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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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さて、このイラスト一体いくつコラボしてるでしょうかw

広報室で玉三郎なにゃんこ(*^^)v
ねむりいぬのおざわたまきさんとわたしの荒川をまたいだ(笑)合作。
これだからツイ友やめられないんですよねー。
玉三郎のお尻が可愛くて玉らない逸品です。


さて久しぶりのタタ奈々の更新です。
出雲神伝説に秋に飲み会をやったらしきことが書かれていましたのが、
前々から気になっていました。
もしかしたら文庫では消えてる描写ですかね…?
それで偽装飲み会(誤表示?)を設定して書いてみました。
まだくっつかない頃の超半煮えラーメンのタタルさんは、
私には腹立たしい限りなんだけど、玉三郎が作中に出せたから
許してあげよう(爆)


小説は続き記事からです。


※広報室からウチのサイト見ててQED読んだと言う、本当に
お疲れ様な読者の方々、ありがとうございます。
嬉しくて仕方ありません(#^.^#)



拍手[7回]





◆◆◆



そろそろ残暑も過ぎ、秋らしい爽やかな風の吹く頃でした。
今日は薬局長の外嶋さんが、渋谷でオペラを観る予定があり、
いつもより30分早く上がりました。
わたしと美緒ちゃんは、患者さんが途切れたのを見越して、
片付けを始め、外の看板を中にしまう為に、
薬局の前に出た時のことです。

黄昏時でした。
黄金色の陽に照され、淡い色彩に溶け込んだ街並みは歩く人の顔も朧で、
何やら不思議な感じがします。
「今夜は君に」
ふいによく知った低い声が聞こえ、わたしはドキリとして顔を上げました。
当然その声の主は、その場には居ず、わたしは五月の諏訪の旅行から
彼に会わずにすでに半年近くが経っていることに気付きました。
いつものこと…。
大学の学部の先輩と後輩。
そんな淡い繋がりでしたから、互いに一年か半年に顔を合わせることが当たり前。
もう慣れていることでした。
慣れていた筈でした。
でもこの夕暮れ時の、何処か何か物淋しい時間だからでしょうか?
急に彼の呟くように話す横顔や、以前煙草を吸っていた頃の
白い細い指先がありありと思い浮かび、彼のいない今、
突然自分は一人だと思い知らされてしまったのです。
空の色は秋らしく、どんどん色彩を失くして行き、
街の雑踏が灯りと共に浮かび上がって来ます。
「奈々さん、PCも電源落としましたよー」
中から元気な美緒ちゃんの声が聞こえ、わたしは囚われた奇妙な感慨から、
現実に戻り、薬局に入りました。



そのことから二、三日経ってすでに家に帰宅して夕食も済ませ、
くつろいでいる時間帯でした。
飼い猫の玉三郎が膝で身体を伸ばし、長々と伸びて寝ています。
全く猫は暢気だなあ、などと考えていたら、携帯の着信音が鳴りました。
「よう!奈々ちゃん。久しぶり」
小松崎さんの張りのある声が聞こえます。
「小松崎さん。五月以来ですね!」
「おうよ、諏訪も大変だったなあ。今回はさ、事件とかタタルの蘊蓄は抜きにして、
 たまには純粋に飲まねえか?」
「飲みに?カル・デ・サックですか?」
「んー、タタルに聞いてみたら他にもいい店がありそうだ。
 あの店に行くと、俺たちにその気はなくても事件から飛び込んで来そうでな」
小松崎さんは笑いました。
「まあ、今月半ばの週末あたりならどうだろ?
 奈々ちゃん、沙織ちゃんの都合聞いておいてくれねえか?」
「はい、わかりました」
「タタルは俺が連絡つけとくわ」
そう言うと小松崎さんは電話を切りました。
小松崎さんの声に目を覚ましたのか、玉三郎はうーんと背を伸ばし、
わたしの膝から降りて行きました。



飲み会は珍しく新宿御苑の側のビルの三階になりました。
このビルは一階はウェデイングプランの企画会社が入っているようで、
ウィンドウには綺麗なウェデイングドレスがモーニングと並んで飾られています。
二階は貸しギャラリーのようでした。
三階のバーの窓際からは新宿御苑のこんもりとした樹々がよく見えます。
「相変わらずマニアックな店だなあ」
この店自慢のアイルランドから直に仕入れていると言う
ギネスビールを飲みながら、小松崎さんが話し始めます。
「最近開店したばかりだ。たまたま近くの韓国の薬剤業者と会った時に見つけた」
「なんか森に囲まれているようで、静かな店ですね」
わたしは彼――タタルさんが頼んだこの店オリジナルのカクテルを、
そっと口にしました。
淡い金色のカクテルは蜂蜜を使ったリキュールが入っており、
爽やかな柑橘類の香りと仄かな甘みがします。
「元々周囲はオフィス街だからな。日中は御苑を訪れる人で
 それなりに賑やかだが…」
いつものギムレットは、やはりいつものように既にグラスには
三分の一しか残っていませんでした。
「沙織ちゃんの都合が合わなくて、残念だったな」
「ええ、すみません。あのコ何だか最近忙しいみたいで、
 わたしも同じ家に住んでて週に一度くらいしか、
 顔を合わせてないんです。
 休日も友人に会いに外へ出ることが多くて」
「……それより奈々くん、メールで言っていたろう?
 図書館で借りた『地名の謎と歴史』はどうだった?」
「ハイ、驚きました。あんなに鉄に関係した地名が多いなんて」
「だろう?君の住んでいる神奈川県など、そのままな地名だからな。
 鎌倉だって以前話した通り、金扁の付く文字を使っているのは
 偶然ではないだろう…そもそも」
すると珍しく何か考え込んで黙ったままだった、
小松崎さんの携帯の着信音が鳴りました。
「…はい。小松崎…あ、ハイ」
小松崎さんは彼にはそぐわなかった小さな椅子から立ち上がり、
片手をこちらに向けて上げ、店の出口へと向かいました。
わたしたちはよくあるように、二人向かい合いに座っています。
「……この前」
「はい」
ふと彼が、先程まで話していた口調とは違った声音で、
いかにも話し難そうに切り出しました。
「夕暮れ時に……店の前で君に呼ばれた気がした」
「え?」
「そしたら二日後に小松崎から奈々くんたちと飲み会をしようと
 声がかかった」
「…………」
「日本の古代からある占いに『夕卜問い(ゆうけどい)』と
 言うのがあるんだが」
「ゆうけどい?」
「夕暮れに橋の上や四つ辻に立って、通り過ぎて行く人の声や言葉で
 占いをする。
 黄昏――誰そ彼には人の顔は見えにくい。
 通り過ぎる『魔』に自分の気になることや運勢を任せたんだな」
「まあ…」
「夕卜にも占にも告れる今夜だに 来まさぬ君を何時とか待たむ」
「万葉集ですか?」
「ああ、そうだ。夜になれば恋人が来る…だが何日か、
 もしくは何日も来ない不安を夕暮れの魔物たちに問いかけた、
 そんな歌だ」
「……何処か切ない歌ですね」
「待っている恋人は、この後来たかもしれないが…」
「歌の感じからすると、その夜も来なかった感じがしますね」
そうだな、と呟いて彼はカクテルグラスを空けました。
「古代には相手を想っていると、相手の夢に自分が現れると言う、
 習慣もある」
「ええと、確か小野小町の歌ですか?」
「そうだ、よく覚えていたな」
彼がボーイを呼んで、二杯目のカクテルを頼んだ時でした。
「ワリイ、ワリイ。何だか急に新聞社の後輩に呼ばれちまった。
 タタル、これで払っといてくれ」
小松崎さんは五千円札を折り畳んでテーブルに置くと、
また慌ただしく出口に向かいました。
「じゃあな、奈々ちゃん。沙織ちゃんにもよろしく伝えといてくれ」
「はい」
カランと扉の開く音がして、小松崎さんは店から出て行きました。
「………アイツ」
出口を見つめて、彼が小さく呟いたのが聞こえました。
「え?」
「最初からそのつもりで…」
「?」
「いや、何でもない。奈々くん、此処はシャルトリューズを使った
 カクテルもあるが、どうする?」
「じゃあ、それを」
「オーベルニュを」
彼の二杯目のギムレットを運んできたボーイに彼は、
わたしの二杯目を注文しました。
「熊の余計なお節介もたまには役立つのかな…」
「……え」
「夕卜問いだったからさ」
「………」
「君の声が聞こえて、君と諏訪以来会っていないことに気付いた。
 気付いたら…気になった。ただそれだけのことではあるが」
わたしは頬にうっすら血が昇るのを感じました。
「今日君の顔を見て、しっくり来た」
「そ、そ、そうですか?」
「パズルの最後のピースをはめた時のようにね」
目の前にカクテルが置かれたことにも気付かず、わたしは胸が高鳴るのを、
彼に気付かれないようにするだけで必死でした。
「まあ、いい。飲もう」
「は、はい」
静かなピアノの音が流れていることに、わたしはやっと気付き、
淡い翡翠色のカクテルが入ったグラスを、妙に気取って持ち上げました。




※和歌は永井路子さんの『万葉の恋歌』からの引用です。
永井路子さんが引用される万葉集の和歌は、
どきっとくる歌が多くて、印象に残ります。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
当然ですが、原作者および版権元様とは
一切関係がありません。
閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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