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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません(^^;
久しぶりのSSでの更新です。
今まで結構時系列を意識して書いてたのですが、
もう今回は一切無視してwアイデア勝負?で書きました。



ネット立ち上げた途端、市川團十郎さんの訃報が(ノД`)
私が散々舞台を見に行ってた時の、中堅ところの役者さんが次々と
一線を引いていくのは、とても寂しさを感じます。


お話の中で使った和歌は後嵯峨天皇の娘、延政院が父親に幼い頃に
出したお手紙の歌から。
いつか使いたいと思ってました。

お話は続き記事からです。

拍手[21回]


◆◆◆
 

来週京都で薬剤師会の講習会があり、
今年はわたしが出席することになりました。
日程は金曜日の朝からで、始発の新幹線でも時間に
ギリギリだった為、前日から京都に行くことになりました。

「ついでに桑原も連れて行けばいいじゃないか。
 週末だし、土日は京都見物をしてくればいい」
「わあ~、いいですね。今丁度梅の季節だし、
 北野天満宮なんかどうですか」
外嶋さんも美緒ちゃんももう決まったことのように頷いて、
わたしを見ています。
…でも。
「確かタタルさんもこの辺りは用事が入っていたはず」
「京都なら用事は蹴飛ばして行くんじゃないか?」
「非常に漢方では有名な先生が論文の発表をするとかで、
 聴講しに行くような話を聞いてます」
「ああ、あの先生の。確か中国からも、
 人が来るとか評判になってるヤツか」
「…残念ですね」
美緒ちゃんのいかにも残念そうな声に、わたしは笑って返しました。
「そういつも一緒にいる訳じゃないし。
 タタルさんもたまには一人で、のんびり本が読みたいかもしれないから」
既にわたしの頭の中は、留守中の彼の食事の準備のことなどで
占められていました。
ちゃんと用意して行けば、必ず食べてくれることが解っています。
「まあ奈々さん一人で羽根伸ばすのも、アリですよね」
美緒ちゃんのウインクに、思わず苦笑しながら、
わたしは閉店の準備にかかりました。



そして講習会の日。
驚いたことに会場で、大学時代の後輩の美鳥にばったり出会いました。
以前高知の美鳥の故郷の村で別れて以来、久しぶりでした。
「奈々さん!」
あの辛い事件の面影はもうなく、美鳥は長かった髪を
バッサリ切っていました。
「貴子から聞きましたよ~。
 タタルさんと今、一緒に暮らしてるんですよね?」
「貴子とは会ったの?」
「いいえ。手紙やメールだけのやり取りなんですが、
 奈々さんとタタルさんの婚約の話はすぐ知らせてくれたので」
美鳥は嬉しそうにわたしを見ています。
「講習会の合間に、奈々さんのラブラブな生活のお話、
 いっぱい聞かせて下さい。
 今度はこちらから貴子にメールで知らせちゃおう」
「ら、ラブラブなんて。別に普通よ。
 タタルさんは相変わらず毎日本読んでるだけだもの」
思わず耳が赤くなるのを隠しながら、
わたしは出来るだけ素っ気なく返しました。
それは確かに彼と暮らし始めて、生活は一変しました。
でもそれを他人(ひと)に話すとなると、気恥ずかしさの方が先に立ちます。
「確かに相変わらずですね。あの時は朝まで坂本龍馬の話をしてて…。
 それなら奈々さんの留守が一日くらい延びても、気にしないでしょうか?」
「え?」
「もし良かったら明日一日滞在して、京都見物してから帰りませんか?
 わたし、京都は修学旅行以来なので」
「………」
美鳥と会うのは本当に久しぶりです。
この機会を逃すと次はいつ会えるか解りません。


今回京都に行くと決まった時、彼にはすぐ話しました。
彼はいつも通り淡々と了解の返事をして、
また読んでいた本に目を落としました。

―――少しは淋しそうにするかしら?

奇妙な期待をあっさりかわされた気持ちもしましたが、
考えてみたら、一緒に暮らし始めてから毎日顔を合わせています。
それまでは年に二回会えばいい方だったことを考えれば、
この週末留守するくらい、全く大したことではありません。



「昼休みに電話して聞いてみる。宿も延泊出来るか聞いてみないと」
論文を聴講に行くのは午後からと聞いていました。
昼休みに入ったばかりならきっと間に合うでしょう。
「良かった。わたし一人で京都散策は少し寂しかったから。
 奈々さんが一緒ならとても楽しみです」
美鳥の笑顔に笑いかえして、わたしたちは講習会の会場に入って行きました。




萬治漢方に電話すると、珍しく最初に電話に出たのが彼でした。
「美鳥くんに会った?」
「ええ、本当に久しぶりで。とても元気で安心しました。
 それで、そのう…タタルさん」
「?」
「美鳥から、明日京都見物しないかと誘われたんですが、
 もう一日留守しても構わないでしょうか?」
少しどきどきしながら、返事を待ちました。
するとしばらく間があいて呟くような声で、返事がありました。
「……それは。君も久しぶりだろうし」
「お食事は大丈夫ですか?」
「心配ないよ。……ところで奈々」
「はい」
彼は小さく咳払いをしたようでした。
「君はいろは歌に暗号が隠されていることは、知っているか?」
「いろは歌って…色は匂へど、散りぬるを、ですか?」
「ああ。いろは歌の作者に関しては様々な人物が候補に上がっている。
 そのうちの一人に柿ノ本人麿がいるんだが」
彼は一度息をつくと、また話し始めました。
「その説ではこれは刑死させられる前に人麿が、
 妻にあてた暗号の手紙と言うことになっている。
 確認するのは、後でメモにでも書いてやってみてくれ。
 いろは歌を通常通りの五七五…順ではなくて、
 七文字ごとの区切りにすると
 『とがなくてしす――咎なくて死す』になるんだ」
「まあ」
「前にも話したと思うけど、和歌はそもそも表の意味だけでは
 作られていない」
それは確かにそうでした。以前彼と京都に来た時も、
そんな話を聞いたのです。
歌の中に表立っては言えない想いを、
あの時代の人たちは上手に読み込んだのだと。
「…例えばこの歌はほんの小さな子供が作ったものだけどね
 ――二つ文字、牛の角文字、直ぐな文字、ゆがみ文字とぞ、
 君はおぼゆる。……昨夜はついこの歌を思い出した」
「……?その歌も暗号なんですか?」
「……まあね」
彼の声音には何か含みがあるような気がしました。
「ああ、そろそろ時間だ。じゃあ」
彼はそう言うと電話を切りました。



結局京都に延泊するのを、許して貰えたのか、
ダメだったのかよく解らないまま、会話が終わった気がしました。
彼は反対はしていません。
それは確かなのですが、そうするとそのあとの、
歌の暗号の話がよく解らなくなります。
「それって、奈々さんにその暗号解いて欲しいんじゃないでしょうか?」
「そうかしら?」
「きっとその歌の意味するところが、タタルさんの気持ちなんですよ」
お昼を食べながら美鳥に話すと、美鳥は笑いながら答えました。
「タタルさん、本当に変わってませんね。
 じゃあ、早速解いてみませんか?」
「え?今?」
「もし反対してたら、宿の延泊取り消さないと」
「…………反対はしてなかったと思うけど」
「どんな歌でしたっけ?」
「なんかクイズみたいな歌よ。そう言えば子供が詠んだ歌だと。
 ええと、…二つ文字、牛の角文字、直ぐな文字、
 ゆがみ文字とぞ、君はおぼゆる」
「あれ?その歌の話、学生時代に貴子に聞いたこと、ある気が
 ……ああそうだ」
美鳥はぽんっと手を叩きました。
「確か一つずつ、平仮名の文字になってた筈。
 貴子に聞いて面白いなあって思ったんですよ」
「平仮名?」
「ええ。例えば、直ぐな文字――は確か『し』だった筈」
「『し』?」
「ええ。昔は筆で『し』って真っ直ぐ線を引いたように書きますよね」
「そうね。それじゃあ、最初の二つ文字は『い』?」
「『こ』でもいいんじゃないですか?」
「そうね。じゃあ牛の角文字は?」
「牛の角…って言うとこんな形でしょうか?」
美鳥が講習会のパンフレットの端に、
ボールペンで書いたものを見ると…。
「まあ!『ひ』だわ」
「確かに『ひ』ですね。待ってください。
 もう三文字出たから、並べてみますね」
「最初が『い』か『こ』よ」
「二文字めが『ひ』。三文字めが『し』……って、あ!」
美鳥の頬が薄く染まりました。
そして伺うようにわたしを見ています。
「奈々さん、多分一文字めは『こ』ですよ」
「『こ』?じゃあ『こ』『ひ』『し』
 …最後のゆがみ文字って言うのは…」
「和歌だから文語調ですよね。
 だから『ひ』は『い』って読むと思います」
「…こいし…」
「最後の文字は多分『く』では?――ふふっ」
美鳥はにっこり笑うとわたしを見ました。
「なあんだ、貴子が『奈々さん、もしかしたらタタルさんに
 振り回されてるんじゃ』なんて余計な心配してたから。
 とってもラブラブじゃないですか」
「ええ!どうしてそう言う話になるの」
「だって…」
彼は『昨夜はついこの歌を思い出した』と言っていました。


『こ』『い』『し』『く』


…恋しく。



「美鳥」
「はい」
「わたし…今夜中に新幹線で帰ることにする。
 ごめんなさい。久しぶりなのに」
美鳥はにやにや笑っていました。
「いえ。これじゃあ、タタルさんにはお土産も必要なさそうですね」
わたしは頬が熱くなるのが解りました。
――もう。



「あーあ。何だかわたしもいい人探したくなっちゃいました」
京都駅で別れる時美鳥はそんな風に言いました。
講習会が終わった後で散々冷やかされてしまったのですが、
何だか彼がどんな気持ちであの歌の話をしたのか考えたら、
すぐに彼の顔を見たくなってしまったのです。
「結婚式、必ず呼んで下さいね」
美鳥は笑って手を降りました。




帰ると家の中は真っ暗で、静まり返っています。
彼は飲みに行ってしまったのでしょうか?
昼の電話の流れではわたしが帰ることは、予想はしていないでしょう。
着替えをしようと思い寝室を覗くと―――。


開いたカーテンの隙間から射し込む月の光に照らされて、
ベットで彼が眠っていました。
側には読みかけの文庫本。
それは全くいつも通りなのだけど……。



「タタルさん、ただ今帰りまし……きゃっ!」
屈んで彼の耳許に囁いた途端、腕を掴まれて、
ベットに倒されていました。
「京都に泊まってくるかと思ってたが」
「…だって」
彼は細い指でわたしの前髪をすくいました。
「君に無理を言ったつもりはなかった」
彼は少しすまなそうな表情です。
「いいんです。わたしも同じ気持ちだから。
 …美鳥には散々からかわれちゃいましたけど」
彼は優しく微笑みました。
「自分で考えていたより、狭い男みたいだ。
 昨夜君にこう出来ないと思ったら、一人でいるのが苦しかった」
そう言うと口唇が重なってその後何度もキスを繰り返しました。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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