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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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Element、無事完売いたしましたヽ(^。^)ノ
本当にありがとうございます。
いつも結構売りに出すまではカケに出るような気分でも
あるんですよねー←
カレンダーも一応50販売予定です。
状況によっては再版もするかもしれません。


さて久々に原作をナナメ読みして書いてみました。
やっと同居するところまで行ったのに(笑)
戻ってどーすんだ!!って思ったんですが、
航空祭に行ったら、ちょっとこういうものも書きたくなって
来ました(^_^;)

いまさん、ありがとうございますw


小説は続き記事からです。

拍手[8回]



◆◆◆



今日も、市ヶ谷の防衛省の窓からは、切り取った青空が見える。
尤も東京で見る青空など、何処か煙りがかっていて曖昧で、
築城でコクピットから見た深い蒼空から比べたら、
それはただ「晴れている」と言うことを示すだけのものに過ぎない
──とふと考えて、自分はもうあの深い蒼空が手に届くことがないのだ
……とまた気付いてしまうことになり、静かに息をついた。
空幕広報室に異動になり、日々ことも無く過ぎて行く。
時折、隣の席の比嘉一曹や背後の席の、この部署唯一の女性、
柚木三佐、そして鷺坂室長の、然り気無い視線は感じないでもなかった。
「ダメ、やり直し」
比嘉一曹とは反対側の右隣の片山一尉が、朝渡した書類を突っ返して来た。
「こんな判で捺したような、定型臭い文章ずらずら並べて、
相手先が読むと思ってんのかよ。誰に見て貰うのか考えろよな」
呆れたような口調だ。
とりあえず見るから、テレビ局に売り込む為の企画書を作れと言われ、
自分なりにあれこれ考えはしたつもりだった。
それでも──ふと空を飛ぶあの心地好さを伝えようと考えると、
深く考える前に強い倦怠感が先に立つ。
飛ばないものに、何が解る。
飛べないものには──もう解れない。
そんな想いが言葉にならない波になって、押し寄せてきた。
 
 
 
「空井さ……」
お昼に入る前に鷺坂室長に呼び止められた。
「この案件なんだけど、お前どう思う?」
ホチキスで留められたA4の紙の束を手渡される。
「……帝都テレビ?」
「うん、新たに夕方のニュース番組のひと枠で空自を取材したいって。
担当者まだ24だって言うから、あんまり歳の離れたオジサンの意見じゃ、
可哀想かなとか思ってさ」
「自分もオジサン枠ですか、室長!」
背後から片山一尉が言った。
「何言ってんの。片山一尉はもうお父さん枠でしょ。
今回はフレッシュな視点──て言うのが欲しいんだって」
「でも……」
本来ならば上官に口答えなど、現場ならばあり得ない。
しかしこの広報室に異動になってからしばしば感じていたが、
鷺坂室長は敢えて部下の傍若無人な反論を封じず、
むしろ歓迎しているようにも見えた。
広報は広める媒体によって、技術も手法も変わる。
ネットがその媒体として参入してから、
この分野での若い人材の登用は必須だったようだ。
外部に発注するような贅沢は許されないから、片山さん曰く、
日々進化しているらしいこの分野でいかに新しい知識を得て、
いち早く利用し、広めて行くか──に空自広報の発展が
かかっていると、熱く力説していた。
先日、今まで触れる機会が少なかったことから、
全くのネット音痴だった自分は素直に「SNSって何の略ですか?
どうもゲームとかブログのこと言ってるのは、自分にも解るのですが」
と質問したら、目の前で椅子から落ちんばかりに脱力された。
「お前な、mixyとかTwitterとかは?全然知らないの?」
頷いた。
「空井二尉、アメブロは?ほら芸能人がブログなんかやってる……」
横から比嘉一曹が然り気無い救いの手を伸ばしてくれた。
「……それなら少しは」
「Social Network Service──を略してSNS。
まあsocialには社交とか親睦なんかの意味があるから、
そう言う人と人とのコミュニケーションの為のネット上のサービスだな」
「片山一尉は以前外部に出向された時に、
それで苦労されたんですよね……」
同情的な比嘉一曹の声に、片山一尉はチラリと
比嘉一曹に視線を向けたが、すぐに背けて話し出した。
「あの時は広告業界全体の問題だったんだ。
テレビや雑誌、全ての広告業界がネットにどう参入するかで
揉めてる時期だった。
チラシ一枚作るのと、ネットでサイト立ち上げるのと
どちらが損失が少ないかなんて、言ってる場合じゃなかったんだ
……ってオイ、空井聞いてんの?」
片山一尉の口調から緊迫感は覚えるものの、
あの事故までパイロットだった自分は、ネットと言えばメールと
精々航空関連のサイトを多少見るくらいのものだった。
視力を落としたくなくて、ゲームもほとんどしなかったのだ。
未知の世界の話にただ立ちすくむのが精一杯だ。
──それに。
それを知ったからと言って、自分が何をするべきなのか
まだまるで検討もつかなかった。
空を飛ぶ以外の移動の仕方を知らなかった鳥が、
翼を失くしたら、地上を歩けと言われても
ただ立ち止まるのと同じように。
 
 
 
「自分、テレビ局なんて一体どう考えたらいいか。
先日片山一尉から企画書ダメ出しされたばかりですし」
「んー…そこはまあ、誰にでも初めてのことはあるし。
それにテレビなら空井だって一日に一回は見るでしょう?」
鷺坂室長は、柚木三佐がずいっと持ってきたコーヒーを一口飲んだ。
「テレビは一番一般に訴えると思うんだよね。
ベテランよりは空井みたいに広報知らない者の方がいい意見
持ってるかなと思ってさ。
先方のディレクターさんも、今の部署に異動してきて日が浅い
みたいだから。まあいいや。」
「……はあ」
曖昧に頷くしかない自分の不甲斐なさに、小さく笑うしかなかった。
 
 
 
今日は快晴で、朝から陽射しが目に痛い程眩しい。
もうすぐ昼休みが終わる。
休憩室の窓際で、空のあまりの青さに嫌気が差し、地上に目をやった。
すると淡いラベンダー色にも見えるピンク色のコートが視線をかすめた。
……ような気がした。
この階の高さからでは、曖昧だ。
あまりにも素早く建物の中に消えたその影は、
今まで色味を失って見えた自分の視界にどこか強い印象を残した。
これまで身の回りにはなかった色だと言うのもあるかもしれない。
この建物の中では、皆制服なのだから。
 
 
 
「だって戦闘機って人殺しのための機械でしょう?」
 
どんよりと覆われていた幕が、キリリと鋭いナイフで切り裂かれた。
急に視界に鮮やかな色が飛び込んできた。
目の前にいるのは先程の──身の回りには見かけなかった
色合いのコートを来た『女性』。
稲葉リカ。
確かそう名乗っていた。
──見えない癖に!
彼女には見えない。
あの空の青さが。
始まりの青の深さが。
飛ばないものに、こんなことを言われる筋合いなど、全くない。
いけない──そう思い留まる間もなかった。
人を殺したいなんて──
「思ったこと、一度もありませんッ!」
こんな強い血の逆流は生まれて始めてだっただろう。
こんな──怒り……感情の生々しい動きは。
 
 
 
『無事です』
ある種の衝撃の波が去ったあと、彼女に一言だけメールをした。
東京は、どうだろう?
あまりに規模の大きな震災──後に東日本大震災と呼ばれたそれは、
東北だけではなく関東にも当然被害をもたらした。
マスコミを生業とする彼女は、ただ被害にあっただけの立場でいるはずは
なかった。
『そのまま無事でいて下さい』
彼女からの、返信。
それを見て初めて、自分は彼女が今この世で一番に関わりを絶つことに、
後悔を覚える相手なのだと、知った。
そのまま──
あの空の向こうで彼女も無事でいる。
青の彼方を、しっかりと見据えた。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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