タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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久しぶりのタタ奈々の更新になりました。
そして大変申し訳ありません。ただいま翠露庵(タタ奈々HP)の方が
更新時期に来ており、サイトが見れない状態となっております。
有料サーバーを利用していた為二年に一回、更新しなければなりません(^_^;)
一か月以内に更新しますので、今しばらくお待ちください。
このSSは本の方に載せます。
このお話は今までのSSの設定を捨てて『ホームズの真実』を踏まえて
書きました。
もう1本続きを書こうかなと思っています。
コメントありがとうございます。
次回更新時にお返事いたします。
SSは続き記事からです。
そして大変申し訳ありません。ただいま翠露庵(タタ奈々HP)の方が
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一か月以内に更新しますので、今しばらくお待ちください。
このSSは本の方に載せます。
このお話は今までのSSの設定を捨てて『ホームズの真実』を踏まえて
書きました。
もう1本続きを書こうかなと思っています。
コメントありがとうございます。
次回更新時にお返事いたします。
SSは続き記事からです。
◆◆◆
彼女の指先がそっと触れた。
小さな温もり。
包むような優しさ。
その無為の想いを彼女は惜しみなく注ぐ。
一度『生』を捨て去ることを躊躇わなかった
自分のような人間にも。
大人になった今では、その理由を理解はしているものの、
幼い頃から感じていた常に身にまとわりつく生き辛さは、
なかなか振り払えるものではない。
朝目覚めてから、夜自分一人が住むこの家に帰宅するまで、
多くの人間達、生物学上は自分と同種の生き物に囲まれている筈なのに、
そのことがひどく場違いのような、まるでたった一人知らない惑星にでも
立たされているような違和感を覚えるのだ。
勤務先から戻り、いつものようにギムレットをシェイカーから注ぐと、
友人の小松崎曰く『地震が起きたら、いの一番に大量の書籍によって
事故死する人間が住む部屋』で、ようやく多少の違和感を拭い去る毎日。
文字に、過去の記憶に埋もれ、自分の居るべき場所は此処なのだと認識する。
そんな想いのまま続くのが、人生だと思っていた。
ーー彼女と出会うまでは。
彼女を想うまでは。
「アレ?何やら不吉な空気が流れて来たと思ったら、
桑原じゃないか。奈々くんなら、今日は終いまで戻らないぞ」
自動ドアの向こうから現れた途端、こちらの顔もロクに見ずに、
この薬局の主は宣った。
「……別に奈々くんに会いに来た訳では。祐天寺駅に顧客を送って行った帰りです」
「ふ~ん、そんな物を持ってか」
揶揄する様な表情で彼が振り向いて見つめたのは、
自分の左手に握られた、桔梗の花束だった。
「これは……さっき送って行った客が沢山咲いたからと言って
持って来たんです。ウチの店で必要なのは花じゃなくて、
根の方ですからね、桔梗は。大体花が咲いたら役に立た…」
「桑原、薬剤師同士で不毛だからそれ以上はいい」
自ら人生の先輩と明言する外嶋氏は、
話す事柄は何かしらの知識に裏打ちされてはいるものの、
いつも余計な一言が多い人物だった。
在学当時世話になった訳ではないものの、一応大学の先輩に当たり、
何かと縁があった。世間的には腐れ縁と呼ばれているものだ。
偶々薬局の調剤室から、棚に置く為の売薬を持った、
相原と呼ばれている事務の女性が自分の前を通ったので、
紫と白の鮮やかなコントラストの桔梗の花束を差し出し言った。
「これ、花瓶に活ける前に茎を斜めに切ってやって欲しい」
「え、え、え~!わたし?わたしですか?」
大げさに驚いた彼女は、その余波で手に抱えていた薬の箱の幾つかを
落としてしまった。
仕方なく箱を拾い、棚に並べてやる。
「この薬局は薬局長の人柄のせいか、殺風景過ぎるからな。
ぜひ訪れる患者を和ませたいと思って」
「フン、お前がそんな殊勝な気を持つ訳ないだろう。
まあ、良い。相原くん、花瓶に活けたまえ。
奈々くんからよく見える所に置いてくれ」
「は、ハイ!」
彼女は飛び上がるようにして、ぴょんと背筋を伸ばし、
桔梗の花束を受け取ると、慌ててロッカーのある休憩室へと入って行った。
「正に徒花だな、桑原」
「何がですか?」
返す声音が彼相手だとつい刺々しくなる。
「桔梗は花が咲いてしまえば、根にある薬効は薄れてしまう。
かと言って薬効を求めれば花は咲かない方がいい。
そんなやり方だから、花が咲かなければ、
そこに美しい花があることに気が付かないまま、
自然に枯れてしまうものもあるぞ」
彼のくどい譬え話は、それでも今の自分には似合いだったかもしれない。
春に偶然渋谷の信じられない混雑した駅のホームで、
顔を合わせた時にうっかりと「近いうちに今の部屋を引き払う」
予定を話した所、彼は自分の雇用するやはり大学の後輩に当たる
棚旗奈々から、引越しの話が出ないと、勝手にヤキモキしているらしい。
全く余計なお世話だ。
こう言う話題は、持ち出すにしても理解を求めるにしても時間と
工夫がいるものなのだ。
そう、あとはタイミング。
どうも彼女とはそのタイミングが合っていないような気がするのだ。
「奈々くん、この斉藤茂吉の短歌なんだが…」
休日、代々木にある自分のマンションの部屋に本を借りに来た彼女は、
自分が昼食を作りたいと買い物をしてから部屋を訪れ、
今はキッチンで後片付けをしていた。
秋分を過ぎると日が落ちるのが早くなる。
休日とは言えど、一日は短い。あっと言う間なのだ。
「すみません、タタルさん。お鍋だけでも洗い終わってから、
行きます。あ、残りの海老真薯タッパーに入れて冷蔵庫に置きますね」
彼女はマイペースを自負する自分から見ても、マイペースだ。
洗い物など後でする事が無くなってから、自分がやればいいのだから。
「ここに桔梗の句が乗っている。奈々くんは秋の七草と露の関連について、
知りたいのだろう?」
「は、はい。あ、お鍋洗い終わりましたから、今行きます!」
小さな足音がして、彼女がリビングとは呼べない広さの居間を過ぎて、
自分の隣のベッドを置いた部屋にやって来るのが解った。
「きちかうの紫の花萎む時、我が身は愛しと思うかなしみ」
「きちかう?」
「古語の読み仮名だと、桔梗はそう書き記すね」
「あ、てふてふを蝶々と読むようなものと同じですか」
「そうだ」
彼女は背後からそっと、自分が手にしている本を覗いた。
いつも思うのだが、彼女からはいつも微かな化粧品の匂いの他に、
どこか懐かしくなる甘いような、その割に清涼感を覚える香りがする。
ドキリとさせるものの、不快ではない奇妙な感覚を
今ははっきり自覚して愉しんでいる。
「この歌は愛しいのは『我が身』なんですね」
「だが、詠まれている花の色は『紫』だ」
「あ……」
子供が何かを発見したように彼女の瞳が輝く。
「えーと紫は確か……」
「男女の愛情、それも性愛に近い感情が詠み込まれていると、俺は思う」
「……」
彼女は赤く頬を染めた。
流石に気が付いただろうか?
「え、ええと、確か額田王の句ですよね。『茜さす 紫野行き 標野行き……』」
部屋には二人きり。
見ている野守などいる訳もない。
「じゃ、じゃあ、斉藤茂吉の歌は、そのう恋愛の為に我が身を愛しいと……」
「もう少しあからさまなんじゃないかと、俺は思っているが」
勤めている薬局は土日とも休日であるものの、
最近彼女がこの部屋を訪れるようになってから、
奇妙に時間が早く流れることに気が付いた。
本に吸い寄せられるように近付く彼女の背後に立った。
彼女は少し驚いたような表情で、こちらを見上げた。
「奈々くん……」
「はい」
そんなに追いつめられた猫のような表情をされると、
この先に進みにくい。
「我が身より今は時間が惜しい、ような気もする」
「じ、時間、ですか?」
「今日は十一時に代々木駅で君と待ち合わせて、
買い物をしてこの部屋に来てから、
食事をした時以外は君はずっとキッチンに立っていた」
「はい。タタルさんが海老真薯なら食べたいと、先日仰っていたから」
「失敗した」
「え?失敗?」
「海老真薯なら作るのに時間がかかるだろうから、
先週のようにすぐに帰宅されないで済むだろうと思ったんだ」
「先週は出雲蕎麦に野菜の天ぷらでしたもんね」
「メニューは問題じゃないんだ」
「そ、そうなんですか?」
彼女の呼吸の温度を微かに感じる。
もう部屋にいても肌寒い季節が来ているのだ。
「君がこの部屋に着いたのは、十一時半を二十五秒過ぎた所だった。
その後君はずっとキッチンで料理に掛かりきりで、
準備が終わってテーブルに着いたのが十二時四十二分。
その後食事が済んで片付けが終わって……」
「今、一時三十六分ですっ」
彼女は頬を染めたまま、真っ直ぐこちらを見ていた。
「君は今日は二時半には沙織くんとの待ち合わせの為に、此処を出る」
「……。」
秋は殊更時の流れを早く感じる季節なのだ。
「あと一時間ないのに、どうやって…」
君と触れ合うことが出来るのか。
結局、頬に口唇を付けただけで、その日は耐えた。
全く我慢強いのも良い加減にしたいものだが、
こんな状態が今年の三月に伊勢に行ってから、ずっと続いている。
あの事件から、自分にとって何が必要かを思い知った身としては、
殊更前に進もうとしているものの、
出会って十年以上も経過した男女が、ある日を境に急に関係を変えたくなっても、
なかなか難しいものがあるらしい。
彼女の勤め先の雇用主から、『徒花』と揶揄されても仕方ない気がする。
根ばかり重視しては花が咲かないが、花を咲かせようとすれば、
効力を無くすかもしれない。
額にキスから、頬にキスに昇格しても、その先を求めて
無駄な悪あがきをしている自分に良い加減呆れても来る。
それでも彼女からも何かを感じるのか、彼女が帰った後
缶ビールを取りにキッチンへ向かった所、
冷蔵庫に小さなマグネットで留められたメモが残されていた。
『タタルさんが引っ越しを考えていると、外嶋さんから聞きました。
わたしも今のマンションは一人で住むには広いと考えています。
後、木曜日に薬局にいらっしゃったそうですね。
桔梗の花、ありがとうございました』
ボールペンで書かれた繊細で律儀な字は、
彼女の思いを映して、ふと口許から笑みがこぼれた。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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