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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません、突然蒼太の方で続きをポッと思いつきました。
皆様クリスマスの夜をどうお過ごしでしょうか?
……といいつつも、今年は平日でしたから、皆さんお祝いした日も
さまざまだった模様。
家族のあり方が変われば、イベントのあり方もさまざまなのが、
現代なのだと思います。
特に空稲や蒼太を書くときに、それは強く意識しました。
家族の集まるあり方が、すでに世の中変化があるのだなあと。
私がそれなりに出した答えが、こうなんだなあと思います。
蒼太のツンデレは母譲りではありますが、たぶん小さな頃から保育園育ちの
彼は意外にマザコンで、ファザコンで、感情をうまく出せないところも
作用しているのかなあと、考えつつ。

小説は続き記事からです。
すみません、コメントたくさんありがとうございます。
返信は次回記事でさせていただきますm(_ _)m

拍手[5回]


◆◆◆


「そうです、明け方前に本当に眠るみたいにして。……蒼太さんですか?」
わたしは対面式のシステムキッチンから、そっとリビングのソファで
録画したニュース番組を観ている彼を覗きました。
「イーグルをさっき箱に納めてから、まだ何も話してなくて
……その朝食だけでも食べて貰おうと思って、
今、わたしキッチンにいるんです」
電話の相手は北海道に旅行に出ている彼の母親の、リカさんです。


長年彼の実家で飼われていた猫――ロシアンブルーのイーグルが
今朝早くに、亡くなりました。
彼の話からするとイーグルは15歳近かったようで、
猫としてはかなり長生きでした。
わたしが初めてこの家を訪れた時もそうでしたが、
イーグルはとても人の膝の上に乗るのが好きな猫で、
昨日もわたしの来たのを見て膝に乗りたそうな素振りを見せました。
わたしがそっと抱き上げて膝に乗せると、
最初は神妙な表情だった彼は呆れたように言いました。
「やっぱりイーグルも牡だな。アンタの膝のがいいみたいだ」
それでもそっと白い指先でイーグルの小さな額を撫で、じっと様子を見ています。
「もう三日前から餌も水も摂らないんだ。
俺も松島から昨日帰ったばかりだけれど、親父が言うには今までもったのは奇跡らしい」
彼の声は淡々として表情も声同様、あまり内心を映さない
いつも通りの彼でした。
それでも――何となく伝わって来る彼の気持ちを察して、
わたしはじっとイーグルを膝に乗せたまま、身動きしませんでした。
イーグルも膝に乗せてからは気持ち良さそうに目を瞑ったまま、少しも動きません。
眠っているようでもありながら――もしかしたらもう、
彼方の世界に眠る場所を移しているようにも見えて、
わたしは時折イーグルの微かな寝息を認めて、まだ彼が此方側にいることを
確認していました。
普段彼の両親が住む彼の実家のマンションは、
今日は殊更ひっそりとしています。
大きな公園がマンションの裏手に控えるこの部屋は、
マンションの七階にあることもあり元々が閑静な立地ではあります。
けれどもわたしがこの部屋を訪れる時は、大抵は彼の両親が揃っていて、
賑やかでイーグルも玄関に出迎えてくれることが、殆どでした。
昨年この部屋に来た時はまだまだ元気に膝にピョンと飛び乗ったのを見た、
彼の父親が微笑しながら彼と同じように話していたのです。
「やれやれ、イーグルも乗るなら美人の膝と決めているらしい。
僕の膝に乗るのは郁さんもリカも蒼太もいない時だけだ」
それが今、自力では立ち上がって此方に来る力もなかったようで、
家族ではないわたしの手にされるままに抱かれ、膝に乗せられています。
気付くとソファを離れていた彼が、マグカップにコーヒーを淹れて
わたしの前に置きました。
「郁、疲れんだろ。代わるから」
わたしは首を振りました。
「大丈夫です。その……今夜はこのままでも」
彼はじっと、わたしの膝の上のイーグルを見つめて頷きました。
「ありがとう」
そして彼も自分のマグカップを持ったまま、静かにわたしの隣に
再び座りました。


窓から射し込む光に、目が眩しさを覚えた頃、彼がポツリと呟きました。
「やっと、きちんと眠れたみたいだ」
わたしはイーグルを覗き込む彼を、見つめました。
「ずっと一緒だったんだよな。お袋が『学校から帰っても
蒼太一人にならないように』って、ウチに連れて来てから。
色々迷って岐阜に引っ越してた時も連れてったんだ。
ホラ、よく言うだろ?猫って家に着くから、引っ越しに連れてくの
難しいって。でもコイツは何の問題もなくて、岐阜でも一緒だった。
ずっと一緒にいてくれたのに――俺はあんまり一緒にいてやらなかった」
わたしは彼に掛ける言葉が、見つかりませんでした。
「悪ィ、今、箱持ってくるから、そのまま膝に乗せててやってくれないかな?」
わたしは彼に頷いて見せました。
彼はほんの少し微笑って、リビングから出ていきました。
予め彼の両親と話していたのでしょうか。
彼は丁度彼が小脇に抱えられるようなサイズの、段ボール箱を持って来ました。
そしてテキパキと、イーグルの寝床として使われていたクッションを敷き、
幾つかの玩具と覚しき小さなボールや鈴の付いた紐、
ネズミの形の縫いぐるみなどを箱に並べると、
わたしの膝からそっとイーグルを抱き上げて、
一度わたしも彼にはこんな繊細さが隠されていたのかと思うような優しさで、
イーグルの綺麗なグレーの背中を撫でてから、箱に静かに入れました。


「蒼太さん、朝ご飯……そのバケットがあったんでサンドウィッチですけど」
「うん」
彼は録画を早送りしたり止めたりとしていたリモコンを手放して、
バケットサンドの乗った皿を受け取りました。
「何を見てたんですか?」
「この前の羽田の展示飛行。親父があちこちの局でニュースになった分、
録り溜めてあったヤツ」
「あ、あの……」
「平田さんがそろそろ乗らなくなるから、ダビングして持って行こうかと」
「平田さんがもう異動なさるんですね」
「次は三沢の教育隊に行くらしいよ。F―2に乗るのは夢だったらしいから」
ティポットとカップを並べて彼の隣に座りました。
「ブルーが夢、じゃない方もいらっしゃるんですね」
「それはそうさ。まだまだ退職するまで任務は続くし、夢ではあっても、
それは到達点ではなくて、通過点にしか過ぎない。
平田さんだって、このあとまた違う任務に着くこともあるかもしれない」
「蒼太さんは?とても早くに夢を叶えた訳ですけど」
「郁はどうなんだよ。夏に公開のハリウッドの映画の主題歌作曲したんだろ。
今夢を叶えつつあるアンタの気持ちの方が、俺には興味あるけど」
「あ……それは、たまたま兄の仕事を手伝ったようなものなので。
わたしはまだまだ『何か』を追い掛けるのに、必死です。
到達した感覚なんてまるでありません」
彼はカップに注がれた紅茶に口を付けてから一息つくと、
改めたようにわたしを見ました。
「俺も同じ。出来たと思えばまた、その先に在るものを見たくなるし。
多分今の隊を離れたら、また新しいものを見たくなるんじゃないかな」
「新しいもの……」
ふと、来年は彼もブルーチームから離れることを思い出しました。
「指輪、サイズ大丈夫みたいだな」
彼の視線が膝に置いたわたしの手にあることに気が付きました。
「ハイ。ありがとうございます。素敵なデザインですよね」
昨日このマンションに着く前に渡された婚約指輪は、
今わたしの左の薬指にあります。
「――アンタの指に嵌めるまで気が気じゃなかった」
「そうなんですか?」
すると突然彼がわたしを抱き締めました。
わたしは驚きました。
驚いたけれど、そのままでいました。
涙を流している様子はありません。
まるで呼吸すら止めているように、わたしの肩に彼は顔を埋めていました。
それでも――
彼は泣いているのだと思いました。
先程のリカさんからの電話は、幼い頃から辛いことがあっても表面には
上手く感情を表せない彼を気遣った内容でした。
昨年このマンションを訪れた時に、彼の父親が見せてくれた
彼の幼い頃のアルバムには、先程旅立ちを見送った猫
――イーグルが共に写っているものも、数多くありました。
わたしは出会った頃から――強靭な意志を持ちながら、
繊細で意外に深い感受性を備えた彼をよく知っていたので、
彼が昨夜から本当ならば声を上げて泣きたいのだと解りました。
わたしはそっと、指先で彼の背を撫でました。
先程彼が、彼の長年の『友人』にそうしたように。
それが今出来る、精一杯の慰めでした。


「さっさと食って、ペットの葬儀屋に電話しなきゃな」
「番号、解るんですか?」
「お袋がメモ置いてった。イーグルがもう無理って解った時に
あれこれ調べておいたらしくて。狭山湖の方にあるペット専用の霊園が
引き取りに来るらしい」
子供の頃からペットのいたことのない環境で育ったわたしは、
初めて聞くような話も多かったけれども、言葉に出しては、こう話しました。
「来年、またこの時期に帰国しますから、そうしたら一緒に
イーグルに会いに行きませんか?此処から遠いいんですか?」
彼はわたしの作ったハムとチーズ、レタスの挟まったバケットサンドを手に取ると、
答えました。
「車で一時間もあればいいかな?もう少し早い季節なら桜が満開だろうし、
じゃあ付き合って貰おうか」
「はい、約束です」
わたしは小指を立てて、彼に差し出しました。
彼は苦笑しましたが、自分の小指を絡めました。
「何だかガキの約束みてぇ」
「あら、だってイーグルの喪に服してる訳ですから、
蒼太さん、『大人の約束』なんて気分ではないでしょう」
本当に素直じゃない。
けれども純粋な彼の感性は、今日一日はきっとそっとしておいて欲しいと
思っている筈です。
彼は珍しく柔らかな笑顔で微笑んで、その細い指でわたしの髪を撫でました。
「ありがとう。多分イーグルも満足したと思う」
彼の言葉はわたしの耳に優しく響き、それはきっと
眠るように旅立った彼の友人の、餞にもなりえる響きでした。
 
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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