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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません。昨日から続きが一気に出来ましたので、コメントへの返信は次回の更新時に致します。
いつもありがとうございます。
励みになっています。

随分間が空いてしまった間に、中の方に色々とお話を伺う機会がありました。
蒼太の話は少し未来の話ですが、ブルーはT-4だわ、イーグル現役だわで、現状をほぼ書いちゃってます(^◇^;)
創作ならば色々と変えて出すことも可能なので、楽しく書くことが出来ました。

今回で『君がいて、僕がいる』のシリーズは終わりになります。
続きは少し、資料集めが終わってからでしょうか。

大分先になりそうです(^◇^;)

拍手[2回]


◆◆◆



12月上旬。
松島の第11飛行隊は、今年全てのフライトスケジュールを終えた。
既に来年に向けての調整も始まっている事から、今年が終わったと言っても、任務が無くなる訳ではない。
毎日決められた課目の訓練飛行は、天候さえ上々ならば通常通りだった。
だが自分自身のフライトは展示飛行は先週の那覇が最終で、訓練としては一昨日に終わっていた。
もう長い事、ブルーインパルスの機体として使われて来たT-4にブルーインパルスのパイロットとして搭乗するのは、今日が最後になる。
今日はブルーの後部席に乗って写真を撮って来たカメラマンが、一緒に搭乗する予定だ。
彼も自分とほぼ同時期に、この世界では珍しい女性カメラマンである師から仕事を引き継ぎ、ブルーの後部席に乗るようになった。入間で耐G訓練や、自衛官と一緒に肉体的なトレーニングを受けて、更にカメラマンやアシスタントの業務をこなすのだから、大変だ。
「空井二尉のラストフライト、ばっちり撮りますからね。お手柔らかに頼みますよ」
口角をぐいっと持ち上げた笑みが浮かぶと、彼のトレードマークになるえくぼが片頬に出ていた。
来年のカレンダーの制作が既に始まっているとのことで、今日の写真もその為に使われる予定だ。
「カレンダーはね、人が写ってる写真、使えないんですよ。色々規制が厳しいし、ブルーのパイロットさんは公務員だしね。でも今日の空井二尉は朝から良い表情してますよ。今日は空井二尉に密着して撮りたかったな。いつだったかなぁ、ファッション雑誌の取材受けられてたでしょう」
「あ、ああ…。自分が着任したばかりの頃ですね」
妻、の郁が当時勤めていた雑誌社の企画だった。
「あれ、良い写真でしたよね〜。キーパーさんと写ってる写真もあって。ウチの師匠、本当は機体より人撮る方が得意だから、悔しがってたなあ」
彼はぽん、とこちらの肩を叩いて言った。
「次の任地でもきっと空井二尉ならば、良いお仕事をなさるでしょう。同じ年代だから……、俺も頑張ります」
「ありがとうございます」
彼の言わんとしている事はよく伝わってきた。
3年前松島に来た時は、せっかく幼い頃からの夢が叶ったというのに、素直に喜べなかった未熟な自分だった。
多くの人が気を配っていてくれていた事が、今なら、いやきっと当時も分かってはいたのだが、それに対して素直に頭を下げられなかったのだ。自分の狭い了見から来る小さなこだわりを捨てさせたのは、妻の、当時の記事だった。
彼女がきっかけで閉じていた視界が一気に開けたのだ。


「よう!」
エプロンに出ると、三沢に異動した平田先輩が妻子を連れて来ていた。9月に生まれたと言う彼の息子を、危なっかしい手付きで抱いている。
「伊織〜、skyが来たぞ〜。お前の名付け親の。見えるか?」
「先輩、まだ3ヶ月でしょう。分からないですよ」
「そんなことはない!赤ん坊の脳は高速フル回転で記憶してんだ。お腹にいる時から始まってんだぜ。胎教で爆音聞きまくりだからな!今日もよろしく頼むぜ」
「ブルーはF-2程音しませんよね。先日の三沢の航空祭、帰投の日は気付かない程でした」
平田夫人が横から答えた。
彼女の勤める病院は基地のすぐ脇にあるそうで、毎日が爆音浴状態だそうだ。病院の環境としては厳しいのではないかと思う。
「ブルー見てると、お前と乗ってた時のことばかり思い出すよ。いや、さ。俺もそうだったけど、単座乗ってる若い奴って、何つーかオタク?、黙々したヤツが多いし、今は少なくなったけど複座慣れてる身からすると、何考えてんだか、分かりにくいんだよな。お前、表情出ないし異動になった経緯も特殊だったし、いつも後部席が気になってた」
「すみません」
「いやいや、謝って欲しい訳じゃなくてさ、それが一年乗ってるうちに、だんだん『あ、今日は彼女と会う約束したんだな』とか、『今日は何かやらかしたな』とか分かるようになって来る訳」
「何すか、それ。自分、ダダ漏れってことですか」
「違う、違う。何かさ、それが親しみとか信頼に変わる訳。上手く言えなくて悪りぃけど」
「……ああ」
それならば分かる。
今、後部に乗っている花咲二尉は、自分よりずっと経験の高いパイロットで、最初から信頼が出来た。
でも平田先輩とは、自分の意固地な部分が災いして、なかなか彼のことを知ろうとしていなかった。それが一年経った頃、平田先輩の背中に、奇妙な懐かしさや言葉にしなくても見えるものが出来て、お互いコミニケーションに何のストレスも感じなくなった。
「あのさ、名前、決めてくれてありがとうな」
「……良かったのかどうか。大分迷いましたけど」
「なんの、なんの。まあちゃんも、ウチの親も大喜びだよ。伊織は武士の名前だとか言って、親父なんか下手くそな毛筆で書いて、額に入れてた」
伊織は静浜に眠る先輩の名前だった。
白い紙を前に色々考えては見たが、この名前しか浮かばなかったのだ。
「伊織、これから素晴らしいフライトが見れるよ。あっち行って見てようね」
平田夫人が不器用な手付きの夫から子供を引き受けると、一つお辞儀して立ち去った。
平田先輩も「ま、ラストフライト恒例は覚悟しろ。今日は雪無くて残念だな」と、こちらの背をバンと叩いて、彼の妻に続いた。


そしてブルー5番機での、第11飛行隊在任最後のフライトが終了した。


「蒼太さん、お疲れ様」
妻の、彼女の目には涙が流れた跡があった。
「泣く程良かった?」
「だって……、いつもいつも地上で見上げていて、蒼太さんのフライトを信頼してはいたけど、まるで心配しなかった訳でもなかったので、ああ良かったって安心して」
「バカだなあ」
「バカですよ、これからずっとそうです」
彼女の髪をくしゃりと撫でた。
柔らかい髪が指に絡む。
ふと彼女の頭越しに、隊の面々がバケツを持って近づくのが見えた。
「郁!避けろ!」
慌てて、反対方向に逃げかけた。
「あ、逃走するなんて、度胸ねえな!sky!ちゃんと祝儀は受けてけよ。スカした顔のまま異動させないからな!」
飛行班長の佐藤二佐の声だ。
「このクソ寒い中勘弁して下さい。さっきキーパーさん達が氷水作ってんの、見ちゃいましたからね」
「蒼太さん、夫婦で被る決まりなんだそうですよ」
付き合ってから初めて、彼女の笑顔が悪魔に見えた。独り身のパイロットだっているのに、何騙されてんだ。
「あ、奥様の分は松島の温泉のお湯を用意しました!」
だーっと走って来るメンバーから逃げる為、妻の手を引いたが、彼女が気が付くのはいつものクォリティで遅く、彼女がこちらを見た時には、バケツの水をざんぶりと方々から被ってしまった。
「お前、異動しても、忘れんなよ!!ブルーのパイロットはいつも笑顔だぜ!」
誰ともなく声があがり次々と、バケツから水がかかる。ブロックだが小さな氷の欠けらがパイロットスーツの隙間に入った。
「郁、あっち行ってろ」
「郁さん、こちらへ。ストーブありますから」
「うわ、待遇に差があり過ぎ」
「当たり前だろ、郁さんにはこれから沢山お前が迷惑かけんだから」
すいっと、今年のTRのメンバーから抱えあげられる。
「げっ」
「暴れると長引くぞ」
平田先輩の声がする。
今日は快晴。雲ひとつない、素晴らしい青空が見えたなと、ウッカリ気を抜いたら、トラックに溜めた水に、ドボンと投げ込まれた。


だから……迂闊にも流れた涙には、きっと彼女も気がつかなかっただろう。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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