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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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今日ほど待たれた日もないだろう。
何せ14年越しなのだ。

今日は僕の大学の後輩----と言っても十年以上歳が違うから、
あまり関係ないかもしれないが----と、やはり同じ大学出でもう
かれこれ十年、僕の経営する薬局で働く薬剤師との、結婚式の日である。



目の前を父親に手を引かれて、そっと歩を進める花嫁は格別に美しい。
彼女はどちらかと言えば可愛らしいタイプで、薬局に来る顧客の中でも、
特にお年寄りに好かれ、可愛がられている。
しかし今日は別だろう。いつものふわりとした柔らかさはそのままだが、
凛とした空気が彼女を包んでいる。



ああ、そうだ。
ひとつ意外なことに----そう、花婿が彼であればこれは全く意外なの
だが、此処は横浜の、明治の開港以来からあるという、格式のある教会だ。
何故それが意外かと言えば、花婿の趣味が寺社巡りに墓参りであり、
彼を知る者にとっては神社と言えば彼。彼と言えば神社だったのだ。
それが神前ではなく、教会式を選択したのには、彼にとっては切実な、他人
にとってはしようもない理由があった。

花嫁の実家は鎌倉だ。
鎌倉には歴史的にはこの教会に負けない、神前式の行える、鶴岡八幡宮がある。
初め身内では、ここで式をしようと言う案があったそうだ。
しかし、である。
最後の段階になって、花婿が強硬に反対した。
何でも式の最後に、段葛のある大通りを人力車に乗って行くらしい。
道行く観光客にとっては、いい見物だろう。
そして、普段の口の利きぶりが不遜ではあるが、実際は大変内気であるらしい彼が、
己れをそこまで見世物にすることに承諾出来なかった。

そして、花嫁が先日顔を真っ赤(実際は指先まで赤かった)にして、話したことには、
彼が『君のウェディングドレス姿が見たい』と言ったそうである。
『その方が自分が君を拘束出来た、と言う気がするから』とも。
今頃そんな気障な台詞を吐くのであれば、さっさとプロポーズするべきであったろう。
その策略?が当たって、今日、この場所でこのよき日を迎えたと言う訳である。



花嫁の進む先には祭壇と神父の前に、花婿が立っていた。
これがまた今日の招待客の、一番の話題となってしまった。

今日の彼は、普段の彼を少しでも見たことがあれば、誰だかわからないくらい、
整った美男子である。
なんでも花嫁の妹が、朝4時に未来の義兄を無理やり連れて、青山にある
カリスマ美容師の元に行き、五時間かけて花嫁の隣に並べてもおかしくないように、
準備したらしい。
おかしいのは花嫁も最初、誰だかわからなかったそうだ。
控え室を間違えた誰かが、自分の元に来たのかと思ったらしい。

まあそれくらい、彼は普段はパッとしない身なりの青年であり、服装も決して
いいセンスとは言えないのだ。
今日は名誉挽回とも言うべきだが、あまりの変わりぶりに客の度肝を抜いてしまい、
最初の話題をさらってしまった。
彼を見た招待客の全てが、おめでとうを言う前に、本当に本物の彼であるか
質問することになってしまった。

だから、今神父の前で花嫁を待つ彼は今までにないくらい、機嫌が悪いはずである。

彼の表情を見て、少し不安そうになった花嫁が、花婿の隣に立つと、何かささやいて
いた。多分優しい彼女のことだから、彼に何か慰めるような言葉をかけたのだろう。
すると小さく溜め息をついて、彼も花嫁に何かを伝えた。

花嫁の頬が薄く染まる。


----まあ、だいたい何を言ったか見当はつくがね。




なあ、桑原。
お前、あの日の自分を今、後悔してないか?


自殺未遂で救急病院に運ばれて来た、18歳の少年。
自分だけ生き残ったことで、あんなに自分を責めていた。


でも-----お前の人生は彼処で終わる縁ではなかった。
縁は『えん』と発音するだけあって、円になって円く繋がっている。
だからその時は、自分の必要から遠ざかっていても、いつかは必ず巡り、
また意外なところで繋がって行くもの-----


まあ今日の『縁』には僕が大いに尽力したことは、間違いないが。
独身主義者としては、一組くらい幸せな恋人たちを、世に送り出すぐらいの
気遣いをしても、いいだろうさ。




僕としては十年以上も決着を待たされた訳だから、今日は楽しませて貰おう。





※外嶋さんシリーズ(笑)第3弾です。
  タタ奈々の結婚式。
  そう結婚式だけは、あのタタルさんの髪型が完璧に整う可能性があります。
  近いうちにコメディ仕立てで、漫画も描きたいので、今回はあえて挿絵を
  入れませんでした。

拍手[14回]

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これで少し更新の間隔を開けようかなと、考えています。
でも、おかげさまで10月は本当に楽しかった^^眠れなかったけど…


珍しくR18?いや15かな^^;
そんな訳で15歳以下の方は閲覧をご遠慮下さい。

大人の方、あまり期待しすぎないで下さい(笑)


伊勢の曙光と九段坂の春のネタバレがありますので、閲覧の際はご注意下さい。


超ニセモノの桑原崇が出現します。
こんなの耐えられないという方は、おススメできません。

何が来ても大丈夫という方だけ、画面をスクロールしてご覧ください。



































































Stand By Me


その日その笑顔は、自分以外の男に向けられていた。

包むような、慈しむような、優しい笑顔。

これまで、間違いなく自分にしか向けられていなかった、その表情…。




先月引っ越しをした。
手伝いに来た、悪友の小松崎からは散々文句を言われた。
「あのなぁ、普通梅雨時ってのは余程でない限り、引っ越しはしないもんなんだよ!」
「いつ誰が作った決まりだ」
手放すことを決めた書籍を縛りながら、小松崎の悪句雑言に言い返す。
「雨が降るだろ!荷物濡れるだろ!大変だろーが」
「まあな、本が濡れるのは嬉しくない」
「それしか心配事はねぇのかよ!奈々ちゃんは反対しなかったのか?」
衣類を段ボールに突っ込みながら、小松崎は横目でこちらを見る。
「限界だった。……もう離れているのはやめようと決めたんだ」
「………お前素直になったな」
手を止めて感心したように、まじまじとこちらを見ている。
「手を止めないでくれ。この本は玄関に頼む」
「げっ。こんなにあるんか!?」
「ノルマなんだ。蔵書の三分の一は処分しないと、姉と暮らすのはまかりならない
 と沙織くんに言われた」
「成程…」

その後小松崎はてきぱきと、作業をこなし、借りてきた軽トラで引っ越し先へ向かった。
無駄が多いようでいて、全く実行力は優れている。いい友人だった。


世間で言う所の『婚約者』と言う間柄になって三ヶ月め、彼女と居を共にすることになった。
婚約を認めて貰うことも含めて、彼女の両親に挨拶をしに行ったのは五月の末のこと。
彼女は言葉少なく、両親に事情を説明していたが、特に母親は全て承知とばかりに、
説明の途中から、もう許可を下していた。おそらく彼女の妹から全て聞いているのだろう。
ただ父親だけは、屈託のあるような複雑な表情をしていた。
帰り道に思わず呟いた。
「君を奪いに来た悪者だな、今日ばかりは」
彼女は小さく笑って言った。
「沙織の時も同じでした。娘がいっぺんに片付くから、さすがに寂しいのかもしれません」



そして今、梅雨明けを迎えた七月初旬、二人の新居から毎朝出勤し、祐天寺の駅で待ち合わせて
帰宅する日々が二週間めに差し掛かった頃だった。
突然、突き付けられたのだ。
お互いに見ないように、知ろうとしないようにして来たことがあることに――――――。


鎌倉駅は土曜の午後だけに、初夏の暑さにも関わらず混み合っていた。
その日自分が遅れる為、彼女には先に、勤め先から鎌倉に行っていて貰い、駅で待ち合わせる
ことにした。
さすがにこの人混みでは、すぐには見つからない。

見回すと、見慣れた頭つきを見かけ、近づいて行こうと、歩きかけたときだ。

見慣れた、そして自分にだけ向けられると知っている、あの笑顔が、彼女の前に立つ、
自分以外の男に向けられていたのだ。
足が止まった。

「棚旗さんも元気で」
その男はやや名残惜しげに、彼女の前から去って行った。
彼女はしばらくはその方角に目をやっていたが、ふと自分を見つめる視線に気づいたのだろう。
こちらを見た。
「タタルさん!」
間違いなく、この笑顔は自分に向けられている。
「お疲れ様です。お客様は無事帰られたんですか?」
「……ああ」
今日帰り間際に、厄介な部類に入る客が来た為、待ち合わせが鎌倉になったのだ。
「今日はどちらに行くんでしたっけ?」
もうそこが定位置になっている、自分の左腕にするりと彼女の腕が差し込まれる。

しかし、それを受け入れることが出来なかった。
目を丸くして驚く彼女の表情を見て、自分の行動に気付く。

「江ノ電で行こう」
彼女が何かを察する前に、手を差し出す。
素直に彼女も差し出された手を握り、二人で江ノ電の乗り場へと歩いた。


「タタルさん、今日はどこのお寺へ?それとも神社ですか?」
いつもなら、行き先になる寺社の説明を移動中に済ませるのだが、今日はどうも
そんな気にならない。
何か胸の奥に、ズキリと突き刺さったように感じて、言葉なんか出なかった。
「…………」
彼女も察したのか、もう何も聞かないと決めたようだった。
窓の外の流れていく景色に、目をやっている。
こんなに自分の考えが、言葉にならないのは珍しかった。

何かの謎や疑問に突き当たっても、話すことで己を整理し、答えに行き着くことが多い。
(特に彼女相手なら)
なのに今日はその方法が取れない。
自分が何につかえているのかすら、わからない。


電車は稲村ヶ崎を過ぎると、車窓から水平線が見えるようになる。
海開きにはまだ早いが、沖にはサーフボードに乗った人影も見えた。

「あの…もし今日予定がないようでしたら、湘南海浜公園で降りませんか?」
彼女がそっと申し出た。
彼女の声音で、今まで自分があまりに不機嫌な様子でいることに気付いて、彼女の顔を見た。
「…そうしようか」
ほっとしたように、息をついてにこりとした彼女の表情を見て、またかすかに胸が痛んだ。

その小さな駅で降りると、かすかに潮の香が鼻をかすめた。
陽射しが日に日に強くなっていく頃だけに、もうすぐ4時になろうとしているこの時間が、
一番暑さを感じる。
些細な風が吹いても、肌に心地好く感じた。

海に向かって坂道を下る。心なしか、彼女の足が早まる。静かな住宅街を抜ける彼女の
足取りは軽い。
好きな道なのかもしれない。
出会って13年、それくらいは感じられるようになっていた。


新江ノ島水族館の建物とその後ろに江ノ島が見える。
歩道橋に登ると、驚いたことに右手の海の彼方に、富士山まで見えた。
「びっくりしますよね」
振り向いて彼女は言う。
歩道橋を降りて、道路から階段を下り、砂浜に降りる。
砂を踏みしめて、わずかに足の沈む心地が、何だか今の自分の心境に似合い過ぎて、
少しイライラした。


砂浜にはまだ海水浴には早いものの、海辺で遊ぶ親子連れや犬を連れた散歩の老夫婦、
なんと微かな風にカイトを揚げる人もいた。

「以前聞いたんですけど、あの凧、カメラが取り付けてあるんですって。なんでも富士山と
 江ノ島、あと夕日を空から一枚に収める為に、毎日ここに来てるとか。でも夕方風が吹くと、
 富士山に雲がかかって、難しいみたいです」
自分の視線からカイトに目が行ったことを察して、そんな話をする。
夏至が過ぎてまだひと月もたたない頃では、まだ日の光も目映い。
富士はその緩やかな稜線を、濃い青でくっきりと描いている。
江ノ島は間近に迫って、手に届きそうだ。

「成程。…君が此処を好きなのは、わかった。左手に弁財天、右手に木ノ花咲久夜媛。
 なかなかなロケーションだな」
「なんでもわかっちゃうんですね」
「そんなことはない」
少し強い調子だったかもしれない。彼女が振り向いて、じっと自分の目を見つめる。
そろそろ限界が来ていた。
わからない不安への。





「君が欲しい」





「……………え?」
かすれた声は彼女の耳に届くのに、時間がかかった。
「な…にを言って…」
「帰ろう、奈々」
駅で待ち合わせてから、初めて彼女の名前を呼んだ。
「いいんですか?」
「……行こう」

我が儘なのはわかっていたが、一度こうと思ってしまうと、そこから軌道を変えるのは
何とも難しかった。
踵を返すと、先程降りた駅の方角へと向かった。

彼女は小さく首を傾げて、後に続いた。




家の鍵を開けて入る。後ろから彼女も続く。
「タタルさん、今日は疲れてたんですね。すみませんでした。無理に鎌倉に行かない方が
 良かったですね。すぐ食事にするので、待ってて下さい」
帰り道中ずっと黙り込んでいた自分を気遣って、彼女はすぐエプロンを片手に、
キッチンへ向かおうとする。



「奈々」
「はい?」
背後からきつく抱きしめる。
「えぇ!タ、…タタルさん、どうし…」
彼女がこちらを向いた瞬間に、口づけた。
まるで噛みつくように。
「……ん…」
僅かに開いた隙間から、舌を差し入れる。抱きしめている体が、びくりと震えたのが
わかった。
舌で彼女の口唇をたどりながら、そのまま抱き上げようとすると、さすがに驚いた
らしく、力いっぱい自分の胸を押して、体を僅かに離した。
「な…何があったんですか?」
「……別に」
「本当ですか?今日のタタルさん、おかしいですよ」
頬は上気して薄く赤らんでいるものの、彼女はまだ冷静だった。
「別におかしくなんかない」
腰に回した右腕はそのまま、左手で彼女のブラウスのボタンに手をかける。
「えっ、ちょっ、まっ……」
軽いキスを繰り返して、次第に耳許から首筋へと移していく。
体を強張らせて微かな抵抗をしていた彼女から、ふと力が抜けた。

「タタルさん……ずるいです」

潤んだ瞳で見つめ返されて、もう止めることが出来なかった。








「俺はバカだな」
多分理由などわからないまま、ぶつけられた感情を彼女はそのまま受け入れた。
納得などしがたかったろうに、彼女は優しかった。そのぶん自分の最低具合が
際立って、大きなため息とともに、後悔も強かった。
「……タタルさん、怒らないで答えてくれますか?」
「保障の限りじゃない」
前髪をかきあげて、隣に横たわる彼女を見た。
「………もしかしてヤキモチ妬いてます?」
「………………何でそう思う?」
自分でも認めたくなかった。かの悪友がこの場にいたら(いても困るが)、この時点で
くしゃみしそうだ。
「鎌倉駅で見てたんですね?」
凛とした瞳で見返されて、もう降参するしかないことに気付く。
「あれは誰だ?」
「…高校の時の知り合いで、須藤真司さんです」
彼女は一息ついた。言葉を選んでいるのか、宙に視線をさ迷わせている。
「その…たまに会ってお茶を飲んだりしてました。…そう言えば彼もタタルさんのように、
 歴史に興味の強い方で…、確か楠木正成の七…えーと」
「七生報国」
「そう、それです。その話をしたことも」
「…それで?」
「彼の友達に、やはりそのことに興味を持っていた方がいて、鎌倉宮に資料があると噂で
 聞いて忍び込もうとしたらしいです」
「大胆だな」
それを聞くと彼女はクスリと笑った。
「タタルさんだって、やりそうですよ。……ただその噂を教えた須藤さんは、責任を感じて、
 友達の後を付けたそうです」
「それで?」
「鎌倉宮の管理人さんに、友達が気付かれてしまって、後を付けていた彼は、咄嗟に手を
 出してしまったんです。……ああ、もしかしたら小松崎さんが彼のことを知っているかも
 しれません。彼、空手部でとても強かったみたいで」
「…管理人は亡くなった?」
「そうなんです」
「……全く君は呆れた事件体質だな」
「た…タタルさんに言われたくないです!五十嵐先生のことで、事件に巻き込まれたって
 言ってたじゃないですか」
「あれは先生が事件を連れて来るんだ。俺じゃない」
「…そうやって逃げるんですね」
膨れっ面でこちらを見る。
「彼は過失致死の罪に問われたんだな?」
「ここからはわたしも噂でしか、知りませんでした。でも自分から警察に出頭して、少年院に
 入ったと聞いていました」
ふと彼女は視線を反らした。
ほんのり頬が染まる。
「…話を聞くだけの相手ではなかったわけだ」
「わたしのせいだと思ってました。……彼が事件の話をした時、知らないふりをすれば良かった
 所を、わたしは尋ねてしまったんです。彼を追いつめたのは自分じゃないかと、ずっと
 思ってました」
少し悲しげに瞼を閉じた。
「彼はとうに出所して、今日はご実家に戻られていたそうです。…今結婚して二人もお子さんが
 いるそうですよ」
ふっ、と小さなため息が漏れた。

-----それで彼女は、あの笑顔で彼を見ていたのだろうか。
もっと言いつのり、聞きたい気にもなったが、自分にはその資格がないことに気付いた。
彼女にもまだ全ては、話していない。


「この前外嶋さんが話してたこと、本当でした」
彼女は苦笑した。
「タタルさんのこと、場合によっては取り扱い注意の、劇薬だって。薬にもなるけど、扱いが悪い
 と毒になるかもって」
「………………」
彼女はいつも職場で、そんな話をしていたのかと、ため息が出た。彼女の上司はかなりの
曲者だ。
言いえて妙だが、全てではないその言葉を、鵜呑みにされるのは困る。
「奈々くんなら、扱えるだろうなんて、おっしゃってましたけど。ちょっとびっくりしちゃいま
 した」
「君がどう思っているか、知らないが俺は普通の男だ。----君の前に出ると、
 つまらないことで嫉妬もすれば、慌てもする」
「わたしだってそうです。いつも…いつも不安です。…多分こうして一緒にいるようになって
 からは、もっと」
「…………外嶋さんに聞いてくれても構わない」
「え?」
彼女がこちらを見つめた。
「外嶋さんは知ってる。何故俺が---」
「タタルさん。わたしはタタルさんが話したくなった時聞くって、もう決めてます」
きっぱりとした声だった。


「もうこだわりはない。けれどまだどこから話していいか、わからないんだ」
これすらただの言い訳に感じた。
「これから幾らでも時間はあります。きっと話すことがなくなるくらい」
彼女が微笑う。
あの笑顔で。
「君は勁(つよ)いね」
「……そんなことないです。いつもいつもヤキモキしてるのはわたしの方です」


彼女の前髪を指に絡めとると、顔を近付けた。
「例えば?」
「……それは…ってずるいですよ!わたしばかり話してる気が」
軽く口唇に触れると、言った。
「約束したね?」
「へ?」
「ここでは名前で、と」
「……………………」


…だから何故名前を呼ぶだけで、こんなに逡巡するのだろう。


「……やっぱりずるいです」
頬だけでなく、その滑らかな肌も薄紅に染まっていた。
「じゃあ、もう一度………」
彼女の耳に出来る限り、そっとささやく。
すると、彼女の腕がするりと首を巻き、自分の口唇に彼女の柔らかな口唇が触れた。






※はぁ~重かった(笑)
 奈々ちゃんサイドから見た原作では、タタルさんは結構奈々ちゃん限定?で微笑んで
 います。だからきっとタタルさんから見ると、奈々ちゃんも沢山微笑んでいるかな~と。
 何気にあちこち続いちゃってます。すみません;;
 さあ更新して逃げようっと。

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皆様、本当に毎回温かい拍手、ありがとうございます^^
なんかネタが止まらない状態で、ハイペースな更新になってますが、読んでくださってる方
本当にありがとう!

今回はお礼の意味も込めて、ちょっと気の早いイラスト…
タタルさんを描かなかったのには、意味がアリます(笑) これもネタ


おざわたまき様>ね、外嶋さんいいでしょう^^(なんか外嶋さんのファンブログの
ようになってきた)
これから読み直して、ますます暗躍させたいと思います(笑)
やっぱり十年よりは明日がいいことに気付いて欲しいですよね~(ちょっと遠い目)
でも十年後の方がより、いい結果だったらそっちを選ぶんでしょうか; ;
これ以上奈々ちゃんを待たせちゃイカンですよね。
そして、たまきさんに賛成です。プロポーズの日は特別な日だといいですよね!!
明治神宮に行きたくなりました。

suze様>ありがとうございます。ニセモノのタタルさんを召喚してみました。
飲みすぎはね~イカンですよ。
ひとつ気になってたんですが、出雲大遷宮で、タタルさん、缶のジントニック飲んでました
よね。あれって家計の為に飲む酒の質、落としたってことでしょうか; ;
いくらビフィータジンを継ぎ足しても、20代の頃のタタルさんなら考えられない変化だと
驚いたんですが…。いや、でも家計節約なら、奈々ちゃんへの愛でしょうから、許す!
suzeさんも漫画2連発アップで驚きました。私落書きは早いですけど、漫画は時間
かかるんで…^^;伊勢~発売後はたくさん読めてシアワセです。
大地君の話すっごいヨカッタです。後程感想書きに伺います。


だいぶマシになってきた。フォトショップ^^;こずるい方法ばかり、早く覚える老獪な
三十路も終盤の管理人でした。

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四月も末、客も疎らな木曜日。カル・デ・サックの店内には八重桜の枝が、華やかに
生けられている。まるで今日の主役は自分とでも言うように。

マスター(以下マ):今夜はお一人ですか?
小松崎(以下小):…ん?まあな。さすがにもう一緒に来るのは、野暮なんで。
マ:…成程。それはおめでとうございますと申し上げても、よろしいでしょうか?
小:うん、まあ、めでたいかな。大学時代からだと足かけ13年だ。長かった…。
マ:そうでしたか。小松崎様も同じ大学でいらっしゃいましたね。
小:ああ、アイツと会って14年か?長い付き合いだよな。
  とにかく、うまく纏まって良かったよ。
  途中どうなるかと、ハラハラした時期もあったが。
  なにせあのヤローが、はっきりしなかったからな。
マ:何事も縁と言うものが、ございますからね。
  でもあの方と…棚旗様には確実に縁があったように思いますが。
小:へえ、そうかな。
マ:いつもこちらには一人でお出ででしたからね。だからあの方が棚旗様を
  連れておいでになった時は、失礼ながら驚いたのですよ。
小:女連れでは、絶対来そうにないもんなぁ。
マ:…すぐにわかりましたね。ずいぶん棚旗様には気を許してらっしゃるのだなぁと。
小:そう…かな?
マ:そうですよ。その上初めから棚旗様の飲まれるカクテルは、あの方が決めて
  らっしゃいましたからね。
小:そうだったかなあ。奈々ちゃんはよく…オレンジの…そう、ミモザを飲んでた気が
  するけど。
マ:棚旗様が選ばれれば、そうでしたね。後ホワイトレディ。薬剤師と伺ってますから、
  白衣を着る方には、良い選択でしょうね。
小:ははぁ、成程。天然な奈々ちゃんらしいなぁ。
マ:最初こちらにいらっしゃった時は、多分棚旗様のご注文ではなかったのではないかと
  思うので、はっきり覚えています。
  あの方と同じギムレットで。
小:え~!それってアイツの注文なんだろうなぁ。女の子相手に何考えてるんだか。
マ:(笑って)そうですね。それに男性がお連れの女性の、カクテルを選ぶと言う行為は、
  それなりの意味があると、私は思っています。
小:ほう。
マ:一度限りではございませんでしたよ。いつぞやは…そう、シャーロック・ホームズ
  の話題でずいぶん話し込んでおいでの時に、こちらで考えさせて頂いた、カクテルを
  出させて頂きました。
  そのカクテルも大分前に、私がアイデアに詰まっておりました時に、あの方にヒントを
  頂いたものでした。
小:へぇ~。
マ:…小松崎様、あえて失礼を承知で言うのですが、あの方はあの方なりに気持ちを
  尽くしておいででしたよ。
小:そうかな?
マ:次々と棚旗様の飲まれるカクテルを決めていらしたのは、あの方なりに棚旗様を
  他からは遠ざけておきたいと言う、独占欲の表れのようにも、感じられましたからね。
小:酒で壁を作ってると。
マ:そういうことでしょうか。
小:…………全く、わかりづらいヤツだな。それじゃ、奈々ちゃんはさっぱり
  わからなかっただろうな。
マ:そのようでしたね(笑)でももう一つ理由があるんですよ。
小:?
マ:棚旗様は美味しいと感じた時は、素直に表情に出される方ですからね。
小:うん、確かに。見てるこっちまで、嬉しくなるからな。
マ:あの方も同じように感じておいでのようでした。
  棚旗様が、あの方の選んだカクテルをそれは美味しそうに飲まれると、あの方も大変
  嬉しそうでいらっしゃいました。勿論表情には出てはいませんでしたけど。
小:へえ~、成程ね。知らぬは当人ばかりだったと言う訳だ。
マ:頭の良いお二人でしたから、灯台もと暗しになられたのでしょうか。

マスターはクスリと笑って、グラスを置くと、小松崎を見た。

小:まあ、手遅れにならないうちに気付けて良かったよな、お互いに。

小松崎も手元のグラスを一気に干す。

スローなBGMが耳を掠めて、次第に少し酔いも感じたようだった。

小:もう一杯貰えるかな。今夜はこれで終いにしよう。
マ:かしこまりました。






※つけたし
マ:そう言えば、先月お二人がお出でになった時、少々面白いことがございました。
小:へえ、どんな?
マ:棚旗様がブルームーンをご注文なさいまして。
小:ブルームーン?
マ:ええ、パルフェタムールと言うリキュールを使うのですが、それには永遠の愛
  と言う意味がございます。
小:(赤くなる)…おお、それは奈々ちゃん、頑張ったじゃねえか。
マ:あの方は複雑な表情をなさってましたね~
小:それはまた何で?
マ:ブルームーンには『叶わぬ恋』とか『貴方とお付き合いしたくありません』とか
  そんな意味合いも、ございますので。
小:ぶはっ
  それは…まあ、あの二人らしいな(笑)






すみません; ;挿絵どう見ても喫茶店。喫茶店は昔しょっちゅう描いたけど、バーは
資料が見当たりませんでした。一度資料用の本棚を、整理せねばなるまい…^^;
やっぱりしゃべり口調も、絵も熊さんのが描きやす~い。
ブルームーンに関してはRossolisのsuze様や税込44円の黒猫様が、超ヒットする
状態でブログに絵をアップしてらっしゃいます^^

拍手[6回]

伊勢の曙光 353Pの続き、カル・デ・サックの帰り道の話です。
伊勢~のネタバレを含みます。ご注意下さい。

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この続きが小説のCALL MY NAMEになります^^;
何としてもお持ち帰りをして欲しくて、ニセモノが出現しています。
何分10年前(笑)の紙使って描いてるから、髪の毛とかにじむにじむ(泣)
でも久しぶりの原稿で楽しかったです^^
表参道に行けなかったので背景白っ!

拍手[14回]




や~;;ようやく仕上がりました。
たった7Pに嘘のように時間が…!!

でも授乳しながら、おむつ替えながら、長女に歌を歌いながら、
頑張りましたよ!!

ニセモノが多く出現しますので(笑)、ご注意ください。

明日アップします^^

拍手[2回]



竹取伝説、68Pから131Pの間の出来事です。
竹取伝説未読の方はご注意ください。
バレンタインデーからホワイトデーの間の期間を想定しています。
またしてもシナリオ形式でお送りします。
まあ、こうだったらいいなぁ~という妄想なんで^^;
 
 




夜、うっかり電話に気付き、受話器を取る。
なんと外嶋さんだった。
 

タ:なんです?こんな時間に電話なんか寄越して
外:今度の勉強会は桑原が担当だと聞いたからな
タ:迎えに来いって言うんですか?いい年して
外:…桑原、お前奈々くんからチョコレート届いたろう?
タ:……受けとりましたよ。手作りの。
外:ふうん、僕も貰ってるがね(死体発見の見舞い代わりに)、市販品だったな~
タ:!
  …………何が言いたいんですか?
外:いや、ヘビースモーカーのお前に、奈々くんの作ったチョコレートの、
  本当の味なんかわかったのかねと思って。
タ:………
外:喫煙は味蕾の本来持っている機能をかなり失わせるからね、
  つまり食べ物本来の味が分からなくなってる。
  正直君にはそのチョコレートを味わう資格もないと思うのだが、
  全く奈々くんも無駄なことをするな
タ:…………
外:だいたい女性の前で喫煙すると言うこと事態、感心せんがね。
  奈々くんだって近い将来、結婚だって出産だってするつもりだろうから。
タ:……それで一体何が言いたいんですか、外嶋さん。
外:さてね。じゃあ勉強会の日は6時までには、うちの薬局まで来いよ。
 
電話がしゃりと切れる
 
タ:(ムカ)
習慣で側にある煙草を手に取る。
口にくわえようとして、ストップする崇。カレンダー見ると今日は2月24日。

タ:明日は菅原道真の命日……俺の誕生日か


勉強会後、奈々と食事に行く 

奈:今日は煙草吸われないんですか?どうしたんですか?喉の具合でも?
タ:ああ、煙草は止めたんだ(…こういうことだったか、外嶋さんめ。謀られた)
 
という訳でした^^; このときの外嶋さんは明らかに、タタルさんを嵌めて奈々ちゃんと
勉強会に行かせています。
ここ読んだ時から、『なんで外嶋さんは、やたらタタルさんと奈々ちゃんをくっつけようと
するのかな?』と言う疑問を持ちました。
しかも結構奈々ちゃんの前ではタタルさんを立ててるしね。
タタルさんも、外嶋さんが仕組んでわざと用事(オペラ)が入ったふりをしたこと気づいてます。
『外嶋さんのことだからね…』
しかし、伊勢~読んだ後この時も自分の気持ちに気づかなかったのかよ!!って突っ込み
たくはなりましたが(笑)
謀られた仕返しにか、犯罪者とキタキツネと外嶋さんが横並びにされております^^;

外嶋さんの煙草に関する薀蓄?は神器封殺で美緒ちゃんに話していた言葉です。

拍手[7回]

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森伊蔵
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性別:
非公開
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主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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