タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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はいヽ(^。^)ノ
ただいま帰国いたしました~。
意外と夕方の風が涼しくて、ホッとした森伊蔵です。
最高気温が8度近く差があるんだもの(^_^;)
花火大会や夏祭りもぼちぼち終盤戦。
そんな訳で夏祭りのネタです。
もちろん九品寺にこんな神社はありません。
私の家の近くにある神社をモデルに、書いてみました。
小説は続き記事からです。
ただいま帰国いたしました~。
意外と夕方の風が涼しくて、ホッとした森伊蔵です。
最高気温が8度近く差があるんだもの(^_^;)
花火大会や夏祭りもぼちぼち終盤戦。
そんな訳で夏祭りのネタです。
もちろん九品寺にこんな神社はありません。
私の家の近くにある神社をモデルに、書いてみました。
小説は続き記事からです。
◆◆◆
マンションの近くの神社で今日は夏祭りだった。
宵宮……と言うのだっけ。今日は土曜で前夜祭だ。
この神社は小さいけど珍しく、何故か本殿、拝殿が
まるで拝んではいけませんと言わんばかりに、
材質は木でもびっしりと厳重な柵で取り囲まれている。
しかし、夏祭りの日だけは賑やかに提灯や蝋燭に灯が灯り、
拝殿を囲む柵と拝殿の扉自身が開くのだ。
たまたま〆切がすんだばかりで、今日は土曜出勤をせずに済んだ僕は、
祭に向かう人々のざわめきに誘われ、神社に向かうことにした。
―――折角開いたんだ。拝んでやらなくては。
するとマンションから、少しも歩かないうちに―――――そう上から、
艶やかな黒、真っ白な(売っているのを見つけるのも、
大変そうな)サマースーツ、そして足元に覗く深紅の靴下
…と言う出で立ちの隣人、奇人変人、危険物
(いや、彼の職業を考慮したら毒物だが)の御名形史紋に
出くわした……しかも神凪ゆりさんも一緒だ。
ゆりさんは、彼女に似合いの可愛らしいな浴衣だった。
―――げっ!まさかデート?!
「あ、西田さん。御名形さんから、今日珍しいお祭りがあると聞いてきたんです」
撫子の柄が殊更華やかで、彼女には似合ってる。
「偶然ですね。僕もお祭りに向かうところだったんですよ。……それにしても」
先程から挨拶を目を交わすだけで済ませた、目の前の奇人変人は自分こそは、
無関係と言わんばかりにそっぽを向いている。
――しかしこの男が、例えゆりさんとデートであっても
夏祭りを選ぶとは思えない。
そう思っていたら、ゆりさんはにっこりと微笑みながらこう話した。
「何でも今日のお祭りで使われる御神酒が、特別な薬草を使ったもの
らしいと御名形さんが仰るのです。江戸時代より前から続く風習らしく、
今では特定しにくい薬草を使っているかもしれないって。
――――なので機会があればわたしに試して欲しいと」
「……そうなんですか」
ゆりさんは彼女の家に伝わる体質から、毒物を受け入れることの出来る体質だ。
以来、あの奇人変人隣人がそれに目をつけ、リトマス試験紙のように、
彼女を使う。
僕が複雑な気持ちで、ゆりさんを見ると、ゆりさんは優しい笑顔で言った。
「いいんですよ、西田さん。わたしの体質が
……厭わしく感じてた力が役立つのだから。
それより西田さんもお祭りに行く途中?」
はい、と答えようとして前を見ると自称毒草師の御名形史紋は祭の
行われている神社の方角を見つめている。
「御名形さん」
「―――君もこれから祭に行くのか?」
「ええ、よろしければ御一緒してもいいですか?
仕事の邪魔になるようなら、別行動しますから」
「……いや構わない。むしろ一緒の方がいいのか」
と、訳のわからない呟きを残して、さっさと神社の方に歩き始めた。
――――これだから。
もう彼が隣の部屋に越して来て四年近くになるが、全く何考えてるか解らない。
唯一言えるのは、彼が何も言う気がない時は、
絶対に口を開かない、と言うことだけ。
隣人の御名形史紋から少し離れて、ゆりさんと話しながら神社に向かった。
もう彼女と出会った頃のようなときめきはないものの、話をするのは楽しい。
お囃子の音と共に神社の神明鳥居が灯りに照らされて、見えて来た。
正直、敷地面積が普通の神社の半分にも満たないようなこんな神社に、
何があるって言うんだろう。
御神酒が薬草から作られると言っていたが、
あの奇人変人毒草師が興味を持つのならば、毒物も関わっているのかもしれない。
また―――何かおかしなことに巻き込まれなければ、いいのだが。
鳥居をくぐり拝殿に近付く。
確かに今日はしっかり柵の扉も、中の拝殿の扉も開いている。
僕は手を洗い、口を漱ぐと拝殿には近付かず柵の手前で参拝した。
どうもこれだけ人を拒む造りだと、幾ら祭の日でも遠慮がちな参拝になってしまう。
だと言うのに、流石は奇人変人、御名形史紋はさっさと拝殿の扉に近付き
中を覗いていた。
「御名形さん!せめてお参りくらいはしてから……」
すると大して離れていない本殿の裏手から、
優しい柔らかな響きの声が聞こえてきた。
「タタルさん……いいんですか?こんな所覗き込んで…」
すると低いぼそっとした声が答える。
「この社の本質は、こちらの祠だからな。
ほら、奈々、見てご覧。今日は祠の扉も開いてる」
ひょろりと背の高い、浴衣姿の男が、本殿裏手の暗闇から、
ぬっと現れる。その左腕にそっと手を添えた
――――藍染めの清楚な浴衣の女性と一緒に。
さっきの会話の様子からして、二人は恋人同士か夫婦だろうと思うのだが、
明らかに不釣り合いな感じがした。
男の方の髪はボサボサ、猫背気味に立っている姿は何とも様にならない。
それに高いのは背ばかりで、ひょろひょろだ。
―――まあ、そんなことはないだろうけど、喧嘩したら僕でも勝てそうだ。
対して女性の方は、目立つ程ではないものの、好ましい印象の美人だった。
微笑むと頬の片側にえくぼが出来るのも可愛らしく、魅力的だ。
美女と野獣とは言うけれど……この場合美女とかかしだ。
「あら、御名形さん」
女性の視線が明らかにこちらを向いている。
え?この二人は奇人変人隣人の知り合いなのか?!
「た、桑原奈々さん」
「こんな所でお会いするなんて」
「今日は桑原くんの付き添いですか?」
「あ、いいえ。そう言う訳でも」
やや苦笑気味に、奈々さんと呼ばれた女性は微笑んだ。
「御名形さんもお祭り見物ですか?ご友人の方と一緒に」
僕とゆりさんを見て、彼女は優しく笑う。小児科の看護師さんか、
薬局の薬剤師さんのような雰囲気がある。
多分、奇人変人毒草師が他人を連れて歩いているのが、珍しかったのだろう。
「御神酒の件だろう。あまり知られていないが、この社の祭は歴史が古い。
使われてる薬草が気になったんじゃないか」
突然、女性の隣で今まで全くこちらには無関心とばかりに、
拝殿に目をやっていたボサボサ男が、口を挟んだ。
見た目は正反対な気もするけど、人を近づけない―――いや、思い切り
弾いているような空気は、隣人といい勝負かもしれない。
「今では採取の難しいサンプルが得られるかと思ってね」
「君が関心のないことに、首を突っ込むことはないからな」
「君は、この神社の祭神が気になったのか。確かに天照大神単身
で祀られているのは、この辺りでは見かけないか」
そう言って奇人変人隣人は、そっと彼女を見た。
「ついでに彼女と夏祭りに来た訳だな」
あれ?………今、隣人は珍しく小さなため息をついたような気がする。
それに少し気を取られていると、太鼓のどぉんと言う音がして、
拝殿の側の社務所から素焼きの徳利を三方に乗せて、神主が現れた。
神主の背後からは七人の氏子と思われる人たちが、ぞろぞろと付いて来た。
榊の枝を持った神主がまず拝殿に向かって深くお辞儀をして、
三方ごと徳利を神前に供えた。
氏子とおぼしき人たちも横に一列にならんで、一礼する。
神主が祝詞を挙げ始めると、周囲も何やら厳粛な空気に包まれたので、
僕たち―――奇人変人二人と先程桑原奈々さんと呼ばれた女性、
そしてゆりさんと僕も神妙な態度で(?)立っていた。
その儀式の様子を見て、やっぱりなんだか変わった神社だなあ、
などと思っていたら、例のボサボサ男がまたよく聞こえないような声で呟いた。
「成程ね…。祭る側ではなく押さえる側な訳か」
は?
思わずボサボサ男の方を見ると、隣にいた彼女が苦笑気味に微笑む。
自分の付き合ってる男が、変人であることは理解しているらしい。
こちらもつられて微笑っていると、神主がまた三方を持って氏子の前に向き直った。
いつの間にか配られていた素焼きの盃に、徳利の中の液体が注がれる。
どうやら我が家の隣人の話だと、あの御神酒はただの酒ではなく、
何らかの薬草を使った薬酒の可能性があるらしい。
しかし自称『毒草師』の御名形史紋が言うのだ。
もし、すっごく危ない薬草だったら―――?
すると、場がざわめいて氏子の列に人が集まった。
「タタルさん、誰か倒れたみたいですよ」
自分の彼女があちらに行きかけたので、
仕方なく―――と言った風に溜め息をついて、
ボサボサ男も人の倒れた方へと向かって行った。
すると驚いたことに、皆が倒れた氏子に視線を集中させた隙に、
もう一人の変人が白いスーツを翻して拝殿にさっさと歩いて行く。
そしてなんの躊躇いもなく、御神酒の徳利を取り上げ、
中味を指につけ――――舐めた!?
「み、御名形さん!それは――」
彼は珍しく首を傾げて、一つ側に置かれていた盃に御神酒の残りを注いで、
ゆりさんに手渡した!
「待っ……!」
ゆりさんが幾らどんな毒でも大丈夫だからって、
今人が倒れたばかりなのに――――。
すると倒れた氏子の方から、例のボサボサ男の声が。
「急性アルコール中毒だな」
え?
「…養○酒ですね」
と、ゆりさんの声。
は?
「奈々、救急車を呼んだ方がいい」
「はい、解りました」
桑原奈々さんは持っていた和柄の布で出来た小さなバックから、
携帯を取り出して、直ぐ様電話をかける。
すると僕の隣でゆりさんが、再度盃に口を付け言った。
「使われてる成分は○命酒と同じですよ。でも今時珍しい。奈良県産の深大当帰が
使われてます」
「やはりね」
もう一人の奇人変人が言う。
「もう少しアルコール度が低ければ、
完全に養命○だろう。しかし奈良県産の深大当帰ならば、
今はほぼ絶滅状態な筈だ。君は良く知っていたな」
「家に残されていた薬の幾つかの中にあったんです」
ゆりさんは頬を淡く染めて、俯いた。
決して褒められて嬉しい内容ではないのだが。
すると救急車を手配し終わった、ボサボサ男が、
こちらに戻って来て、また低い声で言った。
「ずいぶん祭の前に、お清めだと言って、飲んでいたんだな。
どんなに体に良い成分でも、彼にとってはこの御神酒が最後の一滴だったらしい」
すると徳利をさっさと戻した自称毒草師が、表情は能面顔のまま、呟く。
「倒れた男も、君に言われたくはないだろうな」
ボサボサ男にこの言葉が聞こえたのかどうなのかと、
思う間もないうちに、桑原奈々さんが先程より少し青い顔をして、
隣のボサボサ男に囁いた。
「あの…タタルさん。少し気分が良くないんですが」
「…帰ろうか。ずいぶん人が集まって来たし、
今の君の体に人ごみは良くない。悪阻が始まったんだろう」
「少しムカつくだけなので」
……この二人は夫婦だったんだな。
男の方は彼女の肩を、見た目よりはずっと優しげに引き寄せて、
鳥居の方へと向かって行ったが、桑原奈々さんはこちらを振り向くと
ペコリとお辞儀をした。
残された僕たちは、目の前で起こったあれこれを受け入れるのに、
少々時間がかかった。
そしていつもはそんな事を気にもかけない隣人も、
二人が去って行った方角を見つめていたが、小さく口許を歪めて、こう言った。
「…ずいぶんと強力な注連縄を張ったものだ」
何のことか解らなかった僕は、隣でやっぱり複雑な表情のゆりさんを見た。
特に何か事件があった訳ではなかったが、
何だか色々と見てしまったような気がした。
翌日になって、一つ気がついた。
そう言えば隣人は、五月の末に結婚式に出席したと言っていた。
それはもしかしたら、あの二人の結婚式だったのかもしれない。
※奈々ちゃんと西田君が出会ったら、もっと大きな事件が起きそうなんですが
どうも●人事件は書くのが苦手で(^^ゞ
こんなどうということもない?アクシデントになりました。
マンションの近くの神社で今日は夏祭りだった。
宵宮……と言うのだっけ。今日は土曜で前夜祭だ。
この神社は小さいけど珍しく、何故か本殿、拝殿が
まるで拝んではいけませんと言わんばかりに、
材質は木でもびっしりと厳重な柵で取り囲まれている。
しかし、夏祭りの日だけは賑やかに提灯や蝋燭に灯が灯り、
拝殿を囲む柵と拝殿の扉自身が開くのだ。
たまたま〆切がすんだばかりで、今日は土曜出勤をせずに済んだ僕は、
祭に向かう人々のざわめきに誘われ、神社に向かうことにした。
―――折角開いたんだ。拝んでやらなくては。
するとマンションから、少しも歩かないうちに―――――そう上から、
艶やかな黒、真っ白な(売っているのを見つけるのも、
大変そうな)サマースーツ、そして足元に覗く深紅の靴下
…と言う出で立ちの隣人、奇人変人、危険物
(いや、彼の職業を考慮したら毒物だが)の御名形史紋に
出くわした……しかも神凪ゆりさんも一緒だ。
ゆりさんは、彼女に似合いの可愛らしいな浴衣だった。
―――げっ!まさかデート?!
「あ、西田さん。御名形さんから、今日珍しいお祭りがあると聞いてきたんです」
撫子の柄が殊更華やかで、彼女には似合ってる。
「偶然ですね。僕もお祭りに向かうところだったんですよ。……それにしても」
先程から挨拶を目を交わすだけで済ませた、目の前の奇人変人は自分こそは、
無関係と言わんばかりにそっぽを向いている。
――しかしこの男が、例えゆりさんとデートであっても
夏祭りを選ぶとは思えない。
そう思っていたら、ゆりさんはにっこりと微笑みながらこう話した。
「何でも今日のお祭りで使われる御神酒が、特別な薬草を使ったもの
らしいと御名形さんが仰るのです。江戸時代より前から続く風習らしく、
今では特定しにくい薬草を使っているかもしれないって。
――――なので機会があればわたしに試して欲しいと」
「……そうなんですか」
ゆりさんは彼女の家に伝わる体質から、毒物を受け入れることの出来る体質だ。
以来、あの奇人変人隣人がそれに目をつけ、リトマス試験紙のように、
彼女を使う。
僕が複雑な気持ちで、ゆりさんを見ると、ゆりさんは優しい笑顔で言った。
「いいんですよ、西田さん。わたしの体質が
……厭わしく感じてた力が役立つのだから。
それより西田さんもお祭りに行く途中?」
はい、と答えようとして前を見ると自称毒草師の御名形史紋は祭の
行われている神社の方角を見つめている。
「御名形さん」
「―――君もこれから祭に行くのか?」
「ええ、よろしければ御一緒してもいいですか?
仕事の邪魔になるようなら、別行動しますから」
「……いや構わない。むしろ一緒の方がいいのか」
と、訳のわからない呟きを残して、さっさと神社の方に歩き始めた。
――――これだから。
もう彼が隣の部屋に越して来て四年近くになるが、全く何考えてるか解らない。
唯一言えるのは、彼が何も言う気がない時は、
絶対に口を開かない、と言うことだけ。
隣人の御名形史紋から少し離れて、ゆりさんと話しながら神社に向かった。
もう彼女と出会った頃のようなときめきはないものの、話をするのは楽しい。
お囃子の音と共に神社の神明鳥居が灯りに照らされて、見えて来た。
正直、敷地面積が普通の神社の半分にも満たないようなこんな神社に、
何があるって言うんだろう。
御神酒が薬草から作られると言っていたが、
あの奇人変人毒草師が興味を持つのならば、毒物も関わっているのかもしれない。
また―――何かおかしなことに巻き込まれなければ、いいのだが。
鳥居をくぐり拝殿に近付く。
確かに今日はしっかり柵の扉も、中の拝殿の扉も開いている。
僕は手を洗い、口を漱ぐと拝殿には近付かず柵の手前で参拝した。
どうもこれだけ人を拒む造りだと、幾ら祭の日でも遠慮がちな参拝になってしまう。
だと言うのに、流石は奇人変人、御名形史紋はさっさと拝殿の扉に近付き
中を覗いていた。
「御名形さん!せめてお参りくらいはしてから……」
すると大して離れていない本殿の裏手から、
優しい柔らかな響きの声が聞こえてきた。
「タタルさん……いいんですか?こんな所覗き込んで…」
すると低いぼそっとした声が答える。
「この社の本質は、こちらの祠だからな。
ほら、奈々、見てご覧。今日は祠の扉も開いてる」
ひょろりと背の高い、浴衣姿の男が、本殿裏手の暗闇から、
ぬっと現れる。その左腕にそっと手を添えた
――――藍染めの清楚な浴衣の女性と一緒に。
さっきの会話の様子からして、二人は恋人同士か夫婦だろうと思うのだが、
明らかに不釣り合いな感じがした。
男の方の髪はボサボサ、猫背気味に立っている姿は何とも様にならない。
それに高いのは背ばかりで、ひょろひょろだ。
―――まあ、そんなことはないだろうけど、喧嘩したら僕でも勝てそうだ。
対して女性の方は、目立つ程ではないものの、好ましい印象の美人だった。
微笑むと頬の片側にえくぼが出来るのも可愛らしく、魅力的だ。
美女と野獣とは言うけれど……この場合美女とかかしだ。
「あら、御名形さん」
女性の視線が明らかにこちらを向いている。
え?この二人は奇人変人隣人の知り合いなのか?!
「た、桑原奈々さん」
「こんな所でお会いするなんて」
「今日は桑原くんの付き添いですか?」
「あ、いいえ。そう言う訳でも」
やや苦笑気味に、奈々さんと呼ばれた女性は微笑んだ。
「御名形さんもお祭り見物ですか?ご友人の方と一緒に」
僕とゆりさんを見て、彼女は優しく笑う。小児科の看護師さんか、
薬局の薬剤師さんのような雰囲気がある。
多分、奇人変人毒草師が他人を連れて歩いているのが、珍しかったのだろう。
「御神酒の件だろう。あまり知られていないが、この社の祭は歴史が古い。
使われてる薬草が気になったんじゃないか」
突然、女性の隣で今まで全くこちらには無関心とばかりに、
拝殿に目をやっていたボサボサ男が、口を挟んだ。
見た目は正反対な気もするけど、人を近づけない―――いや、思い切り
弾いているような空気は、隣人といい勝負かもしれない。
「今では採取の難しいサンプルが得られるかと思ってね」
「君が関心のないことに、首を突っ込むことはないからな」
「君は、この神社の祭神が気になったのか。確かに天照大神単身
で祀られているのは、この辺りでは見かけないか」
そう言って奇人変人隣人は、そっと彼女を見た。
「ついでに彼女と夏祭りに来た訳だな」
あれ?………今、隣人は珍しく小さなため息をついたような気がする。
それに少し気を取られていると、太鼓のどぉんと言う音がして、
拝殿の側の社務所から素焼きの徳利を三方に乗せて、神主が現れた。
神主の背後からは七人の氏子と思われる人たちが、ぞろぞろと付いて来た。
榊の枝を持った神主がまず拝殿に向かって深くお辞儀をして、
三方ごと徳利を神前に供えた。
氏子とおぼしき人たちも横に一列にならんで、一礼する。
神主が祝詞を挙げ始めると、周囲も何やら厳粛な空気に包まれたので、
僕たち―――奇人変人二人と先程桑原奈々さんと呼ばれた女性、
そしてゆりさんと僕も神妙な態度で(?)立っていた。
その儀式の様子を見て、やっぱりなんだか変わった神社だなあ、
などと思っていたら、例のボサボサ男がまたよく聞こえないような声で呟いた。
「成程ね…。祭る側ではなく押さえる側な訳か」
は?
思わずボサボサ男の方を見ると、隣にいた彼女が苦笑気味に微笑む。
自分の付き合ってる男が、変人であることは理解しているらしい。
こちらもつられて微笑っていると、神主がまた三方を持って氏子の前に向き直った。
いつの間にか配られていた素焼きの盃に、徳利の中の液体が注がれる。
どうやら我が家の隣人の話だと、あの御神酒はただの酒ではなく、
何らかの薬草を使った薬酒の可能性があるらしい。
しかし自称『毒草師』の御名形史紋が言うのだ。
もし、すっごく危ない薬草だったら―――?
すると、場がざわめいて氏子の列に人が集まった。
「タタルさん、誰か倒れたみたいですよ」
自分の彼女があちらに行きかけたので、
仕方なく―――と言った風に溜め息をついて、
ボサボサ男も人の倒れた方へと向かって行った。
すると驚いたことに、皆が倒れた氏子に視線を集中させた隙に、
もう一人の変人が白いスーツを翻して拝殿にさっさと歩いて行く。
そしてなんの躊躇いもなく、御神酒の徳利を取り上げ、
中味を指につけ――――舐めた!?
「み、御名形さん!それは――」
彼は珍しく首を傾げて、一つ側に置かれていた盃に御神酒の残りを注いで、
ゆりさんに手渡した!
「待っ……!」
ゆりさんが幾らどんな毒でも大丈夫だからって、
今人が倒れたばかりなのに――――。
すると倒れた氏子の方から、例のボサボサ男の声が。
「急性アルコール中毒だな」
え?
「…養○酒ですね」
と、ゆりさんの声。
は?
「奈々、救急車を呼んだ方がいい」
「はい、解りました」
桑原奈々さんは持っていた和柄の布で出来た小さなバックから、
携帯を取り出して、直ぐ様電話をかける。
すると僕の隣でゆりさんが、再度盃に口を付け言った。
「使われてる成分は○命酒と同じですよ。でも今時珍しい。奈良県産の深大当帰が
使われてます」
「やはりね」
もう一人の奇人変人が言う。
「もう少しアルコール度が低ければ、
完全に養命○だろう。しかし奈良県産の深大当帰ならば、
今はほぼ絶滅状態な筈だ。君は良く知っていたな」
「家に残されていた薬の幾つかの中にあったんです」
ゆりさんは頬を淡く染めて、俯いた。
決して褒められて嬉しい内容ではないのだが。
すると救急車を手配し終わった、ボサボサ男が、
こちらに戻って来て、また低い声で言った。
「ずいぶん祭の前に、お清めだと言って、飲んでいたんだな。
どんなに体に良い成分でも、彼にとってはこの御神酒が最後の一滴だったらしい」
すると徳利をさっさと戻した自称毒草師が、表情は能面顔のまま、呟く。
「倒れた男も、君に言われたくはないだろうな」
ボサボサ男にこの言葉が聞こえたのかどうなのかと、
思う間もないうちに、桑原奈々さんが先程より少し青い顔をして、
隣のボサボサ男に囁いた。
「あの…タタルさん。少し気分が良くないんですが」
「…帰ろうか。ずいぶん人が集まって来たし、
今の君の体に人ごみは良くない。悪阻が始まったんだろう」
「少しムカつくだけなので」
……この二人は夫婦だったんだな。
男の方は彼女の肩を、見た目よりはずっと優しげに引き寄せて、
鳥居の方へと向かって行ったが、桑原奈々さんはこちらを振り向くと
ペコリとお辞儀をした。
残された僕たちは、目の前で起こったあれこれを受け入れるのに、
少々時間がかかった。
そしていつもはそんな事を気にもかけない隣人も、
二人が去って行った方角を見つめていたが、小さく口許を歪めて、こう言った。
「…ずいぶんと強力な注連縄を張ったものだ」
何のことか解らなかった僕は、隣でやっぱり複雑な表情のゆりさんを見た。
特に何か事件があった訳ではなかったが、
何だか色々と見てしまったような気がした。
翌日になって、一つ気がついた。
そう言えば隣人は、五月の末に結婚式に出席したと言っていた。
それはもしかしたら、あの二人の結婚式だったのかもしれない。
※奈々ちゃんと西田君が出会ったら、もっと大きな事件が起きそうなんですが
どうも●人事件は書くのが苦手で(^^ゞ
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森伊蔵
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性別:
非公開
職業:
主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
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ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
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