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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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えーと、大分回復してきました(^^ゞ
結局腎盂炎ではなく、ウィルス性胃腸炎だった模様。

状況が状況で『鎌倉の闇』をうまく読み返せずに書いてる箇所がありますので、
あとで訂正していくと思います。→訂正しました^^;やっぱり読まずに書くのは
無理無理(笑)


まだ伊勢以前、『鎌倉の闇』の話。
沙織ちゃんがどうやってタタルさんを引っ張り出しているのかは、
将門もだけど興味のあるところ。
案外あっさり『行く』って言ってたり(笑)





ささやかな風
 
 
 
 
桜も散り、暦の上ではそろそろ初夏と言っても間違いがない季節。
仕事の漢方薬局も、アレルギーの患者や気温の変動に負担を感じる
患者が減り始め、後もう二週間もすれば落ち着いて来るだろう。
ようやく一息ついて、先週末にあれこれと買っておいた書籍に
手を出した。
まだ一頁も捲らないうちに、電話が鳴った。
「はい、桑原です」
「あれ?いらっしゃいましたね」
 
…………彼女だった。
大学の薬学部の一年後輩。
オカルト同好会の会員。
社会人になってからは、たまたま薬剤師会の集まりで再会し、
以来年に二度くらいは一緒に飲む。
昨年は偶々ではあったが、旅行もした。
「奈々くんか…。何か用か?」
後もう十分過ぎていたら、本に集中して、電話には気付かなかった
だろう。
……………これも一つの縁だ。
 
「ありゃ、タタルさんでも聞き間違えるんですね。わたしたち姉妹、
確かに声はよく似てるって言われるんで。棚旗奈々の妹の沙織です。
今、お忙しいですか?」
「--------!」
そう言えば。
彼女には妹がいたのだ。
昨年の高知旅行には姉に同行して来ており、目許が姉によく似た、
しかし性格は姉と違い、よく喋る賑やかなタイプだった。
 
高知旅行の帰りに、うっかり彼女に電話番号を教えていた。
まさか本当にかけてくるとは。
 
「沙織くんか。何か?」
「タタルさん、鎌倉は詳しいですかね?」
「………鎌倉なら君たちの方が詳しいだろう。確か実家は鎌倉だろう」
「はい、そうです。地理的には知らない所なんてないです。
 そう言うことではなくて----今、出版社に勤めているんですけどね、
 今度鎌倉を特集することになったんです。それでですね」
彼女はコホンとわざとらしく咳をした。
「鎌倉の秘められた歴史って言うか、裏バージョンの情報って言うか、
 そんなものも押さえておこうかと思いまして」
「……………………」
いつも思う。
悪友の小松崎と言い、沙織くんと言い、ジャーナリストって奴は情報の
精度には気を払わないらしい。自分のような素人の意見など聞いて、
どうしようと言うのだろう。
例えそれが埋もれてしまった真実であるにしても。
そんな話は飲むついでに、それこそ奈々くんに話すくらいが
丁度いい話題なのだ。
 
「君のお姉さんは何と言ってるんだ?」
「……………気になります?」
「……………………」
電話の向こうの声のトーンが、急に低くなった。
彼女-----姉の奈々くんそっくりの声でこんな風に言われると、
妙な気分になる。彼女なら絶対に言わないだろう言葉。
「姉が来た方が良いでしょうか?」
「……当たり前だろう。俺と君には直接の関係はないのだから」
思わずしかめ面になる。
何かない腹を探られているようで、あまり嬉しくはない。
「おかしいな~。お姉ちゃんの話では、タタルさんはあまり係累とか、
 仲間意識とかそう言うのは気にしないタイプだと聞いてたんで。
 ----ああ、すみません。話、反れましたね。姉が来れば、
 タタルさんも来て下さるんですよね」
「………………」
「絶対ですよ。必ず来て下さい。約束です」
沙織くんは彼女のそそっかしい性格そのままに、日時と場所を打ち合わせると
電話を切った。
 
 
 
『約束です』
奈々くんが自分にこう言う時は、彼女自身の為ではなく、
彼女の友人や知人の為の場合が常だった。
いつか彼女自身の為に、自分にそんなことを言って来る日があるだろうか?
 
 
そこまで考えて、己れの思考が無駄に乱されているのに気が付いた。
 
彼女に似た声に惑わされた。
 
 
大きくため息をついて、また読み始めた本に戻った。
 
 
 
 
その日は快晴だった。
北鎌倉の和風喫茶で待ち合わせをしていた。
店に入ると彼女と目が合う。
すまなそうな表情だ。
妹の我儘に付き合わせたと思っているのだろう。
 
彼女は気を使い過ぎる。
もし本当に益がないと思えば、今日のことは幾ら彼女の妹の
頼みとは言え、断っただろう。
彼女こそ今日一日、妹の仕事と彼女自身には何の役にも立たない
であろう、歴史の話に付き合わされるのだ。
 
-----せめて自分には気を使わないでいい。
そんな思いで彼女の隣に立った。
 
 
 
 
なかなかハードなコースだった。江ノ島には用を思い付いたので了承した
のだが、もう少し絞り込めないものか。
沙織くんは、初めからこちらの話を期待して目的は対して
決めていないらしい。
……………ここまでパーソナリティの違う姉妹は珍しい。
奈々くんならば、自分に用件があっても余程でなければ連絡はして来ない。
 
時折後からついて来る彼女の顔を見ながら、そんなことを思った。
退屈はしていないらしい。
銭洗弁天でも、あの大きな瞳で一生懸命こちらの話を聞いていた。
いつも人の話を聞いている時の彼女は真摯だ。
疲れないのかと思う程。
だからこちらもつい、話し込んでしまう。
そんなつもりはないのに。
 
 
 
 
鶴岡八幡宮へ参拝する為段葛の道に出ると、小松崎に会った。
彼も仕事だと言う。全くおかしな縁がある。
お互い待ち合わせもしないで、こんなところで顔を合わせるのだから。
 
昼食を共にして、江ノ電で小松崎とは別れた。
 
稲村ヶ崎で起きた事件の取材に行くのだ。
自分たちは御霊神社へ向かう。
銭洗弁天同様、こちらも鎌倉と言う土地柄と、
切っても切れない関係にある。
姉妹は初めのうちこそ、目を丸くして聞いていたが、
妹の方は何かを掴んだようで、しきりにボールペンの端を口唇に
当てながら、メモを取っている。
姉の方----彼女は時折遠くを見つめながら、何かを考えている。
鎌倉と言う観光地を歩きながら女性に話すには、
恐らく不粋極まりない話題が続いている。
埋もれた歴史は大抵が、人間同士のエゴ剥き出しの抗争の積み重なり
なのだから、仕方がない。とは言え、彼女に自分は何故こんな話を
必死にしているのだろう。
内心呆れているかもしれない。
またその一方で、ふいに覗かせる哀し気な表情や、
興味深げな視線に応えたくもなってしまう自分がいる。
その凛とした横顔を少しでも長く、見つめていたくて。
 
 
江ノ島では中津宮までしか参拝出来なかった。
いつものこととは言え、取材に行った筈の小松崎が、
またしても事件に巻き込まれ、取材を早く切り上げなければ
ならなかったのだ。
 
 
今日の目的と言えば、自分には江ノ島の弁財天を参拝すること
しかなかった筈だ。
だから幾ら小松崎との待ち合わせがどうであろうと、
ここで別れることも出来た。
自分一人で行けばいい。
時間がないなら、その方が効率的でもある。
 
-----しかし。
彼女のすまなそうな顔を見ていたら、そんな気分は消し飛んだ。
 
 

…………また来ればいい。
 


もっとゆっくり。時間をかけて。
 
 
 
いつか一緒に。
 
 
 
そう言う縁があるなら。
 
 
 
五頭龍と弁財天も六十年に一度とは言え、
その約束は守られている。
 
 
 
 
だから。
 
 
 
 
その約束は彼女に届いただろうか。
他人事には明晰な彼女も、どう言う訳か自身に向けられた
思いには疎い。
 


ささやかな風でも消えてしまうな。
その時はそう思った。
 
 
 
 
 
 
「約束でしたもの」
彼女の笑顔は柔らかい。
まだ一月だが今日は厚手のコートでは、汗ばむ程の陽気だ。
もう八ヶ月になるお腹を抱えた彼女と、彼女の実家に顔を出した。
鶴岡八幡宮に参拝した後、突然彼女から言われたのだ。
「今日は気分もいいし、江ノ島の奥津宮まで行ってみませんか?」
「江ノ島?少し遠くないか」
彼女の体への負担が心配だった。
「大丈夫です。それに……」
彼女は微笑う。
「約束でしたもの。タタルさんとの」
 
 
 
「ずっと気になってたんです。あれから何度も鎌倉には来たのに、
 なかなか機会がなくて。
 ………でもせめてこの子が生まれる前に、果たしたかったんです。
 中途半端では弁天様にも失礼ですよね?」
「安産祈願になるかは解らないけど」
「まあ。そんなつもりではないです」
彼女は驚いた目でこちらを見ている。
本当に約束を果たしたいだけなのだ。
 
あんな仄かな風に飛ぶような約束でも。
 
あの頃よりもはっきりと、その瞳はこちらに向けられている。
 
「じゃあ、行こうか。確かに神を相手に中途半端は良くはないな」
彼女の肩にそっと手をかける。
 

一月の風は暖かな日でも冷たいが、
思いはあの日の四月の風に繋がっていた。




※『鎌倉の闇』からQEDも後半部分に突入!そんな感じがしますよね。
この後4人で岡山に行く訳ですが、『結婚と言う煩わしい行為を、してもいいかなと
思っている』と言う発言が……。
突っ込みどころの多い発言だよな~。
タタルさん、そんな気持ちじゃ今時嫁は見つかりませんぜ!とか
結婚してより煩わしくなるのは女子の方だと思うとか…。

そんなもので彼が一生に一度と思ってるらしい結婚式を、思い切り煩わしくして
描いてみたんですけど(笑)

いずれ沙織ちゃんバージョンも漫画で描きたいなと思っています。
 

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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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著作権も一応手放してはいないので、
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……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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