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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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すみません!大変好評をいただきまして、キーホルダー、予約販売のみで
売り切れになってしまいました!
なのですぐ様、再版の手続きを取ったのですが、現在冬コミ前の
一番印刷屋さんが忙しい時期でして、出来上がり販売できるのは
12月20日頃になりそうです。

カレンダーは絶賛発売中です。
コチラは再版はできないかと思いますので、この機会にぜひ
お手元に置いてください。


えーとドラマでは『小松の名コンビ』だった二人ですが、
原作を読んでいたら、百里の名コンビだったことに気が付きましたw
おそらくドラマでは空井くんが梅組出身だったっことから、
二人の名コンビ時代の基地の場所も、変わったのだと
思われます。

そんな訳でもうないとは思いますが(笑)今回は片山さんが主人公!

小説は続き記事からです。



拍手[6回]




◆◆◆



その日は早めに仕事を切り上げられるよう、午前中は
信じられない量の書類を作成し、各部署に回した。
勿論チェックも忘れない。
空幕広報室から統幕に異動になった時に、
こう言ったことになるべく気を付けるようになって来ていた。
これも空幕で自分を育ててくれた、鷺坂室長のお陰と言える。
確かに自分は負けん気が強いタイプで、それを糧に働いていると言っても
過言ではない。
だからこそ百里時代に出会った比嘉――経験値から言えば広報の分野では
彼の方が先輩と言えるが、彼との出会いは、非常に模範的で良い先輩、
そして目指すべき好敵手、また一緒に仕事したい仲間として、
自分にとっては特別な人間としてカウントされていたのだ。
だと言うのに。
彼は幹部昇進の試験を受けていなかったようで、
再会した時はまだ下士官の『比嘉一曹』だった。
 
 
 
その時受けた俺のショック――誰が解るもんか。
そんな気持ちだった。
それでもただ自分が思い込んでしまい、一方的な考え違いは
彼に対しては、したくなかったのだ。
空幕広報室にだって三年しかいない訳だから、
理解に苦しむような相手が仕事仲間になったとしても、
三年目を瞑っていれば済むこと。
しかし彼、比嘉に対して自分はどうしてもそうしたくない、
そう言う気持ちが強かった。
そこで、理由を聞いてみた。
「何故幹部昇進の試験を受けなかったのか」を。
その答えは意外なものだった。自分の知る彼からは。
「かみさんが老舗の造り酒屋の経営者だから、自分は出世しなくていい」
そんな話!
百里でフルールの仕事に関わった時だって、
彼の仕事ぶりは細やかで配慮が行き届いており、
そして――広報と言う職務に対して熱意の感じられるものだった。
出世しなくていいだと?
そんなヤル気のない奴にはアンタ見えないんだけどね。
のほほんと焼酎のお湯割り(日本酒は家で飲む機会が多いので、
彼は外で飲む時は焼酎が多いらしい)を飲む彼の表情からは、
何の裏も読み取れず、自分はこんな、気のない奴を好敵手として
認知し再会を楽しみにしてしまったのかと、がっかりしてしまったのだ。
 
 
 
だから極力彼の手は借りまいと、意地にもなっていた。
ところがある日突然目が覚めた。
広報室に勤務して二年程経ってから、元F-15のパイロットとか言う、
エライ派手な経歴の人物が空幕広報室に異動してきた。
その男、空井二尉は初め愛想がいいだけの、ちょっと頼りないような奴だったが、
比嘉の言うことは良く聞いて、模範的な生徒のようだ。
毎日隣で見ていると――百里時代の自分を見ているようで
ムズ痒くなるのだが、極力無視を決め込むことにしていた。
その空井二尉が――彼は帝都テレビから来たディレクターの
アテンドに入ったのだが、その女性ディレクターが
あまりに強烈だったのだが、そのお蔭?か劇的な変化を遂げたのだ。
いやはや。
中学生にもなれば、公民の授業で誰でも教わるのが、憲法第9条だ。
これが掲げられている限り、日本は「軍隊」と
名前の付いた組織を持つことが出来ない。
かと言って周辺をぐるりと海に囲まれ、決して仲良しな国ばかりと
お付き合いしている訳には行かない訳で、生まれたのが「自衛隊」だった。
必然的に必要で、でも理念から言うと難しいのが、
自分が勤めている職場の世間的な立場だったのだ。
それを「自衛隊の空軍」だの「戦闘機は人殺しの為の機械」だの、
来て早々、耳が引っくり返るような発言が続いた。
室長は何を考えたのか「稲葉で因幡の白ウサギだから稲ぴょんね」なんて、
どうかと思うアダ名を付けている。
そんなカワイイ玉じゃねえだろ。
どっちかつーと、歩くサボテンだ、などと思っていたら、
同様の感慨を抱いたのか、背後の席にいる報道班の残念な美人、
柚木三佐など「アレはウサギって言うより、ヤマアラシか針ネズミよねー」
と小さな声で呟いていた。
しかしそのサボテンで針ネズミのディレクターのお陰で、
ボンヤリ薄らボケてた空井一尉が、何だかやたらヤル気に溢れた
ガッツなオトコに変わって来たのだ。
成程室長の――ある意味ショック療法とも言える采配は功を奏した訳だが、
そうしたら目が覚めた途端、偉そうなことを言いやがる。
「俺たち、何があっても三年しか此処にはいられないんですよ!」と。
誰に吹き込まれたのか、比嘉との過去の仕事のことを
何処かから聞き込んで来たらしい。
丁度「SS」と言う大きな仕事に関わっている時だった。
そして、それは仕方がない理由でキャンセルになってしまい、
新たな仕事に目を向けなければならない時だった。
「セラフィンのPVの仕事は比嘉さんも一緒に!」
それがまだヒヨッコの空井の言い分だが、一理ある。
比嘉はこのまま、広報に関わり続けるかもしれないが、
自分は全く違う任務に異動になる可能性が大きい。
今、同じ空幕広報室にいるのだって、百里時代の実績があってこその『奇跡』だ。
だから――空井に比嘉を呼んで来てくれるよう頼んだ。
時間の方が惜しい年齢に、自分もなったのだ。
そう思った。
 
 
 
そして自分もまた別の部所に異動になり、
空井は松島の渉外室に異動になった。
比嘉は依然として空幕広報室にいる。
後から来る昔の自分や空井のような、広報の『こ』の字も解らない奴に、
イロハから仕事を仕込んでいるに違いない。
そんなことを考えつつも、新しい任務に馴染み始めた頃に、
あの震災が起こった。
今回の異動には家族は付いてきておらず、
東京の郊外と赴任した基地の休日ごとの行き来が続いていた頃だった。
赴任した基地は関東圏内ではなかった為に、震災時は東京の家族と
連絡が取れず随分と気が揉めた。
任務の合間に、辛うじてメールの返事がきて何とかホッとし、
やはりこう言うことがあるからこそ、転勤が多くなるとは言え、
今回も家族を連れて異動すれば良かったと、大層後悔した。
そしてその時、ふと気が付いたのだ。
比嘉はどうしているだろうと。
アイツのかみさんは造り酒屋の経営者だ。
造り酒屋は移動したくても移動出来ない。
百里から入間、そして市ヶ谷に異動した彼は、
あまり関東を離れてはいない。
もしかしたら――
「婿養子にならないかって話もあったんですがね」
微笑いながら、焼酎のグラスに口を付けるアイツの横顔が思い浮かんだ。
 
 
 
「空井くんたち、上手く行ってるみたいで良かったですね~」
何とか仕事が落ち着いて来る6月、比嘉と落ち合い、
あまり邪魔の入らなそうな四ッ谷駅前の古い小さな居酒屋で、二人で飲んだ。
今年から自分も統幕に異動になり、市ヶ谷勤めだ。
流石に敷地が広いから勤務中に顔を合わせることはなかなかないが、
待ち合わせれば、飲むことくらいは出来る。
「比嘉さんの側に勤務になると、貴方毎日嬉しそうよね」なんて言う、
とんでもない妻の発言も、そう的外れではないと認めざるを得なくなり、
自分から彼に連絡を取った。
まずは酒の肴にするのは、あの二人――空井大祐、
今は昇級して一尉と帝都テレビのディレクター、稲葉リカである。
彼らも空井の異動が入間になったことで、無事再会を果たし、
どうやら以前のような仕事仲間としてではなく付き合い始めたようだ。
尤も30過ぎたオトコがそれはどうよ?と思うような、
亀の歩みの進展ぶりらしいが。
「全くもどかしいよな。槙たちもやっと結婚式だっつーし」
「槙くんたちはね、震災挟んで任務の関係でなかなか会えなかったらしいし。
まあ……自分たち自衛官に限らず、人間関係にも色々な変化を
感じましたよね、あれ以来。
復旧はまだまだだし。
ブルーが三月にやっと松島に帰れたばかりだから、仕方ないけれど。
自分の無力さを思い知らされました」
いつも心の底を覗かせない暢気な比嘉の表情が、
流石に俯いた侘しいものになった。
「……比嘉っちのかみさんち、震災の時はどうだったんだ?
造り酒屋……確か蔵は北関東って言ってなかったか?」
「ええ、茨城の方でね。水戸家御用達の由緒ある蔵元だったから、
潰すって訳には行かなくて――でもかなりな期間
ライフラインはストップしてたし、
原材料の米が……放射能がどうのとかそんな関係で
買い付け出来なくて、震災の起きた年は
売る程酒は造れなかったんです」
無言でビールジョッキに口を付けた。
こちらが何も話さないのを見届けて、比嘉は話を続けた。
「かみさん、自分が仕送りしてた給料は全部貯金してたんですよね。
初めは『生活困らないから、貴方の好きなようにしていい』なんて
言ってたんですけど、それじゃあ自分、婿養子通り過ぎて紐みたいだし。
無理にでも毎月仕送りしてたんです。
だから……今回の震災での損失分、その貯金で埋めて欲しいって、
申し出たんです。
やっと好きで勤めてただけの仕事が、家族に役立てるのかなって思って」
「……」
「かみさん、最初は首縦に振らなかったけど、
先日やっと受け取ってくれました」
ああ――やっぱりな。
空幕で再会した頃の自分を、少し呪いたくなった。
大体コイツも悪いんだ。
色々考えてる癖に、自分はちっとも大変じゃありません、
そんな表情が当たり前に出来るんだから。
鷺坂室長が詐欺師の異名を取るなら、コイツは時代劇によく出てくる
越後屋か何かだ。
全く……騙されてたと思う。
「ごめん!」
ずっと言うべきで言えないでいた一言だが、比嘉は
鳩が豆鉄砲食らったような珍しい顔になった。
「や、や、や、やめてくださいよ。片山……今は三佐ですよね。
明日雨降ったらどーするんですか」
「降るに決まってんだろ。今、梅雨なんだから」
「いや、そうなんですけど。明日ドラマの撮影入ってるんですから、
雨まずいんですよ。入間の気象隊が計算しつくした上で、
やっと決めた撮影日程なんですからね」
「なんなんだ、それ」
「入間から所沢の霊園の真上をピンポイントで
C-1輸送機に飛んで貰うって言う、なかなか難しい撮影で。
入間の空井一尉とも協力して、やっと明日なんですよ。
片山さんが謝ったりしたら、明日確実に雨降っちゃうじゃないですか」
何だかあんまりな言われようだ。
「……じゃあ、もう一度言ってみようかな」
「やめてください!」
そこまでマジ顔されると、もしやそっちが本気なのかと疑いかけるが、
いやいやと心の中で首を振った。
ニコニコと微笑んでいるように見えて、コイツは自分に素直じゃない奴だ。
だから――
「フン、それならそう言うことにしといてやるさ」
ジョッキの残りを煽り、後ろを向いて景気よく言った。
「おかわり!」
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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