳に残る。
「貴方も島に帰るのね」
「結局、帰る所処(ところ)は島しかないからな。
 こういうのって一蓮托生って言うんだろ?」
徹也の笑みが、いつものように皮肉げではなく、淋しく見える。
徹也は徹也でこうして島の外に出て、感じることがあるのだろう。
自分たちの育って来た…それ故負って来た何かは、
わたしたちを今ある世の中から、隔絶するものだと言うこと。
わたしは島にいても独りだったが、東京(ここ)でも孤独だった。
徹也も同じように感じているに違いなかった。
「それじゃあ」
徹也と次に会う時。
それは島でだ。
彼には何の罪もない。
ただあの島に生まれ、島のルールで生きただけなのだから。
それでも島を出れば、それは贖い(あがない)を必要とする罪だった。
常に島の為を思え、と行った祖母の言葉が、胸の内に響いた。




「喉が渇いたでしょう?」
わたしは彼が腕を伸ばすのに気付かないふりをして、
するりと布団から抜けた。
「お茶はいいよ」
「…さっきまでは散々口の中がおかしいって、言ってたじゃないの」
「それは…沙久弥が作った味噌汁が何だか甘いような気がしたから」
「………」
パジャマを羽織ると、わたしは立ち上がる。
「お茶はまともに淹れるわよ」
彼は布団の中でうつ伏せて、細い腕で頬杖をついていた。
それでも、その行為の時には、見た目からは思いも寄らなかった力で、
わたしを引き寄せたのだ。
そして何故か急に、まるで壊れ物を扱うように優しくなったりもする。
「貴方が帰るのは、年末?」
湯呑みを二つ準備する。
「そうね。晦日近くになると、祭の最後に行く奥の宮
 ――島とは普段陸続きの小さな窟があるの。
 そのお宮が潮の関係で、完全に海の底になる日までには帰らないと」
「死と…再生か」
「………」
あまりにも的を得た答えに、怖くなる。
彼はわたしの罪のほとんどを、知ってしまっているのだろうか。
手が震えた。
「山の上にも海を祀る神社があるくらいだから、
 海が死と再生を扱っていることは、古代の人には当たり前のこと
 だったんだろうな」
「わたしにとっては、いつもいつもそこに『在る』のが海だわ」
「………」
「高校生になって、初めて隣の島に行った時、
 以外に近いので驚いた。もっと外の世界は、遠いものに感じていたから」
「小学校や中学校は?」
「必要なことは、島の人たちが手分けして教えていたわ。
 でも絵を描くことは如彦さんが教えてくれたの。
 初めて絵の具を使ったと言ったら、驚いてた」
「だろうね。…先生は貴方が…好き、だったんだ」
「…それに気が付いたのは、あの人を亡くしてからよ」
わたしはテーブルにお茶を置いた。
彼は起き上がって、わたしを背後から抱き締める。
「後でいい。お茶は冷めてからでも飲める」
低い声が耳許で囁いた。
熱っぽい口唇が、わたしの肩に触れる。
「沙久弥…泣いてる?」
「え…?」
頬に手をやると、指先が濡れた。
「…嫌なら、俺」
「違うの。…多分、わたし、誰ともこんな風にしていたことがなかったから。
 祭の儀式でしか知らない行為だったから、だから」
「…赦せないな」
彼の低い声が殊更低く聞こえた。
「貴方に触れた奴等が」
「……もう海の底よ」
わたしは振り向いて彼を見つめた。
「好き」
「……え」
「大好きよ、桑原くん」
彼もじっとわたしを見ている。
「好き、ってこう言う時に使うのね。生まれて初めて言った」
「……れも」
「聞こえない」
すると彼はわたしの腰に手を回して、静かに引き寄せた。
声のない囁きは、それでも十分に熱を帯びて、わたしには甘い響きに感じられる。
どちらからともなく口付けて、わたしは羽織っていたパジャマをまた取られてしまった。



目が覚めると、すぐ隣で彼の長い睫毛が伏せられていた。
男性としてはあまりにも長い睫毛。
瞼にかかったまるで方向の揃わない前髪も、全てが愛しい。
テーブルを見ると湯呑みが空になっていた。
―――これなら、上手くいけば二日は目が覚めないはずだった。
時折眠れなくなるわたしは、島で作られていた薬を持って来ていた。
本来ならそれは、祭の最後に『マロウド』を眠らせるのに使われる。
甘い眠りは、終わりの瞬間まで目覚めることがない。
わたしは着替えると僅かな荷物を手にした。
「ごめんね」
彼の柔らかな髪に、指先だけで触れる。
「ごめんね。多分怒るだろうね。
 ……憎んでくれていいの。だからわたしを追いかけて来てはダメ」
心から微笑んだ。
愛しいと言う気持ちに、こんなに素直になれる日が来るなんて。
いつまでも眺めていたい執着を断ち切って、わたしは部屋を後にした。


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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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