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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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毎年恒例!
似合わないからこそ、タタルさんにクリスマスを
祝わせる?ミッションが今年もやってまいりました。

今年はクリスマス前の体調が今一つで、漫画でなく
SSになりました。


小説は続き記事からです。

拍手[4回]



◆◆◆



このキッチンでクリスマスケーキを作るのも、もう5回目になります。
彼は相変わらず「本の部屋」で何やら調べごとを。
そしてケーキにクリームを塗るわたしの手元をじっと見つめるのは……
「るりちゃん、後でサンタさんのお人形乗せてね」
彼によく似た、切れ長の賢そうな二つの瞳が、
じっとこちらを見ています。
「ねえ、ママ」
二月生まれな為、まだ三歳にはならないはずのるりは、
一歳二ヶ月で話しはじめてからずっとそのままの、
かなり明解な言葉で、話し出しました。
「何でケーキを木の形にしてるの?」
「え?え?木?あ、ああ、そう言えば」
今わたしが作っているのはブッシュ・ド・ノエルです。
確かに丸太を象ったケーキでした。
「クリスマスに食べる特別のケーキなのよ」
わたしはにっこり笑顔で答えました。
近頃活発に「あれは何?」と尋ねるようになった
一人娘の問い掛けは、まだ三歳にならない子供にしては難しいものでした。
娘からしてみれば、今目の前にある世の中は不思議なこと
でいっぱいで、知りたいことが山程あるに違いありません。
だからわたしはなるべく娘の質問には、答えるよう心掛けています。
「クリスマスだと木の形なのは、どうして?」
「そ、それは……やっぱりクリスマスツリーも飾るし…」
「ママの言うのは一理ある」
気付いたら、娘のすぐ背後に彼――タタルさんがふらりと立っていました。
「クリスマスツリーと、かんけい、あるの?」
まだたどたどしく娘が質問します。
「ある」
わたしも思わず手を止めて、彼を見ました。
わたしが今年ブッシュ・ド・ノエルを作ることにしたのは、
たまたまお昼休みに美緒ちゃんから借りたファッション誌に
掲載されていた写真が素敵だったからです。
クリスマスツリーの連想から、つい森の中のようなイメージを
持つクリスマスに、丸太を象ったケーキはあまりにも
自然な感じで、わたしは疑問に感じたことがありません。
けれども彼によれば、やはり今まで何の疑問も感じずに来た
門松や松竹梅、節分の柊にも一般に言われている以上の
深い意味があり、それは習慣として続けられるようになったことにも、
きちんとした理由があったのでした。
「ブッシュ・ド・ノエルの元になったのは、
 ゲルマンの慣習の『ユール・ログ』だと言われている」
「ゆーる、ろぐ?」
娘は不思議そうな表情で彼を見上げました。
彼は朝から多分櫛ひとつ通さない、相変わらずのボサボサ髪の
向こうから、やはり娘と同じ切れ長の目を
少し眠そうに瞬きながらも、娘を見つめ返しました。
「クリスマスイヴから暖炉で焚く、大きな薪のことだ。
十二夜まで燃えているようにするものだから、かなり大きなものだろう」
「たきぎ?たきびとにてる?」
「ちょっと待ってて」
彼は手を上げると再び彼が元いた部屋に戻り、
本棚から一冊の分厚い洋書を持ってきました。
わたしは思わずクリームを塗るナイフをテーブルに置いてしまいました。
彼が洋書を持っていることだけでも驚いたのですが、
その布張りの表紙を捲るとかなり古いカラー写真が幾つか掲載されており、
それは全て西洋のクリスマスの写真でした。
「るり、これが暖炉。これが薪」
娘はじっと写真を見つめています。
「タタルさん、その本読まれたんですか?」
「読まない本を買うほど酔狂じゃない」
「まあ……」

珍しい。

彼が読むのは仕事柄関わる漢方や中医学、
もしくは日本の歴史や文学の本が殆どでした。
たまに広辞苑などの辞書や薬草の図鑑なども見てはいましたが、
洋書、しかもどうやらクリスマスについて書かれた本だなんて。
載せられた写真はどれもロマンチックなヨーロッパの
クリスマスを写したもののようです。
どんな表情して読んだのかしら?
そう思いつつ、彼の言葉をわたしも娘と一緒に待ちました。
「太い樹の幹から採られた薪だと言うことに恐らく
意味があるんだろうな。ホラ、見てごらん」
彼は一枚の絵を指差しました。
丸太に小さな男の子が乗り、沢山の大人がそれを引っ張っています。
「フランスやドイツではこうやって大きな薪を領主の元に運んだ。
この薪には魔力があると信じられ、途中で火が消えると
次の年は不吉なことがあると言われている。
クリスマスツリーもそうなんだが、
恐らく根底には世界樹や生命の木に対する信仰が含まれているだろう」
「それは……確かイザナギ、イザナミが回った柱もそうだって、
仰ってましたよね?タタルさん」
「ああ、そうだ」
「おとうさん」
娘が本から顔を上げて、彼をまた見上げました。
まるで今まで英語で書かれたとおぼしきこの本を、
読んでいて質問が出来たとでも言うように。
「せかいじゅって、クリスマスツリーみたいな、木?」
「そうだな、世界の中心に生えた木、とも言える」
「クリスマスにその木を切っちゃうことになるの?」
……娘の質問はまだ二歳児としては早すぎるような気もしました。
けれども彼はそんなことは気にもしないように、
娘を真っ直ぐ見て答えました。
「クリスマスは元々冬至を祝う祭だ」
「とうじ?」
「るりちゃん、この前柚子のお風呂に入ったでしょう」
「あ、いちねんでいちばんお日さまみじかい日」
驚きました。二日前の冬至の日にお風呂に入った時、
何気なく話したことを娘はきちんと覚えていたのです。
「冬至の日はあらゆる生命が終わりを告げ、
そして再び始まる日とされている。
古い木を燃やし新たな木――命の再生を願ったのだろう。
ブッシュ・ド・ノエルはその丸太をケーキの形にしたものだ。
名残だな」
「……」
自分の作っているものにそんな意味があるとは、
全く思ってもみませんでした。
「もやす代わりに食べちゃうの?」
「ユールログも燃やした灰を体に塗ると健康になると言われてた。
ブッシュ・ド・ノエルも食べることで体に取り入れるだろ?」
「……わかった。ありがとう、おとうさん」
娘は納得したようでした。
「奈々、急がなくていいのか?もうすぐ大地くん、来るんだろう?」
「あ!そう言えば。こんな日に沙織も仕事なんてね」
「駅まではるりと俺で迎えに行こう。おいで、るり」
娘は了解した、と言うように主人の方に駆け寄りました。
けれども引き留めて、わたしが上着を着せた時に、言いました。
「ママ、サンタさんはわたしが乗せるからとっといてね」
「はい、わかりました」
年相応?の娘のリクエストに、わたしは笑顔で、
駅まで妹と甥を迎えに行く二人を玄関まで見送りました。





※出雲大遷宮より前の時期のお話で、まだ沙織ちゃんちは
家族一緒にクリスマスを迎えられてない設定で
お話を書きました。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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