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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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皆様の素敵資料写真のおかげで、作業が早く進み、
少しゆとりができたので7、8月を描き直しています。
やっぱりF-15の機体をもうちょっと出したいと思い、
資料の写真をお願いしたところ、奈津様よりお写真を頂きました。
F-15は何と言っても鋭角的なカタチと、実用を考えられた塗装の質感を
どう出すかにかかっています。
怪しかった救命具もいい資料が手元に来まして、やっと正確に
描けているかと…(みくこ様ありがとうございます)



さてとうとう同棲を始めました、我が家の空稲。
新生活は早くも(空井くんの上にだけ)暗雲が立ち込め…


小説は続き記事からです。



拍手[9回]




◆◆◆



「空井くん、稲ぴょんととうとう同居だって?」
昼休み、片山さんからまた電話が来た。
現在統合幕僚本部にいる彼は、元後輩をからかっていられる程
ヒマではない筈なのだが、どんなに少なくても週に一度は電話が来る。
「稲ぴょんどうだ?海自に行ってんだろ」
「おそらく」
「なんだよ、頼りねーなあ」
「彼女、仕事ですからね」
極力素っ気なく、窓の外を飛び立って行くT-4を見ながら答えた。
「海自に稲ぴょん……正に因幡の白ウサギだな。
鮫どもにパクンと一口で丸呑みとか、ひんむかれて丸裸とか」
「片山さん。今日のご用件はなんでしょうか?」
声に隠る怒気を、それでも押し隠しながら話した。
「うん、比嘉っちたちと話し合ってな、引っ越し祝いを出そうかと。
何が欲しい?あんまり高いもんは無理だけど」
「え……それは」
「うん、そう来ると思ってたから、稲ぴょんと話し合いの上
決めといてくれないかな。やっぱり新居に必要なものがいいだろ?」
「……片山さんからそんな台詞を聞く日が来るとは、思いませんでした」
「官舎では、イケメン、イクメン、気配りパパで知られた
俺様に何を言うか!まあ、早めに知らせてな~」
いつものように、言いたいだけ言って片山さんの電話は切れた。
『因幡の白ウサギ』だって?
確かにあの話のウサギは、裸にされてた所を通りすがりの男に
助けられていたけれど……。
いいや、今は彼女の『理性』ある行動を信じるんだ。
例え、以前空幕広報室にいた時に行われた、最初の懇親会で、
アルコールの入った彼女の豹変ぶりに、自分がときめいた過去があるにせよ。
 
 
 
「この距離なら……いっそ貯金下ろして車買おうかな」
同居先の相談をしていたら、突然彼女が言い出した。
「ええっ!?」
まず彼女が免許を所持していること自体、初耳だった。
「な、な、なんなんですか。何かわたしびっくりするようなこと、言いました?」
「いや、だって……リカ、運転出来るの?と言うか免許は?」
「あるに決まってるじゃないですか。大学2年の時に取りましたっ」
「……その後運転は?」
パイロットですらライセンスの維持の為、直接業務に関わりなくとも
期間ごとにT―4に乗るのだ。
「ペーパーですけど、更新はしてますよ」
「…………」
何故車の免許にはその義務がないのだろう。
いや、でも車通勤になれば、飲酒は確実に断ることが出来る。
メリットとデメリットと自分の心臓の耐久力を秤にかけて、
返事をしかねていた。
「高松ハウジング……此処、結構いい物件扱ってますよ。
マンションも一戸建ても。明日電話をかけて、早速行ってみませんか?」
彼女はそんな自分をどう思ったものか、また物件検索の作業に戻り、こう言った。
彼女の必要なデーターに辿り着く早さは、自分の知る人間の中では随一だ。
流石に帝都テレビの敏腕ディレクターだと思う。
「全く君は……」
こんなとき、多分愛しさから来る不安と抱き締めたくなる衝動で、
何とも言い難い気分になる。
こんな気持ちは彼女を知らなければ、きっと知らなかった。
「疲れてる?」
「今週はそんなことは。海自の担当の人も、手際が良くて」
「……それも、気になる」
そっと引き寄せて髪を撫でた。
柔らかい、艶のある髪が指に僅かに絡む。
この不安を払拭したいあまり、自分の中にあるささやかな『欲』に
負けてしまう。
膝まづいて手のひらに口付けて懇願したくなる。
でもそこまでしなくとも、彼女は優しく身を任せてきた。
温もりと重み。
例え一緒に住んでも、それは毎日得られる訳ではないけれど。
彼女を腕の中に閉じ込めておける、僅かな権利を行使すべく、
絶え間なくキスを繰り返した。
 
 
 
新居は割合あっさり決まった。
自分と彼女の意見が初めから一致したのだ。
こう言うことを繰り返しながら、夫婦になるんだなあと
妙な感慨を覚える。
小金井からならば、基地まで通うことが出来るので、
早速官舎を引き払う手続きを始める。
渉外室長からは「お前、式は何処でするつもりなんだ」と笑われた。
順序は確かに逆だが、今はスクランブルの一歩手前のような状況で、
予測出来る事態は防げるだけ防ぎたいと言う
――きっと片山さん辺りに言わせれば、非常に小さな
(彼ならセコいと言うだろうか)独占欲から来る思考から出た結果だった。
来週土日には掃除と引っ越し。
同じ官舎に住む先輩から、車を借りる。
彼女にメールすると、彼女は引っ越し屋をすでに手配したとのことだった。
何もかもが予定通りに、進んでいる。
あまりに順調で、このあと落とし穴があるんじゃないかと、疑いたくなるほどだ。
いやいや、これが当たり前で今までが色々ありすぎたのだと思い直し、
仕事に戻った。
入間基地では毎年人数を募り、基地内を歩く行事がある。
今年は自分が担当している。
なかなかに充実して、忙しい日々を送っていた。
 
 
 
新居への引っ越し当日、比嘉さんと片山さんが手伝いに来てくれた。
幹部は三年以内の異動になるが、こんな風に続く縁もあるのだ。
「なんだ稲ぴょん、女の子の割には荷物少なくねーか?」
「相変わらずですね、片山さん。
わたしは一人で持ちきらないような物は、持たない主義なんです。
大学の頃から一人暮らしでしたから」
「うんうん、稲葉さんらしいねえ。この段ボールは?何処の部屋?」
比嘉さんも久しぶりに会った彼女に、嬉しそうだ。
「あ、箱に何も書いてないものは、とりあえず天井斜めの部屋に」
「二人暮らしには、広いよな。まあ将来考えたら、いいのか」
「片山さん、テレビ運ぶんで、此方持って下さい」
「おう」
引っ越し祝いは比嘉さん、片山さん、槙さん夫妻、
そして鷺坂さんの名義で新しい冷蔵庫が来た。
留守の多い家でもあるから、省エネで最新の物をと彼女と選んだ。
そして流石自衛官が三人も出動した引っ越しは、思いの外早く終わり、
準備した蕎麦を茹でて、四人で引っ越し蕎麦を食べることになった。
後の細かい作業は彼女と二人でやる。
先に缶ビールを開けて、片山さんが彼女に話しかけた。
「稲ぴょん、海自の広報室行ってんだろ。どう?上手く行ってるか?
また『護衛艦は人殺しの道具ですよね』とか、言ってないよな?」
「もー!止めて下さい。それは本当に申し訳ないと思っています。
正に『浅学非才、バカ丸出し』でした。
お陰様で良い担当者に恵まれて順調です。
来週は懇親会にも参加するので……」
「ええっ!」
思わず笊に乗せて運んで来た蕎麦を取り落とす所だった。
「……担当は海野如?」
「ハイ、よくご存じで。片山さんは統幕だから、
もしかしたら面識がありますか?」
「あるって言うか……、ないって言うか。
防大で有名人だったからな、海野。撃墜王として」
「射撃の腕前、スゴいんですか。海自なのに?」
「射撃……じゃなくて」
片山さんは意味ありげに、チラリと此方を見た。
「まあ、百聞は一見に如かずだ。稲ぴょん」
「わたしもそう思ってます。スゴいんですよ!
今回はカレーの取材なんですが、びっくりしちゃいました。
隊ごとにレシピが違うみたいで、それぞれ秘伝として受け継がれてるんです。
隠し味には、インスタントコーヒーやチョコレート、
はたまた苺ジャムやコーラまであるそうです。
これを取材してるだけでも、一ヶ月ではとても終わらなそう」
「…………」
噛み合ってるようで噛み合ってない返事に、
比嘉さんも此方をやや同情したような目で見た。
「リカ、懇親会、行くの?」
「ええ、それは。空自の時に、良い仕事の為には必要だと痛感しましたし」
あまりに生真面目な回答に、とても反対は言い出せない。
いや、元々言える権利があるものではないかもしれないが……。
思わず、海自のカレーの知名度まで恨みたくなってしまった。
 
 
 
そして二人の生活が始まる。
朝と夜だけでも、お互い顔を合わせることが出来るのが嬉しい。
少しずつ家事を分担して、互いの生活リズムを
重ね合わせて行く喜びもあった。
「あのう……早速ですみませんが、先日お話した海自の懇親会があります。
電車のある時間には帰りますから、大丈夫ですよね?」
片山さんの話では、今かの広報室は男性ばかりらしい。……狼、いや海なら鮫か。
鮫だらけの海原に、こんなにひたむきで美人なウサギを、投げ込んでいいものだろうか?
「遅くなるようならば、連絡くれる?駅前暗いし危ないから迎えに行くよ」
「…………」
「どうしたの?」
頬を仄かに染めた彼女を見た。
「あ、いいえ。あのう、男の人と暮らすってこう言うことなんだなあって」
「あ……そりゃあ、心配だもの」
出来れば懇親会も参加したいくらいだ。
「じゃあ、すみません。わたし先に出ますね」
ふと目の前の彼女が、かなり背伸びをしたかと思うと、
口唇にふわりと柔らかな香りと感触がかすめた。
「いってきます」
開いた扉の向こうから、眩しい光が射し込んできた。
 
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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