タタ奈々と空稲で二次してます。
どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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うわー、今日中に更新できると思わなかった。
SSは繋がれば一気に書けるのですが、繋がらないとてんでダメです(笑)
そんな訳でタタ奈々で更新です。
『QED Flumen~ホームズの真実~』の帰りのお話です。
これが発売されるまで、ニセモノのタタルさんばかり書き続けたせいか、
いざホンモノの空気が和らいだら調子が狂いました(爆)
ホム真まだ未読の方はご注意ください。
歴史薀蓄の部分も少し書いちゃってますので(^_^;)
小説は続き記事からです。
(コメントのお返事は明日更新で致します~m(__)m)
SSは繋がれば一気に書けるのですが、繋がらないとてんでダメです(笑)
そんな訳でタタ奈々で更新です。
『QED Flumen~ホームズの真実~』の帰りのお話です。
これが発売されるまで、ニセモノのタタルさんばかり書き続けたせいか、
いざホンモノの空気が和らいだら調子が狂いました(爆)
ホム真まだ未読の方はご注意ください。
歴史薀蓄の部分も少し書いちゃってますので(^_^;)
小説は続き記事からです。
(コメントのお返事は明日更新で致します~m(__)m)
◆◆◆
氷川丸の灯りを右手に見ながら、関内駅に向かって
山下公園を歩いていました。
わたしと彼…、タタルさん。
公園は珍しく人影がまばらで、ひっそりとしていました。
お店を出てから、何となく面映ゆい感じがして、
わたしから彼に話しかけることが出来ません。
最近では当たり前になっていた、彼の左腕にわたしの右腕を絡ませることも。
『今夜は君の部屋に』
その一言以来、何を話して良いか、いえ、何か言葉を発したら、
何だか思わぬことを言ってしまいそうだったので、
おかしいと思いながらも、わたしは黙っていました。
彼は――相変わらず何を考えているのやら。
それでもいつもに比べたら、カクテルを飲む量も少なく、席を立ちました。
先を歩く彼の影を見ながら、足音だけが響いているようにも感じます。
――彼が部屋に泊まる。三月からわたしが彼の元に泊まったことは何度かありました。
だから彼の抱き締める腕の意外な強さや熱を、わたしはもう知らない訳ではありません。
それでも…今まで考えもしなかった、わたしの部屋に彼がいる、と言う景色を
どうにも想像出来ず、想像したら想像したで、
何やら具体的になってしまい、何だか耳まで熱くなって考えるのをやめました。
「さっきの話だけど」
「は、は、ハイっ」
彼が突然振り向いたので、わたしは飛び上がってしまいました。
彼はきょとんとした目でそれを見ながら、話を続けました。
「紫、と言う言葉には女性の情念が込められていると言っただろう?」
「は、はい。だから紫の上も紫式部も怨霊なんだと」
「実は『光源氏』の『光る』にもおそらくそれがある」
「光源氏も怨霊なんですか?」
「おそらくね。そう言った説を出してる人は珍しくないし
――言っただろう、『物語』は『鬼(もの)騙り』なんだと」
彼はわたしが自分の横に並ぶのを待って、また歩き始めました。
「言葉…名前は書かれているだけでは、ただその言葉に過ぎないが、
あるルールがあることで、読み手にある種のメッセージを伝える暗号
…いや記号と言った方がいいかな?それ一文字があることで、
多くの情報を伝えることになるんだ」
彼の瞳がわたしを見つめています。
わたしは彼の長い睫毛にふと見惚れながら、頷きました。
「古代『紫』は高貴な色だった。濃き色、と言えば濃い紫のことだったし、
この色に染めるには染料の紫根…紫草を多く必要とする。
贅沢なものとして許された人間しか身につけることは叶わない色だったんだ」
「例えば天皇のような?」
「皇室や摂関家だね。聖徳太子が制定したと言われている冠位十二階の制度でも、
一番上の大徳の冠の色は紫だ。蘇我馬子が着けた冠の色だ。実権を握った証とも言えたろうね」
「…わたしは紫と言うと何かロマンティックな印象しか持ちませんでしたけど、
色々な意味があるんですね」
「なのに源氏物語の作中、紫の上は名前が『紫』でありながら、
象徴的なシーンで紫色の衣を纏うことはないんだ」
「え、そうなんですか?」
「例えば玉鬘の衣配りのシーンでは葡萄染め(えびぞめ)紫草を使わない、
現代的に言えば赤紫に近い色の衣を、源氏から与えられている。
真実の紫は出自は低いが、後の明石の中宮の母親にあたる明石の君に与えられた。
だから――紫の上はそれに嫉妬するんだ。
自分には許されない色を纏うことが出来る女性に」
「…………」
「後は女楽のシーンだな。この時彼女が着ているのは薄い蘇芳…やはり赤紫や臙脂に近い色。
これは正妻各の女三ノ宮が桜襲で紅を着ていることもあるだろう。紅も勅許がなければ纏えない色だ」
「何だか紫の上が怨霊だと言う理由は尤もな気がしますね」
「…紫式部も、付けられた名に紫が付きながら、出自から言えば、当然紫の衣を纏えない。
もしかしたらそんな皮肉も込められた名なのかもしれない」
関内の方角に歩くにつれ、山下公園は灯りが暗くなっていきます。
わたしはそっと彼の傍に寄りました。
そしてふと気が付きました。
話している彼の表情が、思いの外沈んでいることに。
普段からあまり表情に変化のない彼のことですから、それは気のせいだとも言えたでしょう。
でもわたしは一つ思い当たってしまいました。
今日、事件で被害者となった女性は、実は自殺を図ろうとしていたこと。
彼は『紫』と言う言葉から、その被害者の女性の『想い』を解き、事件の真相に辿り着いたのでした。
『紫』は怨念の色。
『紫』は女性の最も女性らしい想いを表す色だと言って。
『自殺を試みたことのある人間から』
三月の伊勢への旅行以来、心の奥底に響き離れない言葉。
昨日の事件、彼は初めから被害者が実は自殺を試みたのだと解っていたようでした。
そしてそこにある『想い』をほどこうと、
それまで事件に遭遇した時に比べれば、格段に熱心であったように思えます。
……彼の『想い』は?
一つ思い込んだら、まるで深い海のような彼の『想い』は
もうほどけているのでしょうか?
尋きたい…。
何度もそう思いました。
けれども…。
いつか、もしかしたら彼から話し出す時が来るかもしれません。
その時、彼の『想い』は解けるのでしょうか?
『想い』の奥に隠された、色が時と共に薄らいでいくように。
耳成の山の梔子 得てしがな 思ひの色の下染めにせん
ふと彼の部屋で読んだ本の中で見かけた歌が、思い浮かびました。
…わたしの『想い』にもきっと深く染められた色があり、
いつか彼のそれと重なり合う日が来る。
だから…。
わたしは思い切って彼の左腕に手を伸ばしました。
――すると。
彼はそれをするりとかわしました。
そしてわたしが驚く間もなく、彼の左手がわたしの左肩を抱きます。
「………たまには」
低く呟いて、切れ長の黒い瞳(め)がこちらを見ました。
港には氷川丸の灯りがちらちらと遠く、滲んで見えます。
わたしは―――こくりと頷いて彼にそっと寄り添い、
二人また、ゆっくりと歩き始めました。
※耳成~の和歌は『耳成山の山梔子を得たら
耳なし口なし、の想いのままの恋が出来るのに』と言う
大変情熱的な歌です。
梔子で染めた色は黄色。紫の補色です。
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プロフィール
HN:
森伊蔵
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性別:
非公開
職業:
主婦
趣味:
読書・お絵かき・料理
自己紹介:
次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。
……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
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