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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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と言う訳で、All my lovin'のラストを受けてリライトしました。
同じタイトルのものが二つあって煩わしいとは思いますが、
こちらを本に掲載する予定です。

タイトルはご存知の方もいるように、かつてのTMNetworkの(まだ活動中では
ありますが途中バンド名が変わったりしたので)木根尚登さんの名曲からです。
これは当時もシングル化を望む声が大きかったんですが、とうとうならなかった。
正直バンドの中心だった小室さんには、もう少しファンの声を聞いて欲しかったし
長年バンドを支え続けたメンバーに対して、気持ちを見せて欲しかったと
一ファンの立場から考えたりしたものでした。
小室さん作曲の曲も好きな曲が多く、今でもDLしてよく聴いています。


ちょっと今まで書いてきた空~の二次の総括みたいな話になりました。
お話に出てくる居酒屋さんは、比嘉さんが引退後に市ヶ谷の近くに
開いたお店ってことでいかがでしょうか?彼なら引退後の生活も
しっかりしてそうw
片山さんは意外と外部団体から地本に協力とか、多彩?な広報を未来でも
展開してそうです。きっと大祐くんもひっぱり回されているでしょうww


お話は続き記事からです。

拍手[10回]


◆◆◆


一年間、普天間基地海兵隊のベースキャンプでの訓練を終えて、渡米する事になったのは翌年の5月だった。
先に渡米し、ノースカロライナのキャンプレジューンから、ヒューストンのNASAに異動したアルヴィン・ギルバート少佐からは再三、早くこちらに来るようにと呼び出しーーまるでエマージェンシーコールのように頻繁に呼びかけがあり、書類の作成に時間がかかっていた防衛省の幹部もようやく準備を整え、出国となった。
息子の知音(かずね)――この読みにくい名前を決めたのは、妻の義兄である――は生後6カ月、飛行機での旅も問題ないとの事で、途中ハワイを中継する形で、ひと月遅れの6月に妻と共にヒューストンにやって来た。
初め見慣れない父親の姿に、知音は人見知りをしていた為、全く抱く事が出来なかった。
会ったのは昨年クリスマスと渡米前に立ち寄った東京での一週間が最後、これでは仕方ないと思い、今は親子で微妙な距離を置いている状態だ。
「人見知りは蒼太さんもしてますよ」
妻の郁は、ソファの上で少し離れて座る父親と息子の顔を見て、声を出して笑った。
「親子って面白いところが似ますね」
どちらかと言えば大人しい赤ん坊だと思う知音は、妻がピアノを弾いているとぴったり脇についていた。
幸いと言うべきか、ヒューストンのフラットにはグランドピアノを置けるスペースがあり、早速レンタルで手配して置いておいた。
6月が誕生日の妻に、プレゼントのつもりでもあった。
妻は言葉もないくらい喜んでくれたが、以降二人で過ごす時間にピアノを弾いているので、自分としては少し失敗したような気がしないでもない。
週末になると、アルヴィンや同じチームのエンジニア、先にキャンプレジューンに来ていた空自のパイロットの小林三佐が、妻の演奏や料理を楽しみに来ていた。プレッシャーは多くかかる任務ではあったものの、リラックスした良い環境で、初めエンジニアのチームとの意思疎通が上手くいかなかったと聞いていたものの、自分はトラブルなく良い仕事が出来ていたのではないかと思う。



結局新型戦闘機の開発――コードネームDragonflyと呼ばれた機体の開発には、訓練も含めて5年携わった。
無事故と言う訳には行かなかったが、安全面もかなり見直され、パイロットにも整備士にも大きな怪我をする者なく、任期を終えることが出来た。
新型機は自分が帰国して2年後、日本の航空自衛隊でも導入される事が決まっている。
当初の予定より尾翼を少し寝かし、ステルス制を高くしたもので、排気音にもかなり気を配った物になった。
旋回性能は高く、かなりの低空をフライパス出来、Dragonfly――トンボの名に恥じないフライトが可能な機体となった。
帰国してから、珍しい事に父と二人で居酒屋で飲む機会があった。
父が在職時にお世話になっていた先輩の奥さんが経営している、酒蔵直送の日本酒を置く居酒屋だった。
「偶にお前が羨ましくなるよ、蒼太」
父はちょっと遠くを見るようにして、呟いた。カウンター席だったから、横顔しか見えない。
交通事故でP免になった父には、多くの無念があっただろうと思う。
こんな事を言ったら、回転翼のパイロット達に叱られるだろうが、と前置きをしてそれでも尚且つ「回転翼で良いから、空を飛びたかった」と話していた。
「ただ――お前のお母さんと初めて出会った時に、自分の行く道がはっきり見えたように思えた。お母さん、当時は自衛隊そのものにもあまり好意を持ってなかったからだと思うけど『戦闘機って人殺しの機械ですよね』って言ったんだ」
その話は、懺悔のように母も自分が航空学校に入学する前に話していた。「自分の考え違いと浅慮から父を傷付けた」と言って。
「お母さんの当時の考えも間違ってる訳じゃない。専守防衛とは言え、軍事利用である限り戦闘に入れば誰かが犠牲になる。他国から見たら自衛隊と言えど軍事組織だってのは、身に沁みたろう?」
「……だな」
アメリカで機体の開発に関わっていた頃、録ったデータの中には機体に搭載する弾頭はどれくらい破壊や殺傷が可能か、そう言ったものも当然入っていた。
「一番良いのは、最善の訓練を尽くして、使われない事なんだけど」
アルヴィンもそう言っていた。
ただ使われた時の犠牲をゼロに近づける為にも、開発で試行錯誤を繰り返す必要があると。
「瑣末なように思えるけど、自分の歩いて来た道が無駄にならないって信じてるよ」
在職時キャリアの殆どを広報に携わって来た父は笑顔で言った。
自信に裏打ちされた笑顔だった。



帰国後は一時期横田にいたものの、ある日唐突に市ヶ谷から呼び出しを受け、呼び出された先にはなんと佐官に昇格した平田先輩がいた。
彼は今小松基地の戦術教導隊――アグレッサー部隊に所属している。
「スカウトに来てやったぞ、SKY」
明るい開け広げな笑顔は相変わらずだ。
「お前、少しデカくなったんじゃね?アメリカで随分鍛えられたな」
「先輩はGで少し縮みましたかね」
「このヤロー、口悪いのは相変わらずだな」
ガツンと拳骨が入る。
結局二つ返事で小松への異動を受け入れた。



小松への異動前に家族で北海道へ旅行をした。
知音は五歳になっていたが、言葉が遅く自分からは話さず語彙も少なかった。妻がどれだけ心配しているか、よく分かってはいたが、こればかりは即効性のある対処法が思い付かず見守るしかなかった。なるべく妻の気持ちの負担を減らしたかったから、少しでも長い休みは旅行に行き、その手配は自分がした。
アメリカから帰国するひと月前に、妻の義兄が長い闘病の末、亡くなっている。
正に闘病の文字通り、自分への挑戦を重ねた生涯だった。
知音にピアノの才能があるらしいと知り、彼は喜んでいた。すぐにメールでコンタクトを取り、幼児のピアノ教師に相応しい人物何人かにオファーして、手配してくれた。
「恐らく知音は言葉で話すより、今は音で伝える方が効率が良いと思ってるんだろう。必要があれば必ず話し出す」
最後のひと呼吸まで闘い抜いた人物の言葉を、信じない訳にも行かず、妻は今は不安を抑える事にしたようだ。
その分子供と二人きりの時は、ずっとピアノを弾き続けて、食事を摂るのを忘れた事もあった程だったらしい。



ノートを閉じた。
ため息が思わず漏れる。
やっぱりメモとは言え記録は毎日取らなきゃダメだなぁと、自分を省みる。
小松に来てからの方が細かな連絡事項が多く、現実に追われて、なかなか過去のことまで整理してる時間のゆとりがなかった。
20代の時は何でもなかったのに。
……認めたくないが、俺も歳か?
小松に着任してすぐの頃、妻の妊娠が分かった。今度は立ち会って欲しいから、と妻は金沢の総合病院の産科に通っている。
無事生まれたのは娘で、今度はウチの父が青伊(あおい)と名前を付けた。
……ブルーインパルス、そのままみたいな名前だ。
青伊もこれまた極端な子供で、2歳にならない内に、回らない舌で良く喋った。
それも航空機に関する言葉が多かったものだから、父が喜んでしょっちゅう航空機関連の本やDVDを手土産に小松の官舎にやって来ていた。
「Nothing is as scary as I can…」
「蒼太さん!」
「うわっ!」
急に背後から妻の声が聞こえて、びっくりして振り向いた。
「すみません、何度声をかけても返事しなかったから……」
「ゴメン、何?」
「青伊が飛行機見に、基地の側まで行きたいんですって。パパは今話しかけて大丈夫か聞かれました」
「今日は救難機の夜間訓練があるからなぁ」
明日は休暇で長男の知音のピアノの発表会がある。
夕食後の時間はゆっくり過ごす予定だったが、立ち上がってジャケットを着て、青伊に声をかけた。
「今日は天気も良いようだし、行くか。青伊!」
「……あい」



「うん、ちゃんと上着着たな。10月とは言え寒いからな」
小松周辺は気圧や大陸との地形の関係か、なかなか快晴の日が少ない。
大抵はどんよりと曇っている。
航空祭も台風で中止になった過去があり、最近では小松の航空祭に晴れで参加出来るとラッキーになるなどと言われていた。
「今日はちょう、調整してた、ロクマルたんがようやく、ふら、フライトなの」
「ああ、そう言えば」
先日福井方面の水害に出動後、修理してたって言ってたっけ。
「ちょっと遠いけど、いつもの場所、行くか?」
「らじゃ!」
子供用椅子の付いた自転車をガレージから出すと、青伊はよいしょと手伝うまでもなく、自転車に乗り込んだ。
身体能力も高いよな、2歳にしちゃ。
親バカとは思いつつ、娘の自立した動きに関心してしまう。
「はい、テイク・オフの準備はオッケーですか?」
「オッケーでしゅ!」
街の郊外にある、小高い丘まで自転車を走らせた。
既に途中通りかかる空き地は、薄も枯れ始め、秋も終わりを告げていた。
今朝の天気予報では来週雪が降ると言っている。どうりで空気がキンと冷たい筈だ。
前に乗る青伊の頬も赤い。
15分程で目的地の広場に着いた。
見上げると、宇宙さながらの夜空が広がっている。
月のない夜なのだ。
「あの四角形がペガサス座だな。少し下って牡牛座、昴……」
「パパはアメリカでせいじゃ、おぼえたでしゅ?」
「うん、かーちゃん口説くのにな」
意味がわかったのか、青伊はケタケタと笑った。
「ママにはあいらぶゆって言わないと、分かんないでしゅ」
「……簡単じゃないの」
アメリカの生活で一つ気が付いたのは、妻は日本語で口説いても反応が今ひとつ鈍かったが、英語ならばダイレクトな反応があった事だ。
よくよく聞いてみると、海外生活の非常に長かった妻は、家庭内ではフランス語ドイツ語併用、対外的には英語を使用していたとのこと。
彼女にとっては日本語は外国語だったのだ。
……早く言って欲しかった。
だが、だからと言って、I love youなんて日常的に言える訳がない。
「あ、ゆー125えーでしゅ」
キィーンと音を立てて基地から一機の空色の機体が上がった。
「青伊はU-125A好きだなぁ」
「人をたしゅける飛行機でしゅ」
「飛行機は皆んな人を助ける為に飛んでるんだよ、本当は」
「あとお顔がしゅっとして、イケメンでしゅ」
「それがホンネか」
水色の腹を見せて、音を響かせU-125Aは通過して行った。
そして続いてロクマルのプロペラ音。
「ロクマルたんはリカちゃんが好きでしゅね」
濃紺の洋上迷彩は夜空に溶け、ライトはまるで星に見えた。
バタバタと低いプロペラ音が通り過ぎるまで、娘と二人、じっと夜空を見上げていた。
「今日も海に訓練行くんでしゅね」
「うん、無事に帰って来ますように!」
「無事でしゅよ」
「分かってるし信じてるけど、パイロットも整備士も毎回そう思うんだよ。帰るをカエルに引っ掛けて部隊マークがカエルの部隊もあるんだから」
「ママが、今パパがここにいるのは、おまもりのおかげって言ってたでしゅ」
7年前の墜落事故より、妻はかなり心配性になった。無理もない。
小松に赴任した時も、妻の為に金沢神社と地元のお宮両方で、お祓いを受けたりもした。
「ママと知音と青伊がいるから、パパは必ず帰って来るんだよ」
青伊を抱き上げて、肩車する。
「ほえー」
「お空少しは近いか?」
「うん」
初の戦闘機の女性パイロットが採用されたのは2018年の事。あれから現場には多くの女性パイロットがいる。比率にすると25%でまだまだと言えたが、広報のアクロバットチームにも女子のチームを作る話が出ている。
――時計の針は戻ることなく時を刻む。
青伊も乗るのかな?
ふと思った。
でもこの子は乗るとか機体の性能とかより、機体そのものやもっと細かい部品やシステムに興味を示しているようにも感じる。
「今日はこれで帰ろう。明日はお兄ちゃんのピアノの発表会だろ」
「あい。パパ、お兄たんの音キモチ良いからって、また寝ちゃダメでしゅよ」
「はいはい」
「お返事は一回でしゅ」
「承知致しました。チビ司令官様」
「明日は朝にリカちゃんとじーたんが来ましゅ」
「駅まで迎えに行かなきゃな」
「ママが車で行くみたいですよ」
「うわ、それはヤバい」
アメリカのノリで運転されちゃ敵わん。
青伊を肩から下ろして自転車に乗せる。
坂道を風を切って下る。
まるで離陸前の滑走のように。
ジャケットが風を孕んだ。
空と地上の間に、清か(さやか)に風が吹き抜けた。
またこの風に乗って空を飛ぶ。
その果てを見つめる日まで。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
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著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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