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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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拍手、ありがとうございます!
ただ今新刊の発行部数を決めるため、本を買おうかな?
と思っている方に拍手をして頂いてます。
もしまだ押されてない方で、欲しいと思って下さる方
いらっしゃいましたら、昨日の記事に(この記事の下です)ぽちっと
お願いします。
今回はオフセットではなくオンデマンドで刷るので
10冊単位の増減が可能!
多分30部は刷るかな~と思っていますが、どうなるでしょうか?


さてタタ奈々の大学時代のお話を書いてみました。
以前書いた噂の二人とつながったお話になります。
タタルさん…略奪愛ですよ、略奪愛。


小説は続き記事からです。

拍手[9回]


◆◆◆



棚旗奈々と出会ったのは三年生の夏休みに入る直前の、
裏庭だった。
彼女は薬学部が管理する薬草園で一人、
咲き誇る撫子や桔梗を見ていた。
その横顔が、あまりに凛として優しい表情だったものだから、
思わず立ち止まって見惚れた。


すると。
風が吹いて、まるで絵に描いたかのように、持っていたレポート用紙の
何枚かが空に舞った。
彼女を見ていて、落としたのにも気付かなかったらしい。
彼女は薬草から目を離し、機敏に地面に落ちたレポート用紙の何枚かを
拾い上げる。
「『太平記における民俗学的考察』?」
彼女は僕が書き始めていた、レポートのタイトルを読み上げる。
声も優しく可愛いらしい。
「あ…俺、民俗学部なんだ。三年の藤垣亘。君は?」
「一年生です。薬学部の棚旗奈々と言います」
「奈々さん、か。民俗学部と薬学部じゃ、あまり接点がないかなあ」
僕はがっかりしたような声を出す。すると、彼女は柔らかな笑みで、こう答えた。
「そんなことは。以前、知り合いだった方にも歴史に興味の深い人がいて
 …その人は楠木正成に詳しかったので、よくお話を聞いたんです」
「正成…か。彼も確かに興味深いね。俺が今調べているのは、
 太平記に出てくる天狗の記述なんだけどね」
「天狗、ですか?」
彼女はきょとんとした瞳で、僕を見る。
「うん、太平記は怨霊となった崇徳院などが天狗として、
 世を乱した所から始まるんだ」
「まあ…」
そんな風に話すきっかけが出来た。
夏休みまでの残り少ない期間、僕は学食や遠回りでもわざと薬学部の学棟の
近くを通り、彼女を見かけると挨拶し、話しかけた。
彼女も迷惑がらず(いや、贔屓目に見れば嬉しそうに)、にこやかに答え、
話を聞く(彼女はかなりの聞き上手だった)。
夏休みが始まる頃には、ある意味で周囲に公認され、
「お前上手くやったな」と同じ学部の奴等からやっかまれたりもした。



夏休み。
煩いくらいの蝉時雨が聞こえたその日、僕は大学の図書室にいた。
ハンカチを忘れ、仕方なく汗を流したまま、目当ての本を探していた。
「あの…良かったら」
ふと、見ると綺麗にアイロンがかけられたハンカチが差し出されている。
ふわりと何か香のようなものの香りが鼻をかすめた。
「棚旗さん」
「わたし、忘れ物を取りに来たんですが、藤垣先輩が図書室に向かうのが
 見えたので」
彼女の笑顔で体感温度が二度は下がった。いや、暑さを忘れたが正しいか。
「じゃあ…良かったら、一緒に帰りがてらかき氷でもどう?
 少し遠回りするけど、いい店があるんだ」
「いいですよ。是非」
棚旗さんの笑顔が答えた。



大学に一番近い駅に出る道を行かず、裏門から出て、桜の並木道がある
川縁に出た。
ひと駅分歩くが、こちらの駅の方が商店街があり、店が多い。
それに大学の人間に見つかる可能性も、少なかった。
僕としては、今彼女と歩いている状況は見せびらかしたいくらいではあるが、
まだ彼女の気持ちがよく解らない。
二学年下で、学部違いともなると、なかなか共に過ごす時間はなかった。
――それでもこうして並んで歩いて、彼女に拒まれている感じはない。
…これなら、もっと距離を縮めようとしても、大丈夫だろうか?
「春に歩いたら、きっと綺麗ですよね」
ふいに彼女の声が耳に響く。
「でも、この先にある橋は、昔から怪談のメッカなんだよ」
「怪談?」
棚旗さんの大きな瞳が、更に大きく見開かれる。
こんな驚いた表情も可愛い。彼女から目が離せないでいる自分に気が付く。
「別名『神隠しの橋』だからね」
「まあ…」
「オレ昨年気になって調べてみたんだ。そしたら、この川には昔から
 河童の伝説があったらしくて」
「河童って妖怪の河童ですか?」
「うん。民俗学的に言えば…一番代表的で一番難しい所だね」
彼女に合わせてゆっくりとしたスピードで歩く。
「まあ、伝説は置いといて、実際神隠しのように人が消えた例もあってね」
「本当ですか?」
「うちの大学の教授が一人と学生が一人」
「ええっ!いっぺんに?」
「いや、一年ずれて起きたらしいけど、行方不明ってだけで…。
 学生は男子だけど三年前の事件だから、大学にまだ籍は残っているようだよ」
「………それもその橋と関係があるんですか?」
「不思議な話なんだけど、二人とも行方不明になる前後にあの橋で
 よく見かけたらしい」
「………」
彼女は黙り込んでしまった。
つい自分の学ぶ民俗学の範疇だったから話してしまったけど、
話題の選び方がまずかったかもしれない。
「オレは河童に拐われたんじゃないか、なんて考えちゃったけど、
 そんなことある筈ないからね」
ハハッと肩をすくめて笑う。そろそろ話を変えよう。
そしてもっと僕と棚旗さんに実益のあるような話題に…。
「河童って、人を拐うんですか?」
「え?」
「研究してらっしゃる藤垣さんがそう仰るってことは、お話の中にせよ、
 そう言う例があるってことですよね?」
「……馬を川に引きずり込む話は随分あるよ」
「馬?」
「あと女性を襲おうとして失敗する話とか」
「………」
彼女は薄く頬を染めた。
「まあ、妖怪だしね。子供の頃言われなかった?
 『悪い子するとオバケに拐われちゃうぞ』って。それと同じかと」
「そう…でしょうか」
彼女は本当に可憐な様で首を傾げた。
そうこうするうちに、駅前商店街が見えて来る。
「ああ、彼処の喫茶店だ。抹茶白玉が美味しいんだよ」
僕は彼女に指差し、店の方に向かった。
その後上手く話を向けて、九月から互いのスケジュールが合う限り、
一緒に帰ろうと言う話になった。
僕としては偶然と言う名の神様がいるにせよ、随分と上手くいったな、
と気分は上々だった。
あの――雨の日までは。



九月、十月と教授たちから夏に書いたレポートが認められ、
それを論文の形式に直すよう求められて、忙しく過ごしていた。
それだからと言って、彼女と距離が開いた訳ではなく、
とうとう学校外でも待ち合わせするように、なって来ていた。
十月末に原宿駅前で待ち合わせた時など、少し待ち合わせには遅れたものの、
いかにもデートらしい、彼女のワンピース姿も見られたし、
これならば彼女をそろそろ僕が一人暮らしするマンションに招いても、
良い頃なんじゃないかと思っていた。
ところが、だ。
あまり芳しくない噂が聞こえて来た。
『薬学部の棚旗奈々が、同じ学部の桑原崇と付き合い始めたらしい』と。



「お前、なんだって桑原にカノジョ盗られてんだよ」
「……盗られてませんよ」
「でもあの『桑原』だぞ。同じ学部にも友達いないわ、
 学食でも誰も近付かないで有名だろ」
「確か空手部のヤツが一人いませんでした?」
「ああ、小松崎ね。アイツは誰にでも顔広いから。
 お前のカノジョ、よく学食で話し込んでるっつーじゃんか」
「………」
ただでさえも有名な『桑原崇』だったが、僕は彼をよく知っていた。
僕を担当する木村教授の講義を、何故か桑原は自分の講座を放って、
よく聞きに来ていたからである。
一度『鬼』の解釈について、木村教授が講義をしていた時に、
教授を質問攻めにしてしまい、その質問内容のあまりの独特さに、
教授が『彼は何故薬学部なんだろう』と呟いた程だった。
あの『桑原』が?
『棚旗さん』と?
確かにまだ一緒に駅まで帰り道を共にする、もしくは休日外で
お茶をするだけの間柄だから、僕にはとやかく言う権利がないかもしれない。
―――それに。
何だか狐につままれたような感じなのだ。
僕は彼女に問い質したりするような、愚は犯したくなかった。



その日、帰りが遅くなり慌てて帰宅用意をして玄関に向かった。
もう十一月に入っていた。
晩秋特有の冷たい雨が降り続いている。
ふと、民俗学部から一番近い旧棟の玄関先に、
よく知った華奢な背中が見えた。
玄関の軒下から空を見上げている。
朝は晴れていたから、傘を忘れたのだろう。
もうとっくに帰ったとばかり思っていたから、僕はそれまで
図書室でしていた調べごとの疲れなど、吹っ飛んでしまった。
「棚…」
「奈々くん」
玄関の前を通りかかったのは、ボサボサ頭でヨレヨレのシャツに
ジーンズ姿、骨の折れたビニール傘の桑原だった。
「あ、タタル先輩!」
「傘は?」
「…それが忘れちゃって」
「降水確率は60%だったが…良かったら駅まで送るが」
「え…いいんですか?」
「この玄関が駅までは、大学の中では最短距離だ。君、薬学部から
 ここまでずっと校舎の中を、歩いて来たんだろ?」
「ええ」
彼女は苦笑して、桑原の差し出す―――傘の中に入った。
背の高さを持て余しながら、それでもあのがさつそうなヤツにしては
気を使って、彼女の方に傘をさしかけながら歩いて行った。


―――僕は。
あまりの出来事に声も出ず立ちすくんだ。


桑原のヤツ、僕だってまだ『棚旗さん』と姓で呼んでいるのに、
『奈々くん』だって?
しかも棚旗さんも、『タタル先輩』とヤツの渾名を呼んでいて、
何処か気安げだ。
そしてなんの躊躇いもないように、ごく自然に相合い傘で歩いて行った…。
更にどういう訳か、この日のことが、あっと言う間に大学中に広まってしまった。
なのに渦中の彼女は変わらず、僕を見かけると、あの愛らしい笑顔で挨拶してくる。
これはつい昨日のことだ。
午後の講義が休講になってしまったので、僕は学食でコーヒーを飲みながら、
明日発表する論文を見直していた。
すると彼女がやって来た。
彼女も僕同様、突然休講になってしまったらしい。
最近彼女の笑顔を見るのが少し苦しいが、それでも彼女のあの柔らかな微笑みを、
邪険にすることなど出来ない。
「やあ」
「藤垣さん、わたし聞いてみたんです」
彼女にしては前置きのない唐突な出だしだった。
「何を?」
「夏に『神隠しの橋』のこと、話してらっしゃいましたよね?」
「…ああ」
心なしか彼女は頬も赤く染め、僅かに興奮気味だ。
どうしても僕に話したいらしい。僕はノートから顔を上げた。
「あれ、行方不明じゃないって、タタル…いえ、桑原先輩が」
「…………」
「男子学生がいなくなって、その一年後に突然退職された教授は、
 女性の方だったんですってね。それで――その二人は今は東北で
 結婚して生活していて、大学側もそれを把握しているそうです」
「……なんでそれを桑原が?」
「学生がタ…桑原先輩の研究室の先輩なんだそうです。
 夏に東北に旅行された時に、偶然お会いしたんだとか」
「……」
「多分神隠しの伝説のほとんどは、何か事情のある男女や
 女衒などに拐かされた子供たちだろうって。
 そう言えば、あまりお年寄りが消えた話は聞きませんね」
確かに消えた、と噂の立った女教授と学生は15歳以上の年の差が
あっただろう。
大学側や、当事者が事情を隠しておきたくてそんな噂を利用したのも、
解る気がした。
だけど、僕は面白くなかった。
目の前の彼女の笑顔は、いつものように眩しいのだが、
その笑顔は前に座る僕ゆえ、ではなく、恐らくただ真実を
知っていた偶然から、謎解きをしたに過ぎない桑原ゆえ、なのだ。
折角それなりに時間をかけて、これから次の段階へ踏み込もうと
言う時に僕は――大いに水を差された気分だった。



翌日、発表の為演壇に立つと、なんとど真ん中の席に桑原がいた。
今一番見たくない顔なのに。
…それともこれはアイツなりの挑戦状なのだろうか?
まさかもう――彼女と行きつく所まで行ってると言う、余裕か?
僕は少しでも足を引っ張ってやりたくて、一計を案じた。
桑原を睨み付けたが、ヤツはどこ吹く風と言う風情で、
ボサボサ頭に片手をついて、俯いてノートを見ている。
僕は発表を始めた。
「今回は『日本各地の河童の伝承とその発生』と言うタイトルです。
 ――河童の伝説や昔ばなしの観点から、河童がどんな風に人々と
 関わってきたか――」
今回の論文は雑誌への掲載まで決まっていただけあって、
僕は自信があった。夏の間、河童に纏わる資料と言う資料は全て見たのだ。
これで――途中アイツに話を振ってやる。
前は木村教授を質問攻めにしたのはアイツだったけど、見てろよ。
今日はお前が答えられないような内容の疑問を、叩きつけてやる。





「お前、藤垣先輩にケンカ売って、論破したってマジか?」
「……ケンカ、は身に覚えがないが、流石に藤垣さんだな。
 論理の発想がユニークだったし、有意義な時間が過ごせた。ただ…」
「ただ、なんだよ?」
言い淀む崇に、小松崎は返事を急かした。
「ウチの教授に講義サボッてたことがバレて、
 当分民俗学部には出入り禁止になってしまったが」
「………お前、奈々ちゃんは?」
「奈々くん?今日は昼に会ったきりだが…用でもあるのか、熊つ崎」
「いや…いい。折角お前がお前らしい戦いで勝ち取ったんだから、
 大事にしろよ」
「?」
がっくりと肩を落として疲れた様子で去っていく小松崎を、
崇は見送りもせずまた読んでいた本に目を戻したのだった。




※タタ奈々の天然ボケっぷりを外側から書いてみようというのが
今回のコンセプトだったんですが…
ヒドイ ですね(爆)
タタルさんもヒドイけど、奈々ちゃんもかなり天使でアクマですw
こうやって自己努力??で無傷の奈々ちゃんを手に入れた
ウチのタタルさんなのでした。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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