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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません^^;コメントのお返事は次回に漫画付きでします。
なんか思いのほか拍手が多くて、悪乗……いえ、戸惑ってます(*ノノ)
ちょっと週末を史紋さんのターンで終わらせるのは、苦しかったので
ここまで書きました。
 ◇◇◇◇◇◇◇◇
 
あの夜から史紋は仕事を京都に移したようだった。
書斎のパソコンから指示を出し、秘書とおぼしき人間が入れ替わり
立ち替わり現れる。
社内や、親族の行事には奈々を連れて行くこともあったが、
殆どの日々を奈々は御名形家の邸内で過ごしていた。
軽く監禁状態だと言ってもいい。
史紋が出掛ける日は、西田が側にいる。
尤も逃げる場所も持たないのが、今の奈々だった。
 
 
 
自ら言った通りほぼ毎日史紋は奈々を抱いた。
厳しいことを言うこともあるが、決して労りがない訳ではない。
優しく、でも拘束する意志の強さはまるで鋼のように感じる。
相反する愛情のかけ方は奈々本来の率直ささえ、失いそうだ。
 


「薬学部の講師だそうですね。何でも同じ世代では滅多に見られない
 俊才だったとか。こんな巡り合わせでなければ、援助を申し出た
 かもしれませんが」
奈々の躯を己れの思うままにしながら、史紋が囁いた。
崇の優しかった呟くような声が懐かしかった。
「いずれ貴方の名前でそうしますか?」
「…………………」
そんな事をしても多分崇は受けないだろう。学生時代でも気難しく、
教授たちからは扱いにくい学生だと言われていたのだから。
 
「今日貴方が在学中教えを受けたと言う教授から、連絡がありました。
 わざわざ僕を通して」
「…………外嶋教授が、ですか?」
「貴方の卒論のことで外部から問合せがあり、色々見て欲しい資料が
 あるようです。校外には持ち出しが出来ないから来て欲しいと」
奈々と崇は学科が違っていたから、奈々の学科の教授だった外嶋と
崇には直接の関係はない。
だが崇と外嶋は奇妙にウマがあって、仲が良かった。奈々と崇と外嶋で
遅くまで話し合ったこともある。
もしかしたら崇の近況だけでも、外嶋から聞き出せるかもしれない。
「僕としては貴方をあの男の元へやるようなものだから、貴方には聞かず
 に断るつもりでした。しかし彼は今学会で日本にはいないと聞きました。
 貴方も邸に籠ってばかりで、流石に顔色が悪い。だから明日は少し
 気晴らしに、その教授の元へ行くのがいいでしょう」
思うより優しい仕草で、史紋は奈々の髪を撫でた。
けれど奈々の心は大学の研究室の、古びた椅子に座り口も聞かずに本を
読んでいる崇の姿でいっぱいだった。
 
 
 
 
大学の敷地内を奈々は和服姿で歩いている。
御名形の家に来てからは、毎日着物で過ごしているからだ。
秋も大分深まっている今日は紅花で染めた淡い色の訪問着に
白の道行を着ていた。
 
 
久しぶりに呼吸をした気がする。
史紋は決して酷い人間ではないと、奈々はそう思っている。
先に彼を裏切ったのは奈々なのだ。
予定外を嫌う史紋の性質が、今の奈々に辛く中る(あたる)
ことになるだけなのだろう。
それでもこの三ヶ月の御名形の邸での日々は息苦しく、
奈々の心を磨り減らせた。
 
 
 
「やあ、来たね」
外嶋は相変わらずだった。奈々も笑顔で挨拶する。
「何だかやつれたな。まあ、御名形のような大きな家では、
 君でも気苦労は多いだろう。ああ、相原くん」
秘書の相原美緒が顔を出した。
「そこのお付きの人に、あちらの応接室でお茶を」
「はあい」
美緒も元気よく返事をした。
「すごいわ~、貴方あの御名形家の執事さんなんでしょう。
 色々お話聞かせて下さいな」
今日は、と言うか今日も奈々の側には西田が付いて来ていた。
西田は初め奈々の側から離れるのを渋ったが、美緒に上手く
言いくるめられ、席を外した。
 
 
「やれやれ、やっと行ったな」
美緒と西田の後ろ姿を見送ると、外嶋はため息をついて奈々を見た。
「今資料を持って来るから、此所で待ちなさい」
そう言うと今二人が出たのとは、反対側の扉から出て行った。
 
 
一人外嶋の研究室に残された奈々は、一息ついた。
この黴臭い匂いも、今では懐かしいくらいに感じる。
今日は崇には会えないが、それでもそこかしこにその存在を見るようで、
奈々はほんのりと幸せだった。
 
 
外嶋が姿を消した扉が開く音がした。
振り向こうとした瞬間、力強く背後から抱き締められた。
------まさか。
学会で海外にいると聞いていたのに。
 
 
「外嶋教授に相談して、計らって貰ったんだ。学会の名簿を操作して」
「タ……………」
涙が次々に溢れてくる。
「御名形家でもしも君が幸せなら、こんな無茶をしようとは
 思わなかった。------何度かあの邸から御名形と並んで
 外出する君を見たが……君、少し痩せたな」
首筋に温かな息がかかる。
「タタルさん……」
「すまなかった。君に辛い思いをさせた」
「いいえ、わたしこそ」
互いの頬が触れ合う。
「外嶋教授が論文を書くのに使う家が、東山から大津に抜ける道筋
 にある。今日はそこに落ち着こう。一日二日は教授が上手く誤魔化すと
 言ってくれた。その間に東京に出てしまおう」
「でもそんなことをしたら……!」
崇の将来はなくなる。
「別に大学だけが世界ではないし、君と二人でやって行くことくらい、
 俺にも出来る」
「折角離島で発見された新種の薬草の薬効について、論文を発表すると
 仰っていたのに」
「あの野口英世だって、あれだけ黄熱病の研究をして、
 しかし世間で認められたのは梅毒の研究だけだ。それだけでも
 すごいことなんだが」
崇は奈々を抱き締めていた腕をほどくと、奈々を自分の方に向かせた。
いつもの寝癖だらけのボサボサ髪。間違いなく崇だった。
「今此所で君を奪わなかったら、死んでからも後悔するような気がする」
そう言って奈々を見つめると、そっと奈々の頬に手を触れて、口づけた。
 
 
 
 
崇との最初の日からどれだけこのキスを、待ち焦がれただろう。
 
涙が溢れて止まらない。
でも今この瞬間が全てのように思えて、口唇を離したくなかった。
 
 
「そろそろ潮時だぞ」
外嶋の声がした。
「出るなら西門からがいいだろう。車は借りてあるんだろう?」
「ええ、足がつかない筋から」
「間違っても事故るなよ。元も子もないからな」
奈々は小さく微笑った。
崇の運転は大学では伝説になっていたからだ。
一度本を片手に車庫入れをして、壁を大破したことがある。
「そんなことはしません」
「さあ、早く行け。手強い相手なんだから、先手を打つのが大切だ。
 -----ああ、あと奈々くんの妹さんだが」
妹の沙織は今神戸の大学にいる。
「相原くんに頼んで連絡して貰う。落ち着いたら、知らせるといい」
「ありがとうございます。外嶋教授」
奈々が丁寧にお辞儀をすると、外嶋は何も言わずに手を降った。
 
 
 
外嶋の別宅は山奥とも言えないが、辺りには家一つない、
雑木林の奥にあった。
危うい運転で家の前に車を止める。
「俺も以前に論文を書くときに借りたことがある。
 敷地内に誰かが来れば分かるようになってる」
これなら万が一史紋から追っ手がかかっても、一足早く分かるだろう。
 
 
部屋は家具も少なく、基本的なキッチンの家電品と、書き物机、
後小さめのベッドが一つあるきりだった。
「流石に少し山側に入ると寒いな。君は今夜ベッドで
 寝るといい。俺が床に寝るから」
「だ、だめです!」
奈々は思わず崇の袖を掴んだ。
「い、一緒に寝ればいいじゃないですか」
奈々の必死な表情を崇はじっと見つめる。
「一緒に寝たら、温かいと思いますし、そ、そ、それに」
「………それに?」
「少しでも離れているのは嫌です」
頬を赤らめて言う奈々を崇は微笑って見ている。
奈々はやっと気が付いた。
「………タタルさん、わざと言ってますね」
「君のその言葉が聞きたかったから」
奈々をそっと抱き締める。
どうして今まで離れていられたのだろう。
北山の家で初めて奈々を抱いた日、あの日に何故手を離したのか、
後悔ばかりして来た。
もう二度と離さない覚悟をして、今こうして彼女を抱き締めている。
 
 
 
 
静かだった。
世界に二人しかいないような錯覚を覚える。
疲れが出たのか奈々はうとうとしながら、崇の腕に凭れていた。
 
 
不思議に思った。
彼女をこの手に抱けば、胸の奥にある負い被さるような不安や、
焦燥感から逃れられると信じていた。
確かに今まで確かめあっていた互いの温もりは真実で、
奈々の離れていた間の心をそのまま映して、真っ直ぐに崇を求めている。
しかしこの九ヶ月の間の奈々の変化を、見逃せない自分もいた。
抱き締め、いとおしむ奈々の躯の向こうに、もう一人同じ心情で
彼女を抱いた男の存在を確かに感じるのだ。
 
 
 
明日大津から東京へ向かう。東京には御名形の本社があるが、
それ以上に人の多さが、崇と奈々を隠すのに役に立つ筈だ。
 
 
 
「タタルさ…ん?」
奈々が目を覚ましてこちらを見ている。
指先で弄ぶように前髪を掬う。
「良かった。目を覚ましたらまたいつもみたいに、
 御名形のお家で寝ているかと不安でした」
「これは夢じゃなく現実だ」
「ええ。でもいつも眠りが浅い時は、そんな夢ばかり見ていて」
奈々は白い瞼を閉じた。
「御名形さんの側ではいつも眠りが浅かったから……」
「奈々くん、君、就寝前に何か飲まされていた?」
「……疑いたくはないですけど、いつも彼が煎じたと言う薬湯を」
「……………」
御名形史紋は手段を全く選ばないらしい。
そして一つ解った。
いや解っていた。
彼が欲していたのは、奈々の実家の格式や代々伝わると聞く
秘法などではなく、奈々自身なのだと言うこと。
 
崇が奈々の様子を見る為、史紋と奈々の出掛ける所を見張って
いた時、史紋の奈々を見る視線は、彼が他の人間を見る時
とは明らかに違っていた。
そこには労りや慈しみに混ざって、執着もあった。
多分-----自分も同じ表情(かお)をしているのだろうな。
そう感じた途端に堪らなくなって、崇は奈々を強く抱き締めた。






※どうやら終わりの方が見えてきたので、あまりに不評じゃない限り
お気楽に続けて行こうと思います。
次回からは、神田川(若い人にはわからないよな~)な世界が繰り広げられる
予定。
京都の貧乏事情が解らず、舞台を東京に移します。

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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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