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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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空稲本の発売まであと少しとなりました(#^.^#)

コチラも準備万端で臨んでいます。


その前にひとつssが出来ましたので、upします。


小説は続き記事からです。



拍手[18回]




◆◆◆




「うわー!スゴイ!お父さん。飛行機逆さまだよっ。
 あれ、乗ってる人はどうしてるの?」
「乗ってる人も逆さまだよ、大祐」
僕を肩車したまま、父は笑顔で答えた。
「スゴイなあ…っ」
青空に白煙が鮮やかな軌跡を残す。
目の前に繰り広げられる、航空機が織り成す数々の空技は
幼かった僕にも、はっきりと記憶に残る。
かなり片寄った女系家族の我が家は、
一番末っ子の僕の上は姉ばかり。
航空機が好きで、家から最寄りの静浜基地や浜松にも
しょっちゅうカメラ片手で出掛けて行く父は、
僕が生まれた時、同行者が出来たと大喜びだったらしい。
それでも基地で行われる航空祭に同行を許されたのは、
幼稚園に入園してからだった。
「…お父さん、どうしたらあんな風に飛行機に乗れるの?」
「うーん、パイロットの人は厳しい訓練や勉強を沢山するからね」
「ふーん」
轟音を立てて真正面の空に、T―4が無駄のない
美しいカーブを絵描いた。
「僕…パイロットになりたいなあっ」
真っ直ぐな白い飛行機雲が、青い空に溶けていく様を見つめながら、
迷わずに言った。
「ブルーインパルス。僕、ブルーインパルスの
 パイロットになりたい!」
青空に伸ばした掌に、光の欠片が落ちてきた。



航空自衛隊に入る、と言った時、母と三人の姉は
あまり良い顔をしなかった。
『考えが甘い』
三人の姉の答えは一様だった。
「大祐、自衛隊って海外派遣もあるし、国内の救助活動もあるし」
「大祐の海外派遣なんて、超ムリ。あんた英語の成績
 ずっとアヒルさんでしょ」
「体育以外は並よねえ」
容赦ない姉たちの言葉の後に、母がそっと口を開いた。
「自衛官になったら移動も多いし、静浜の基地でだけ
 働ける訳じゃないものね…」
母のため息には、なんだかすまないような気持ちがしたけれど、
父の後押しもあって、高校卒業後パイロット養成の為の
専門学校へ進んだ。



ところが。
それは、ブルーのパイロットになれると内定が出て、
最初の休暇だった。
交差点で信号待ちをしていた。
もうすぐ目の前の信号が青に変わる。
そんな瞬間(とき)だった。
右方向から走り抜けてきた大型トラックが、ウインカーもなしに
左折しようとして来た。
予測もつかなかった。
そのトラックが自分めがけて突っ込んで来るなんてことは。
そして。
目が覚めた時には病院の白い天井が見えるベットに、
寝かされていた。



多分あの頃自分は目の前に起きた事柄を、
全く飲み込めずにいたのだと思う。
飲み込めず…いや、受け入れることが出来なかった、自分のこととして。
だからP免になり、総務の仕事から広報の仕事に異動になっても
何処か他人事のようで、自分の目の前を過ぎていく人々は、
皆淡い影のような存在に思えたのだ。
『戦闘機って人殺しの機械でしょう』
その言葉で目覚めるまで。



P免になるまで、自分にも自分の周囲にも、
『空を飛ぶ』ことに否定的な価値観は存在しなかった。
稲葉リカ――彼女がいなかったら、もしかしたら自分はずっと
そのことに気付かなかったかもしれない。
そのことに気が付いた時、自衛隊に入隊した時の
母の気遣わしげな表情を思い出した。
世間と価値観が違っていたのは、むしろ自分かもしれないと言うこと。
だからこそ、自衛隊が広報活動を行うことに意味があること。
自分に与えられた仕事は、そう言う意義深い仕事だと言うこと。
そのことに気が付いたのだ。
青い空には今日も白い飛行機雲が、真っ直ぐなラインを画いている。
それは自分たちのような活動があって、
初めて存在を赦されるものなのだと知った。



「パパ!見て、見て」
小さな手が僕の頭上の青空に向かって伸ばされる。
「飛行機、ぐるんって回った!」
自分が乗ってる肩には構わず、大はしゃぎだ。
隣に並ぶ白い横顔に思わず苦笑する。
彼女もにっこり微笑んだ。
「大祐さん、次はバーティカルキューピッドですけど、
 どうします?もう少し会場の中央に移動しますか?」
「そうしようか」
子供を肩から下ろして、腕に抱いた。
「つぎは飛行機どうなるの?」
彼女によく似た黒い瞳が二つ、こちらを見つめている。
「二機飛んできた飛行機が、空におっきなハートを描くよ」
「ハート?!」
子供は嬉しそうに笑う。
「パパとママみたいだね~」
子供のあどけない感想に、思わず彼女を見ると、
彼女は肩をすくめて前を歩いた。
でも白い首筋は淡い紅に染まっている。
「そう、パパはママと世界一仲良しだからな!」
わざと見ないふりして、そう言った。
「…もうっ」
小さく彼女が呟いた。
今日の航空祭の為、彼女は何ヵ月も前から休みを申請し、
仕事を調整していた。
特に宣言した訳ではなかったが、自分が三歳の時に初めて
航空祭でブルーを見た話をしたことを、記憶に留めていたらしい。
急に子供が三歳になったから、航空祭に行こうと言い出した。
僕の郷里の静浜に戻って。
なかなかない両親二人揃っての休みと旅行に、子供は大喜びだ。
この何日か雨の日が続いたが今日はまさに航空祭日和で、
透き通った青空は高く深い。
「あの飛行機に乗りたい!」
腕の中で弾みながら、子供は空を指差す。
「そうだなあ…」
すると彼女が振り向いて言った。
「パイロットになるには、沢山の勉強と訓練がいるけど、
 きっとなれるわ。あなたには素質があるのよ」
母親の笑顔に釣られて、子供もにんまり笑う。
僕も青空に笑顔を向けた。




※もしかしたら原作との記述に(特に事故のシーン)齟齬があると
思います。
もしありましたら後程訂正します。
実家でだだって書いちゃったので(^_^;)
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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