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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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えーと、すごいところでお話をちょんぎって、
第二弾です。
今回はリカちゃんバージョン。

いざ結婚するとなると、リカちゃんの方が
障碍が多いような気もしました。

二人が幸せになれるよう、調べごとしつつ頭ひねり中です。


小説は続き記事からです。



拍手[10回]




◆◆◆


春の特番で二時間の枠を持つ番組
――『空を飛ぶ~日本飛行機ものがたり~』の
今日は企画会議があり、朝から飛田さんと顔を合わせた。
わたしは日本の航空史の過去を、飛田さんは現代から
未来を受け持っている。
「稲葉さん、三菱重工のアポ取れました?」
「ええ、なんとか。でも流石に開発当時の関係者はもういないわね」
「そりゃ、仕方ないですよ。稲葉さんが調べてるのは零戦でしょ。
 俺も後からF‐2のことで取材申し込まなきゃならないから」
飛田さんはわたしの二年後輩に当たる。大学時代に海外を旅していて
留年した為に、年齢は同じだ。
今回阿久津さんに『面白いヤツがいるから、組んでみろ。
ただディレクションは初めてだから、お前が見てやれ』と言われ、
一緒に仕事を始めた。
彼は――まるで今回の仕事にお誂え向きの人物で、元々大の飛行機好き、
各地の航空祭には必ず出掛け、休みの日も飛行場にカメラ持参で
行くらしい。
入間基地はよく行く場所でもあるようだった。
「空幕広報室の比嘉さんも、入間基地の空井さんも、
 稲葉さんの紹介してくれた方、皆当たりですね。
 やっぱりなんだかんだ言ってもお国の防衛に関わることだから、
 取材拒否やグレーゾーンも沢山あるんじゃないかと思ってたけど、
 出してくれる資料は適切だし、質問への答えは明確だし。
 昨日はT‐4、間近で見せて貰っちゃいました。
 空井さんて元パイロットでしょう?
 すごいな、アレに乗ってた人が隣にいるんだ!って思ったら、
 テンション上がっちゃった」
彼の名前が出て、どきりと心臓が跳ね上がる。
「そう言った対応には慣れてる人たちばかりだし…逆にウチの番組、
 空自の広報に利用しようくらいの意気込みがあるわ。
 飛田くんもきちんと仕事の目を持ってね」
「え!…はあい。やっぱり噂通りの人だな、稲葉さん」
「……?」
「それより、稲葉さんの方はどうですか?中島飛行機の取材は?
 俺が渡した資料は少しは使えますか?」
「ええ、この間は太田市の地下工場跡地まで行って来たけど……やっぱり
 戦争が関わるから重いわね。あんな場所で戦争末期に零戦を作ろうと
 してたのかと思うと…」
入間の航空祭から二週間が経っていた。
彼……空井大祐にはメールも電話も一切の連絡をしていない。
仕事上のことでもだ。彼と小さな挨拶だけの、
いつもならばやり取りしなければ
ならない部分でも、飛田さんに任せれば済むことだったからだ。
だから――当然彼からも何の連絡もなかった。
 
 
 
毎週とまではいかなかったが、土曜の夜になると、
わたしの部屋には彼がいた。
そのことを想うと、いても立ってもいられず、
思わずスマホの履歴から彼の名前を探してしまう。
そして――彼が今傍にいない現実に目が覚める。
航空祭の日。
彼がわたしに大切なことを告げようとしていたのを、
わたしは知っていた。
鮮やかな秋の青空。
それは彼と共に何度となく見上げ、彼が松島に勤務していた三年間、
毎日彼を思い出して見上げた空だった。
あの日は多分、彼のしようとしていたことに、相応しい日だっただろう
――わたしがそれを踏みにじらなければ。
今の企画が持ち上がり、阿久津さんの
『稲葉の為にあるような仕事』の一言でこの仕事に携わるように
なったのは、夏も終わりの8月の末だった。
「来年あたりからゴールデンタイムの番組一本のディレクションが、
 お前に回ってくる可能性がある。心しておけ」と肩を叩かれた。
益々彼の側にいられる時間が減るだろうことを考えて、
思わず返事が固くなる。
ディレクターとしてテレビ局に勤める限り、
それは喜ばしいことではあるのだ。
以前の…彼と出会う前のわたしなら、リポーター時代の失態を
ひっくり返せたと、喜んだかもしれない。
ただ彼と出会わなければ、今のわたしはなかった。
青空の向こうを彼も同じように見つめている、その想いが仕事にも
真摯に向かう糧になっているのだから。
だから仕事への評価はあまり気にせずに来たのだが、
自分を好意的に見てくれている阿久津さんに限らず、
仕事を評価してくれる人が増えていることを意外に思った。
 
 
 
「君は君を知らなすぎるよ」
ベッドの中で、わたしを抱き締めながら彼はそう言った。
「そう…ですか?」
「松島にいた間もリカの作った番組はすぐに解った。
 面白いから、やっぱり」
彼の胸にそっと頬を寄せる。
こうして彼の腕の中にいて、何処か柔らかな、
安心と言う枠にいる時だけ、わたしは素直に甘えられる。
「……だから、ずっと見ていたい。そう、思うんだけど」
ささやく声が低くなり、抱き締めていた腕に静かに力が隠る。
掌の熱が背筋をすっ、と伝わり髪を撫で、わたしの頬に。
「…もう一度。いい?」
時折『ああ、年上だったんだ』と感じさせる表情をするのに、
わたしに行為をねだる時は何故か少し幼く見える。
……ズルいな。
こんな表情(かお)断れる訳がない。
返事の替わりに、腕で彼の首を巻く。
優しく彼の口唇が重なる。
最近はこちらをわざと誘うようなキスが増えた。
お互いありのままなのに、言葉に出来なくて立ち止まっている部分を、
二人目を閉じたまま、引っ張り合っているような印象だ。
彼に嘘はつかない。でも全てを話すことが出来ない。
その結果、わたしは週末を部屋で一人で過ごすことになったのだ。
 
 
 
「……葉さん」
視線を上げると、急に視界が開けた。
「最後の方、聞いてなかったでしょ。阿久津さん、睨んでましたよ」
「ご、ごめんなさい」
「昨日も10時過ぎまで残ってたでしょう。ロケ始まったらもっと時間に
 追われるんだから、今のうちに少し手を抜いた方が」
「そうね…」
「…空井さんも心配してたし」
「え?」
「稲葉さんはしぶとくて、なかなか音を上げないから、
 また無理してないかって。――なんとなく噂で聞いてたけど、
 稲葉さんと付き合ってる空自の広報官って空井さんだったんですね」
「………」
「ちょっと立ち入り過ぎました。すみません」
飛田さんはお辞儀をすると、レポートを一束残して、会議室を出て行った。
レポートは先日わたしが頼んでおいた、空自の戦闘機F‐2の開発の
経緯だった。
零戦開発の時と経緯が似ていると聞いて、個人的な興味があった。
上手く繋がれば、番組の中に組み込める。
零戦は太平洋戦争初期に三菱重工により開発、製作された戦闘機だった。
零戦と言うとわたしには特攻隊のイメージしかなかったので、
つい『いつ敵に突っ込ませてもいいような、粗悪な飛行機』と思い込んで
いたのだが、調べてみるとまるで正反対だった。
熟練したパイロットが操縦してこそ――その能力をフルに活用出来る、
そんな戦闘機だったらしい。
確かに初めから乗せたパイロットを帰投させない飛行機なんて、
設計するにしても酷すぎる。
開発を要求した海軍は非常に高い要求を、技師の堀越二郎に
突き付けている。
それは現代の戦闘機、F‐2も同じで、企画段階に目標とされた
性能の高さに、海外からも『日本はまたニューゼロファイターを
作ろうとしている』と言われたようだ。
時代とその意義は多少違えど、技師たちの
『今出来る限り精一杯の技術で空を飛ばせたい』と言う想いは、
変わらない。
零戦はアメリカとの開発力に圧され、太平洋戦争末期に結局は
帰り道のない戦闘機として使われてしまい、
F‐2は初の全て国産の戦闘機として開発される筈が、
生産ラインの四割をアメリカに持って行かれることにはなったが、
それを作り空を飛ぶことを目指し続けた技師たちの想いは
生き続けた。
戦後、零戦の製作技師だった堀越二郎は旅客機として、
そして空自でも輸送機として使われたYS‐11の開発に携わっている。
F‐2は生産ラインの四割を他国に預けても、
やはり国産で最高の戦闘機として製作された。
顔を上げると、雫がぽたりと、白いレポート用紙に落ちた。
一つ、また一つと。
『もう空は飛べないけれど、僕はブルーを空に飛ばすことが
 出来るんです』
そう言って笑った彼、空井大祐がすぐ間近にいるような、そんな気がして。
どうして挫けずに、すぐに次の目標を見つけられるのだろう。
あの高い高い、空の一番澄んだ部分を目指して。
四月に彼と再会してから、彼は決して諦めなかった。
なんとか少しでも長く二人でいる為に、尽くしてくれていた。
それなのに、わたしは彼のそんな気持ちに甘えていてばかりいたのでは
ないだろうか?
自分のあまりの不甲斐なさに、苦しかったこの頃なのだ。
何度か辞表を出すことも考えたが、これ以外知らない自分が
果たして他でどう生きていくのか想像も付かず、
その勇気はなかなか出なかった。
来年もし、阿久津さんの言うような大きな仕事が来るのであれば、
彼との間は益々難しくなる。
手を離すとすれば――今なのかもしれない。
……手を離す。
涙がいつの間にか止まらなくなっていた。


 

※後編に続く
頑張って終わらせます(^_^;)
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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一切関係がありません。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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