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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません、支部には先にUPしておりました(^_^;)
ようやく息子夫婦も結婚式。

そして親夫婦の結婚式の様子は、今月発売の新刊に書きました!
予約は受け付けておりませんが、告知ページが出来ましたので
お知らせします。



初版限定でクリアファイルと栞のオマケが付きます♪ 再版は一応予定はしていないのですが、販売の様子を見て決めたいと 思います。 小説は続き記事からです。

拍手[14回]



◆◆◆


自分はこんなに我慢強かったのだど、改めて見直した。
彼女がボストンから成田に到着したのを出迎え、そのまま静岡に向かう。
目的地の静浜には明日入ることにして、今日は焼津に泊まることにした。
彼女は久しぶりの海鮮中心の日本食を前に、嬉しそうな表情だ。
随分長い事こうして二人で向かいあっていなかった。
大体コイツも悪い。
海外から婚約者に会いに来るのに、此方が絶賛勤務中の
航空祭をわざわざ狙って帰国するのだから。
「日本で基地以外の場所に来たの、久しぶりです。
最近は航空祭見て一泊すると、すぐ帰国してたから」
「郁の兄貴は、仕事どうなんだよ。随分昨年から忙しそうだったじゃんか」
「体調のこともあるのでしょうが、兄は一人で仕事をするのを止めたようです。
作曲やアレンジメント、演奏、録音、各分野に専門家を用意して
何か大きなプロジェクトを立ち上げようとしてるみたいで。
わたしは先方との連絡やスケジュールのマッチングを任されてただけです」
「不屈だな」
「ええ……」
彼女から折に触れて聞いた話では、彼女の義兄の病状は確実に進行しており、
適切な治療法もまだ見つからない状態のようだった。
その中で恨まず休まず生き続けることは、どれだけの気力を振り絞っていることだろう。
あの諦めの悪い人物が、彼女を手放したのは奇跡とも言える。
自分は見込まれたのだろうか……?
応える術はこれから探して行くことになるが。
「海……静かですね」
ホテルのレストランから見える夜の海は、たまに煌めく漁船の灯りが見える以外は
穏やかな波が小さなうねりを見せるだけだった。
「この辺りはブルーのコクピットから見ても、綺麗に見えるよ。
海岸真っ直ぐなラインでさ」
「来年はもう蒼太さんがブルーに乗っていないなんて。
三年ってあっと言う間です」
「だな……」
昨年の平田一尉のラストフライトを思い出す。
彼らしい賑やかな見送りが出来た。
ブルーの機体も四番機がラストに当たっており、一緒に放水車で水を掛けられてたっけ。
「部屋に戻るか。夜は短いし」
呟いてチラリと見ると珍しく察したのか、彼女は真っ赤になった。
「……アンタ実家に来るんだろ。そうすっと二人でゆっくり出来るの、多分今日だけだし」
「り、リカさんがぜひ泊まってって」
「何考えてんだか、気の利かない親だよな」
「そんなこと、ないです。わたしには蒼太さんち、羨ましい」
立ち上がるついでに彼女の髪をくしゃりと撫でた。



彼女に口付けた途端、自分をとどめることが出来なかった。
とどめる気もなかった。
彼女も予想の範囲だったのか、逆らわず身を預けきっている。
何故そうであったのかは想像するしかないのだが、彼女は自分以外を知らない。
それ故か、あまりにも隙だらけの時があり、嬉しいやらゾッとするやら、複雑な気分になる。
どうして離れていられるんだろう。
不思議な気持ちだった。
こちらも柔らかな波に煩雑な事柄を忘れた。
初めて空を飛んだ時、こんな気分だったかも知れない。
それまでシュミレーションで学んだ数々の手順が吹っ飛んだ記憶がある。
なのに体には刻み込まれてる動き。
今では意識に上がることもない、小さな動作。
「蒼太さんって、いつもヒドイ。ついわたしと会う前はどうしていたのかって、考えちゃう」
「……。航学時代はカノジョ作ってるヒマなんてなかった」
「航学時代は、ですよね」
彼女の滑らかな体のラインを口唇で辿りながら、呟くように答える。
「……高校生の時にちょっと悟ったから、その後はまあいいやと」
「……そう言うことなんですか」
「いいだろ。もう十年前の話だし」
わざと彼女が弱いと解っている箇所に触れる。
身を捩るのを逃さず捉え、抱き締める。
「今はアンタ一人だし」
それは間違いがなかった。



その日の市ヶ谷は快晴。
真夏のビルの谷間で正直エアコンが効いた室内でも、儀礼服なんて着ていたくない。
「アラ、馬子にも衣装ね~。蒼太の儀礼服なんて何年ぶりかしら」
母のまじまじと此方を見る視線に溜息が出た。
「普通のモーニングのが良かった」
「仕方ないわよ。現幕僚長と先代幕僚長まで来るんだもの」
「百合花んちも来るんだよな」
「ええ、槙さんちも昨日東京に着いたって。
百合花ちゃんも昨年から沖縄に異動になってるから」
「百合花はNATO派遣の話も出てるって聞いたぞ」
「子供の頃から優秀だったもの。アンタいつも勝てなかったわよね」
「背丈で負けてなかったら、体育は負けなかった筈」
身内の噂話をしながら、何となく緊張感を紛らわす。
こう言う式典は何度やっても慣れない。
他人事ならとりあえず大人しくしておけば良いのだが、
自分が主催側とあってはそうもいかない。
「郁は?」
「そろそろ見て来ようかしら。郁ちゃんのお父さんの到着が遅れてて、まだみたい」
急な事ではあったものの彼女の身内からも、父親が参加出来る事になった。
唯一の血の繋がりのある家族だ。
「あっち行ってやって。こっちは煩くなりそうだ。
今の所オヤジがロビーで相手してるけど」
「ハイハイ」
母は笑って控え室から出て行った。
するとすぐに小さくノックが聞こえた。
「はい」
返事をすると、遠慮がちに扉が開いて久しぶりに見る顔が覗いた。
「平田さん」
「よう!」
彼は首を突っ込んで部屋の中を見回した。
「何してんすか?」
「いや……、さっき三沢の基地司令の顔見かけたもんだから」
「親父の後輩だったらしいです。パイロット時代の。
多分今ロビーで親父と話してるはず」
平田一尉はホッと胸を撫で下ろして、部屋に入って来た。
「次は那覇だってな」
「……ええ」
「あのさ、今日俺だけでゴメンな。夫婦で招待状出して貰ったのに。
まあちゃん、悪阻酷くて実は置いて来るのちょっと心配だった」
「いいえ、大変な所来て頂いてすみません。今回急な話でしたし」
「skyに頼みがあるんだけどよ」
少し済まなそうな表情で、平田一尉は頭を掻いた。
「産まれてくる子供の名前さ、お前に考えて貰って良いかな?」
「俺で良いんですか?」
「うん。やっぱり24でブルーのパイロットになった奴には、何か憑いてるだろ。
俺の子だし、空飛びたがるのは確実だから、あやかった方がいいって、まあちゃんが」
「先輩、超尻に敷かれてますね。あんなにデレデレじゃ仕方ない気もしますが」
「ケッ!言ってろよ、sky。お前も今夜から同じ穴の貉だぜ」
「残念ながらそうはなりません」
「このヤロー!」
平田一尉が首を腕に絡ませた所で、また扉が開いた。
「よう!sky、久しぶりだな。お前、変わってないな」
現れたのは305飛行隊時代の隊長だった、足代二佐だった。



「新郎の方は会場にお願いします」
式場の係に呼ばれ、会場に向かった。
先程彼女の控え室に行って、彼女の父親に初めて会った。
「郁をお願いします」
ただ優しくそう言った。
彼女の父親らしく控え目な印象の、初老の紳士だ。
こんなにあっさり娘を嫁に出して良いのかと、却って此方が心配になった程、
恬淡としていた。
偶々今回は両親達の式を挙げた教会の神父の弟子が東京に来ており、
自分たちの式にも出席してくれることになった為、互いの宗教観には関わりなく、
教会式で行うことになっていた。
先にチャペルに設置された祭壇の前で、彼女を待つ。
客席にいるのは、ほとんどが自分側ーー空自関係者だったりする。
見回すと懐かしい顔も多い。
彼女と初めて松島で出会って、まだ三年経ってはいない。
様々な思いが胸に浮かんでは消えた。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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