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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします<m(__)m>

すみません、あんまり読みにくいので、家に戻って直しました^^; 

特に携帯からご覧になってた方、申し訳ありません。



伊勢の黎明~禮子ちゃんのひとりごと~
 
 
その日の伊勢の海は荒れていました。
 
 
わたしたちが伊勢の八岐村に着くと、既に奈々さんたちは行方が解らなくなっていました。
小松崎さんがかなり手荒な(もっとも敵もかなり手荒だったのだから、仕方がない)方法で
桑原さんと奈々さんの居所を聞き出そうとしている時に、運良く警察が駆けつけました。

どうやら、彩子ちゃんのお母さんの采配のようで、そもそも彩子ちゃんがこの事件に
巻き込まれたことが、桑原さんたちがこの事件に関わるきっかけになったようです。
 
わたしも彩子ちゃんも、那智の友人だった麗奈さんを助けたかったあまりの行動だった
のだけど、結果として彼らを命の危険に晒してしまっていました。
胸に沸き上がってくる嫌な予感を振り払いながら、わたしは小松崎さんの後ろで、
じっと待つしかありませんでした。
 
 
少し経つと警察の無線に、海上自衛隊から連絡が入りました。
桑原さんは陸をあまり離れない地点で、運良く流木に掴まり、沖には流されずに
海上自衛隊のヘリに助けられたそう。
思わずほっとため息をついていると、隣の小松崎さんはもっと大きなため息をついて
「全く妙な運だけは強い奴だな。----あとは奈々ちゃんと、彩子ってコか」
まだまだ不安そうな表情を隠さずに、言いました。
 
桑原さんと小松崎さんと奈々さんは同じ、明邦大学の出身なのだそうですが、
そうだとすると彼らの付き合いはもう十年を越えていることになります。
機会がなければこうして会うことは、今は多くはないと、行きの新幹線の中で
小松崎さんが話していたのですが、そうだとすると、ずいぶんと強い
信頼関係だと思われます。
かなり心配はしていたものの、ここに来るまで小松崎さんは一度たりとも
桑原さんの行動を疑ってはいませんでした。
必ず先を読んで行動しているはずだと。
そして、一つだけ肩をすくめて、付け足したのは
「奈々ちゃんが側にいるからな。タタルがいまいちの時は、
 奈々ちゃんが何とかするだろ。-----アイツらは、そのう、
 なんと言うか、破れ鍋に綴じ蓋?適当に補いあってるって言うか」
 
破れ鍋に綴じ蓋では役には立たないのでは?と思いながらも、奇妙に的を得ている
言葉に、わたしも思わず頷きました。
 
 
 
すると今度はここからあまり離れていない浜辺で、奈々さんと彩子さんが
倒れているのが発見されたのが、解りました。
わたしたちはすぐにパトカーに同乗させてもらい、浜辺へ駆けつけることにしました。
 
 
浜辺にはすでに救急車が着いていて、彩子ちゃんと奈々さんがそれぞれ
担架に乗せられていました。
奈々さんも彩子ちゃんも意識は戻らないものの、どこも怪我もなく、無事な様子。
まだ青ざめた顔色に不安はあるものの、ひとまず安心したところ背後からするわけ
ないと思っていた声が、小松崎さんを呼びました。
「熊!」
「タタル……お前」
「奈々くんは?」
聞くと同時に担架の上の奈々さんに、桑原さんは気付いたようで、
大きなため息が溢れました。
桑原さんは少しの間奈々さんを見つめた後、小松崎さんを見ると
「彩子さんは?」
と聞きました。
これは後から奈々さんに聞いて知ったのですが、桑原さんと彩子ちゃんの
お母さんは、知った間柄だったそうです。桑原さんの中学時代の恩師が、
彩子ちゃんのお母さんだとか。全くの奇縁だった訳だけど。
 
「彼女はあちらの救急車で既に点滴を受けてる」
「そうか」
 
すると救急隊の人が来て言いました。
「そろそろ病院の方へ運ぶから---運良く彼女たちはあまり水は飲んで
 いないようだし。それより、君、どうしてもと言うから、ひとまずこちら
 へ運んだようだけど、本当なら、病院へ直行だからね。君も早く乗って」
 
奈々さんの乗った担架を車へ運んで行くのを見送りながら、桑原さんがまだ蒼白い
顔のまま、言いました。
「熊つ崎は奈々くんが目を覚ますまで、彼女の側にいてやってくれないか?
 多分、陸を目指した彼女の方が、体力を消耗したはず-----無理をさせた。
 全く俺のミスだ。少し考えれば解ることなのに。
傍(そば)から離すべきではなかった」
その時の桑原さんは、心底後悔したようで、今まで見たことのないような、
悔しげな表情をしていました。
本当は自分がずっと、奈々さんに付き添っていたいのかもしれません。
 
 
 
病院に運ばれてから、奈々さんも徐々に体温を取り戻したようで、夜中に目を覚ましました。
少し熱があるかも。
目を覚ますまで、ずいぶんうなされていたから。
 
 
小松崎さんは桑原さんに頼まれた通り、わたしと一緒に奈々さんに付いていました。
時折、桑原さんの様子を見に行っていたけど、体力をひどく消耗していた以外は、
大丈夫なようでした。
 
奈々さんは目を覚ますと、小松崎さんに気付いて、必死な様子で桑原さんの無事を尋ねました。
小松崎さんが優しく笑って、桑原さんの無事を告げると奈々さんは、あの大きな瞳(め)
いっぱいに涙を浮かべ、少し安心したようにまた眠りにつきました。
 
桑原さんの言葉から察するに、恐らく彼は奈々さんと彩子ちゃんだけは陸に戻す手段を
見つけたのでしょう。
史紋さん同様、いつも憎たらしいくらいに冷静な彼のことだから、奈々さんたちを
無理矢理にでも陸に送り出したに違いありません----でも。
奈々さんの気持ちを考えたら。
奈々さんは残して来てしまった桑原さんを、少しでも早く助けたくて、必死だったはず。
 
 
----傍から離すのではなかった。
 
 
いつもの彼らしくなく、自分の行動を後悔している言葉。
 
そして多分、これが彼の本音なのでしょう。
 
 
陸を目指しても、残ったとしてもあまり助かる確率は変わらなかったかもしれない。
 
 
桑原さんは結果はどうあれ、自分の手で奈々さんを助けたかったのです、きっと。
 
 
 
 
 
小松崎さんは桑原さんの部屋に行って、様子を見ながらひと眠りすると言って
出て行きました。
わたしは奈々さんに付き添ったまま、うつらうつらしていた所、
明け方----と言うか、夜明け前のまだ冷え込む時間に、とても静かに扉が開いた
ような気がしました。
わたしもはっきり見た訳ではありません。
夢の中のように曖昧な記憶なのですが、入口で立っていたのは桑原さんでした。
 
まさか。
さっきの小松崎さんの話では、病院に着いた途端桑原さんもほとんど、
意識がなかったはず。冬眠中の蛇みたいに冷たくなって眠ってると言っていたのに。
 
 
入口から眠っている奈々さんをしばらく見つめて、奈々さんが寝返りをうつのを
見届けると、ほっとしたように出て行きました。
 
 
 
 
事件の全てが終わって、名古屋からの帰りの新幹線の中でした。
奈々さんはまだ桑原さんの体調を心配してか、時々彼の方を伺っているようです。
桑原さんは----昨夜から明け方の出来事が嘘のように、いつもの桑原さんに
戻っていました。
 
伊勢神宮の謎に夢中で。
夢中になると、周りはおろか、世間の常識もどうでも良くなる、いつもの彼に。
 
 
 
わたしはこれだけは奈々さんに話しておこうと決めて、桑原さんがトイレに、
小松崎さんが会社からの電話で座席を離れた時に、昨日奈々さんが救急車で
運ばれる前に桑原さんが奈々さんの無事を確認しに来たことを告げました。
すると奈々さんは、なんとも言い様のない、寂しいとも優しいともつかない笑顔で
「わたしももう、あんな風に彼を置いて行くのはたくさん」
と言いました。
 
 
 
学薬の旅行で熊野に行った時、この二人の間柄がよく解らず、果たしてその関係を
尋ねて良いものやら、ずいぶん迷ったものですが、その後、比較的表情(かお)
に出やすかった奈々さんが、どうやら桑原さんを好きなことは解りました。
桑原さんは……………、彼の考えは常の状態であれば、史紋さん同様、非常に解りにくい人
です。
でも------。
 
今回の伊勢行きで、奈々さんと桑原さんの間で、何かが-----何かほんの少し
動き出したようにも感じました。
 
 
 
 
 
わたしが彼らに再会したのはその年の秋でした。
 
その前にひとつ。
 
伊勢から戻ると、わたしは報告がてら史紋さんに電話をかけました。
 
事件のことを話し終え、史紋さんに何故か聞いてみたくなって、
桑原さんと奈々さんの話をしました。
あの夜明け前の、光一筋ない中で見た桑原さんの表情のことを。
 
 
そこまで話を聞くと史紋さんは、ため息をつきました。
「……成程、もうこれで、僕には全くの余地がないと言うことか」
「余地?」
一瞬なんのことか見当がつかなかったけど………
そうか!
「史紋さん、奈々さんのこと……」
「初めからわかっていたことだ。今さら再確認させられたと言うだけで」
こんな冷血無情無関心人間でも、恋をするのです。
しかも----和歌山でのあの状況なら、一目惚れに近いのでは。
そう言えば、奈々さんの名前についてあれこれと言っていたっけ。
初対面なのになんて失礼な奴だと、あの時は思ったのだけど。
 
「今回のことで彼らにも自分自身の気持ちが解ったのでは」
そう言うと史紋さんは電話を切りました。
 


………史紋さんも失恋をするのか。
 
わたしはなんだか、ニュートンが落ちたリンゴを見た時の様な気持ちに
なってしまいました。
 
 
 
秋に学薬旅行の話が来ました。
今回は何の記念だかは解らないけど、何かの記念で埼玉と千葉と東京の三つの
学薬会で少し遠出をすることになりました。
 
場所は九州。
 
ただし、有名な宇佐八幡や大宰府天満宮はコースに入っておらず、
長崎市内とハウステンボス、そして博多と言うコースでした。
 
 
これは桑原さんは絶対いない。
 
 
でも奈々さんはどうだろう?
 
珍しく自分から奈々さんにメールをしてみると、参加するとの返事が。
わたしもすぐに参加を決めました。
 
 
 
ところが、当日集合場所の羽田空港で有り得ない人がそこに立っていました。
 
 
桑原さんです。
 
 
しかもいつもよりはずっと身なりが良くなっています。
 
目黒区の学薬の方がこっそり耳打ちしてくれたことによると、
奈々さんと桑原さんはちょうど伊勢から戻られた後くらいに、婚約したのだとか。
今回全く気がないのに、桑原さんが旅行に参加しているのは、最近めっきり綺麗に
なった奈々さん目当てで、薬剤師会の研修などでは老若問わず男性の参加者が
増えたとか。
そう言えば今回の旅行も男性が多い。
全くこう言う時の男の心理は、理解の枠外なのだけど、そのことを桑原さんの
古い知り合いだった、奈々さんの薬局の薬局長が桑原さんに告げたのだそうです。
 
 
そこで自分の未来の妻をガードするために、本当に渋々桑原さんは旅行に参加したの
だとか。
 
 
そうか。
それであんな苦虫を噛み潰したような顔なんだ。
 
 
そこで奈々さんに
「お二人で参加出来て良かったですね」
と言ってみたら、奈々さんは真っ赤になって
「どうしたのかしらね?急に行くって言い出して。
 大宰府も宇佐も高千穂もコースから外れているのに」
不思議そうに答えました。
…………もしかして、奈々さんは解っていない?
 
一方的に奈々さんが片想いし続けたのかと、思わないでもなかったのだけど…
…案外桑原さんがやきもきしたことも多いのかも。特に今は。
 
小松崎さんが言った『破れ鍋に綴じ蓋』そのままの、なんとも言えない
カップルになった訳か。
 
 
それでも、長崎に着いてからも奈々さんにずっとくっついている桑原さんは
------熊野での彼に比べて、ずっと幸せそうに見えました。
当然奈々さんも。
 
 
旅行の最後に、奈々さんに言いました。
「結婚式ぜひ呼んで頂けませんか?」
「………まだ日取りがはっきりしないのだけど。来年の五月頃に」
奈々さんはやっぱり真っ赤になって頷きました。
 
 
わたしはあの事、父や兄との事から-----恋愛と言うことに対して、
非常に冷めた感覚しか持ち合わせていなかったのだけど、
桑原さんと奈々さんを見ていたら、少しだけでも信じてもいいような
気持ちになっていました。
 
そう言えば彩子ちゃんはしきりに桑原さんが羨ましいと、言っていたっけ。
彼女も生い立ちの難しさから、警戒心の強い人なのに。
 
 
奈々さんには、心に傷のある人が、慕い寄りたくなるなにか
……温かさみたいなものがあるのかもしれません。
桑原さんは、意識的にか無意識にか初めからそれを享受していた訳で。
 
 
 
 
 
年が明けてしばらく経つと、律儀に結婚式の招待状が届きました。
 
場所がどこかの神社ではなく、横浜の教会だったので、恋で変わるなんて
桑原さんも人の子なんだなあと、妙に関心してしまいました。



※色々と読みにくいところがあり、申し訳ありませんでした。

モリポチさんのリクエストにお応えして、禮子ちゃん視点^^
彼女は過去が重いので、書くにはなかなか覚悟がいるのですが、
伊勢の最後の方で、随分雰囲気が変わったようにも思えたので
こんな風に考えていたらなぁと思い書きました。
モリポチさん、リクエストありがとうございます^^

拍手[5回]

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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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