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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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ずいぶん難産になっちゃいました(^_^;)

おかげさまで、ヒントを求めて星座占いまで見る羽目に(笑)
ところがこれが結構、当たっているような所があって面白かった。

そうか!そうか、タタルさん、貴方そんな人だったのかと。

うお座の男性ってこんな?

他にも二面性があるとか、結構好き嫌いがはっきりしていて交際範囲が
狭いので、好きな人には尽くしてしまうとか…。
恋をしていたら、あからさまに今恋をしてるねっって態度に出てしまうんだそうです。
意外と恋愛至上主義。
…そんな訳でオマケ漫画はこの勢いで描いてますが(笑)、煮えきらないうお座は
全くなに考えてんのかわかんないや~な感じでした。
かに座の奈々ちゃんは、相性はこの上なくいいものの
保守的なのがかに座の特徴なので、牛歩の恋になっちゃった訳です。

そんな訳で煮えきらない桑原崇さんの小説は、続き記事からです。
なごり雪~sideN~の続きになります。

拍手[11回]


うっすらと埃の積もった、オカルト同好会の部屋はいつもの通り、
会員が一人としておらず、静かなものだった。
その日一ヶ月ぶりに大学にやって来て、この部屋に直行すると、
さっさと昼寝を始める。
今日は特に用もなかったからだ。
―――それなら何故、午後から雪になるかもしれないなどと言われた日に、
わざわざ自分はこの場所に来たのだろう。
ふとそんなことに気が付いたが、じきに意識が遠退いてきた。




目を覚ますと、白衣がかけられていた。
薬品の匂いもするが、何処か柔らかで暖かいような、優しい匂いもする。
首の裏の部分のタグには『棚旗』と書かれてあった。

気付いて、自分が寝ていたソファのすぐ横にある机を見ると、
椅子に座ったまま、机に凭れてこの白衣の持ち主が、
微かな寝息をたてて、眠っている。


「……俺は随分と安全圏なんだな」
確かにそんな気持ちは欠片もなかったものの、こんな場所で、
男と同じ部屋で寛ぎ過ぎではないだろうか?
そう言えば、レポートの提出がどうのと、彼女と同じ学科の人間が騒いでいた。
きっと徹夜でもしたのだろう。



そのまま、本でも読みながら待って、適当な時間で起こしてやることにした。



―――彼女、棚旗奈々は一学年下の同じ学部の後輩に当たる。
学科が違うから、同じ棟で学んでいても、そうしょっちゅう会う訳ではない。

三年前の秋に、彼女を偶然原宿駅の改札で見掛けた。
そして運悪く、と言うか彼女の性格を知る今となっては、必然と言うべきか、
何やら怪しげな宗教の勧誘にあって困っていた。
何とか彼女から、その不審人物を引き剥がすことに成功したのだが、
以来彼女は廊下や学食ですれ違うと、にこやかな笑顔で
話しかけて来るようになり――――そして、彼女が一年生を終えるのも
間近だった二年前の二月に、自分も所属していた『オカルト同好会』に、
全く似つかわしくない彼女が入会して来たのだった。




空気は窓の外が明るさを失っていくのに比例して、冷たくなっていく。
このままでは夜更け前に雪が降る。

目の前の寝顔は、そんなことも頓着せず安らかだ。
彼女の身心の健やかさ―――明るさがこの寝顔全てに現れている。
そして、何故かそれを眺める自分も寛いだ気分に浸っていた。
「もう六時半過ぎか。いい加減起こすか?」
まだまるで目覚める気配がないが、このまま此処に置いて行く訳にもいかないだろう。
眠る彼女の向かいに座っていたが、そっと立ち上がった。




「奈々くん」
起こしたいような、それともこのまま目覚めさせたくないような、
そんな矛盾した気持ちを振り払いながら、そっと、彼女に声をかけた。




結局彼女と帰宅を共にすることになった―――と言うより、
初め日が落ちると物騒な大学から駅までを送るつもりでいたら、雪
が降ってきた。天気予報で散々言っていたことだし、
これから降りは激しくなる一方なのは容易に予想が出来たから、
自宅は北鎌倉だと解っている彼女を送って行くべきなんだろうと思った。
――――それに、自分は彼女に話さなければならないことがあったのだ。
いや、話したいことか。
話した所で彼女には何と言うことでもないかもしれないが、それでも。
だから、悪天候になると解っていた今日、わざわざ同好会室まで来て
昼寝なんかしていたのではなかったか。




「奈々くん…君は初雪祭の話は知っているか?」
「初雪……祭ですか?」
「京都の北野天満宮では、その季節で最初の雪が降ると
 ご神木の松の木に、菅原道真の霊が降りてきて歌を一首
 詠むのだそうだ。それで初雪が降ると祭をする」
真実話したいことへのきっかけが掴めないまま、そんな話をした。

無関係ではない。



京都の老舗の漢方薬局に就職が決まったのは、その年の夏のことだ。

その店の歴史や格式を考えたら、滅多にある話ではなかった。
京都には母方の叔母が嫁いでいて、住まいにも不自由はない。
ほぼ即答する形で、その就職話を決めたのだ。

別に言いふらすことでもないことだったから、関係各所以外には
誰にも告げずにいた。
毎日学食で顔を合わせる小松崎にですら、先月話したばかりなのだ。
彼は驚いていたが、余計なひとことも付け加えた。
「お前、奈々ちゃんには言ったのかよ!」
「何故?」
質問に必然性が見出だせず、問い返した。すると彼は呆れたように、言った。
「当たり前だろ!それとも、何か?こう、将来に約束とか、
 遠距離でも頑張るとか、もうそう言う決まりでもあるのか?」
悪友の言い分は、何かそう言う話をするには大切な『順序』を
抜かしているような気がする。
それに傍目からどう見えようと、彼女と自分はそんな間柄ではないのだ。
それに自分の就職先など告げずに卒業した所で、
彼女に一体何があると言うのだろう。
そして告げたからと言って、お互いの何が変わるのか?




「風流ですね」
彼女は微笑った。
ちらつき始めた雪はその数を増していた。
それが何やら、すぐ隣を歩くはずの彼女への隔てのようにも感じる。
「風流……ね。それが太宰府ではなく北野天満宮だけと言うのは、
 何か理由があるだろうな。菅原道真ならば、
 梅の木を選びそうな所を松の木な訳だし」
「でも松もおめでたい木ですよね?」
「どうだろうか?梅も『埋め』に通じるのだし、理由がありそうだ」

他愛もない会話の向こうで、自分の中の何かがじりりと焼けつくようにも感じる。


―――来年、自分は京都でこの祭を見るのかもしれない。一人きりで。
それなのにその場には、傍らに彼女がいるような、
そんな錯覚を覚えて―――振り払った。

「急ごう。傘を差すのも面倒だ」
彼女との会話の裏で繰り返す自問自答が、流石に鬱陶しくなって、考えるのを止めた。





北鎌倉のホームで降りたのは、自分と彼女の二人きりだった。
雪は激しくなる一方で、もう一時間も降り続いたら、
歩くのも苦労する程になるだろう。
「あの、タタル先輩、ありがとうございました」
寒さのせいか、それとも先程の車内でのアクシデントのせいか、
彼女の頬は真っ赤だった。
「ついでだ。それに……」
何処から言い始めたものだろう。
今、言わなければ、この後二度とその機会はない。
言葉を探しながら、前を見たら、かちりとまるで音をたてたように、
彼女と視線があった。

真っ直ぐな瞳(め)。

この眼差しを前にして、何かを誤魔化す気になる人間などいるだろうか。

そして自分はこの前に、真っ直ぐに立つ資格があるのだろうか。


時が止まったかのような刹那に、ふいに冷たい風が首筋をすり抜けた。

「いや…君が同好会室で昼寝をしてくれたお陰で、明日鎌倉巡りが出来る。
 しばらくは来られないかもしれないから、いい機会だった」
ホームに列車が滑り込む。
何かから逃げるように、手を上げて振り向きもせず、列車に乗った。
彼女の物問いたげな眼差しを背にして。





卒業式には出ずに、京都に向かうことになった。
本以外の―――生活に必要な荷物は本当に限られていたから、
準備はあっさりしたものだった。
既に固い桜の蕾がそれでもびっしりと枝についている、
そんな時期だと言うのに今日は朝からどんよりと曇り、
時間が経つごとに空気は冷たさを増している。
―――雪になるかもしれなかった。


東京駅はいつものように混雑していた。
自分が乗る予定の新幹線の出発まで、あと15分ある。
待ち合い室で腰掛けて、いつものように本を開いた。
ふと背後にかすかな気配を感じて振り返ると
―――彼女、ここに来る訳のない後輩の棚旗奈々が、呼吸を切らして立っていた。




「よかっ……。ホームの何処にもいらっしゃらないので、
 もう新幹線乗っちゃったかと」
走り回って自分を探していたらしく、まだ荒く呼吸(いき)をついている。
「……何故?」
「こ、小松崎さんから聞きました。さ、最初、タタル先輩の学科の同級生に言われて。
 …すみません、わたし、知らなかったから何もお礼とか言ってなくて、
 それで急いで来たんです。小松崎さんが急げば間に合うからって…」
「……何も言ってなかったのだから、別に君は気にしなくてもいい。それより」
ホームの一番端でも、東京駅は流石に何処かざわめいている。
自分が乗る予定の一つ前の列車が、ホームを出発した。

風が吹き抜ける。


「もう俺は君の『先輩』じゃない。だから……」
彼女の大きな瞳が揺れた。
何故彼女がここに来たか――――心の内で明文化することすら、
恐れている自分がいる。
なのに目の前の彼女の表情が、見る間に寂しげに変化するのを
目の当たりにすると、自分の奥底から苦しいような後悔に似た感情が
沸き上がるのが解った。
彼女は俯いて瞼を伏せた。


「タタル、さん」
次にこちらを見上げた時彼女は微笑んでいた。
いつも、薬学部の学棟で、学生でざわめく学食で
、そしてあの薄明かり射す同好会室で、彼女と会うたび、
自分に向けられていたその笑顔で。
「そうお呼びしていいですよね」
「…………」
「京都に行ってもお元気で。きっとあちらなら、
 タタルさんの好きなお寺や神社、沢山あるんでしょうね」
彼女の柔らかな響きの声は、幽かに震えていた。


ざわめいていた空気が、一つの流れと共に大きく動いた。
自分が乗るつもりの新幹線が、ホームに滑り込む。
あまり時間はない。




京都に行くと決めた時に浮かんだのは、彼女のことだった。
だからこそ、一番に断ち切るつもりでいたのに。
昨年末、あの雪の帰り道、ただ淡々と事実を告げて何かを振り切ろうとした。
―――それが何か、己にすら解らないままに。
それなのに、何処か残酷さを伴うような、別になんの責任もないはずなのに、
強く後悔しそうな気がして、告げることが出来なかった。
今日の今日まで。
彼女の頬に、そっと指で触れた。
あの日、列車が緊急停止したアクシデントから、口唇が触れてしまった彼女の頬。


そっと口唇を近付ける。
彼女の呼吸が刹那、止まるのが解る。

「奈々くん、なごり雪だ」
え、と彼女の瞳が見開かれ、自分の視線と同じ方向に振り返った。
「あ、本当。もう三月なのに…」


淡い白い粒が、射し始めた薄日に煌めきながら、舞い落ちてくる。

「じゃあ」
手を上げて、列車の入口に向かう。
「タタルさん、ありがとうございます 」
「何故?」
「何故……って、わたしは楽しかったですから。タタルさんと会えて」
「……………ありがとう」
多分、礼を言うべきは自分の方だろう。



ホームにアナウンスが流れ、出発のチャイムが鳴った。
列車の出発と共に、景色はゆっくりと、そして段々に早く流れ過ぎて行ったが、
ホームに一人残っているだろう微かな影だけが
うっすらとちらつく雪に混じって、見えるような気がした。
 
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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