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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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蒼太の高校生話、第二回目です。
どうも話の流れ上、三年分書くことになるかな??

思いつくまま気ままに行ってみようと思います。


あと岐阜にお住まいの方に質問(^_^;)
安いスーパーってどちらでしょw

小説はつづきからです。

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◆◆◆


期末試験の週に突入した。
これが終われば夏休みが来る。そんな期待感もありながら、航空学校を目指す身としては、勉強もなおざりに出来ない。
ただ、テストで早く帰宅出来るのは良いものの、家に帰ると一人きりで時間を少し持て余した。
数学のヤマだけ押さえると、さっさとランニングの準備をして、基地脇の公園に向かう。
公園入口の信号で美容院の看板を見かけた。
そう言えば、この近くの美容院に勤めてると言っていた。
でも流石にランニング途中に、立ち寄る気分にはなれない。
そんな風に心の中で、言い訳していたら、バッタリと彼女ーー沢渡梨沙と出会した。 
「ランニング?」
「貴方は――もしかしてパンク?」
彼女は自転車を押して歩いていた。
「ええ、うっかり縁石に乗り上げた時やっちゃったわ。自転車もメンテナンスしないとダメね」
先日とはまるで別人に見える。
よく花が咲いたようだと言うけれど。
夏の早朝に朝顔の花が咲いたのを見かけたような、涼しげなキリっとした印象があった。
「これから出勤なのよ。今日は午後から。わたし一人だから来ない?この前前髪切るって話したでしょ」
のこのこ付いて行くのも躊躇われたが、彼女には人に断らせない、凛とした所がありーー結果自分はそれに負けてしまった。
沢渡梨沙は店の鍵を開けると、待合いのソファに自分を座らせて、さっさと店の奥に引っ込んだ。
一時期しか岐阜に滞在しないと言う彼女と、この店の間柄は良く分からなかったものの、勝手知ったる様子にあまり気にせず、一応は招かれた客の気持ちで居ることに決めた。
上を袖をまくったワイシャツに着替えて、美容師が良く着けている黒いエプロンを締めた彼女が、手招きをした。
「ココ、座って。任せてくれたら、良いようにするけど」
「えー、会って3度目の貴方をどう信用しろと」
「わたしの前カレ、パイロットだったのよ。良く切ってあげてた。悪いようにはしないわよ」
「……。」
やはり任せて良いのか、悪いのか分からなかったが、彼女はさっさとこちらをシャンプー台の椅子に座らせて、顔にガーゼを被せた。
「得した、と思う程度には安くしてあげるから」
「アンタ美容師になって何年…?わ!」
何の予告もなく椅子の背もたれが倒れた。
「3年」
「げっ」
「普段は都内で1日4人は切ってるから、大丈夫」
「これって練習台って言わないか?」
「ふっふ」
怪しい含み笑いと共に、温かめのお湯が頭にかかったのが分かった。
「熱くない?」
「……大丈夫」
急にフーッと緊張感が無くなり、楽になっていく自分が自覚出来た。
「今日暑いし、ミント系のシャンプー使うけど?」
「……ん」
既にまともな返事が返せず、為すがままになっている。
細い彼女の指先が、割合と遠慮なく触れているのが分かった。
「予想通り猫っ毛ね。見た目、そうではないけど、結構髪の毛セットするのに苦労してるでしょう?」
「……髪質はお袋に、癖毛は父に似たんだ」
「パイロットになったら、ヘルメット被るし、あまり伸ばせないかな?」
「かも」
「今日短くしてみて良い?」
「えー!」
「ホラ、暴れないの!」
ぱっとお腹のあたりに掌が触れて、ドキリとした。
ガーゼで顔が隠れていて、良かった。
不覚にも赤くなったのが、相手に見られてしまっていたかもしれなかったから。
「前カレって言ってたよね」
「……ええ」
「何操縦してたの」
「紺色の救難のヘリコプター……えーと確かU」
「UH-60!」
「そうそう。元はそのパイロットだったの」
「元は?」
「……」
「うわっ!アチっ」
既にシャンプー台からカット用のシートに移り、ドライヤーをかけられていたら、耳元に熱い空気が流れて来て、心底驚いた。
「ああ、ごめんなさい。大丈夫?」
彼女も驚いたようにドライヤーのスイッチを切った。
救難用のヘリ、通称ロクマルは空自で使用され始めてからボチボチ40年になる。
元々米軍で多目的ーー戦闘の激しい地域での輸送の為にベル社のUH-1の後継機として開発されたヘリコプターだったUH-60を、日本では御巣鷹山でJAL123便の墜落事故の教訓から、夜間や悪天候でも出動出来るようにと開発した機体なのだ。
そう言えば2010年代から新たな救難ヘリの開発が始まったものの、予算不足で何度か計画が頓挫してしまったと言う記事を、父の持って来た航空専門誌の記事で読んだような。
「この長さなら、跳ねずに済むかしらね」
彼女は一房後髪をカットすると、後は思い切りよく、全体をカットし始めた。
あまり細かいことは気にしない質らしい。
思い切りの良い女性群に囲まれて育ったせいか、大して驚かないものの、せめてアフターフォローのあるタイプだと良いなと祈るばかりだ。
この辺、何か計画して突っ走る母を見守る父が、内心非常にヤキモキしている心情に良く似ていると感じた。
父と二人で暮らすようになって、母といる時の父と、母のいない時の父は、緊張感と言うか気合いと言うか、言葉にしがたい何かが違っていたのだと、良く分かった。
こう言う女性の行動に感じる危うさにざわつく気持ちを、どんな言葉で呼んだものだろう。
カットは1時間も掛からずに終わった。
鏡の前の自分は――?
「……やられた」
「サッパリしたでしょ」
予想以上に短くカットされた髪と自分の顔が馴染まず躊躇われたが、鏡に映る彼女の笑顔があまりに素直に感じられて、怒りにはならなかった。
「アレ、蒼太?随分サッパリしたなぁ」
キッチンで味噌汁の出汁を取っていた自分に、父が驚いて声をかけた。
「……おかえり」
「ただいま。良いんじゃないか?お母さん似の顔が良く見えて。今までちょっと前髪長過ぎたろう」
言うと思った。
顔に関しては、お袋を通過せずに評価されないのは分かっているので、それは良い。あまり似てると言われると少々――かなり鬱陶しいけど。
「ロクマルの彼女にやられた」
「え?」
「いや良い。――それより夕方しか勉強出来なかったから、夕飯食ったらすぐやるから」
「ああ、後片付けくらいやるから良いよ。今日はシャケか。よくふた切れも手に入ったな。近年高いのに」
「アミカのタイムセールに間に合ったから」
父はニッコリ笑った。
「情報収集怠りないのは、良い事だね。蒼太」
「当たり前。それも社会勉強のウチだろ」
父は自分の幼い頃から、あまり声を荒げて怒る人ではなかった。父からは良く労いの言葉をかけられたし、それが励みにもなっている。
だからこそ普段穏やかな父が、航空自衛隊に勤務した当初は、F-15のパイロットだったとはなかなか信じられなかった。
――以前訪ねた静岡の祖父がコッソリ見せてくれたアルバムには、20代の父がF-15のコクピットにいる写真が貼ってあったが。
パイロットを諦めなければならなかった父は、どんな気持ちだっただろう。
交通事故だったと聞く。
沢渡梨沙の前カレも何か事情があるのだろうか?
そう言えば最初出会った時は、彼女は喪服だった。
ざわりと、心臓を撫でるように気持ちが波立つのが分かる。
凛とした屈託無い笑顔を見せる彼女と、鋭い皮肉も辞さない彼女と。
ふといつもの位置に前髪が無い事に気づき、窓ガラスに映る自分を見て、鏡に映った彼女の表情がリアルに思い出された。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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