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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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まだぎんぎん夏休み中なのに、すでに我が家の空稲は
クリスマスだよ、イエーイ!って感じで…。

相変わらず世間に合わせてお話を書くのがへたくそなわたしです。

真冬に浴衣ネタとか余裕ですもん。

今回は柚木さんの名誉挽回ネタw
一応10月に結婚式があったらしき設定にしてあるので、
この話の時点では、柚木さんはもう『槙さん』なんですが
ややこしいので柚木さんにしてあります。


小説は続き記事からです。



拍手[26回]


◆◆◆


11月の末から本格的にロケが始まり、どんなに会いたくても
彼に連絡すら取れない日々が続いた。
彼は彼で忙しかったようで、十日ぶりの電話でも
『今、側に行きたい』なんて無邪気な声で話して
機嫌は悪くなさそうだった。
 
 
落ち着かないから。
 
 
そう言って彼がわたしに渡したのは、
なんと小さなプロペラ機がついた、ピンクゴールドの指輪。
「その…婚約指輪はもっとちゃんとした奴を買うけど、
  自己主張はしておこうと思って」
「自己主張?」
「…牽制するなら、プロペラ機でも十分かなと」
彼の表情は大真面目だった。
一体誰を何の意図で牽制するつもりなのか、全く解らなかったけど、
彼が差し出した掌に自分の手を重ねると、彼が勿体ぶりながら、
左手の薬指に指輪を嵌めた。
「ヨカッタ。サイズはピッタリだ」
子供のような笑顔に、思わず釣られて笑顔になる。
仕事続きで、日付の変わり目さえ感じられなくなる日々が続いても、
彼のあの笑顔を思い出すと、それだけで乗り越えられた。
 
 
 
12月の最初の週に入って、ランチ時に阿久津さんに呼ばれた。
阿久津さん行き付けの、夜は割烹料理屋になる店で、昼食を摂る。
仕事の進み具合の報告が終わると、阿久津さんは珍しくコホンと咳払いをした。
「その様子なら、お前がいなくても二、三日は大丈夫そうだな。
  飛田も現場を押さえるのは得意なようだし
  ――稲葉、お前休暇届けを出しとけ」
「え?年末のこの時期にですか?」
「…年末のこの時期だからだよ。クリスマスがあるだろ。
  その代わり年越しは俺は休ませて貰う」
「ああ、そう言うことでしたか。それなら別にわたしは休暇がなくても大丈夫です。
  遠慮なさらないで下さい」
すると阿久津さんは『はあーっ』とやけに大きなため息をついて、
眉間に皺を寄せてわたしの薬指を指した。
「その指輪、やたら自己主張が強いんだよな」
思わず指輪を見つめた。
「夏休みも半端だった訳だし、…その婚約したんだろう?お前たち」
「………!」
思わず自分が真っ赤になってしまうのが解る。
「あのな、今のチームのメンバーは皆知ってるぞ。
  飛田の奴なんか、一週間ぐらい俺にブツブツ溢してた。
  『いい人材を逃した』とか言って。
  だが俺にしてみたら、その飛行機に乗り遅れたお前の面倒を一生見るのは、
  あまりにも寝覚めが悪い。だから打てる手は打って置こうと思うだけだ。
  そう言う訳だ稲葉、クリスマスイヴとクリスマスは休みを取ること。
  今からなら、何処か温泉あたりの予約も滑りこめるだろ?」
わたしが仕事以外のことをまるで考えずにいた間、
周りはどうやら色々と線を引いてくれたらしい。
でも彼はどうだろう?
すぐに連絡しなければ、彼だって休みを取りにくいに違いなかった。
局の前で阿久津さんと別れると、わたしはすぐに物陰で彼にメールをした。
 
 
 
メールの返信を期待して、午後の仕事は少々上の空だった。
なんとか夜の10時過ぎに退社して、部屋に戻った瞬間に
電話の呼び出し音がなった。
「……リカ?」
少しためらい勝ちの、彼の声が耳に飛び込んで来た。
「今、大丈夫?」
「ええ、今部屋に入った所です」
「おかえり」
彼のいつもの笑顔が、目の前に見えるようだった。
「昼間の件なんだけど…」
彼の声はなんだか申し訳なさそうだ。
「今日丁度、家族持ちの人にクリスマス休暇、
  譲っちゃったばっかりだったんだ…だから」
「そうですか」
自分の声が必要以上にがっかりしていることに、我ながら驚く。
けれど、ふと思い付いた。
我ながらいいアイディアかもしれないと思う。
「じゃあ、わたし、お休み取れたら、大祐さんの部屋に行きます」
「え?」
「大祐さん、お仕事なんですよね?だからわたし、お部屋に行って
  お掃除してお洗濯して…ご飯作って、待ってます」
「…………」
「だ、ダメですか?」
「え!?いや、そんなことない。あまりに意外だったから」
「今度はきちんと柚木さんに聞きます」
「!!」
電話の向こうですごい物音がした。
彼が電話を取り落としたらしい。
「…リカ」
「わ、わ、わたし、いつも作って貰ってばかりだし
  …その来年阿久津さんの下を離れて
  『トマトんの三分クッキング』のコーナー受け持つことになったんです」
「ああ、あのケチャップの会社が提供してる、ご長寿番組の」
「だ、だからお料理も、し、し、し、知らないといけないと思って」
「……………」
彼は黙り込んでしまった。
確かに今までのあれこれを思えば、クリスマスにわたしの作った料理は
やめておきたいかもしれない。
「――あの」
「解った。じゃあ、その前の連休は僕がリカの部屋に行く。
  その時部屋の鍵を渡すよ」
彼はその後、随分と真面目な声で言った。
「キスしても――いい?」
「え…でも」
「受話器越しで」
頬が熱くなるのが解る。
つい受話器をじっと見つめてしまったけど、そっと口唇を付けた。
心臓が音を立てて跳ね上がる。
「じゃあ」
彼は少し照れたような声で電話を切った。
わたしは早速、ノートパソコンを開け、柚木さんにメールをすることにした。
 
 
 
翌日の昼休み、柚木さんから電話が来た。
「聞いたよ。ハンバーグは白くなったって?」
一体何処から…と思ったけど、そう言えば鷺坂さんにこの話をメールしたことを
思い出す。
「稲葉、わたしの名誉にかけてもバックアップするから、
  頑張って空井をびっくりさせよう」
「あ、ありがとうございます」
「まず献立を決めないとね」
柚木さんのきびきびした声が聞こえる。
まるで任務についている時みたいだな…と思っていたら、
柚木さんが真剣な様子で質問してきた。
「空井って何が好き?広報室にいた頃は『僕何でも食べます』って感じで、
  はっきりした好みが解らないタイプだったんだよね」
柚木さんの意外と細やかな観察に驚く。
「好き嫌いはないみたいですけど、彼が今まで作った料理なら
  …オムライスとかカレーとか」
「カレーは肉は鶏肉?」
「はい」
「オムライスの中身はチキンライスだし…ふうん」
「そう言えば、ウチに来ると必ず玉ひで食べに行きます」
「玉ひでか、親子丼ね……やっぱり見た目通りガキ…いや、鶏肉なら
  クリスマスらしくていいか」
「鶏肉料理ですか?ローストチキンとか?」
わたしは少し不安になる。だってただ焼くだけでは済まなそうだ。
「んー、それなら最近は買った方が早いし、官舎の空井の部屋で作るんだよね。
  奴の部屋の調理用具によるから…」
柚木さんは何やら考えこんでいる様子だった。わたしも必死に、
たった一度だけ泊まった彼の部屋のキッチンを思い出す。
「レンジはオーブン機能付きでした。ただ少し小さめでしたけど」
「ふうん、解った。今夜また電話するから。帰りは遅いの?」
「11時過ぎなら…」
「相変わらず人類の仕事じゃないね。稲葉、アンタは心配しないで仕事片付けな。
 こっちはその間にあれこれ用意しとくから」
そう言うと柚木さんは電話を切った。
柚木さんは大雑把に見えるけど、本当は細やかな人なのは、広報室時代から知っていた。
わたしは信頼して、午後は仕事に打ち込んだ。
 
 
 
結局柚木さんから電話が来たのは三日後のことだった。
「今すぐメールを見て」
フリーメールにログインすると、一件新着のメールがある。
「この映像作ってたらさ、こんなに時間かかっちゃったんだ。
 まあ、試食したアイツは喜んでたから、こちらとしては一石二鳥だったけど」
アイツとはご主人の槙さんのことだ。
メールに添付されたURLをクリックすると、YouTubeの画面がUPされた。
「メニューは、鶏のワーテルゾーイとカボチャのポタージュ、
 トマトのリゾットでどうだろう」
「と、鶏のわー??」
「あー、鶏のごった煮ね。そう言うとアイツが怒るもんだから」
槙さん、柚木さん夫婦の仲の良さが解って、思わず笑みが溢れる。
「リゾットはトマトをくりぬいてオーブンで焼くんだけど、
 そんなに難しくないし、カボチャも真面目に裏ごせば食べやすいし。
 焼き物より、煮込みの方が失敗は少ないよ。
 味付けは塩が基本だから。良かったら当日はその映像見ながら作れば、
 失敗は少ないと思うけど」
じっとわたしはパソコンの画面を見つめた。
柚木さんは非常に丁寧に、画面で手順を示してくれている。
この辺は流石に広報室にいた人だなあと感心してしまった。
このまま、料理番組に使えそうだ。
「ありがとうございますっ。これなら大丈夫そうです」
「いいの、いいの。こっちは名誉挽回も兼ねてるから。
 まあ、結婚式は呼んでよね」
最後のひとことに思わずどきりとしながら、
わたしは少し期待に胸を踊らせつつ電話を切った。
これなら…。
一度でいいから、彼がわたしの料理を食べて、喜ぶ顔が見たかった。
どんなクリスマスプレゼントもいらない。
だから――。
じっと薬指を見る。
気持ちはすでに彼の官舎の部屋へと飛んでいた。
彼の額に口付けるような気持ちで、そっと指輪の飛行機にキスをした。




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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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