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タタ奈々と空稲で二次してます。 どちらのジャンルも原作設定をメインとしております。
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ハイ!
親御さんのターンです(笑)


長女の絵が県の展覧会に入選し、今日展覧会、しかも
私の出身高校の隣の小学校でやるので、
これは行かねばと思い、今日から実家に行くことにしました。


その前に二週間早いバレンタインデーってことで(^_^;)

お付き合いして初めてのバレンタインをどう過ごすか…



小説は続き記事からです。


※鍵付き小説をご覧になりたい方は昨日の『鍵付き小説!』の
ログをご覧ください。

拍手[19回]





◆◆◆




「稲葉…お前完全に時間外のオフィスで何やってんだ」
「…25、26、27……終わりっ。
 あ、阿久津さん、報道局との会議終わったんですか?」
「お前は?春の特番、もう編集終わる頃だろ」
「ハイ、ナレーターが大物俳優の倉高謙さんなので、
 後は倉高さんの空き待ちです」
「……お前も大詰めだな」
阿久津さんは、ついっとわたしの手元を覗きこむ。
わたしはやっと気付いて慌てて手にしていたものを隠した。
「稲葉、一ついいか?」
「………ハイ」
「そんなに途中で折れ曲がったマフラーを、婚約者の首に巻く気か」
「だ、だって何回本の通りに編んでも、曲がってしまうんです。
 わたし、初めて編み物したので…」
自信のないあまり、声は段々と小さくなる。
「貸してみろ」
「え」
「いいから」
阿久津さんは、20センチ程編み上がっていたマフラーを素早くほどき、
さっさと編み棒を動かして、また20センチ程、ものすごいスピードで編み上げた。
わたしはここまで編むのに一週間かかったのに。
上司の知られざる特技に、わたしは目を丸くした。
「…姉が四人もいてな、毎年この季節は…いや、そうじゃなくて。
 もういい加減、帰れ。休むのも仕事のうちだろう」
「…それが、早朝にパン屋さんの撮影が一件入っていまして。
 家に帰るよりは、局にいた方が効率的だったんです」
「…全く。まあ、そのうち寸暇を惜しんでも帰りたくなるだろうし、
 今のうちだな」
阿久津さんは自分のデスクに付くと、パソコンのスイッチを入れた。
「マフラー、そのまま編んでいけよ。おかしなアレンジはするな」
「は、ハイ!」
わたしはまた編み目を数えながら、編み棒を動かし始めた。
 
 
 
正直に言って、バレンタインデーに何かをしなければならないと、
これ程の使命感に駆られたのは生まれて初めてかもしれない。
最初にチョコレートを用意した時だって…確か小学一年生だったけど、
こんなに焦りはしなかった。
今年のバレンタインは金曜日。次の日は土曜日だから、彼が部屋にやって来る。
チョコレートは手作り?
正直マフラーで精一杯かも。
かなり忙しい仕事のスケジュールをこなしながら、
それでもわたしは来るべき日に備えて、準備と情報収集を怠らなかった。
 
 
バレンタインデーの前日。
かなり雲行きが怪しく、寒い一日だった。
何とか仕事を終え、部屋に帰るとすぐに編み上がった空色のマフラーを
取り出した。
時間も技術もあまりなかったことから、太めの糸でざっくりと編んである。
途中頑張って白いラインを入れてみた。
彼は何て言うかしら?
期待とちょっぴりの不安の入り交じった気持ちごと、
白にブルーのストライプの包み紙でラッピングする。
金と濃いブルーのリボン。
――我ながらよく頑張ったと思う。
ソファの上に置いた包みを、つくづくと眺めていたらスマホから着信音が鳴った。
「リカ?」
彼だった。
「こ、こんばんは」
「あ、えーと、畏まられると困るんだけど…」
彼は気まずそうに話し始めた。
「明日夜遅くまで基地で、テレビ局の撮影が入りそうで、
 立ち会わなきゃ行けないんだ。
 だから…そちらに行くのは土曜の午前中になると思う」
「…………」
全く何処のテレビ局だろう。
一瞬そんな考えが頭を過ったが…。
「わたし、明日大祐さんちに行きます」
「え?」
「遅くはなりますが、わたしが行きます」
「無理はしなくても」
「ダメですっ。明日は絶対」
会いたい。
実は郵送も考えないでもなかったわたしなのだが、
やはり包みを開けた時の彼の表情を見逃したくなかったのだ。
「あの、ちっとも無理じゃありません。
 稲荷山公園の駅までも、迎えに来なくていいです。
 わたし、大祐さんのお部屋まで行きますから」
「…わ、解った。でも駅の辺りは暗いから、何かあったら連絡して」
そんな風に彼と明日の約束をして、電話を切った。
 
 
 
稲荷山公園駅に着いた時は既に11時を回っていた。
それでも――ここ最近のスケジュールを考えたら、早い方かもしれない。
わたしは逸る気持ちそのままの早足で、彼の部屋へと向かった。
池袋でメールを入れたことで、到着時刻を予想したのか
、踏切の向こう側に彼がいた。
「リカ!」
こんな時間に傍目もないかもしれないものの、辺りも構わず手を振る。
「こんな寒いのに…」
それでもわたしが今日此処へ来た理由は、それとなく察したようだ。
「部屋、暖房つけといたから、早く行こう」
「は、はい」
その時だった。
スマホの着信音が鳴る。
見ると阿久津さんからだ。
出ない訳にはいかない。
「稲葉か?」
「はい」
「非常に申し訳ないんだがな、その用事が終わったら局に戻れるか?」
「え、今からですか?」
「飛田に任せてた帝都イブニングの『裏路地並ぶ店』コーナーあるだろ?」
「はい。もう完全に引き継いでます」
「飛田とカメラマン両方がインフルエンザで倒れた」
「!」
「従って辛うじて映像はあるものの、編集はまだだ。
 俺もアイツが受け持ってるもう一つの番組のチェックに入るから――」
その先は聞かなくても解った。
ただでさえも局内でノロウィルスが流行り始め、替われる人材は減っている。
「解りました」
わたしは電話を切った後、彼に向き直った。
「わたしまたこのまま、局に帰ります」
「……もう上りの電車ないと思う」
「えー…」
どうしよう。
タクシーで此処から局まで。一体幾らかかるだろう。
「リカ、待ってて。
 先輩から車借りて来るから――いや、それなら一度官舎に来て」
わたしは早足の彼に着いて、踏切を渡った。
 
 
 
やっと車は暖房が効いてきた。
真夜中を過ぎると、外気は信じられない程冷たい。
珍しく黒いセーターで、ハンドルを握る彼をそっと見つめてから言った。
「ごめんなさい、却って迷惑になってしまって」
「いや、それは構わないけど」
所沢から関越道に乗ることにしたらしい。
「…それにこれからこう言うこと、増えるだろうし」
「やっぱり大変ですよね…」
まだ、諦めがつく位離れ離れの方が、計画的に会えて良いのだろうか?
なまじ少しでも会えなくもない距離に、無理をするよりは。
「顔は見えた方がいい。来週はリカの部屋に行くから。
 …リカ、ちゃんと食事してる?少しやつれてる気がするんだけど」
「フフ、大祐さん、お母さんみたい」
笑ってごまかしたが、それは今日彼に渡す為の、
この包みの為だった――ほとんどは。
「一緒に住んだら、パイロット並みに栄養管理してあげるから」
「わたしも作りますっ」
「休日はそうしよう」
彼はこちらをチラリと見て微笑った。
この表情。
何度見ても、胸が高鳴る。
わたしは――まだ今日入間まで行った目的、
バレンタインデーに彼にプレゼントを渡すことが、出来ないでいた。
あと10分もすれば、今日は終わる。
こう言うのを徒労と言うのかしら?
流れていく街の灯りを眺めながら、わたしはそっとため息をついた。
 
 
 
帝都テレビのビルの前に、彼は車を止めた。
「ありがとうございました。……あとコレ」
包みをそっと差し出した。
車内灯に照らされ、リボンが鈍く光る。
「……開けていい?」
「ハイ」
彼は丁寧に包装を剥がして行く。
中から空色のマフラーが出てきた。
「………」
「あ、あの。わたしもう行かなくちゃ」
じっとマフラーを見つめる彼の沈黙に、何だか息苦しくなってしまう。
「リカ」
「え?」
「少しだけ、こっち」
「?」
もう一度車内へ顔を突っ込むと、ぐいっと腕が引かれ、キスされた。
「ありがとう、嬉しかった。リカの手作りでしょう、このマフラー」
わたしは寒さのせいばかりではなく、頬が熱くなったまま、頷いた。
「解りますか?」
「うん。微妙なカーブ具合が」
彼がマフラーを広げると、確かに僅かに湾曲していた。
「…………」
「首に巻くには丁度いいね」
「…ヒドイ」
あまりににっこりと笑顔になったので、怒れない。
そう。
だってわたしはこの表情(かお)を見る為に、この半月必死だったのだ。
「無理はしないで欲しいけど…ありがとう」
彼は手を振ると、車をUターンさせて帰って行った。
わたしは……何となくホカホカと温まった気分で、局の通用口をくぐる。
「まだまだ稲葉リカ、ヤル気十分ですっ」
「お前の婚約者が理解のある男で、本当に良かったと思ってる」
「あ、阿久津さんっ」
今の、聞かれてただろうか。
「本当なら戦闘機で追い回されても、文句は言えない所だ」
「まさか、そんな」
わたしは渡されたレポートとテープを持って、映像編集室に入って行った。
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次女妊娠中にQEDにはまりました。
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閲覧に関しては、個人で責任を負ってください。
著作権も一応手放してはいないので、
ご利用の際はご一報下さい。

……なんじゃ!このネタ!?と
思ったら、目をつむって十数えてなかったことに
して欲しいです^^;
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