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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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と言う訳で、昨日の続きです。
うーん、最近4000字書く集中力がなくなってきました。
こんなところで自分の衰えを感じたくないなー(^_^;)

今回は、素敵なゲストわんこさんにもお越しいただいてます。
空稲虹界きってのハンサムさんだと私は思っています。

ピカケさん、出演許可(頂いたのが大分前ですみません)頂き
ありがとうございます。


小説は続き記事からです。

拍手[7回]



◆◆◆


今日で5日目になる。
彼からの電話の受信履歴は、この所毎日更新中だ。
その癖留守番電話には何も入っておらず、
いつも必要なことは後回しになりがちな、彼のはにかんだような態度は、
私が海のこちら側に来てからも健在だった。
それでも、5日連続電話が入っているのは珍しいかもしれない。
日本の現在時は土曜の午前9時。
わたしの住むボストンは金曜の午後10時過ぎ。
6月の第二週目の日曜日には小松基地の基地祭があり、
展示飛行の為の異動と予行で、彼は今は空の上だろう。
此方から電話をかけるのは、彼の仕事を考えるとなかなか難しく、
定期的に約束している日時以外では、
最近では彼からかけてくることが多かった。
何か緊急に伝えたい用件があるのかしら?
今日はそのことに気持ちが囚われて、少々上の空だったからか、
現在共に仕事をしている兄からも呆れられてしまった。
今も兄の入院先からの帰り道だ。
ハイウエイを飛ばしてボストンから3時間の位置に兄の入院している病院がある。
兄がALSと言う難病を背負ってから、却ってそれまでより、
彼との家族としての位置は近くなったように感じた。
尤も兄からすれば、わたしは家族と言うよりは
『彼の音楽を表現する為に必要な人間』の一人かもしれないが。
既に下半身の筋肉が萎縮し歩行が不可能になり、
半年前まで誰にも表現することの叶わない境地でピアノを弾いていた彼が、
既に基礎のバイエルすら継続して弾きこなす事が出来ないのを、
ただ見ているだけしか出来ないのは、
義妹としても、彼の嘗てのピアノの弟子としても辛いものがある。
真実辛いのは兄自身の筈なのだが、当人はまるで予測していたかのように、
自身の限界の中から道を見つけ出し、次々と新しい境地で彼の音楽を表現するべく、
本人は動かないままでも、仕事をこなしていた。
わたしは自分の作曲の為の勉強と、ジャズのクラブハウスでの演奏の合間に、
兄のアシスタントとして、兄の雇ったスタッフ達に細かい指示を
伝える仕事を請け負っていた。
今月に入ってから毎日午後は兄の入院先で過ごす事が多く、
細かな打ち合わせを終えて帰宅すると
ギリギリ日付の変わる前である事が多かった。
彼からの電話は帰宅途中、スマホをアメリカでは義務付けされている
ドライビングモードにしている最中のことが多く、
仕方なしにメールを送信するだけになっていた。
そのメールに彼の返信はない。
メールでは伝えにくい内容なのだろうか?
小さな疑問が重なりつつあった。



帰宅してシャワーを浴びていたら、電話の呼び出し音が鳴った。
彼だ。
何故今日に?
小松基地の航空祭は何かの事情で、中止になったのだろうか?
シャワーの栓を閉め、慌ててタオルを身体に巻いて電話を取った。
熱い湯から突然触れた外気の冷たさに思わずクシャミが出る。
「なんだ、風邪かよ」
「蒼太さん!……あ、これは今シャワー浴びててタオル一枚だったので」
「……解った。もう一度掛け直すから早く服着ろ」
「え、あ、でも大丈夫です。蒼太さん、任務の合間なのでは?
大事な用件があるのでしょう」
「いい、早く服着ろ。土曜の朝から刺激の多い想像でヤキモキしたくない。
じゃあな」
彼はあっさり電話を切ってしまった。
わたしは急いでバスルームに戻り、熱いお湯を浴び直して、
ルームウェアに着替えた。
髪を乾かし終えた頃に、また電話の呼び出し音が鳴る。
「蒼太さん……」
「髪の毛乾かしたか?」
「まるで見てるみたいですね」
「アンタのやることなら、大体想像付く」
彼の小さく微笑う声が聞こえた。
久しぶりの彼の声音に胸が高鳴るのは仕方がない。
「蒼太さん、小松の航空祭は?何かあったんですか?」
「あのな、俺より航空祭の心配かよ。中止にはなってねえよ。
今回はTRの花咲さんが飛ぶだけだ。俺は休暇」
「え?!休暇なんですか?飛ぶとか飛ばないではなくて、
ブルーチームのメンバーが、展示飛行のある時に休暇っておかしいのでは。
……蒼太さん、怪我でもしたんですか?
まさか重い病気とかじゃないですよね?」
彼はわざとらしい小さな溜息を吐き、笑いながら答えた。
「心配するな、そう言うんじゃないんだ。
……そうだな、郁さん。アンタ近い内に日本に帰国するつもりはないかな?」
殊更戯けた彼の口調に、僅かな懸念を覚える。
「浜松のエアフェスタの時に一週間は帰国するつもりです。今年は7月ですよね」
「だから、航空祭は置いとけって言うの。
アンタ最近、俺に会うよりブルー目当てで帰国してないか?
俺がフライトしてたら会えないって、この前言ったろ」
「そ、そ、それは……。でも蒼太さんがブルーに乗って飛んでる姿が見れるのは、
今年の12月までですもの。なるべく見ておきたいと思ってるだけです」
「お袋みたいなこと言うなよ。お袋も航空祭ばっか来るもんだから、
顔見たの昨夜半年ぶりとかだったからな」
「……蒼太さん、今東京のご実家なんですか」
「うん」
すると電話の向こうから、元気に『ワン!』と言う犬の吠え声が聞こえた。
「げ、うるさいのが帰って来た」
「蒼太さんち、犬を飼ったんですか?」
「らしいな。親父も仕事引退したし、お袋も少しゆとりが出来たんだろ。
先週『蒼太の弟が出来ました』とか、心臓に悪過ぎるメールが来たから
何かと思ってたら、家に柴犬の子犬がいた」
「フフ……、確かに蒼太さんの弟ですね」
仲良く子犬を散歩させる、彼の両親の姿が目に浮かぶ。
「……こっちに帰れないかな。それこそエアフェスタの後なら
8月は展示飛行は少なくなるから、俺も休暇が取りやすい」
「仕事は今からなら何とか片付くかしら。
蒼太さん、今話せないことなんですか?
わたし、何を聞いても驚きませんよ」
「馬鹿だな、幾らネットで何でも出来るって言っても、
バーチャルで何もかも済む訳じゃねえだろ。
映像のアンタ触って感じるような性質(たち)では俺はないし、
直接向かい合わないと出来ねえこと沢山あ……」
電話の向こうで何かを叩く物音がした。
「クソっ……。セクハラじゃねえっつーの。あんな分厚い雑誌で叩かなくても
いいだろうに。今、自分の部屋に移動したから。
リビングで電話かけたのは失敗だった」
「フフ……」
彼の声の明るさには何の曇りもない。
ここ最近の彼らしくない様子に、ぼんやりとした不安があったのだが、
気にし過ぎただろうか?
彼は一見しなやかなように見えて、案外融通の利かない所がある。
自衛官なんて皆そんなものだと、彼はしれっとした表情で答えていたっけ。
その彼がいつもの予定とは違う行動、言動をすると言うことに
不安を覚えただけなのだろうか?
「わかりました。浜松を諦めて、8月に少し長めに帰国します。
でも何と言われても、12月の蒼太さんのラストフライトには行きますけど、
それは構わないですよね」
「うん。それは心配ない。……って、うわ!大二郎、顔舐めんなっ」
「大二郎?」
「あ、犬の名前。お袋の奴『大ちゃん』なんて、親父の渾名みたいな
呼びにくい名前付けるもんだから、俺はそう呼んで……、解ったつーの」
「わかりました。蒼太さんのお兄さんぶりを確認する為にも、帰国しますね。
8月は他の人にクラブの演奏も交代して貰います」
「代わりにこっちで弾けばいいさ。アンタのピアノ、聞きたい」
「……」
不意に彼に耳許にキスされたような錯覚を覚えた。
錯覚、だけれど。
「じゃあな」
「はい、また」
彼は何かを言い残したような様子もなく、電話を切った。
けれど彼にしては妙だ。
肝心な何かを、何も伝えてはいない。
彼が確認したかったのは、わたしと直接会いたいと言う、
ただそれだけなのだ。
会いたい。
それは、いつだって会いたい。
自分のやりたい何かを掴む為にした渡米だが、
だからと言って彼に会いたい気持ちを捨てた訳ではなかった。
却って会いたい、その想いを生かして歩き続けて来た現在がある。
何もかも捨てて、今すぐにでも帰国したくなる気持ちを抑えて、
早速PCに向う。
8月の成田か羽田行きは、運が悪いともう満席になってしまう。
「あ、あった。でもJALLは高いなあ」
8月半ばは日米間の航路は値段の高い時期に当たる。
尚且つ日本の航空会社の便は、殊更高い。
それでも他には変えられない。
それだけは解っていたので、わたしはそのチケットをすぐに押さえたのだった。

 



※うっかり郁(かおる)ちゃんとの電話にウキウキし過ぎて、
口を滑らせた蒼太はお母さんから鉄拳ならぬ紙束制裁を
受けております。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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