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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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ハイ!
消えちゃったSS、書きなおしました(^_^;)


仕事で会わなくなってから、二人はメール以外ではやり取りして
いないだろうなとは思う(と言うか原作にあったかな?
今実家にあるから未確認)のだけど、こんな風に空井くんの異動を
見送っていたらいいと思って書きました。


皆様、お正月は思う存分、お過ごしになれたでしょうか?
今年は沢山年賀状を頂いて、ちょっとウキウキ、
そして某所からビックなお年玉も来たりして
これからウフフな森伊蔵でした。



小説は続き記事からです。




拍手[23回]





その日は、編集会議が長引き、真夜中を過ぎて
やっと局の通用口を出ることが出来た。
「稲葉さん」
「きゃっ!」
暗闇から突然自分の名を呼ばれ、心臓が飛び上がってしまった。
「そ、そ、そ、空井さん?!」
壁の影から思いもしない顔がうっすらと見える。
つい半年前まで、わたしは市ケ谷の防衛省、
空幕広報室に取材に出ていた。
その勤めを終えて、彼らを紹介した番組も
そろそろオンエアになろうと言う頃だ。
「…昨日帝都イブニングを見てたら、急にラーメンが食べたくなって」
「…ラーメン?」
「鷺坂さんから帝都テレビの近くに美味しい屋台があるって
 教えて貰って」
月のない星明かりの夜空の下に、紺色のダッフルコートを着て
白いマフラーをしめた彼は、背筋をピンと伸ばして
何だか以前制服姿で会っていた彼より、少しばかり幼く見えた。
「昨日、帝都イブニングで紹介してたラーメン、
 稲葉さんが見つけたお店だったんでしょ?」
「ええ、そうですけど…。普段ラーメンなんて食べないから、
 お店知らなくて。結局10軒以上回るはめになっちゃって、参りました」
彼は小さく右手を振ったので、わたしはそっと駆け寄る。
「番組見てたら、稲葉さんとラーメン食べることから
 頭離れなくなっちゃって……その、付き合って欲しいんだけど」
最後の『付き合って欲しいんだけど』に、訳も解らず踊る心音を
鎮めながら、わたしはこの成り行きに当然感じる疑問を口にした。
「…空井さん、もしかしてこんな時間まで通用口の側で待ってたんですか?」
「………聞かないで下さい」
マフラーに口許を埋めた彼は、心持ち頬が紅く染まって
…いるような気がした。
わたしも思わず耳が熱いような感じがしたが、
ぶるんと頭を振ってすでに先を歩き始めた彼の後を追いかけた。
 
 
 
深夜を越えた首都圏はそれでもまだ車通りは賑やかだった。
大通りの交差点の信号が青に変わると、彼は心持ちゆっくりな歩調になる。
今日はやや高めのヒールのブーツを履いていたから、少し助かった。
そしてもしかしたら彼もそれに気付いたから、歩調を緩めたのだと解り、
少し心臓が高鳴る。
…何だか落ち着きがないな、わたし。
彼が突然に、しかもこんな真夜中に通用口に現れたのは何故だろうとか、
いつもの制服姿ではなく、私服姿なのに、やっぱり姿勢が良くて、
ひんやりとした空気の中で、それが一際すっきりとして見えたとか、
そんな思いで頭の中がごちゃごちゃとしてきた時、
彼がいつもより低い声で話しかけてきた。
「新月の夜に空を飛ぶと」
そう言えば今夜は新月だ。
正直、昼も夜もないようなテレビ局の仕事は、
青空も星空も雲も月もあまり気にかけなかった。
彼に出会うまでは。
彼は気にかけていた筈だ。
天候はフライトには重要な条件なのだから。
「星がいつもより大きく見えるんです。
 気のせいかもしれないけど…例えばシリウス」
「シリウス?」
「今日も見えますよ。ほら、あのビルとビルの隙間」
彼が指差した先には、まだまだ明かりの輝く夜空に、
 負けずと蒼く輝く星がひとつ、ぽつんと見えた。
「いつも一つだけ光ってて冷たくて……まるで稲葉さんみたいだ」
「…………え?」
「シリウスはひとつに見えるけど、本当は二つでひとつの星なんです。
 恒星の中では太陽の次に明るい」
「…きっと空の上からだともっとはっきり見えるんでしょうね」
彼が微かに頷くのを感じた。
「次の角曲がります」
真夜中を過ぎても車通りが途切れない大通りを抜けて、
細い路地に入るとしばらく雑居ビルが並び、更に行くと住宅街に出た。
局から歩いて十分の場所にこんな所があるなんて、知りもしなかった。
普段は局とメトロの駅を行き来するだけの街並み。
彼と歩いているほの暗い街並みが何処か、遠い知らない外国のようにも
感じる。
何の予告もなしに、何の予想もしなかった時間に彼が現れたからだろうか?
それとも……。
ふと、自分が何かを期待するような、何処か弾んだような気分になって
いることに気付き驚く。
「彼処です」
突然振り向いた彼にドキリとしながら、彼の指差した先を見ると、
公園沿いの並木のこんもりした樹木の影の下に赤い提灯の光が見えた。
 
 
 
「醤油ラーメン二つ」
深夜の来客に驚きもせず、白髪の屋台の店主は黙って頷き、
準備を始めた。
彼はわたしに椅子を薦めながら、少し微笑んで話し始めた。
「実は東京に来て、初めてラーメン食べます」
「ラーメンなんて何処も同じでしょう」
「あれ?グルメ番組のディレクターさんらしくないですね。
 かなり違いますよ。
 京都のラーメンなんて、スープ、どろっとしてるし」
「…そう言えば。博多ラーメンとか、かなり違うような」
「今までは西日本への異動が多かったから、東京のラーメンって
 知らなかったんです。
 昨日ニュースチェックする為に、帝都イブニング見てたら、
 皆でご当地ラーメンの話になって…鷺坂さんに、
 此処教えて貰ったんです」
「空井さん、もう二年以上は市ヶ谷にいるんですよね」
「…そうです」
彼は小さく頷くとそのまま黙りこんでしまった。
わたしも自然に黙りこむ。
たまにかちゃんと音がして、幾らも待たずに
目の前に白い湯気の立つラーメンの丼が二つ並んだ。
何処でも見かける醤油ラーメンだ。
メンマ、チャーシュー、ネギ、ナルト。
真っ黒な海苔が一枚ぺろんと乗っかっている。
「頂きます」
相変わらずのピンと伸びた背筋で割り箸を割ると、
彼はふうふうと湯気を吹きながらラーメンを食べ始めた。
わたしも彼に習って食べ始めた。
「…ほんとだ。ラーメンは東京の方が旨い」
流石の食べっぷりでラーメンを食べ終えた彼に、
突然無愛想な店主が話しかけた。
「お客さん、自衛官?」
「ハイ」
「海の人?それとも陸自かな?」
「空です」
彼の鮮やかな笑顔に思わず見とれる。
「空か…。ほんとか嘘か俺ら、ガキの頃は大抵何処の町内にも、
 戦時に戦闘機乗ってたの自慢にしてたオヤジがいたが…
 ウチに来るお客さんに、やっぱり自衛官の人がいてね。
 姿勢でね、解るんだ。ピンと背が伸びててね。
 お客さんも姿勢が良いから、きっとそうだろうと思った。
 なんて言ったっけな…何か鳥の名前の」
「鷺坂、です」
「そうそう、ハゲ始めてるけど鷹じゃないとか言ってた。
 あんまり自衛隊っぽくない人。あの人の紹介で来たんだろう?」
「ハイ、自分の上官です」
「今度北海道に異動になるってな。
 オヤジさんのラーメン、またお預けだよ、なんて笑ってた」
「ええ」
「鷺坂さん、異動になるんですか?」
「三月でね。千歳へ」
「…そうですか。仕方ありませんが、寂しくなりますね」
思ったままを素直に言った。
三年以上は一か所に勤められない、それは多くの役職のある
国家公務員の定めだ。
「……俺も」
「え?」
「すみません、お勘定を」
「ハイ、1200円だよ」
「はい…っ…あっ!!」
彼が財布を覗いて固まった。
「……千円札一枚しか入ってない」
彼らしい『抜け』方に、わたしは思わず微笑って、
千円札を二枚カウンターに置いた。
「今日はわたしが奢ります。
 美味しいラーメンだったし…次の時に空井さんが奢って下さい」
「……すみません」
 
 
 
体が温まったからか、何となく二人の間の歩く距離も縮んだ頃、
大通りに出た。
彼が一歩前に出てタクシーを停める。
「稲葉さん、乗って下さい」
「空井さんは?この時間じゃ、電車ないでしょ」
「…官舎までなら歩いてでも帰れるから」
「そんな!じゃ、じゃあ、相乗りして行きましょう。
 少し遠回りになるけど、それなら」
「……稲葉さんって」
彼ははあっと大きく息をついた。
「ほんとに解ってないって言うか。
 こんな時間にタクシー相乗りするって…別れ難くなるでしょう」
「…!?」
開いたタクシーのドアに、少し強引にわたしを押し込むと
彼が運転手に言った。
「人形町まで」
「空井さんっ」
「ラーメン、ごちそうさまでした」
タクシーはパタリと扉を閉めると走り始めた。
わたしは何度も振り向いたが、先程見たシリウスより
彼の背中が小さくなるのを見届けて、諦めて背もたれに体を預けた。
 
 
 
それから一週間後。
鷺坂さんからメールが来た。
わたしが出した、一応お別れのメールの返事だ。
相変わらずの軽いノリで、別れの挨拶など何処吹く風だが、
一行目に止まった文章があった。
『空井が別れを惜しみに行ったでしょう?
 きちんとなぐさめてあげてくれたかな?』
どういうこと?
アレコレと考えていたら、その日の午後、
彼、空井大祐自身からメールが来た。
『松島に異動になります。稲葉さんには大変お世話になりました。
 お元気でいて下さい』
やけによそよそしい文面に感じられたが、
あの夜の僅かにはにかんだような、彼の表情を思い出す。
何であの時話してくれなかったんだろう。
……でも。
それがとても彼らしいような気もした。
F-15なんて、すごい戦闘機に乗ってた癖に。
初めて会った時に『俺たちが人を殺したくて戦闘機に乗ってるとでも、』
なんて、わたしに食ってかかった癖に。
何処か彼の曖昧な煮え切らない部分は、青い晴れた空でも
時々急に天気が変わるような、そんな予測のつかなさを思わせて、
ふと自分の心臓が弾んでいるのに気が付いた。
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森伊蔵
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性別:
非公開
職業:
主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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