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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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拍手ありがとうございますm(__)m
コメントの返信は次回更新時にさせて頂きます。

春の始まりゆえ外はすごい突風。
しかも窓の外、黄色いし…。
皆様お出かけの際はご注意下さい。


小説は続き記事からです。

拍手[12回]


◆◆◆


暖かい日だった。
先週までの寒さが嘘のような。


今年は年明け早々に寒い日が続き、
インフルエンザやウィルス性胃腸炎が流行った。
それゆえ、自分が勤める漢方薬局に来店する患者は
いつもの三割増しだったが、
彼女の勤める――自分の古くからの知人が経営する調剤薬局は、
駅前通りに新しく心療内科が開院したこともあって、
通常の三倍は患者が来ていたようだ。


お陰で「いいか、桑原。奈々くんに『余計な』世話をかけるなよ」
などと言う、それこそ余計なお世話な台詞を、
彼女の雇用主から言い渡される羽目にもなった。
「自分のことは自分でやれ。わが薬局始まって以来の修羅場だ。
 この際協力して貰う」
彼女を少しでも疲れさせない配慮だと解るが、
毎日帰宅の度に彼女を見ればそれくらい解る。
だから二月に入ってから、彼女には一指なりとも
触れてない――と言うか触れることなど出来なかった。
根が生真面目な彼女は、仕事も生活も手を抜こうなどと言う風には、
まるで考えが及ばないようで、いつも必死に目の前の課題をこなしていく。
先月は自分としてはそこまで重きを置いていた訳ではない
バレンタインデーには、手作りの洋酒入りのチョコレートムースを作り、
同じ月の25日に来る自分の誕生日には手をかけた料理を作り、
プレゼントまで用意してくれた。
流石にそこまで至れり尽くせりの状態に、
苦言どころか意見一つ言える訳がなく、二人で暮らす部屋では
『少しでも』彼女がリラックスして、『心からの』休息が取れるよう、
心掛けてきた毎日だったのだ。



そして今日。
やっと日常と言ってもいいテンポで、
時間が流れるようになってきただろうか。
花粉症のピークの季節がそろそろやって来るが、
それは毎年のこと。お互いのキャリアを考えたら慣れたものだった。


リビングのソファで横になって文庫本を片手に、
彼女が一息つくのを待っていた。
「ひと月放りっぱなしでしたから」
と朝からマメに炊事に掃除にと動きまわる彼女に釣られ、
自分も手伝ったりしていたが、
「タタルさん、休んでて下さい。今、お茶淹れますから」
と言われてしまい、これ以上彼女の側にいる訳には
行かなくなってしまった。
自分としては、やっと迎えた休日らしい休日。
それまで一息も二息も間を置かなければならなかった彼女との距離を、
少しでも縮めておきたかった。


「沙織が苺狩りに行ったんですって。仕事みたいですけど、
 ついでだからと言って、現地から一箱も送ってくれて。
 ちょっと食べ切れなさそうな量だから、
 ジャムにでもしようかとも思うんですが、
 とりあえず生食で食べてみようかなって」
ガラスの器に盛られた蔕(へた)の部分まで真っ赤な苺を持って、
彼女はやっと自分の横たわるソファの前まで来て座った。
「タタルさん、食べますか?」
彼女は振り向いて、こちらを見た。
ソファの上から見ると、今日は後ろ髪を編み込んである為、
彼女の白い首筋がよく見える。
「……貰おうかな」
すると、聞いておきながら彼女は僅かながら驚いたようだ。
確かに間食は殆どしないから、珍しいとは言える。


起き上がってソファを降り、彼女の横に座った。
こうしてゆっくり彼女の気配を間近に感じられるのも久しぶりだ。
この一、二ヶ月の忙しなさを思って溜め息が出た。
「…すみません。午前中お掃除手伝って頂いたから、お疲れですよね」
「いや…そういう訳じゃ。君こそ疲れてるだろう。
 外嶋さんは人使いが荒いからな。その上、そろそろ
 中年から老年にさしかかろうと言う年齢だから、君の負担も大きいだろうし」
しばらく彼女に触れることすら出来なかった恨みが重なって、
つい人生の先輩への評価もいつもより辛口になる。
「まあ!外嶋さん、まだ四十代ですよ。老年は失礼では」
「最近やたら口うるさいからな…年とってきた証拠だ」
涼しげなガラスの器の中の深紅の果実を一つ、つまんだ。
洗った滴のついた蔕を取る。
「奈々」
「…!」
振り向き様、彼女の口に苺を押し込む。
柔らかな口唇に人差し指が触れた。
彼女は瞬間、ぱっと頬を染めたものの、素直に苺を口の中に入れる。
「甘いかな?」
「………は、はい」
「沢山あるって言ってたな。後でシャンパン買ってきて、
 久しぶりにレオナルドでも作るか」
「………」
彼女はこちらを伺うように見ている。
不意を突かれたと言いたいのかもしれないが、
休日はあと半日で終わることを思えば、あまり丁寧に手順を踏むゆとりはない。
出来るだけ小粒の苺をまた一つ摘まみ、蔕を取ると自分の口にくわえた。
「タ……」
果実から滴る甘みと同等の酸味が、口唇から僅かに流れ落ちる。
そっと彼女の舌に自分の舌を絡ませて、手のひらで後れ毛ごと項に触れる。
瞬間彼女がびくりと身を震わせたのが解った。
ほんの微かに口唇を離すと、彼女の口唇から吐息が漏れる。
その吐息ごと再び飲み込みように、深く口付けた。
「んっ…」
全く油断しきっていたようで、こちらの僅かな動作も
彼女は素直に受け入れてしまうらしい。
――それはある意味、折り込み済みでこちらとしては予定通り
ではあったけど、彼女としては隙を突かれたようで、
口唇を離した途端、何か言いたげな瞳でこちらを見つめていた。
「…タタ」
「君は忘れてる」
こう言う時は先に攻めたもの勝ちだ。
「え」
「こうして触れることの意味」
「意味…?」
「そう。俺にとっては『知りたいことを知る』為の」
彼女が必死に考えている間に、さっさと腕の中に抱き込む。
――確かにいつものように、微かに抵抗されるのも悪くはないが。
「『知る』って…た、タタルさんはもうわたしのことは、
 何でも知ってるじゃないですか」
「そうかな。今は君が何でこんなに意地悪か知りたいと思ってるよ」
耳許で囁く。耳朶に歯でそっと触れると、
抱きしめた体が身動ぎして、僅かに腕から逃れようとした。
「意地悪なんて…」
「じゃあ、何て言おうか。こんな風に君を抱いてる男を、
 そんな不吉な名で呼ぶのに」
「…………」
何を勘違いしたのか、それともそう言うものだと理解したのか、
一緒に暮らして一年は経とうと言うのに、
彼女は学生時代からのあだ名で自分を呼ぶ。
普段はこのあだ名が定着してから今までの年月に敬意を払って、
仕方なくそのままでいるものの、せめて二人きりのこうした時間くらいは
彼女から零れる甘い声音で、まともに名前を呼ばれたかった。
彼女もそれは納得したようで、ベットの中では、恥ずかしげに
自分の名前を呼ぶ。――が今は不意を突かれたからだと言わんばかりに、
大きな瞳でこちらを見つめた。
「…ここはベットではないけどね。君は時々本当に
 解ってないんじゃないかと、疑いたくもなるな」
「解ってないって…タタルさ、た、崇さんこそ、
 さっきから意地悪です。どうして突然そんな風に」
彼女の頬は既に真っ赤だった。
先程焦がれるように見つめてしまった首筋も、薄紅に染まっている。
きっと首から下も綺麗に染まっているんだろうと想像したら、
これ以上自分をとどめておける気がしなくなった。
彼女を抱きしめたまま、床にゆっくりと倒れ、
彼女の頭を少し強引に引き寄せた。
口唇からはまだ甘い果実の香りが、微かに漂う。


淫らな音をたてて、口唇が離れた。
思いの外の状態に彼女は戸惑いを見せながらも、抗うような素振りはない。
「いい加減栄養不足だからね。そろそろ補わせて貰う」
「…栄養になるんですか?」
「君は?まるで感じなかった?
 ――俺はまさに那由多、とでも言いたいような時間と
 距離を感じたけどね。今日までは」
彼女はいつものように困った表情で眉をひそめていたが、
ふと意を決したように額に口付けを落とした。
「わたしだって、タ、崇さんに甘えたいなって思う時はあります」
首を起こそうとするので、また引き寄せた。
視線を合わせたままのキスに、彼女はまた赤くなった。
「甘えたい時もある、か。――今は?」
そっと背筋に指を這わせると、あえかな声が漏れた。
「…もう!」
「こっちに聞いた方が正直だな」
素肌に指で触れると、すでに体は素直に反応して、息づいているのが解る。
一つになるかならないかの、瞬間の距離を見定めながら
ゆっくりと体を入れ替えて、彼女を床に寝かせた。
「…ベットまで待てない」
声にもならないような言葉を、彼女は上目使いの表情(かお)で受け止めた。
そして小さく頷く。
彼女の肌に触れながら、果てしなく感じられていた距離と
時間を全て失くせとばかりに、深く口付けた。
 


 
 

全てが終わっても、まだ離し難い感じだった。
やはりリビングの床では彼女が痛々しく感じられて、
思い切ってベットまで運んできた。
彼女は驚いた表情だったが、それでもこちらの胸に素直に身を委ね、
抱き締めるとそのまま溶けるのではないかと思う程無抵抗だった。
――それだからか、互いに上り詰めるまであまり時間はかからなかった。
予想出来なかった程、深く彼女の中にある自分を感じた。
「…どうしよう」
ぽつりと彼女が呟いた。
「何が?」
考えていた以上に溶け合っていた肌から離れることなどまだ
とても出来ず、指も口唇も彼女を求めている。
「いつもこれで精一杯って思ってました」
彼女もこちらの求めるままに体は委ねたままだった。
まだ上り詰めた最中の熱に、うかされているようにも感じる。
「なのに…もっと、って思ってしまって…」
思わず溜め息が出た。
全く解ってないみたいだ。それともわざとなのか。
「君は俺を止(とど)める気なんかないみたいだな」
「……!」
「幸い今日はそんな気はないけど」
「…そんなつもりじゃ」
ありません、の語尾を口唇で塞いだ。
「…素直に言うが」
彼女を得るまで奇妙に自分を捕らえていた意地など、もうなかった。
「このふた月、君に全く触れられなくておかしくなりそうだった。
 まさに『さみだれ』――神乱れもいいところだ」
「崇さんが……わたしのこと考えてくれてたのは、気付いてました」
「本当かな」
「また!そんな意地悪ばかり言って。
 …仕方ないって思ってましたけど、わたしも寂しかったから。
 ――側に住んでておかしいって思いましたけど」
腕の中で彼女は微笑んだ。そう言えばこの表情(かお)も久しぶりだ。
「もっと距離を縮めてもいいかな?……出来れば、今日は、ずっと」
彼女は刹那、赤くなったが、そっと腕を伸ばしこちらの首を巻いて、
優しくキスをした。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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一切関係がありません。
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著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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