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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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空稲本、欲しい方拍手ありがとうございます。


最初ね、タタ奈々本と同じで…30部も売れればいいかな?って
思ってました。だから20人ほど希望者が来たら、30部刷ろうと。
もし30越えちゃったら40刷ろうかなと。
……しかしですね、いま現在63人のご希望が!!
びっくり(゚o゚;

印刷屋さんの枠もあるので一応70冊は印刷しようかなと
予定してます。
でもまだ欲しいという方、出来ましたら昨日か一昨日の記事に
拍手いれてくださいましたら、参考に致します。
基本は通販です。
運がよければ、お友達に委託できると思います(ただしジャンルは全く
違うと思います。ご了承ください)


コメントも沢山いただきました。
お返事は次回記事でさせていただきます。
いつもありがとうございます。



さて、クリスマスの続きはちょっと置いといて、
今日は2013年の桜吹雪の少し前のお話を書いてみました。
まだメールでやり取りしてた頃の二人です。


小説は続き記事からです。



拍手[34回]


◆◆◆




「約束ですよ。いつか松島で」
絡まる小指は未来に何を期待したのか。
 
 
 
あの日。
3月11日。
ガツンと、しかも長時間に渡って感じた揺れは、
直ぐ様に先に来る、
更なる災害が予想されて、慄然とした。
(津波が来る)
揺れが収まると現状を確認する為に、立ち上がり直ぐに有事の
マニュアルに従い、行動を始めた。
 
 
 
『無事です』
何分こちらも大混乱で解らなかったのだが、
東京もかなりの揺れがあり、被害もあったようだった。
基地が水没し、空自最高峰の戦闘機F―2が
津波に流されていく中で、どうしても気になり彼女に一言だけ、
メールした。
そう。
僕はここにいます。
そう伝えたくて。
彼女の泣き顔など、見たことない筈なのに、何故か目を赤くして、
細い眉をひそめた彼女の、ちょっと少女めいた表情が思い浮かぶ。
だから二通目を送る時には返って、甘えるように
F―2のことを伝えた。
目の前に見える本当のことは言葉にはならなかったから。
それに彼女はテレビ局に送られてくる映像から、
こちらより辛い現状を
見ているかもしれない。
打ち続く大きな余震、そして原発事故、拡大する被害、混乱。
やるべきことは沢山あったのだ。
 
 
 
後になって落ち着いてメールの確認をした。
彼女に送ったメール。
彼女から来たメール。
彼女からの返事は、大変生真面目で定型文かと思う程だが、
いつも『空井さん、気を付けて下さい』の一言に、
万感の想いが込められている気がした。
自分の両親や兄弟に送るより先に、真っ先に彼女に自身の無事を
伝えていたことに気付いて、少しドキリとする。
―――彼女、稲葉リカ。
昨年広報の仕事で知り合った。
ケンカもした。
いや、むしろ穏やかな会話の記憶のが少ない。
それでも彼女の鋭い疑問の言葉のアレコレを思い出し、
何度か身を引き締める。
こう言う時こそ、考えるより身体が動くべきだからだ。
 
 
 
そして少し落ち着いた頃、テレビ局の取材で彼女が
松島にやって来た。
長かった髪を切り、益々活動的になった彼女は、
迎えに来たこちらをじっと見ていた。
少し大人っぽくなった?
何だかどきどきしたが、表には出さない。
互いに個人的にも伝えたいことは山程ある気がしたが、
まずは基地の現状を話し始めた。
 
 
 
あまりの被害の深刻さは、仕事で様々な情報に触れていた彼女にも
ショックが大きかったようだ。
無理もない。
自分だって、まだ復興とは言えない、膨大な被害の後片付けを
出来る所から、始めていた。
彼女が来たことで、自分の仕事は広報であり、
何よりも松島や基地の様子を世間に伝えるのが任務なのだと認識した。
「一生の指針をいただきました」
真摯な瞳が僕を見返す。
その間に――流れる感情はなんなのか。
伝えたいことはこれだけじゃなくて。
もっと話したいことがあるのに。
でも制服を着ている今は、言うべき言葉ではない気もする。
撫でた彼女の髪の感触が、いつまでも掌に残るような気がして、
こそばゆい想いと共に彼女を見送った。
 
 
 
それから。
ひと月に一度の割合で彼女にメールを送った。
忙しいだろうに、返事はあまり間を置かずに来た。
日々の繰り返しに時折挫けそうな気分になった時に、
彼女からのメールを見る。
『空井さん、元気ですか?そちらはまだまだ大変でしょうね。
 こちらでも復興に関連した番組の企画が、山のようにあります。
 けれどやはり現地を知っている人とそうでない人との温度差があって…。
 わたしもなるべく、松島で見てきたこと聞いてきたことを
 伝えたいと思います』
彼女も戦っている。
その想いが、自分を支えた。
震災から一年後、二度目の春が来た。
津波の影響で潮を被って、咲かないのでは、と懸念されてた
桜の木が蕾をつける。
早速携帯で写真を撮り彼女に送る。
言葉は添えなかった。
彼女には解って貰える気がしたのだ。
翌日に返事が来た。
『これは基地の近くの桜でしょうか?少しでも松島の方たちの
 気持ちの支えになるよう、お祈りしています。
 空井さん、風邪などひいてませんか?無理はしないで下さいね』
まるで弟を心配する、姉のメールのようだ。
彼女の方が三つ程年下だった筈。
そう思い当たり苦笑した。
そして気が付いたことが一つ。
この春からの、夜のニュースの前の15分枠の新番組が、
彼女がディレクターだと解る。
テロップなど見なくても、番組を見ていて、すぐに彼女の存在を
感じた。
『日本の空と海と』
一回目の放送では、民間の旅客機の整備士の仕事と、空との関わりを、
有名アーティストの音楽に載せて紹介する。
画面に映し出される、鮮やかな青。
あんな澄んだ空の色、近頃は忘れていた。
強烈なメッセージを両手で受け取ったような感じだ。
『思い出して』
彼女は決して優しく励ましたりなどしないが、進まない復興の現状に、
ため息をつくことも多い日々に、久しぶりに背筋がピンと伸びた。
 
 
 
「空井、お前多分来年異動になるぞ」
渉外室の同僚にそう耳打ちされたのは、秋も終わりの頃だった。
「…少し気が重いですね。まだ此処でやらなきゃならないことは
 多いのに」
「まあな、でも経験したことを外に伝えるのも仕事だからなあ」
「そうですね」
理屈では解っている。
無駄な仕事など、一ミリもないのだと。
けれどやりきれなかったと言う、心残りは悔しさと共に
自分の不甲斐なさを感じさせ、気分を重くする。
あの日、松島に来た彼女に色々と言ったが、自分だって
あの言葉の十分の一も役割を果たせていないではないか。
そんな思いに苦しくなり、しばらく彼女にもメールが出来ずにいた。
ただひと月後のクリスマスに、珍しく彼女からメールが来た。
挨拶と共に添えてあった言葉に胸が高鳴る。
『いつも空を見上げる度、この空は空井さんの所にも
 繋がっているのだと気付きました。
 メリークリスマス。そちらは寒いでしょうね。お身体大切に』
 
 
 
三月。
異動の為、仕事の荷物も私物もまとめ終わった頃、やっと思い切って
彼女にメールをした。
『入間基地に異動になりました』
ごちゃごちゃと考え過ぎて、それ以上言葉が出ない。
松島を後にする心の重さと、何かを予感する期待の入り交じった気持ちで
送信ボタンを押す。
ふと見上げた空に、実際にはあまり自分には向けられたことがない筈の、
彼女の笑顔が思い浮かび、思わず苦笑したのだった。
 

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思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
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