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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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後編できました。

…でね後編書いてる最中に、びっくりな間違い発見。
柚木さんを沖縄に行ってることにしてた私なんですけど、
基地の名前、百里になってる…。
百里は茨城の基地でした!!
どういう訳か、沖縄と勘違いしてたんですねー。
知ってると思ってることでも、きちんと調べなければ書いてはいけない
例でした。
すみません。時間を見て該当箇所を訂正します。


まだまだ続く展開で終わっちゃいました。
でもひと段落したら、イチャラブなお話も書く予定ですので
よろしくお願いします~。


小説は続き記事からです。



拍手[21回]




◆◆◆



走り去る後ろ姿…それは明らかに拒否と言う、
彼女の意志を伝えていた。
 
 
 
航空祭から十日が経った。
どうにも収まりの付かない想いを抱えたまま、
それでも日常は何事もなかったかのように、通り過ぎる。
「どうして…」
こんなことに。
官舎の自分の部屋に戻ってからも、何度も口に出した言葉。
彼女は解っていた筈だ。
あの日僕が何を告げようとしていたか。
そして、互いにもうお互い以外を見る余地などないことも。
それなのに。
いつも思考はそこまで来て止まる。
彼女に連絡したい、声を聞きたい、あの小さく去っていく
背中が幻だったと言って欲しくて、スマホを手に取るものの、
履歴の彼女の名前すら見ることに苦しさを覚えて、
指が止まる。
何度めだろう。
あの日、必死に、まるで子供のように自分に訴えてきた
彼女の表情(かお)が焼き付いて離れなかった。
「わたしじゃ、守れない。
 いざと言う時じゃ、邪魔になっちゃう…だからっ」
君を邪魔だと思ったことは、ほんの少しもない。
どれだけ声を荒げて叫びたかっただろう。
腕を掴んで、引き止めて、自分の中に留めて置きたかっただろう。
勤務中じゃなかったら、基地の正門じゃなかったら、
―――彼女が背を向けて走り去って行かなければ。
この七ヶ月、彼女には負担だったのだろうか?
二人でいる時間が。
二人でいる時間を作ることが。
自分には楽しみにすら思えた、そんなことが。
 
 
 
「………井さん。空井一尉!」
広報室の入口で自分の名を叫ばれて、はっとした。
「帝都テレビさん、来てますよっ」
「あ、はい。すみません、今行きます」
手渡すファイルを持って、立ち上がった。
廊下に出ると、先日も来た飛田と名乗った青年が立っていた。
窓の外を飛ぶ輸送機をじっと眺めている。
「すみません、お待たせしました」
「ああ、いえ。此処へ来るのは仕事以上に楽しみが多くて。
 俺としては残念なんですが、入間は戦闘機は配備されて
 ないんですよね?」
「ええ、周囲に住宅地がありますから、
 地元とも協定を結んでいます」
「もしF‐2を撮るとしたら、一番近い基地はどちらでしょうか?
 空幕広報室の比嘉さんにも尋ねてみたんですが、
 元パイロットだった空井さんが案内した方が、
 面白い話が聞けるだろうと言われまして」
「F‐2は空自でも目玉です。是非良い形で紹介して頂けるならば。
 今回は現役のパイロットや整備士にも、焦点を当てて頂けると
 聞いてますから――そうだなF‐2なら…」
ふと窓の外を見上げて考える。
青い空から戻る機体が彼方に見える。
「近い所では浜松ですが…」
「松島にもありますよね?」
「ええ」
松島のF‐2はニュースにもなっている。二年前の3月11日に。
「だから意味があることと思っています。
 被災地はまだまだ復興なんて言葉を使っていい状態ではないし、
 それを訴える意味でも。
 …空井さん、松島にいたんですよね?稲葉さんから聞きました」
「………」
あの日、あの混乱の中でもメールで『自分は此処にいる』と
伝えたかった人。
「日本の航空機の歴史は戦後すぐにGHQに開発、
 生産を禁止されたこともあって、戦前と戦後で大きく別れています。
 戦後はどうしても海外に頼らなくては、旅客機一台作れなかったんです。
 だから復活の意味も込めて、松島のF‐2を撮れたらと」
それは…もしかすると。
「リ…稲葉さんのアイディアですか?」
「そうです。よく解りましたね。二時間枠だから、
 何処まで詰め込めるか解らないけど、なるべく希望の見える終わり方を
 したいと言っていました。
 どうしても戦中の話になるとテーマは重くなるし」
あの華奢な体にどれだけ詰まっているのだろう。
彼女はどんな時も真っ直ぐだ。
障害にぶつかると避けることも出来ない程に。
だから――少しでも守りたい、抱き締めたい。
そう思っていたのに。
「解りました。松島には僕が繋いでおきます」
「ありがとうございます」
「…飛田さん、T‐4見ていきます?」
「えええっ。いいんですか?」
「インタビューに出る整備士はT‐4の整備士なんです。
 だから下見、と言うことで」
「やった!」
目の前の青年は、本当に目を輝かして付いて来た。
今回の帝都テレビの企画は明らかにやりやすいよう、
配慮されている。
空自でもどの辺が許可が下りやすくて、どの辺がグレーゾーンか、
解っている人間が指示を出しているとはっきり解る。
空幕広報室の比嘉さんから回ってきた、帝都テレビの企画書に書かれた
チーフディレクターの名前は、彼女の上司、阿久津氏だったが、
実質的に指示を出しているのは彼女だろう。
 
 
 
頑張っているんだろうけど、無理をしてないだろうか?
傍目からは見えにくい、彼女の繊細で儚いとも言える部分を
知る身としては、今すぐ側に行って支えたくなるような、
そんな気持ちになった。
「空井くん、今度の金曜に市ケ谷までお使いに来ない?」
いつもにこやかな比嘉さんの声が、受話器の向こうから聞こえる。
「出来れば今回の帝都テレビの仕事について、
 オフレコで話したいこともあるし。
 …びっくりなんだけどね、挨拶の為にチーフディレクターの
 阿久津さんが、菓子折持って見えて、今の広報室長までびびっちゃって。
 普通、今回ならあの飛田さんや稲葉さんがもう挨拶に来てるから、
 十分でしょう?」
「…そうですね」
「そのことも含めて飲みに行くから、片山さんも誘っておくよ。
 こちらから手渡す重要書類を受け取るとか、適当に許可取って」
仕事のことでも彼女の名前を聞くだけで、心臓が跳ね上がる。
なのにもう彼女に触れず、姿も見ず二週間が経っている。
このまま、こんな苦しい日々にも慣れて行くのだろうか?
許可を取る為に室長のデスクに向かった。
 
 
 
「お前基地の門前で『おもいっきり』フラれたって?」
居酒屋で向かい合うと、片山さんは開口一番そう言った。
「………否定しません」
やっと言葉にした。
「そのあと連絡はしてないの?」
比嘉さんがいつもの穏やかな笑顔ではなく、
珍しく真剣な表情で聞いてきた。
「……どうして俺から連絡出来ると思います?
 はっきり拒絶されてるんですよ。
 伝えたい言葉、一言言うことも許されなかったのに…」
指先で弄ぶだけのものだったが、ポケットから煙草を取り出した。
「あー、グレない、グレない。今から比嘉っちが言うこと、
 よく聞けよ。大事なことなんだからなっ」
「………」
火も付けずに、指先でくるりと回したそれをくわえた。
「あのね、阿久津さんが帰り際言ってたんだけど
 …今回の企画、元々は帝都テレビの報道班から持ち上がった話で、
 過去から現在にあった航空機の事故を、センセーショナルに
 伝えようって、そう言う企画だったんだって」
…そう言えば彼女も航空祭の時に、そんなことを言っていた。
「で、阿久津さんにその話が来た時に、阿久津さんとしては
 そろそろ稲葉さんに大きな仕事を任せたかったこともあって、
 相談した所、今の形の元になる企画書を一晩で書き上げて
 来たんだって。流石の阿久津さんも驚いたみたいだよ。
 元の企画だと飛行機の怖さばかり煽る内容になってただろうから、
 空自としても何処まで協力出来たか解らない。
 でも今の企画なら飛行機開発の歴史だから、
 いい形でウチとしても資料提供出来るでしょ」
「……稲ぴょんの空はさ、いつもお前に繋がってるんだよなー」
片山さんがつくづくと腕を組みながら呟いた。
「あ、片山さん、それズルい。僕が言おうとしてたのに」
比嘉さんが片山さんを小突く。
「稲葉さんが今回の企画書を書けたのは、常々誰かを思って、
 『空を飛ぶこと』を考えて、あれこれ調べてたから出来たこと
 なんじゃないかな。…空井くんなら解るよね?」
「………」
ふと思い出した。
夏、入間川の七夕祭の翌日のことだ。
彼女が『自分でなければダメだ』と言って、デートを切り上げテレビ局に
戻ったことがあった。
あの時、もしかすると。
「お前、一度や二度の拒否でめげてんじゃねーぞ!
 稲ぴょん、いなくなった訳じゃねーだろっ」
「………」
「負けないガッツがあるのが空井くんの持ち味だよね」
「…電話してきます」
スマホを掴んで、立ち上がった。
居酒屋の外に出て、すぐに彼女に電話をかけたものの繋がらなかった。
それならば―――
「比嘉さん、片山さん」
席に戻った。
二人はすでにテーブルに置かれた生ビールのジョッキに口をつけている。
「俺、彼女の部屋まで行って今夜は彼女を待ちます。
 すみません、途中で抜けてしまって」
「気にすんな、行け行け。押し倒してキスの十回くらい
 してやれ」
「ダメだよ、片山さん。プロポーズやり直すんでしょう?」
「どちらもちゃんとやりますっ」
慌ててお辞儀をすると、一目散に走り出る。
背中から「頑張れよ」と言う声が聞こえていた。




※…後編なのに終わってません(^_^;)
続きます。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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