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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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拍手が30超えましたヽ(^。^)ノ
いつもありがとうございます。
コピー本は間に合わないと思いますので、このお話の
大祐くんバージョンを載せて出しますが、
通販用にオンデマンド印刷にて、ちょっち桃色モードな
漫画をプラスして販売しようと思います。
多分五月くらいからの発売になります。


コメント沢山ありがとうございます。
朝見たら、思いもよらない数でびっくりしました。
空稲ピンクパワーw衰えてない証拠だと思いました。


小説は津空き記事からです。

拍手[21回]


◆◆◆


キッチンに立ってお鍋がコトコトと音を立てているのを、
見ていた。
五月の、そろそろ初夏を感じる遅い夕暮れを
この部屋に越してきて、一人で見たのは初めてだ。
土日祝日は殆どが彼――この程世間的には『夫』と呼ぶようになった
同居人と一緒に過ごしていたし、その休日だとてわたしは仕事柄、
まともに過ごせることの方が希な程なのだ。
今日は平日ではあるが、珍しく半日休みになり、
自分の担当する昼の番組のオンエアを見届けると、
予てより入ってみたいと思っていた新しく出来たショッピングモールを
仕事のリサーチも兼ねて回り、夕食の買い物なども済ませて、
マンションに帰宅した。
 
 
 
帰宅して誰もいない部屋。
――なんて、わたしにはこれも引っ越して来て以来初めてだった。
どれだけ自分が幸せな立場か、身に染みて感じる。
いつも帰宅は彼の方が早く、そして夕食の仕度を
してくれているのも彼だ。
間に合えばわたしも共にキッチンに立つが、
大抵は出来上がった頃に丁度わたしが帰宅している。
「お帰り。丁度いいタイミングだったね」
にっこりと優しく微笑む彼を見ると、その日一日の
――雑駁な思いの彼是もすぅっと消えて、
ああ、これがあるから毎日出勤するのも厭わないでいられるのよね、
なんてつい、感じてしまう。
しかしこれでは世間一般に言う夫婦とは、立場が逆ではないか。
こうなることを恐れて、彼の気持ちに素直に応えられなかった時期も
あったのだが『何れ顔を合わせるのも難しくなる日』が彼の異動と共に
やって来ることを考えたら、例えそれが世間からどう見えようと、
それが自分たちに『在る』形象(かたち)なのだと二人で結論を出して、
今こうして生活を共にしているのだった。
尤も彼は――此方に異動になり再会した時に既に
その辺の覚悟はついていたらしいが。
だから、今日のように滅多にない機会をわたしは無駄にはしたくなくて、
何日も前から夕食のメニューを決め、それを調理するのに必要な用意を
空いた時間で怠りなく準備した。
勿論――彼には内緒だ。
 
 
 
「ただいま」
キャセロール鍋をオーブンに入れた所で、玄関から彼の声がした。
「リカ、いるの?」
彼の少し驚いたような声の調子に、わたしは内心ニンマリとする。
今日早く帰宅出来ることも彼には告げていなかった。
「それに何だか美味しそうな匂い……」
「お帰りなさい」
わたしは自分では目一杯の笑顔で、彼を見た。
「今日早く帰れたの?体調悪くて、とかじゃないよね」
「勿論ちゃんとしたお休みですよっ。夕飯あと三十分くらいで出来ますよ」
「本当?スゴいね」
彼の反応に、わたしは期待した通りの満足感を噛み締めながら、彼の背中をトンと押した。
「早く着替えて。それとも先にシャワー浴びちゃいます?」
触れた指先に微かに感じる体温に、何故かドキドキした。
「シャワーもいいけど……ちょっと待って、リカ」
「え?」
彼が突然屈んで、まるで首筋にキスするつもりなのかと思わせんばかりに、
顔を近付けて来たので、わたしの心臓は一気に跳ね上がった。
「ちょっと!だ、大祐さ……」
「……リカの匂い、と知らない匂いがする」
わたしの肩を掴んだ、彼の意外に大きな掌から熱が伝わる。
まるで今日一日の、彼の気持ちをそのままにしたような。
そんな筈はないのに、此方の予想外な程に弾む心音が、
彼に全て伝わってしまっているように感じる。
「今オーブンにキャセロール入れたから……そ、その匂い?」
料理番組を担当している仕事柄、出演者の料理士の先生から教わる機会があり
初めて作る料理だった。彼は元がパイロットだけに視力もその他の感覚も
悪くない――と言うか、やや人並み外れた所もあるようだが、
何故か匂いにも敏感だった。
酸素マスクの入り用な上空にいるのに、何故鼻まで敏感になるのか
不思議なのだが、全ては脳が受け入れて感知することとて、
他の感覚を研ぎ澄まそうと気を向けると、自然と匂いも微細なものでも
感じられるようになるのだとか。
ほんの少しぼんやりとしていたら、彼の声が耳許で囁くように響いた。
「料理の……食べ物の匂いじゃないよ。もっと……花とか葉っぱとか自然の。
でもそれだけじゃなくて。何だろう、リカの匂いに混じってて
はっきり解らないけれど」
彼は『匂い』が何か突き止めたいあまりに、
今二人がどんな状況か、まるで気にしていないらしい。
抱き寄せるでもなく、抱き締めるでもない。
口づけるでもない、でもまるでキスしているような距離に、
わたしはいっぱいいっぱいだった。
先程までの、自分にとって用意するべくして享受した満足感は、
あっという間に何処かにふっとんでしまう。
なんてことだろう。
「だ、だ、大祐、さんっ?」
くっつくにしろ、離れるにしろどちらかに決めてしまいたかった。
「シャンプーの匂い、じゃないし」
「しゃ、しゃ、シャンプー……あ」
彼の低めた声から出た一言で、わたしは今日の昼に確かに
普段は纏わない『香り』を身に付けたことを思い出した。
ショッピングモールの新しく出来たコスメショップで、
香水やトワレの試供コーナーが特設されていた。
フランスの修道院が提供しているとの謳い文句に心引かれて、
透き通った瓶の一つを手に取ってみたのだった。
香りを試してみようと、細長い試香紙を指で摘まむと、
店員が声をかけてきた。
「そちら今年の新製品になります。ユニセックスのタイプです」
試供品のアトマイザーから紙に振りかけて、鼻に近付けてみると、
確かに華やかさは然程感じないが、静かな、そして爽やかな香りがした。
香りに温度を感じるのはおかしいかもしれないが、
そことなく冷たさも覚えて、成程なと内心頷く。
すると店員は心得たように向かいのディスプレイから、
今わたしが試した物と象は同じだが、中の液体はどことなく
華やかさを感じさせる色の瓶を取り出して来た。
「此方も試してみませんか?今、お客様が試された香りの
女性向けのタイプなのですが――寧ろお客様ならば此方の
香りの方がお似合いかも」
店員はアトマイザーからまた試香紙に、しゅっと振りかけてわたしに手渡した。
すると、確かに先程の香りよりは甘い印象の香りがふわりと立ち上った。
「香水は付ける方それぞれで、また香りも変化いたしますからね。
その日の体調もありますが、体温などでも変化します。
思いの外、付けた香りの長持ちなさる方もいらっしゃいます。
確かに最近はユニセックスのタイプが、アジアでは流行ですが、
お客様ならば少し華やかな香りでも、負けないと思いますよ」
普段コロンやトワレを使っても、あまり女性的な香りは
好まないことが多かったわたしだ。
確かに印象に残る――しかも決して嫌ではない香りだったが、
着たことのないタイプの服を試すような気持ちがして、
熱心な勧めに、返事をしかねてしまった。
わたしの迷いを察したのだろうか。
「よろしかったら、今日試しに此方のパルファンのタイプの物を、
着けていかれませんか?相性もありますから」
そう言って手首の付け根の部分と、耳朶の裏側にほんの少し、
その香水を付けて貰ったのだ。
そう言えば使われているのは皆植物性の香りで、
アンバーやムスクなどの動物性の物は調合されていないと言っていた。
彼が言っているのは、その匂い?
でも着けてから随分時間も経っている。
こんなに軽く?と思う程しか着けておらず、自分では『香水を着けた』と
言う自覚はあまりなかった程なのだ。
 
 
 
「き、気になります?」
「……ん」
「じゃあ、やっぱり買うのやめようかな」
「嫌って言う意味じゃないよ」
気付いたら既に彼の腕に閉じ込められていた。
ちょっと待って。
わたし、確か夕飯を作っていた筈……。
でも彼の拘束は緩む気配が微塵も感じられない。
どうしよう……。
このまま続くと、わたしもこのまま流されてしまうに違いない。
ただでさえも『こう』と思い込んでいる時の彼を、回れ右させることなど、
わたしには出来た試しがないのだから。
「リカはいつものリカなんだけど、匂いが違うだけで、
まるで知らないリカを見てるみたい。
折角早く帰れた所悪いけど、『欲しい』と思うものを優先させてもいいかな」
言葉は此方を伺うように遠慮がちなのに、
態度はそのまるで逆でいつもの彼らしくなくその場でわたしを抱き締めると、
ようやっと口唇を重ねて来たのだった。
 
 
 
「うん、美味しい」
二人で寝室に閉じ籠っていた間に焼き上がったキャセロールをつつきながら、
彼は満面の笑顔だ。
そうでしょうとも。
わたしはまさかこんな風に隙を突かれるとは思ってもみなかっただけに、
彼の思うようになってしまったんじゃないかと言う気がする。
「この生地酸味があるけど、生クリームではないよね?」
「ヨーグルトと卵です。これなら生地を流し込んで、
後はオーブンに入れれば出来るよって、エクレール先生が」
「野菜たっぷりで薄味なのもいいな。
ハーブの匂いも、噛みしめるごとに感じて食べ応えあるし」
「……」
さっきベットの上で似たような言葉、囁かなかった?
事が終わった途端、自分が空腹だったことを思い出したようで、
何か憑き物の落ちたような表情で「お腹空いた~」と呟いた。
全くムードも何もあったものではないが、男性としてはこれが標準で、
先程の――帰宅してすぐの彼はいつもの彼ではなかった。
そんな熱を帯びたような瞳(め)でねだられて、
わたしが断れた例(ためし)などなかったのだから。
それでも触れていなくても、感じる互いの熱に、
穏やかな波のような、流れていく空気を感じて、
わたしはホッと息をついたのだった。



※大祐君バージョンはR指定でw
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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