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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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メリークリスマス\(^0^)ノ…とはまるで関係ないネタで
失礼します。

長々と続いてきた空稲『やっと入籍したよ』話第二弾。
もうこの二人書いて一年半ですよ(笑)
やっと二人の関係もここまで来てくれました。


空稲総集編、出します。
たぶん3月から5月の間になると思います。
書き下ろしの漫画も入れますが、おそらく今までのSS(クリスマス前までの話)
を編集した本になります。
詳しくはコチラの記事にお読みください。


小説は続き記事からです。
次回でシリーズは終わりになります~。

拍手[9回]


◆◆◆
横須賀カレーフェスタのロケの翌週、月曜から水曜の3回に分けて、
『とまとんの3分クッキング拡大版・海自カレー特集』が放送された。
視聴率も昼のワイドショーの一コマとは言え、
それなりの数字を出し、内部の評判も悪くなかった。
滅多に会うことのない深夜や早朝枠の担当者からも
「防衛省に繋ぎをつける時は稲葉さん……いや、空井さんに聞くに限るね」
などと言われ、我ながら耳まで赤くなっていたのでないかと、ドキドキしてしまう。
その週の金曜、わたしは取材協力のお礼の為、菓子折を持って
また市ヶ谷の防衛省の門を潜った。
「観ましたよ!いな、いや、空井さんになられたんですよね」
海野三佐はいつもの端正な笑顔でわたしを迎えた。
隣で鈴木室長がおおっ、と驚いた表情だった。
「すみません、お互いの仕事の都合で式が後になってしまって……」
俯くわたしに、鈴木室長はやや大袈裟に手を振り、やはり笑顔で言った。
「いやいや、今は夫婦で仕事を持っていることは当たり前ですからな。
隊内でも対応は変わって来ていますよ。
我々は異動が多いですから。ましてや稲葉さん……」
「空井さんです。ご主人は空幕広報室にもいたことのある方だそうです」
「ほう、そうですか!それは心からお祝いを言わせて頂きます。
いな、……空井さんのあの番組は、リアルタイムで幕僚長も観ていて、
大変喜んでいました。よく取材される側の我々の気持ちを汲み取った、
良い特集だったと。これは空井さんの綿密な取材のお陰でしょう」
「いえ、そんな」
赤くなった顔を隠したくとも、いつまでも俯いている訳にもいかず、
小さく咳払いするふりをして、顔を上げた。
「海野さんから大変細かなお気遣いを頂きました。打ち合わせもスムーズでしたし。
こちらこそお陰で良い番組が作れました」
「海野は気の利く男でね。少々利きすぎるくらいなんですが」
笑う鈴木室長に海野三佐は頭を下げた。
「まだ修行の足らない身ですから」
「出来たら今後帝都テレビさんに取材して頂く時は、
空井さんにお願いしたいくらいですな。
まあゆっくりコーヒーでも飲んでいって下さい」
鈴木室長は綺麗に一礼すると、室長室に入って行った。
「空井さん、ありがとうございました。宜しかったら門まで送りましょう」
立ち上がる海野三佐に着いて、わたしも立ち上がり、
他の隊員にも挨拶をしながら、海幕広報室を後にした。
「空井……ご主人の空井一尉はお元気ですか?」
「え?ええ。他局とタイアップしたドラマが当たって、
航空祭が昨年予想以上の人出だったとかで、
今年は今から対策に当たっているようです。
今朝もかなり朝早く出勤して行きました」
「……彼がブルーインパルスのパイロットに抜擢されて
すぐに事故に遭ったことは、海自の航空隊でも話題になりました」
海野三佐をふと見上げると、それまでのにこやかな表情は消え、
端正で真っ直ぐな、多分彼自身本来の表情がそこには在った。
「あの若さで希望が叶うことも少ない確率だけれど、
叶う手前で挫折することも少ない。……余程、打ちひしがれているのではないかと、
当時まだ厚木の航空隊にいた自分はよく考えました」
「……」
彼は事故の後、打ちひしがれることすら、しばらくは出来なかったのだ。
あの日、わたしの前で号泣するまで。
そして彼は長くはその感情を保持しなかった。
「自分は稲葉さんの為の広報官になろうと思います」そう言って、
すぐに自分のポジションを見つけた。
わたしは彼に引き上げられるように、自分のそれまでの立ち位置を捨てたのだ。
いや、その時置かれていた位置に気付いた、と言うべきか。
「自分はある女性の名誉の為に、自分の不明から喧嘩沙汰になってしまい、
目を傷付けて航空戦術士からも手を引くことになりました」
過去に飛んでいた意識は、海野三佐の低い声音に引き戻された。
「自分はどうも……誤解されやすいようで、女性からの相談事でも
つい本気で聞いてしまう。
同僚からも先輩からも、よく忠告は受けていたんですが。
元々個人的には空自に入隊したかった為に、
航空学校に行かずに、わざと防大を選んだのですが、
海自に入って、そして空を飛ぶ職務からも離れて
――自分も二度挫折した時、空井一尉は今どうしているだろうと、
ふと思い出していた時に、目の前に貴方が現れた」
前髪をかき上げた海野三佐は、口許だけで微笑した。
「初め貴方の婚約者が空井一尉だとは思わなかったけど
――そうと知ってからは尚更――ありがとうございます。
そう空井一尉に伝えて下さい。
自分もどうやら、失くした過去を振り返らずにいられそうです。
もう少し早く稲葉さん……敢えてそう呼ばせて貰いますけど、
貴方に会っていたらもっと違った形象(かたち)で
そうすることが出来たかも。空井一尉が羨ましいな」
いつもの端正な笑顔ではなく、にっこりと笑った表情の海野三佐は
何処か出会った頃の彼――まだ夫と呼ぶにはかなりこそばゆい彼のことを思い出させた。
そして成程、先程女性から誤解されやすいと彼自身が言っていた理由が
朧気ながらもと解ったような気がした。
「ご結婚おめでとうございます、稲葉さん」
防衛省の門まで来て、海野三佐は変わることのない、それはそれは綺麗なお辞儀をした。
わたしは思わず緊張して姿勢を正した。
「あ、あ、ありがとうございます。しゅ、しゅ、主人にも伝えて、おき、ますっ」
もう局で言い慣れた筈の言葉なのに、やはり胸が高鳴る。
「敵わないなあ……全く勝ち目がない訳だ」
「へ?」
その日海野三佐と交わした言葉の意味を、わたしは何度考えても解らず、
珍しく早く帰宅出来た金曜の夜に、ロゼのワインを用意して、
食事が終わった後に彼に聞いてみた。
「……」
彼はワイングラスを持ったまま、しばらく黙っていた。
「大祐さん?」
返事のない彼に、もしや何か気に障るようなことを言ったのではと心配になり、
そっと声をかけた。
「……リカ」
「ハイ?」
「解らないの?」
「解らなかったから、大祐さんに話してみたんですけど」
するとすぐ隣でかなり脱力したように、彼は息をついた。
今二人並んで、ソファに座っている。
シャワーに入った後だったから、二人ともかなりリラックスした格好だった。
「あのねえ……いや、だからこそ良かったのかもしれないけれど。
君みたいな奥さんを持ったら、当然あるべき心配なんだけど」
「???」
「海野三佐は君のことが好き、だったと思うけど」
「……ええ?!」
手から落とす前に、わたしはワイングラスをテーブルに置きました。
「だから僕も気が気じゃなかった――そんなような気がしたから」
「そんな……だって海野三佐は大変仕事熱心な方で、その……そんな風には」
見えなかった、わたしには。
「……噂の基地司令のお嬢さんや過去に彼と噂になった女性には、
そうだったのかもしれないね。
仕事や物事に対する熱心さが必ずしも、恋心にイコールとは限らないし。
僕だって最初リカの気持ちが解らなくて、随分迷ったから」
「……なっ!そ、それを言うなら大祐さんこそ、そうですよ。
空自の取材をしてた頃は、いつも危うく誤解したくなるような言葉ばかり……!」
「例えばどんな?」
「……え、それは……って!もうっ!今更何を言わせるの」
思わず手元に在ったクッションを彼に押し付けようとしたら、
その手を彼に掴まれ、真っ直ぐな瞳でこちらを見つめられた。
「あの頃は本当にヤキモキした……今も変わらないかもしれないけど」
低い声で囁くと彼は軽く口唇をわたしの口唇に当てた。
一遍に身体から力が抜けた。
こう言う時の彼の間合いに、わたしはこれからもずっと敵わないなと思う。
「君は自分を知らなすぎる……だから」
大きな掌なのに、意外に優しい動きの指先が、髪を撫で項に回る。
「……いい?」
わたしはこっくりと頷いた。
元々そのつもりで用意したワインだった。
 
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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