『Element』再版ご希望の方拍手、まだまだ前回の記事で
募集中です！30以上集まると再版できると思います。
よろしくお願いします～m(__)m



ちょっと小話が出来たのでUPしました。
お父さんとお母さんになったばかりの二人。
でも結構大祐くんは呑気そう(笑)


小説は続き記事からです。

[40回]

◆◆◆


「よしよし…よしよし……ふうっ」
本当に溜め息が出てしまう。
だって、寝かし付け始めてからもう二時間。
ずっと泣いてるんだもん。
明日は仕事休みだから、心おきないとは言え、
理由も何も解らないから、流石に苦しくなって来てしまった。
……彼が寝かし付けてる時は、そんなことないのになあ。
生まれてまだ半年の息子を抱っこし続けるのも少し疲れて、
自分たちが寝ているベッドに来て、腰掛けた。
相変わらず泣き止まず、グスグスと鼻を鳴らしている。
どうしたら泣き止むのかな。
小さな背中をトントンと軽く叩きながら、ふわふわした髪を撫でる。
これって母親の性なんだろうけど、これだけぐずられて、疲れていても、
やはり掌に子供特有の柔らかさや温もりを感じると、
可愛いなあなんて思ってしまい、泣かれていることを一瞬忘れる。
「……オッパイ足りなかったかなあ。
もう少しミルク作っとくべきだったかしら」
ゆっくり揺すったり撫でたりしながら、泣いてる子供に話しかける。
そう言えば、この前母が言ってたっけ。
わたしもよく夜泣きしたって。
そんな時、どうしてた？って聞いたら母はにっこり笑って言ってた。
「そうだ、子守唄だ」
あまりに泣き止まないから、基本的な方法が思い付かなかった。
少し恥ずかしいんだけど。
彼も明日出勤時間早いみたいで、もう寝てるし。
小さな声なら、いいかな？
「ゆりかごの歌を
カナリヤが歌うよ
ねんねこ
ねんねこ
ねんねこよ」
あ、少し泣き止んだかな？
まだ目尻に涙いっぱいだし、口もいっちょまえにへの字口だけれど。
そうして子供の背を撫でていたら、急に背後の寝息が途切れた。
そして、溜め息。
振り向いてみると…
「いいなあ、蒼太は」
彼がムクリと起き上がった。
「あ、ごめんなさい。大祐さん、起こしちゃった？」
「派手に泣いてたねえ」
「……わたし寝かし付け下手かも」
申し訳ないような気持ちで、そっと言ってみた。
「甘えてるんだよ、蒼太。ずっとリカのこと独占出来ると思って」
「え」
「優しく沢山なでて貰って、甘い声で歌まで歌って貰って。
……僕だったら『もっと』って思って、おねだりしたくなるからね」
「…………」
彼はすぐ後ろに来て、まだ少しぐずり気味の子供の頬をつついた。
「ダメだろう、蒼太。
あんまり甘えてるとママが勘違いして、落ち込んじゃうだろ」
「え……」
「さっきの子守唄、続きは？」
「え、あの」
「あと少しで寝るよ。蒼太も此方で一緒に寝かしちゃえば」
「大祐さん、邪魔じゃないですか？」
「僕が寝かし付けてる時は、いつもそうしてる」
……そう言えば。
「え、えーと。じゃあ、コホン」
わざとらしく咳払いなんてしてみて、また歌い始めた。
「ゆりかごの上に
枇杷の実が揺れるよ
ねんねこ
ねんねこ
ねんねこよ
 
ゆりかごの綱を
木ねずみが揺するよ
ねんねこ
ねんねこ
ねんねこよ
 
ゆりかごの夢に
黄色い月がかかるよ
ねんねこ
ねんねこ
ねんねこよ」
ふうっ……。
どうやら本当に寝たみたい。
眠ると、本当に可愛いなあ……なんて、沁々思っていたら、
子供の隣に寝ていた彼も、今度こそ本当に深い寝息をたてていた。
『いいなあ』なんて表情、真剣にうらやましそうに見えたけど、
まさかだよね。
わたしもそっと横になった。
まるでベッドが大きなゆりかごみたいに感じる。
窓の高い位置から三日月が見えて、そっとよく似た二つの寝顔に
おやすみなさいをした。